セラフィムの学園   作:とんこつラーメン

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RGのユニコーンを購入しました。

……遂にガンプラもここまで来たか……ってのが、素直な感想でした。







第31話 試験終了

 筆記、実技共に終了した俺は、取り敢えずは簪とセシリア(名字で呼んでいたら、自分の事も簪と同じように名前で呼んでほしいと言ってきた)を待つことにした。

 

 セシリアは俺よりも先に実技試験が開始されたせいか、俺が終わってからすぐにやって来た。

 そして、簪はそれから10分後くらいに終わった。

 

 試験自体は実技が終了し次第帰宅してもよいとなっていた為、俺は試験会場の出入り口まで二人と一緒に行き、そこで別れた。

 

 ピーノが車で待ってくれている駐車場まで急いでいくと、中ではシートを倒した状態で眠っている彼がいた。

 どうやら、相当に待たせてしまったようだ。

 ま、実際にかなりの時間が掛かったからな。

 

 窓をコンコンと叩くと、こっちに気が付いてくれて、すぐに助手席のドアを開けてくれた。

 

「ごめん、待たせた」

「気にしてないよ、ずっと寝てたし。それよりも、試験はどうだった?」

「まぁ……そこそこ…かな?」

 

 手応えがあるような無いような……そんな感じ。

 俺の場合はあくまで試験を受けるのは恰好だけなんだけど。

 

「ん? 一夏はまだ来てないのか?」

「そうみたい。君が最初だよ」

「そうか……」

 

 おかしいな……。藍越学園は別に実技とか無いから、絶対にこっちよりも早く終わる筈なんだが……。

 

 この状況に疑問を感じながら車に乗ろうとすると、会場の入り口から一夏と一緒に千冬姉さんも一緒にやって来た。

 

「…姉さん?なんで……」

 

 千冬姉さんは試験官の一人としてここに来てるんだから、色々と後処理があるんじゃ……。

 しかも、なんか一夏の表情が優れないし……。

 もしかして、試験にあんまり手応えが無かったとか?

 

「どうして姉さんが一夏と一緒に?」

「それなんだがな……」

 

 姉さんが口ごもるとは珍しい。

 いつもはハキハキとした物言いなのに。

 

「…事情があってな、今日は先に帰らせてもらうことにしたんだ」

「それと一夏が一緒にいるのとどう関係が?」

「……お前が実技試験を受ける直後に話したと思うが、それに関しては家に帰ってから説明したいと思う」

「……………」

 

 いつにも増して真剣な目をしている姉さんと、その隣で俯いている一夏。

 これを見たら、嫌でも何かがあったとしか思えなくなる。

 そして、それはこの場では決して言えないような内容であることも。

 

「そういうわけだ。悪いが、私も一緒に乗せていってもらえるか?」

「お安いご用です。寒いですから、早く乗ってください」

 

 あ、そういや車のドアを開けっ放しにしていたんだった。

 これでは車内の気温が下がる一方だ。

 

 俺達はピーノに促されながら、急いで車に乗った。

 俺が助手席で姉さんと一夏が後部座席。

 

 家に着くまで、車の中はずっと静かだった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 家に着く頃には外はすっかり暗くなっていて、街灯の明かりが眩しく輝いていた。

 

 自宅の前に車を止めてから、一言二言話してからピーノは去って行った。

 

 家には行ってからは、まずは自室に戻ってから着替え、部屋着になった。

 そうして居間に行くと、既に一夏と姉さんも部屋着になってテーブルに座っていた。

 二人とも、相変わらず深刻な表情になっている。

 

「……で? どうして二人揃ってそんな顔になっているんだ? 訳を教えてほしい」

 

 いつもは会話に混ざる側の俺が、今回に限り会話を始める側になっている。

 だって、二人とも俺が話し始めないと、ずっと黙っていそうな雰囲気を醸し出していたから。

 

「千夏姉……実は…俺……」

「いや、これは私から話そう」

「千冬姉……」

 

 ……本当になんなんだ?

 全く状況が読めん。

 

「千夏……今から信じられないようなことを言うかもしれんが、まずは黙って聞いてほしい」

「わ…分かった」

 

 信じられないような事って……。

 

「実はな……」

 

 ゴクリと思わず唾を飲む。

 

「…………一夏がISを動かしてしまった」

 

 …………はい?

