セラフィムの学園   作:とんこつラーメン

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さて……そろそろ『食べごろ』かな?








第20話 絶望の宴はここから始まる

 俺がISに関わり始めてから約半年が経過した。

 中学三年になって高校進学を本格的に考えなくてはいけなくなる頃、俺は放課後にIS委員会の日本支部に久し振りに呼ばれていた。

 

 いつものように建物に入り、エレベーターで支部長室がある階まで行くと、そこには大島さんが毎度の如く怪しい笑みを浮かべながら待っていた。

 

「や、態々ご苦労様」

「いえ……」

「親父なら支部長室で君を待ってるよ」

「分かりました」

 

 そう言えば……。

 

「今日は芳美さんはいないんですか?」

「うん。君が来る少し前に訓練所から連絡があってね、向こうに行ったよ」

「そうですか」

 

 彼女に会えないのは少し残念だな。

 挨拶ぐらいはしたかったんだが……。

 

「ま、取り敢えず行きなよ。あまり待たせるのはよくない」

「そうですね」

 

 待たせたら、どんな嫌味を言われるか分からないしな。

 俺は大人しく、支部長室へ向かって行った。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

「失礼します」

 

 ノックをしてから支部長室へと入る。

 奥にある机には、見慣れた太っちょの支部長が座っていた。

 

「よく来てくれたね」

「いえ……」

「今日来てもらったのは他でもない。君の進路について話そうと思ってね」

「はい」

 

 なんとなく、そんな気はしていたがな。

 

「もう君も分かっているとは思うが、君にはIS学園に行ってもらう」

「矢張りですか」

「だが、その前に君がIS委員会代表のIS操縦者と言う事をマスコミに発表しようと思っている」

「え?」

 

 マスコミに発表?

 

「世間に大々的に発表する事によって、君の存在を人々に知らしめる。勿論、ある程度の素性は話すつもりだがな」

「それは……」

 

 俺が千冬姉さんの『妹』だと言うつもりか……。

 

「タイミングは君が中学を卒業した後にする予定だ。今から心の準備をしておいてくれたまえ」

「分かりました」

 

 気楽に言ってくれる。

 こちとら、前世も今世もそんな経験は全く無いんだよ。

 いきなり、そんな事を言われても困る。

 

「表向きは他の生徒達と同じように受験をする予定だが、君の合格は既に確定していると思ってくれていい」

「はい」

 

 非常に心苦しいな。

 事実上の裏口入学じゃないか。

 そこまでして『俺』と言うネームバリューが欲しいか。

 

「ご苦労だった。下がってよろしい」

「はい。失礼しました」

 

 お辞儀をした後に支部長室を後にする。

 

 支部長はしらを切っているが、俺にはちゃんと分かっているんだぞ。

 アンタの視線がずっと、俺の胸や足に集中していたのをな。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 支部長室を出ると、またまた大島さんが待っていた。

 

「や」

「どうも」

 

 この人の表情は殆ど変わらないな。

 不気味過ぎて気味が悪い。

 

「今日は君の訓練はお休みだ。偶にはゆっくりとするといいよ」

「そうですか」

 

 いきなり『ゆっくり』とか言われてもな…。

 

「まずは下の階に行こうか。ここじゃ休まる体も休まらない」

「ええ」

 

 俺は大島さんに連れられるようにエレベーターに乗って下の階に向かった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 休憩所や仮眠室がある階。

 その一室で俺は大島さんと一緒にソファーに座っていた。

 

「息子の俺が言うのもあれだけど、あんな親父の相手なんかして君も疲れただろう?」

「それを俺に言わせますか?」

「あれ? 言いにくい?」

「当たり前です」

 

 あんなんでも、一応は俺の上司的な人なんだ。

 支部内での悪口は言えないないだろう。

 俺が背もたれに体を預けた瞬間、休憩室のドアが開いた。

 

「ここにいたか」

 

 誰だ?

 高級そうなスーツに身を包んでいる男性だが……。

 

「兄貴……!」

「兄……?」

 

 この人が……?

 全く似てないが。

 

「すまんな。ドアが半開きだったぜ」

 

 あれ? そうだったか?

 

「ほぅ……? 話には聞いていたが、こんな美少女がお前の担当だったとはな」

「うるせぇな……!」

 

 大島さん……?

 

「博之の兄の『山本信彦』と言う。よろしくな」

「あ……えと……織斑千夏です」

 

 あれ? 苗字が……。

 

(もしかして、腹違いの兄弟とかか?)

