セラフィムの学園   作:とんこつラーメン

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『いざと言う時に誰かが助けてくれると思ってはいけない』

                      ブラスト (ワンパンマン)














第19話 馬鹿が来る

 ディナイアルの試運転をした日に図らずも嗅覚を取り戻したが、結果としては却って日々が大変になってしまった。

 言うなれば、自分との戦いだった。

 

 トラウマになってしまったのか、食事の度に吐き気が込み上げて、一夏にそれを悟られないように、必死に我慢して食事をする。

 

 更に、今まで思い出さないようしていた、俺が誘拐されて強姦された時の記憶が蘇り、夢に出てくるようになる始末。

 ドッと疲れた時は熟睡出来て夢を見たりはしないが、訓練が休み時は眠りが浅くなって、あの時の光景と後悔が夢の中に出現する。

 

 何も感じないと分かってはいても、猛烈に人肌が恋しくなってしまい、一体これまで何回一夏の部屋に忍び込んで一緒に寝たいと思ったか。

 だが、それは絶対にいけない事。

 俺達が兄弟(誤字に非ず)であるのもそうだが、それ以上に、ここで誰かに頼ってしまったら、俺はこれから先も誰かに頼ればなんとかなると思ってしまう。

 今の俺に逃げ道はあってはいけない。

 

 誰かと一緒に過ごす事はあっても、誰かに助けを求めるような真似だけは絶対にしたくない。

 

 それはとても辛く厳しい事だが、友との繋がりが辛うじて俺の心を支えてくれた。

 あ……これも頼っていることになるのか?

 

 そう、あれから簪と話す機会が増えて、気が付けば彼女と一番一緒にいるようになっていた。

 そして、それが切欠となって他の訓練生とも話しすようになり、今では訓練所に来た当初の時のような余所余所しさは無くなり、フレンドリーに接するようになった。

 だが、それは皆の前で『仮面』を被り続けなくてはいけない事と同義であり、いつの間にか偽りの表情が自然と作れるようになっていった。

 友に対する自分の態度に嫌悪感を覚えてしまうがな。

 

 だが、新入りである俺が皆と仲良くしているのを気に入らない連中も少なからずいるようで……

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 ISを使った訓練をするようになってから、俺の訓練所での日程が本格的に決定した。

 

 月・水・金は体力作りや筋トレを始めとした身体能力向上の為の訓練を、火・木はISの訓練をしている。

 

 そして、今日は丁度火曜日。

 ISの訓練の日だ。

 

 簪は別の場所で訓練をしていて、ISスーツに着替えた俺も今から訓練用アリーナに向かおうとしていたのだが……

 

「アンタさ、最近ちょっと調子に乗りすぎじゃない?」

「いくら千冬様の妹だからって、生意気よ」

「代表候補生でもないのに専用機を貰うとか…マジでムカつく」

「はぁ……」

 

 まるで一昔前の少女漫画に出てきた典型的ないじめっ子な連中だな。

 よくこんな事をして恥ずかしくないもんだ。

 

「今から訓練でしょ?」

「まぁな」

「じゃあさ、私達と模擬戦をしようよ」

「なんでそうなる?」

 

 意味不明なんですけど。

 

「アンタに自分の身の程を思い知らせるために決まってるじゃない。一応言っておくけど、私のママは女性権利団体の幹部なの。もしも断ったら……分かるわね?」

「はいはい」

 

 拒否権は無いって訳ね。

 芳美さんになんて言おう…。

 

「アンタは専用機を使ってもいいわ。その代わり、私達は三人でやるから」

「別にいいでしょ? そっちは天下の専用機を使っていいんだから」

「あぁ……」

 

 なんか面倒くさくなってきたな…。

 

「それじゃあ、私達は先に行って準備してるから。逃げたら承知しないわよ」

 

 あ……言いたい事だけ言って行ってしまった。

 