 

 反射的に一夏の方を見ると、向こうもこっちを見ていた。

 

「…本当か?」

「うん……マジ」

 

 ……それに対して、俺はなんて反応しろと?

 

 いや……正確に言えば俺も生物学上は男な訳で、ある意味では似た者同士ではあるんだけど……。

 

(俺と違って一夏は姿形も全てが正真正銘の男だもんな……。俺の時のような『もしかして』なんて言い訳は通用しないか……)

 

 しかし、これでハッキリした。

 道理で姉さんや一夏が暗い顔をしている筈だ。

 いきなりこんな事が起きれば、流石の姉さんでも動揺は隠しきれないし、当事者である一夏はもっと気が重いだろう。

 

「…一応、どんな経緯でそうなったか教えて貰えるか?」

「あぁ……」

 

 一夏の口からISを動かすまでの事を教えて貰った。

 簡単に言ってしまえば……

 

 会場内に入ったはいいが、そこから道に迷ってしまい、そこから適当に歩いて行くと一つのドアがあって、思わずそこに入ると中には一体のISが鎮座していて、好奇心に負けて触れてしまった。

 すると、あら不思議。

 何故かISが起動したじゃありませんか。

 しかも、タイミング悪くそこに係員の人が来たからさぁ大変。

 気が付けば、彼はIS学園の試験会場にいましたとさ。

 

「……一言だけ言わせてもらっていいか?」

「どうぞ……」

「……お前……真正の馬鹿だろ」

「うぐっ!」

「会場まではちゃんと道標が壁に貼ってあった筈だ。実際、こっちの会場にはちゃんとあったし」

「緊張してて、キチンと見てなかったかも……」

「それに、ISを見た途端になんで引き返さなかった? ISがある時点でそこは藍越学園の試験会場じゃないって分かるだろ?」

「それは分かったけど……戻る前に記念に少しだけ触っておこうと思って……」

「その結果として動かしてしまってはな……。触らぬ神に祟りなし…って言葉を知らないのか?前々から思っていたが、お前はもう少し危機感と言うものをだな……」

「うぅ……千夏姉の説教がまた始まった……」

「おい、ちゃんと聞いてるのか?」

「は…はい!」

「ったく……そもそもだな、迷ったらまずは誰かに道を聞くぐらいの事は……」

 

 こうなったらもう自分でも止められない。

 思ったことをとにかく言いまくった。

 千冬姉さんが顔を青くしてこっちを見ているが、今は無視。

 いい機会だから、今まで言えなかったことを言ってしまおう。

 

「ち……千夏? もうその辺で……」

「あ?」

「いや…なんでもない」

 

 なんでもないなら、話しかけないでほしい。

 

 それから小一時間ほど説教すると、一夏はぐったりとしていた。

 

「ち……千夏! 一夏のHPはもう0だ!」

「はぁ……。今回は姉さんに免じて、この辺で勘弁してやる」

「……次回もあるのか」

「当然だ」

 

 この一回で終わると思ったら大間違いだ。

 

「実際問題、これから一夏はどうなるんだ?」

「上の方と色々と協議した結果、まずは安全の確保の為に一夏にはIS学園に通ってもらうことになった」

「だろうな」

 

 俺も入学に備えて芳美さんから学園のパンフレットを貰ったけど、確かあそこは一種の治外法権のような場所になっていて、一度入学さえしてしまえば、そこの生徒に対して外部からの強制的な接触や圧力は出来ないような校則があった筈。

 多分、そこには一言では言えないような色々な事情があるんだろうが、今考えても仕方が無いので、まずは頭の片隅に置いておく。

 

「そこでだ、千夏に頼みがある」

「なんとなく想像はついているが……なんだ?」

「入学までの間、一夏にISの知識を少しでも叩き込んでやってくれ」

「えぇっ!?」

 

 おい、なんでそこで嫌そうな顔をする。

 そんなに俺から勉強を教わるのが嫌か。

 

「千夏姉ってスパルタって言うか……」

「スパルタの何が悪い」

 

 少なくとも、甘やかすよりはよっぽどマシだ。

 