 

 なんか複雑な事情がありそうだな。

 深く聞くのは躊躇われる。

 

 黒い地味なスーツに白いワイシャツ。そしてノーネクタイ。

 更には左腕からは金のロレックス、首には金のネックレスが覗いている。

 凄いな……始めて見た。

 

 髪は長髪で、凄く手入れが整っていて、居城で束ねている。

 髪が長い男性と言うのも珍しい。

 

 一体どんな人なんだろうか?

 芸能人……じゃないよな。

 

「兄貴、何の用で来たんだよ?」

「中学生の割には妙に大人びてるな。だが、悪くない」

「何の用で来たんだって聞いてんだよ!!!」

 

 ……! 驚いた……。

 この人が大声を出すところなんて初めて見た……。

 

「たまたまこっちに来る用事があったんでな。お前がちゃんと頑張っているか様子を見に来たんだ」

「そうかよ」

 

 まるで、癇癪を起こしている子供のようだな。

 

「……茶でも飲んでいけよ」

「そうだな。偶にはいい」

 

 またまた驚いた。

 大島さんが率先して茶を出そうとするなんて。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 大島さんが茶を淹れに行って休憩室を出ていって、部屋には俺と山本さんが残された。

 

「博之の事をよろしく頼むな。我儘な奴だが、仕事には真面目や奴でな。これからも色々と迷惑をかけるかもしれないが、今のあいつは社会人だ。許してやってくれ」

「いえ……俺は別に……」

 

 この物言い。

 凄くいい人のようだ。

 

「正直ほっとしたよ。君のような気丈な子の方がアイツには合っている。何しろ、あんな奴だからな」

 

 あんな奴って……。

 あ、煙草を咥えた。

 けど……。

 

「あの……火はつけないんですか?」

「俺はヘビースモーカだよ。鬱陶しいかもしれないが、勘弁してくれ。この通り、火をつけるつもりないから」

「俺は別に構いませんけど」

「未成年の前で吸う訳にはいかないだろう?」

「正論ですね」

 

 本当に大島さんのお兄さんか疑わしくなってきたな。

 凄くじゃなくて、滅茶苦茶いい人じゃん。

 

「折衷案だ。こうして『おしゃぶり』のように咥えていれば、それなりに満足なんだ。気にしないでくれ」

「いや……気持ちは分かるって言うか……。俺も大人になったらタバコを吸ってみたいって思った事があるって言うか……」

 

 あ……あれ?俺は何を言ってるんだ?

 あ、山本さんが煙草を握り潰してスーツのポケットに入れてしまった。

 

「悪かったな。やっぱり、未成年の前で煙草を見せつけるのはよくないな」

「真面目なんですね」

「他の連中からもよく言われるよ」

 

 不思議な人だな……。

 他人なのに、不思議と俺は落ち着ている。

 芳美さんと初めて会った時もこんな事は無かったのに。

 

「なに、一人前に話してるんだよ」

 

 大島さんが戻ってきた。

 その手には三人分のお茶が乗っているお盆が握られていたが、彼の顔はさっきと同じように仏頂面のままだ。

 

「一人前に女子中学生とお話しできるような身分かよ!! このヤクザ者が!!」

 

 や……ヤクザ?

 山本さんが?

 

 俺が大島さんの剣幕に驚いていると、山本さんが寂しげな笑みを浮かべながら立ち上がって、俺の頭を撫でてくれた。

 

「弟の事をよろしく頼むな」

「あ……」

 

 こっちが返事をする間も無く、彼は行ってしまった。

 少しした後に、外から車のエンジン音が僅かに聞こえた。

 

「ベンツさ。頬に縫い目のある運転手付きのな」

 

 わぉ……。

 ベンツに縫い目って……本格的じゃん。

 

「この建物も、この土地も、このソファーだって兄貴が極道をして手に入れたものなんだ」

 

 一応……ここは黙っておこうか。

 

「この土地と建物は借金のカタか何かで『合法的』に手に入れたものらしい。『合法的』に……な」

 

 妙に合法的って協調してくるな。

 

「凄いんですね……」

 

 正直、それしか言えなかった。

 下手に何かを言えば、取り返しのつかない事になりそうだったから。

 

「少し前まで、俺は兄貴に依存してたんだ。学費も、生活費も、何もかもが兄貴持ちだった」

「そう……ですか」

 

 う……こっち見た。

 

「俺の親父は支部長なんて地位につくまでは土建屋をやっていたんだ。知ってる?土建屋」

「いえ……」

「簡単に言うと、中堅の建築会社さ。昔は俺の事を跡取りにしたがっていたけど、今となってはどうでもいいみたいだな。そんな話は全然してない」

 