「頭が痛くなる事ばかりだ……」

 

 唯でさえ日々が戦いだって言うのに、こんなイベントなんて誰も望んでないぞ。

 少なくとも俺はな。

 

「おやおや……千夏ちゃんも大変だねぇ~」

「この声は……」

 

 この癇に障る喋り方をするのは、俺が知っている中でも一人しかいない。

 

「や、頑張ってるね」

「大島さん……」

 

 いつものようにスーツを着た大島さんが後ろに立っていた。

 

「どうしてここに?」

「おいおい……仮にも僕は君のマネージャー的存在なんだぜ? 君は気が付いていなかったかもしれないが、こうして訓練所に来て君の訓練風景を何回も見てたんだよ?」

「知らなかった……」

 

 七光りのお坊ちゃまかと思ったら、意外と真面目に仕事をしてたんだな…。

 ちょっと見る目が変わるよ。

 

(ま、本当は君の肢体を見たくて来てたんだけどね)

 

 ……この人の目線、俺の胸や足に向いてないか?

 

「にしても、厄介な連中に目を付けられたね」

「彼女達の事ですか?」

「そうさ。僕等としても、女性権利団体は目の上のたんこぶでね。IS委員会とは水面下で対立してるんだ。俺の親父も向こうの日本支部の支部長とはずっと対立していてたんだよ。どうにかしたいといつも思っていたんだが……」

 

 この様子……珍しく本気で困ってるんだな。

 

「これはチャンスかもしれない」

「チャンス?」

「彼女達は親のコネでここに来た連中だ。僕のような素人から見ても、お世辞にも強いとは言い難い。最悪の場合、彼女達はコネで代表候補生になろうとするかもしれない。そうなったら、日本はいい恥さらしだ」

 

 それはかなり嫌な光景だな。

 簡単に想像出来たぞ。

 

「あの子達をどうにかすれば、ここの訓練所も少しは静かになるんじゃないのかな?」

「そうかもな」

 

 少なくとも、簪にちょっかいを出さなくなるかもな。

 俺が来る前は彼女を標的にしていたようだし。

 理由は知らないけど。

 

「一体何をする気だ?」

「ちょっとね。彼女達には社会的に死んでもらおうと思って」

「えげつない事をサラッと言うなよ」

 

 嫌な予感しかしない。

 

「君は何も考えず、あの子達を倒してくれさえすれば、それでいいよ。そこから先は僕がなんとかするから」

「………やりすぎないでくださいよ」

「大丈夫。これは僕等にとっても君に取っても一石二鳥になるはずだから。じゃ、頑張ってねぇ~」

 

 ニヤニヤとしながら大島さんは手を振りながら行ってしまった。

 

「…………行くか」

 

 あの人の事だから、こっちに不利益な事はしないだろう、と信じたい。

 大島さんと向き合った時、また『あの時』の事を思い出しそうになったが、今だけは忘れるようにしよう。

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 そんな訳で、俺はディナイアルを纏ってアリーナのステージにいる。

 眼前には打鉄を纏った先程の彼女達が。

 

『千夏ちゃんも大変ね……』

「今更です」

『ごめんね……。態度は最悪だけど、あの子達の親の権力は本物だから、どうにかしたくても出来ないのよ……』

「気にしてませんよ」

 

 そこら辺は大島さんがなんとかすると……いや、やめておこう。

 

『千夏……』

「心配するな簪。俺なら大丈夫だ」

『うん。頑張って……』

 

 負けられない理由が出来てしまったな。

 ま、負けるつもりは最初から無いが。

 

「お互いに準備出来たようね」

「ああ」

「言っておくけど、3対1だからって卑怯とか言わないでよ。機体性能はそっちの方が上なんだから」

「分かっている」

 

 数は向こうが上、性能はこっちが上。

 でも……。

 

(不思議と負ける気が全くしない)

 

 自信が付いてきたんだろうか?