「それは知っている。だがな、実際にIS学園に行けば、千夏のスパルタ教育が天国に思えるような授業が待っているぞ」

「嘘っ!?」

 

 なんたって倍率1万倍だしな。

 あそこは名実共に超エリート校だし。

 入るだけでも一苦労って言われてるぐらいだしな。

 

「ハッキリ言うが、予備知識が何もないままでは、速攻で落第確定だ」

「マジかよ~……」

「それに加え、あそこでは実技の授業も行われる。文武両道に頑張らなくては、到底やってはいけないぞ」

「スゲ~んだな……IS学園って……。千夏姉はそこに入ろうとしてるのかよ…」

「千夏も少々特殊な事情があるが、今は置いておくか」

 

 俺に関しては後で説明すればいいしな。

 

「ん? 今思い出したが……会場から一夏と姉さんが一緒に出てきたということは……」

「…もう隠しきれないからな。話したよ」

「そうか……」

 

 これで一夏も姉さんがIS学園で教師をしていると知ったわけか。

 

「驚いたぜ。まさか、千冬姉がいつの間にか教師になっていたなんて」

「黙っていて済まなかった。私もいつか話そうとは思っていたんだが……」

「今更いいよ。俺だって話してくれなかったのは少しショックだったけど、そこにだって『大人の事情』ってやつがあるんだろう?」

「まぁ……な」

 

 大人になるってことは、自由と同時に枷も増えるってことなんだよな……。

 

「そんな訳だから、早速明日から頼む」

「了解。ま、時期的には丁度いいかもな」

 

 受験シーズンであるこの時期は、三年生は自由登校になっているから。

 ぶっちゃけ、結果が出るまでは時間はタップリある。

 

「多分、教科書や参考書などの類は近日中に届くはずだ。……分かってはいると思うが、無くすなよ?」

「は…はい」

 

 一夏の事だから、電話帳と間違って廃品回収に出しそうだな。

 ちゃんと俺が見ておかないと……。

 

「じゃあ、もうこの話はおしまいだ。一夏、ますは風呂を沸かそう」

「ならさ、俺は夕飯の支度をするから、千夏姉に風呂を頼んでもいいか?」

「任せろ」

 

 俺と一夏はそれぞれに家事を分担して、適材適所で行動する光景はもはや織斑家では日常茶飯事になりつつある。

 だが、俺はこんな何気ない日常が好きだ。

 欠陥だらけの体を持つが故に、せめて普段の生活ぐらいは『普通』を演じたいと思うのは…傲慢だろうか?

 

 とんでもないトラブルはあったものの、こうして姉弟が揃って過ごすのは久し振りだったため、この日は家族水入らずで過ごすことが出来た。

 怪我の功名…と言うんだっけ?確か……。

 違うか。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 次の日から早速、俺は一夏に自分が知っているISの知識を教えることにした。

 

 と言っても、実際に入学するまでは俺にも訓練があるため、出来る時間は限られているが。

 

 時間が許す限り可能な範囲で教えてはいるが、なんとも覚えが悪い。

 前からこいつは脳筋な部分があり、頭よりも体で覚えるタイプだった。

 特に計算系は苦手中の苦手で、数学なんて俺や鈴が教えなければ間違いなく悲惨な目に遭っていただろうことは想像に難くない。

 

 そうしていく内に時間は過ぎていって、あっという間に中学の卒業式が終わった。

 因みに、卒業式には姉さんの他にも山本さんを初めとした東友会に人達に組長さん、芳美さんとピーノも来てくれた。

 

 特に東友会に組員の人達は何故か俺を見て号泣していたっけ。

 なんでだ?

 いつの間にか「お嬢」って呼ばれてたし…。

 

 そして、季節は春になり、入学シーズンの到来。

 

 俺と一夏はIS学園へと入学をする。

 ここで何が待っているのか……不安と楽しみが半々と言ったところか。

 一夏は不安の方が多いかもしれないが。

 

 そう言えば……少なくとも、ここには簪とセシリアがいるんだったな。

 一緒のクラスになれると嬉しいのだが……。

 

 

 

 




やっと原作開始です。

ここまで来るのに31話って……。

今度発売するスターバーニングガンダムやGMで癒されよう……。

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