 うぐ……なんか空気が重い……。

 

「その……山本さんはそんなにも偉い方なんですか?」

「東友会の山本と言ったら、良くも悪くも有名人さ。この名前を聞けば、大抵の連中は愛想笑いを浮かべる」

「お若く見えましたけど、そんなに凄い人だったんですね」

「凄い人……ね。まぁ、確かに組関係じゃ凄い人である事には違いないな。若作りしてたけど、今年でもう35になる」

 

 35歳……。

 

「ま、兄貴がのし上がったのは親父の力もあるんだよ」

「と言うと?」

「建設会社と暴力団。お互いに持ちつ持たれず、切っても切れない関係だからな。兄貴は新宿に居を構えてるくせに、山谷とかの色々な利権を全部握ってるんだ。日雇いの労働者を食いモノにしてるんだ」

 

 話しが難しくなってきたな…。

 って言うか、俺にそんな話をしてもいいのか?

 

「嘗ての親父の会社は仕事がある時は異常なまでに忙しいけど、そうじゃない時は悲惨なものなんだ。国や地方自治体の発注待ち。政治家や小役人と癒着をしてるんだ。他の製造業とかとは違って、ビルや道路をいちいち造ってストックしておくわけにもいかないだろう?」

「確かに……やりたくても出来ませんよね」

「だから、なるべく正社員を少なくしてから、仕事の発注があった時限定で日雇い労務者で賄おうっていう発想で出来てくるんだ。福利厚生とか退職金とか保険とかゴチャゴチャ言わない日雇い労務者でさっさと道路とかを造ってしまい、それが終わったなら、ハイさよなら……ってわけ」

 

 う~わ~。

 聞きたくない裏話を聞いてしまった~。

 

「親父は兄貴に発注する。兄貴はその日暮らしの労務者をかき集める。親父はそれを利用して余計な正社員を使用せずに安く仕事が出来る。兄貴は労務者の日当をピン撥ねして私腹を肥やす。ヤクザでのし上がっていくには、まずは無謀な性格であること、次に頭が切れる事。最後に豊富な資金源を持っている事。兄貴はその全てを持っているんだ」

 

 実に饒舌に話すが、そこからは山本さんに対する尊敬の念とかは一切感じられない。

 まるで、最初から決まっている文章を淡々と読むかのようだった。

 

「あ……ゴメン。小難しい話をしてしまったね。君にはまだ早かったかな?」

「いえ、気にしてませんから」

「そう……」

 

 そう言えば、お茶を飲むのをすっかり忘れていた。

 早く飲んでしまおう。

 

「う……」

 

 温い……。

 実に中途半端な温さだ。

 

「!!!!!」

 

 な……なんだ……?

 急に体が痺れて……。

 

「ククク……」

「大……島……さん……?」

 

 ま……まさか……!

 

「この時をずっと待っていたよ。アイツが来て駄目かも知れないと思ったけど、幸運の女神は僕に微笑んでくれたようだ」

「なに……を……」

 

 この男は……!!

 

「君が飲んだこのお茶には裏ルートで入手した特製の痺れ薬を入れたんだ」

 

 なん……だと……!

 

「フフ……出会って当初の君ならば、警戒して僕が入れた茶なんて絶対に飲まなかっただろうね。でも、今は違う。こうして茶を飲んでくれたって事は、僕の事を少なからず信用してくれたって事だ。違うかい?」

 

 悔しいが、ここは彼の言う通りだ。

 俺は今までの日常の中で、この大島と言う人物の事をほんの僅かでも信用してしまった。

 くそっ……! 俺はなんでいつも……!

 

「凄く嬉しいよ。さぁ……一つになろうか?」

 

 ま……まさかコイツ!?

 

 大島さん……いや、大島は身体が痺れて身動きが出来ない俺の事を抱きあげて、休憩所を後にした。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 俺が連れ込まれたのは、近くにあった仮眠室だった。

 そこにあるベットの上に俺の体をそっと置いて、両腕を自分のネクタイで縛り上げた。

 

「念の為にね。後、ついでだから」

 

 あ……腕に付けていたディナイアルの待機形態である腕輪が取られた…。

 そして、大島は俺に覆いかぶさってきた。

 

「僕は知ってるんだよ」

 

 何をだよ……!

 

「千夏ちゃん……僕に惚れてるだろ?」

 

 そんなわけあるか。

 そう叫びたいけど、喉までもが痺れて声が上手く出せない……。

 

「さて、脱ぎ脱ぎしましょうね~」

 

 や……やめろ……。

 だが、心の中で何を言っても無駄で、俺は大島の手によって下着姿にされてしまった。

 

「そう言えば、もうすぐ君のお姉さんが帰ってくるんだって?」

 

 ……? いきなり何を?