 いや、慢心ダメゼッタイだな。

 

『千夏ちゃん』

「はい?」

『遠慮なんてしなくてもいいからね! 今の君の本気をぶつけて、思いっきりぶっ飛ばしちゃいなさい!!』

「は……はぁ……」

 

 どんだけストレス溜まってるんだよ。

 

「じゃあ……リクエストに応えようか」

 

 流石の俺も、簪を始めとした友達に火の粉が降りかかる可能性を無視出来るほど無神経な性格はしていない。

 自分自身はともかく、周りに降りかかる火の粉は全力で払わせて貰おう。

 

(ふふ……いくら専用機とは言え、三人がかりでかかれば楽勝よ。なんたって、相手はまだついこの間初めてISに乗った初心者。負ける方がおかしいわ)

 

 ……とか思ってるんだろうな。

 顔がめっちゃニヤついてる。

 

「早く始めましょうか。お前が地面に這いつくばる姿が目に見えるようだわ」

「あっそ」

 

 本当にそうなるといいな。

 

『では……試合開始!!』

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 千夏とあの子達との模擬戦が始まった。

 私は松川さんと一緒にアリーナの管制室でステージの様子を他の子達と見ている。

 

『それじゃあ、いくわ……』

 

 リーダー格の子が他の二人に命令を下そうとした瞬間だった。

 

「え……?」

 

 一瞬のうちに千夏が三人組のうちの一人の懐に潜り込んでいた。

 専用機であるディナイアルは既に搭載されている特殊システムである『バーニングバーストシステム』を発動させていて、思いっきり振りかぶって相手の眼前まで迫っている拳には蒼い炎が纏われていた。

 

『ブベラッ!?』

 

 千夏の拳が顔面にめり込んで、そのまま派手にふっ飛ばした。

 空気が弾けるような凄い炸裂音と共に壁まで飛んで行き、そのまま壁にぶつかってから停止した。

 ぶつかった壁には大きなひび割れが起きていて、その威力の強大さが伺える。

 

 ピクリとも動かない様子を見るに、殴られた彼女はISのエネルギーが無くなる前に気絶してしまったようだ。

 

「ワ……ワンパン……」

「凄い……」

 

 千夏の実力が日々、驚くべきスピードで向上しているのは知っていたけど、素人に毛が生えた程度で慢心していたとはいえ、シールドエネルギーや絶対防御に守られた状態で一発KOしてしまうなんて…。

 

「いいぞ~! 千夏ちゃん~!! もっとやれ~!!」

 

 ま……松川さん……。

 

『そ……そんな馬鹿な事が!? いや…有り得ない!! ISは絶対防御に守られてるのよ! それが一発殴られた程度で気絶するなんて!!』

 

 現実をもっと見た方がいいよ。

 確かに信じられないかもしれないけど、それは千夏の拳がそれ程のパワーを持っているって言う何よりの証拠なんだから。

 

『こ……こんなの何かの間違いよ! いくら世界最強の妹とは言え、ついこの間まで一般人だった奴にやられる訳ないわ!!』

『そうよ! 選ばれたエリートである私達が負ける筈が無いんだから!!』

 

 まだ言ってる。

 大体、君達の事をそう思っているのは自分達だけだって気付いてないのかな?

 少なくとも、ここにいる皆はアイツ等の事をエリートだなんて一度も思った事は無い。

 

『グダグダ言ってないで、とっととかかって来いよ…金メッキ』

『お前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』

『あ……ちょっと!?』

 

 残った二人の内の一人がキレたのか、馬鹿の一つ覚えのように千夏に突っ込んでいった。

 けど、そんな攻撃が千夏に通用するわけないじゃない。

 

『ほい』

『ぐぶぁっ!?』

 

 実に綺麗なカウンターで、腹部に掌底を叩き込んだ。

 相手はお腹を抱えこんで落ちていき、その場で嘔吐した。

 体が細かく震え続け、そのまま動きを止めて蹲ってしまった。

 

