セラフィムの学園   作:とんこつラーメン

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今まで更新が滞っていたので、ここから一気に飛ばしていきたいですね~。

正直言って、かなり暑いですが……頑張っていきましょうか。






第25話 因果応報

 千夏が自身の家族に衝撃の告白をした次の日。

 

 まだ午前だというのにも拘らず、IS委員会の日本支部は騒がしくなっていた。

 というのも……

 

「は…離せ!! 離さんか!!」

「くそっ…! くそっ!!」

 

 最上階にある支部長室にて、大島親子が複数の警察官に拘束されているからだ。

 

「なんで……なんでこんな事に……!」

 

 確かに山本は何とかすると言っていたが、昨日の今日で行動に移すとは誰が予想しただろうか?

 これも偏に東友会……否、山本の後見人である組長の『力』の成せる業だった。

 

 彼は警察の上層部に非常に大きなコネを持つと同時に、かなりの弱みも握っている。

 それに加え、組長はIS委員会のトップとも個人的に親しい。

 これだけの力を駆使すれば、すぐに逮捕状を発行し、親子を捕える事など苦も無く行える。

 勿論、二人の犯罪の証拠は既に東友会の組員とクリスティアーノ委員長の私兵によって全て集められ、警察に提出されている。

 

「き……貴様ら!! 私はこの日本支部の支部長だぞ!! こんなことをしてどうなるかわかっているんだろうな!?」

 

 取り押さえられた状態で激高する支部長だが、そんな言葉に耳を貸すものは一人もいなかった。

 

『残念だが、彼らにそんな脅しは通用しないぞ』

 

 その時だった。

 支部長室の奥にある大きな机の近くに投影型のモニターが表れて、そこにはクリスティアーノ委員長が映っていた。

 

「い……委員長!?」

『馬鹿だ馬鹿だと思ってはいたが……よもや、ここまで愚かな人間だったとは思わなかったぞ。大島』

「は……はい?」

『私が何も知らないと思っているのか? だとしたら、私も舐められたものだな』

「な……何を仰っているのかさっぱり……」

『しらばっくれるな。既に全てが白日の下に曝されている』

「ま…まさか……」

 

 支部長の脳裏に嫌な予感が過った。

 

『IS委員会委員長として命ずる。大島隆……君はクビだ』

「ク……クビ?」

『そう。今、この瞬間から、お前はただの『大島』だ。勿論、貴様の息子もな』

「あ……あああぁぁ……!」

「お……親父……」

 

 事実上の処刑宣言に等しい言葉を聞かされて、呆然自失となる二人。

 だが、警察達はそんな彼らに容赦はしない。

 何故なら、彼ら二人は犯罪者だから。

 

「大島隆! 大島博之!! 婦女暴行、並びに贈賄疑惑、武器の密輸……その他諸々の罪で逮捕する!!」

「その他諸々って……そんなんでいいんですか?」

「構わん。この親子がしてきた罪を上げればキリがないからな。ほら! さっさと立て!!」

「うぐっ……」

 

 手錠を掛けられた二人は、無理矢理その場に立たされた。

 

 連行される中、大島は腹違いの兄である山本が昨日、去り際に言っていたことを思い出していた。

 

(色んな関係各所と繋がっているって言っていたな…。じゃあ、俺らの事を売ったのって……)

 

 そこで大島は思い知る。

 自分達が山本の逆鱗に触れてしまっていたことを。

 

 段々と人が少なくなっていく支部長室に、モニター越しに様子を見ていたクリスティアーノ委員長の言葉が静かに響く。

 

『私は前にも言ったはずだ。己の感情一つコントロール出来ない人間はゴミだとな』

 

 そして、親子が逮捕される様子を一部始終見ていた人影がもう二つあった。

 

「これで……千夏ちゃんも大丈夫かしらね……」

「きっと大丈夫さ。俺らが出来るのはここまで。後は千夏ちゃんの家族と…ピーノに任せよう」

 

 少し離れた場所で見ていたのは、山本と芳美の二人だった。

 