 

「ねぇ……知ってるかい? 君のお姉さんの織斑千冬……彼女ね、日本代表を引退したらしいよ?」

 

 な……なんだって……?

 そんな話全然聞いてないぞ……。

 

「きっと、芳美さんは君の事を思って黙っていたんだろうね。でも、いずれバレる事さ」

 

 姉さんが引退……なんで……?

 

「親父が聞いたところによると、君達家族にこれ以上の危険が及ばないようにする為らしいって」

 

 そんな……それじゃあ、姉さんは俺のせいで引退したのか……?

 

「家族思いだよね~。いや~感動しちゃうな~」

 

 俺は……俺は……。

 

「おや? いきなり泣いたりしてどうしたのかな? 今から起きる事を想像して嬉し泣き?」

 

 悔しい……

 こんな最低野郎の事を少しでも信じてしまった自分が。

 こうして何も出来ないでいる自分が。

 

「はぁ~……」

 

 や……やめて……。

 俺の下半身の匂いを嗅ごうとしないで……。

 股間に顔を近づけるな……。

 

「素晴らしい香りだ……。今まで色んな女を喰ってきたけど、君は間違いなく極上の美少女だよ」

 

 お前に褒められても全く嬉しくない。

 

「本当に可愛いよ……千夏ちゃん」

「んぐっ……」

 

 キ……キスされた……。

 こんな奴に……。

 

「れろぉ……」

 

 舌を入れてくるな……。

 くそ……くそ……!

 

「はぁ……あれ? もしかしてファーストキスだった? そうか~……僕は実にラッキーだな~」

 

 残念だが、俺の初めてのキスは鈴だ。

 だが、鈴とのキスがこいつに上書きされたようで、すごく嫌だった。

 

「じゃ、そろそろやろうか?」

「……」

 

 やめ……。

 

「千夏ちゃん……君は特別な存在だ」

 

やめろ……!

 

「君には……神様が宿っているよ」

 

 やめてくれ……。

 

「ならば、僕は……その『神』を犯そう」

 

 やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 全てが終わり、体の痺れも完全に取れたが、俺は全く動く気力が無かった。

 当然だ、俺はまた…強姦されたのだから。

 

「ひくっ……ひくっ……」

 

 生まれて初めてだ……こんなにも悔しくて泣いたのは……。

 体は至る所に白濁液で染まっていて、独特の匂いが匂ってくる。

 

 嗅覚が戻らなければ、こんな不快な思いもしなかったのに……。

 不感症気質なのが唯一の幸いか……。

 そうじゃなかったら、一体どうなっていたか……。

 

「いや~…最高だったよ。マジで君は最高の女だった」

 

 コイツは……。

 裸の状態でこっちを見る大島。

 俺の方も裸にされていて、着ていた下着はそこら辺に捨ててある。

 

「反応が薄かったのが気になったけど、具合が最高だったから……ま、いいか」

 

 全身を犯された……。

 口も、後ろも……。

 

「でも意外だったなぁ~。まさか処女じゃないなんて。もしかして、弟君と近親相姦でもやってるのかい?」

「一夏はお前とは違う……」

「元気あるじゃん」

 

 許さない……コイツだけは絶対に……!

 

「あ、一応言っておくね。君のお姉さんは確かに引退はしたけど、まだ日本に所属はしているんだ。この意味……分かるよね?」

「まさか……」

「今回の事を誰かに言ったりしたら……大事な大事なお姉さんがどうなっても知らないよ?」

「!!!!!」

 

 コイツは……姉さんまでも……。

 

「最悪、連鎖的に弟君にも被害が行くかもね~」

 

 一夏にまで、その毒牙を向ける気か……!

 

「それともう一つ」

「なんだ……」

「君がいつも頼りにしてる芳美さんね。実は兄貴の恋人なんだ」

「え……?」

 

 芳美さんと山本さんが……?

 

「君は兄貴に妙に懐いてようだけど、彼女とこれからも仲良くしたいのならば、兄貴に近づくのはやめた方がいい」

「…………」

 

 俺は………。

 

「じゃ、これからもよろしく頼むよ(・・・・・・・)。僕の可愛い千夏ちゃん♡」

 

 助けて……誰か助けてよ……。

 

 姉さん……一夏……鈴……。

 

 山本さん……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ハッピーエンド?何それ?美味しいの?

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