「掌底一つであそこまで苦しむなんて……」

「あれはきっと『気』を叩き込んだんでしょうね」

「気? それって、漫画やアニメとかに出てくるあの『気』ですか?」

「そうよ。信じられないかもしれないけど、実際に気は存在するのよ。目には見えないけどね」

 

 そんなのも使えるんだ……。

 千夏はどこまで強くなるんだろう……。

 

「どう? 貴女の友達は凄いでしょう?更識さん」

「はい……」

 

 私も負けてられないな……。

 千夏とは同じ場所に立っていたいから……。

 

『来ないのか?』

『ひ……ひぃぃっ!?』

 

 完全に千夏に臆している。

 闘う前に心が負けている。

 

『そっちから勝負を挑んだんだ。まさかサレンダーなんてしないよな?』

『あ……ああ……』

 

 千夏がゆっくりと歩いていく。

 ん? ……歩く?

 

「ねぇ……千夏ちゃんの足元…なんか光ってない?」

「そう言えば……なんだろう?」

 

 あれは……もしかして……。

 

「気が付いた?」

「はい。あれはディナイアルに蓄積されたエネルギー……ですね?」

「そう。格闘技を武器にする以上、一番重要なのは足元になる。足腰をしっかりと踏ん張らないと技の威力が大幅に落ちてしまうから。でも、ISは主に空中戦がメインとなる。当然、宙に足場なんて存在しない」

「じゃあ……」

「『足場が無いなら作ればいい』……千夏ちゃんはそう言ったわ」

 

 言いたいことは分かるけど……そんな事、一朝一夕で出来るような事じゃ……。

 

「やっぱり凄いわよ、あの子。勉強に関しては普通よりもちょっと上ぐらいだけど、戦闘センスだけは間違いなく超一流よ。どこで何をすればいいのか、本能的に分かってるって感じ。下手すれば、千冬よりも強くなるかもね……」

 

 元代表候補生の松川さんにここまで言わせるなんて……。

 でも、本人はその事実を理解してないんだろうな…。

 だって、千夏は向上心の塊みたいな女の子だから。

 

『来ないのならば、こっちから行くぞ』

『こ……来ないで! アンタに喧嘩を売ったのは謝るから!!』

 

 ……なんて無様。

 あんな子達に今まで私はちょっかいを出されていたなんて……。

 

『いいや、駄目だね』

『へ……?』

『お前はここで無様に負けろ』

 

 千夏は唯、彼女の目の前まで来て話しただけ。

 だけど、それだけで……。

 

『あぁぁ………』

 

 なんと、涙と鼻水、おまけに口から泡を吹いて落ちてしまった。

 

「あ~あ、可哀想に。千夏ちゃんの全力の殺気をあんな至近距離で受けてたんじゃ、最悪、精神崩壊しちゃうわよ」

 

 よりにもよって、最後は手すら触れずに勝っちゃった……。

 

『し……試合終了! 勝者、織斑千夏!!』

 

 なんともあっけない幕切れだった。

 結果、あの三人は千夏に手も足も出ないどころか、攻撃すらも出来なかった。

 

『はぁ……』

 

 千夏?

 全身装甲で顔が隠れているからよく分からないけど、なんか落ち込んでる?

 

「どうしたんだろう……?」

 

 取り敢えず、千夏の事を出迎えよう。

 丁度、こっちに戻ってくるようだし。

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 なんだろう…この満たされない感じは。

 エリートを自称していたから少しは歯ごたえがあるかと思っていたが、全くもってそんな事は無かった。

 正直言って、次元覇王流を使う価値すらも無かった。

 

 やっぱり、ここで最強なのは間違いなく簪だな。

 だって、他の子達と同じ訓練機でも、別次元の動きをするし。

 確か、一番最初に試しに模擬戦をしてみたら、負けたっけ。

 不思議と悔しくは無かったかな。

 寧ろ、モチベーションが上がった。

 自分にはまだ伸びしろがあると分かったから。

 

「お……おかえり。千夏」

「ああ……ただいま、簪」

 

 そんな事を考えていたら、もうピットについてしまった。

 簪を始めとした面々が俺の事を出迎えてくれた。

 その中には芳美さんもいた。

 

「スカッとしたわ! よくやったわね! 千夏ちゃん!」

「はあ……」

 

 この人もあの三人組にムカついてたのか?