「千冬たちはともかく、ピノッキオ君に?」

「ああ。なんか知らないが、どうもあの二人は仲良くなっているようでな。心のケアは若い者に任せてしまおう……ってな」

「貴方もまだまだ十分に若いでしょうに」

「俺なんてとっくにおっさんだよ」

 

 久し振りに会った二人は、とても仲睦まじくしていた。

 

「訓練所では千夏ちゃんの事を頼むぞ」

「任せておいて。あそこには彼女の友達も沢山いるし、きっとすぐに立ち直るわ」

「そうだな……」

「ところで、あのデブの後釜はどうする気?」

「そこら辺も抜かりねぇよ。ちゃんと考えてあるさ」

「そう。ま、信彦さんがそういうなら問題ないでしょ」

 

 警察官達がいなくなった後、二人はゆっくりとその場を後にした。

 

 並んで歩くその姿は、まるで熟年の夫婦のようだった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 色々と濃密だった昨日から一晩が経ち、今日も今日とて俺はいつものように学校に向かう。

 

 登校の準備をしている最中、一夏や千冬姉さんに『今日ぐらいは休んだらどうか』と言われたが、別に体調も悪くないし、休み理由は見当たらない。

 

 確かに昨日は俺の身に様々なことが降りかかったが、なんでか今では精神状態も安定している。

 なんでだろうか?

 ふ~む……謎だ。

 俺の精神が図太くなってきたのかな?

 

 というわけで、俺はいつものように一夏と一緒に登校した。

 

 学校ではいつも以上に一夏が俺のことを気に掛けるようになっていて、明らかに女子達から変な目で見られていた。

 

「なんか……今日の織斑君って……」

「うん。ちょっと千夏ちゃんにくっつきすぎじゃない?」

 

 そう思うのならば、是非とも本人の目の前で言ってほしい。

 

 え? 俺が直接言えばいいだけだろうって?

 何を仰る。

 これが悪意を持っての行動ならばいざ知らず、今回のこれは一夏の善意から発生したものだ。

 俺は例えどんな事があろうとも、誰かの善意だけは否定したくはない。

 

「一夏のシスコン度がいつにも増して増大してやがる…」

 

 シスコン度ってなんだよ、弾。

 そんな感じで一日が過ぎていき、あっという間に放課後に。

 

「今日も行く気なのか?」

「当然だ。休む理由がない」

「けど……」

 

 心配してくれるのは嬉しいが、今は少しでも体を動かしたい気分だったりする。

 

「あ」

 

 ん? クラスの女子が窓の外を見て声を上げたな。

 

「あそこ……校門の所に見たことない車が停まってるよ」

「どこどこ?」

「あ、本当だ」

 

 皆に釣られるようにして、俺たちも窓まで行って外を見る。

 すると、そこには……

 

「あ?」

 

 確かに見たこともない車だ。

 しかし、この時間帯に来るってことは、恐らく俺を迎えに来たんだろう。

 でも、あんな車を持ってる人っていたか?

 

 そんな風に疑問に感じていると、運転席の窓が開いた。

 

「左ハンドル……」

「ってことは、外車か?」

 

 こんな所に外車かよ…。

 運転席にいたのは……。

 

「…………なに?」

 

 昨日と同じように無表情でハンドルを握っていたピノッキオだった。

 

「だ……誰っ!? あのイケメン!!」

「なんかこっち見てるわね……」

 

 な……なんで彼がここに?

 

「あれってピノッキオさん……だよな?」

「あ……あぁ……」

 

 一夏はピーノのことを『さん』付けで呼んでいるのか。

 確かに彼の方が年上っぽいけどな。

 実年齢は知らないけど。

 

「ねぇ、放課後にこうして迎えに来るのって、大抵が千夏ちゃんの事を迎えに来る人よね?」

「うん」

「じゃあさ、あのイケメンも……」

「千夏ちゃんを迎えに来た!?」

 

 そうなる……のか?

 急に教室が騒がしくなってきたけど。

 

「それってつまり、千夏ちゃんの彼氏ってこと!?」

「か……彼氏っ!?」

 

 いきなり何を言い出すか。

 

「え? やっぱり千夏姉とピノッキオさんって付き合ってるのか!?」

「そんなわけないだろ。ピーノとは昨日会ったばかりなんだぞ」

「その割には、ちゃっかり愛称で呼んでるじゃねーか」

「なんか言ったか?」

「いえ……なんでもないです」

 

 余計なことを言うんじゃないよ、弾。

 寿命を縮めたくなかったらな。

 

「金髪ってことは……外人?」

「外人のイケメンか……。やべぇ、俺らに勝ち目ねぇわ」

 

 勝ち目って何よ?

 

「と…とにかく、俺はもう行くな」

「分かった。気を付けてな」

「ん」

 

 半ば教室から逃げるようにして校門まで向かった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

「そんなに急がなくてもいいのに」

「いや……そんな訳には……」

 

 急いで校門まで向かったが、相も変わらず飄々とした感じでピーノはそこにいた。

 

「な……なんでピーノがここに?」

「昨日も言ったでしょ?僕は君の護衛だって。今日からは僕が君を迎えに行くことになったんだ」

「そ…そう…なんだ」

 

 これからはピーノが迎えに…。

 ってことは、訓練所に行くまではピーノと二人っきりに?

 

(それは……いいな)

 

 いやいやいや、何を考えてるんだよ俺は。

 

「ちゃんと、君のコーチをしている松川さんって人にも伝えてあるから」

「ちゃっかりしてるな」

「まぁね」

 

 用意周到なんだな。

 彼の経験から来ているのだろうか?

 

「じゃ、早く行こうか?」

「うん」

 

 俺は反対側に回り込んで、そのまま助手席に座った。

 そして、ピーノの運転で訓練所まで向かった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 車での移動中。

 俺はチラチラと運転をしているピーノの方を見てしまう。

 

「どうしたの?」

「いや。ピーノって運転免許を持ってたんだなって思って」

「向こうで取得したんだ。持っていて損はないっておじさんに言われて」

「そう……」

 

 運転免許を持ってるってことは、やっぱりピーノは成人なのかな?

 だったら、まだ中学生に過ぎない俺が彼の事を呼び捨てにするのはヤバいのでは?

 

「この車ってピーノの?」

「ううん。これはおじさんの車だよ。まだ自分の車は持ってないかな。いつかは欲しいけど」

「へぇ~……。じゃあさ、もしもピーノが車を買ったら、一番に俺を助手席に乗せてくれる?」

「いいよ」

 

 ……あれ? 俺は何を言ってるんだ?

 いつから俺は、こんな青春漫画に登場するヒロインのような言葉を吐くようになった?

 

 

「そういえば、あの親子の事は何か聞いた?」

「いや、何も」

 

 アイツらか……。

 正直言って、もう思い出したくもないけど。

 

「あいつらね。今朝、逮捕されたらしいよ」

「今朝?」

「うん。組長さんもおじさんも、相当にムカついたらしいね」

 

 こ……怖いな……。

 ヤクザの組長とIS委員会の委員長が手を組むと、とんでもないことになるんだな……。

 

「今頃は、取調室で徹底的に絞られてるんじゃないかな?」

 

 ということは、あの親子の家や日本支部も家宅捜索されてるのか?

 暫くは支部には行けそうにないな。

 行く予定もないけど。

 

「…………」

「なに?」

「い…いや、なんでもない……」

 

 マズいな…。

 一瞬、運転しているピーノの姿が凄くカッコよく見えた…。

 

 少し緊張している俺を余所に、車は訓練所へと向かっていく。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 訓練所に向かう途中、地理的な理由で日本支部の近くを通り過ぎるのだが、支部の周りには警察関係者と思わしき人達がたくさんいた。

 きっと、建物の中も似たような状況だろう。

 

 ピーノは『別に気にする必要はない』と言ってくれたが、それでも気にせずにはいられない。

 