 

 ISを解除して床に降り立つ。

 よく見たら、俺の身体は汗一つかいていない。

 それどころか、全く疲労感を感じていない。

 これは単純に俺の体力が向上した証拠だから嬉しいけど。

 

「これであの子達も少しは懲りるでしょう」

「そうだといいですが……」

 

 それよりも、俺は大島さんが言っていたことが気にかかる。

 本気で何をする気なんだろうか?

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

「くくく……はははははははははは!!!!!」

 

 少し離れた観客席の端っこ。

 大島はそこで高性能のカメラを持って立っていた。

 先程まで、千夏達の試合を録画していたのだ。

 

「まさか、ここまで強くなっているとはね! 親父や委員長の目は間違っていなかったって訳か!」

 

 歪んだ笑顔で高笑いを止めようとしない大島。

 周囲に誰もいないからいいようなものの、もしも誰かがいたら間違いなく不審者確定である。

 

「それにしても実にいい物が撮れた。これを盾に脅せば、あの馬鹿な女どもも少しは大人しくなるだろう…。いや、それだけじゃ物足りないな」

 

 何かを思いついたのか、大島は自分のスマホのアドレス帳を探り出した。

 

「幸いなことに、あのバカ女どもはルックスだけはいいからな。買い手は多いに違いない。いい小遣い稼ぎになるかもな」

 

 どう考えても碌な事じゃないのは分かっていた。

 だが、この男にとっては世間一般の倫理観などどうでもよいのだ。

 重要なのは自分が満足できるかどうか、それだけだった。

 

「一人ぐらいは手元に置いてやってもいいかな。性欲処理人形ぐらいにはなるだろうし。ったく……千夏ちゃんや他の代表候補生のように将来有望な連中ならいざ知らず、コネしかないクソ女は黙って男の上で腰だけ振ってればいいんだよ。お前等に出来る事なんて、精々ガキを孕む事ぐらいしかないんだからさ」

 

 明らかな差別発言だが、大島は気にしない。

 コイツにとって女とは、唯の肉便器に過ぎないのだ。

 

「さて……と。ここからが楽しみだなぁ~」

 

 それから数日後、突如として女性権利団体の日本支部が解体された。

 同時に幹部連中や、その家族などが一斉に行方不明になる事件が起きた。

 勿論、その中には今回千夏と模擬戦をした彼女達も含まれていた。

 

 警察も捜索をしたが、その行方は一向に分からず、暫くして捜索は打ち切られた。

 

 彼女達が一体どうなったのか、それを知る者は少なくとも『表側』には誰もいない。

 そう……『表側』には。

 

 因みに、彼女達が急に来なくなっても千夏達は誰も心配しなかった。

 と言うのも、彼女達は訓練所でも有名な問題児で、誰もが疎ましく感じていたからだ。

 寧ろ、訓練がしやすくなったと言われていた。

 

 千夏自身に至っては、次の日には彼女達の事を完全に忘却していた。

 別に記憶障害がある訳ではなく、千夏があの三人に全く興味を示さなかったから。

 千夏にとっては記憶に留める価値すらも無かったのだ。

 

 こうして時は過ぎていき、千夏達は中学三年生になる。

 

 『始まりの時』まで、あと少し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ねぇ、知ってる?

心が砕けるような絶望は、希望を知ってこそのものなんだって。

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