 俺自身はあの親子に関してはもうどうでもいいと思っているが、支部内にいる他の人達に迷惑を掛けてしまったと思うとやるせなくなる。

 

 そんな事を考えている間に、車は訓練所に到着。

 

 車を降りて中に入ろうとすると、ピーノも一緒についてきた。

 

「護衛として、ここでお別れってわけにはいかないからね」

「ピーノ……」

 

 真面目な人だな…。

 いつものように更衣室に向かう途中、俺達は芳美さんに会った。

 

「こんにちわ」

「はい、こんにちわ」

「どうも」

 

 隣にいたピーノも軽く会釈をする。

 

「どうやら、ちゃんと千夏ちゃんをエスコート出来たみたいね」

「はい」

 

 エスコートって……。

 

「皆はもう準備を始めてるわ。千夏ちゃんも急いだ方がいいかも」

「分かりました」

 

 皆を待たせるわけにはいかないしな。

 

「あ、分かってるとは思うけど、ピノッキオ君は更衣室に入っちゃダメよ?」

「僕をなんだと思ってるんですか……」

「なんか、天然ボケをかまして普通に千夏ちゃんと一緒に更衣室に入りそうだったから」

 

 一体何処のラブコメ主人公だよ。

 

「んじゃ、俺は行くから」

「うん」

「君はこっちね。彼から話は聞かされてるから」

 

 あ、ちゃんと話は通ってるのね。

 

(……急ぐか)

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 更衣室に入ると、既に複数人が着替えを終えようとしていた。

 その中には簪も含まれている。

 

「あ、千夏」

「待たせたな、簪」

「ううん、大丈夫」

 

 さて、俺もとっとと着替えますか。

 

「ねぇ、千夏ちゃん」

「なんだ?」

「さっき、他の子が話してたんだけど…」

「うん?」

「一緒に来たあの美青年は誰!? もしかして、千夏ちゃんの彼氏!?」

「はぁ……」

 

 またその話かよ。

 

「か…彼氏!? 千夏…もうそんな人が……」

「お~い、簪~」

 

 なんか簪がトリップしてるんですけど。

 

「で! 実際のところはどうなの!?」

「彼は俺の護衛役の人だよ」

「護衛役?」

「うん。最近ってやたらと物騒だろ? 時には訓練が長引いて暗くなってから帰ることもあるし。そんな時に備えて、委員会の方から護衛を派遣したんだよ」

 

 一応、嘘は言ってない。

 

「なるほどね~…。つまり、彼は千夏ちゃんの王子様ってわけか」

「どうしてそうなる?」

 

 どこから『王子様』が出てきた?

 

「いいなぁ~。私もあんなイケメンの護衛が欲しいなぁ~」

「パッと見ただけだけど、千夏ちゃんと彼って一緒にいてかなり絵になるわよね」

「うんうん。美少女と美青年。街中とか歩いていれば、普通に雑誌インタビューとか受けそう」

「なんじゃそりゃ」

 

 俺もピーノもそんなチャらいキャラじゃない。

 

「王子様…。いや、この場合は千夏が私の……」

「で。さっきから簪は何をぶつぶつを言ってるんだ?」

「ここは敢えて放置しておきましょう。下手にツッコんだら彼女が可哀想だわ」

「そういうもんか?」

 

 ま、そのうち我に返るだろう。

 そんなことを話しつつも、俺はちゃんと着替えを済ませてるしな。

 

「それがこの間届いたっていう千夏ちゃん専用のISスーツ?」

「ああ。初めて着てみたが、想像以上に着心地はいいな」

 

 今まで着ていたスーツよりも体にフィットしている感じがする。

 

「デザインもいいと思うな。色合い的にも千夏ちゃんによく似合ってる」

「そうか? ……ありがとう」

「千夏ちゃんがデレた!」

「デレたって言うな」

 

 しかし……俺がこんな会話をするようになるとはな。

 世の中、存外どうなるかわからないものだ。

 

 未だに異次元に意識が飛んでいる簪を置いて、俺たちは更衣室を出た。

 

 案の定、簪は遅刻して芳美さんに怒られていた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 拘置所に連行するために、護送車にて運ばれている大島親子。

 護送車の周囲には数台のパトカーも一緒に走っている。

 

 元支部長の方は、委員長に見限られたことが精神的に相当なダメージを与えたようで、虚ろな目のまま素直に自白をしていた。

 逆に息子の大島博之の方は容疑を否認し続けたが、父が全てを認めたことを聞いた途端に愕然として、その後に項垂れながらポツポツと話し始めた。

 

 彼らの家からも数多くの物的証拠が発見され、大島の部屋からは、今まで彼が凌辱し続けた女性たちの様子を書き記した日記や、写真などが発見された。

 その中には当然、千夏の物もあったが、それはいち早く組長が回収し、彼の手によって密かに闇に葬られた。

 

 二人は念の為に二台に分けて運ばれていて、傍から見るとかなり大がかりに見えた。

 護送は順調に進んでいるように見えたが、誰もが予想だにしない事態が彼らを襲った。

 

「な……なんだ!?」

 

 いきなり護送車が大きく揺れて、横倒しになったのだ。

 並走していたパトカーも同じように横倒しにされた。

 

 中にいた親子はそれぞれに大きく体を打って、手錠を掛けられている事も加えて動けない状態にあった。

 

 運転手達とパトカーに乗っていた警察官達は慌てて外に出て状況を確認しようとするが、そんな彼らの眼前に現れたのは……

 

「ア……IS!?」

 

 漆黒の装甲に身を包んだ、腕部が異常に長い異形のISだった。

 赤いカメラアイが複眼のように顔面にあり、不気味さを増幅させている。

 

 だが、謎のISは運転手達を完全に無視して、そのまま親子が閉じ込められている後ろに向かった。

 

「え?」

「な……なんなんだ?」

 

 ISは徐に腕を上げて、護送車の扉を力任せにこじ開けた。

 そして、中にいる大島の体をその手で掴んで、腋に抱えた。

 

「よ……容疑者が!!」

 

 どうにかしなければいけない状況であるが、生身の人間がISに敵うわけがない。

 それをわかっているせいか、彼らは動きたくても動けない。

 こんな事ならIS操縦者の護衛ぐらいつけておけばよかったと後悔するが、そもそもISの絶対数が少ないため、護衛をつけたくてもつけられないのだ。

 

 大島は気絶しているようで、ピクリとも動かない。

 

 もう一台に乗っている元支部長の方は、まだ意識があるらしく、その場から逃げようともがいている。

 

「うぅぅ……この私がなんでこんな目に……」

 

 頭から血を流しながら動こうとしているが、怪我と手錠のせいで思うように動けない。

 だが、来襲したISには彼の心情など関係ない。

 彼がまだいる車内に向けて、その腕部に固定された銃砲を向けた。

 そして、ISは微塵の遠慮も無くそこから紅のレーザーを発射した。

 

「え……」

 

 結果、断末魔を上げる暇もなく、元支部長は文字通りの消し炭と化した。

 護送車には溶解したかのように大きな穴が開かれて、穴の周囲は真っ赤に赤熱している。

 中には人影はなく、人肉が燃えるような独特の匂いが立ち込めた。

 

「「「「「…………」」」」」

 

 僅か数分の間に起きた出来事に、現実味が持てないまま、彼ら全員が呆然としていた。

 

「お……おい!」

 

 ISは大島を抱えたまま、来た時と同じようにどこかへと飛び去って行った。

 

「せ……先輩! もう一人は……」

「そ……そうだな」

 

なんとか我に返った全員が、急いで未だに熱を帯びている車に空いた穴を覗く。

そこには……

 

「う゛……」

 

 人間の足だけが立った状態で残されていた。

 その断面は、真っ黒に焼け焦げていた。

 

 それが元支部長のなれの果てだと理解するのに、そう時間は掛からなかった。

 

 

 




どうしよう……自分でもわかるぐらいに駄文だ……。

少しやらなかっただけで、ここまで衰えるの…?

ちゃんと頑張らなくては!!

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