セラフィムの学園   作:とんこつラーメン

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千夏には千冬と束以外の大人の味方が少ないと思われがちですが、ちゃんと理解者はいます。

今回は、そんな人が登場するかも?







第14話 『否定』と言う名のIS

 大島さんと初めて出会い、千冬姉さんと一夏に事情を話し、そして、俺がいつの間にか史上初のIS委員会代表のIS操縦者に密かに任命されてから数日後。

 意外と俺はいつものような毎日を送っていた。

 この前までのノリからして、また次の日にでも呼び出しが来ると覚悟していたのだが……。

 

「連絡は来たのか? 千夏姉」

「いや、まだだな」

 

 俺は一夏と弾と一緒に教室にて昼食を食べていた。

 因みに、俺が食べているのはサンドイッチ。

 味がしないので、俺的にはスポンジを食っているに等しいが。

 

「連絡? 何の事だ?」

「ちょっとな」

 

 流石に弾に全てを話すわけにはいかない。

 ここは適当に濁しておこう。

 けど、学校側には既に知らせてあるんだろう。

 主に校長や教頭とか。

 

「ふ~ん……。ま、千夏が自分から言わないんなら、深くツッコむのは野暮ってもんだな」

 

 弾のこういうところに、俺は非常に好感が持てる。

 一夏にも少しは見習ってほしいものだ。

 俺が最後のサンドイッチを口に放り込んだ時だった。

 

「「あ」」

 

 俺の携帯に着信が来た。

 掛けてきたのは……。

 

「大島さんか……」

「噂をすれば……だな」

「ああ。少し外す」

 

 俺は廊下に出て、電話に出た。

 

「もしもし?」

『やぁ! 大島だよ! 連絡が遅れて済まなかったね!』

「いえ、別に気にしてないんで」

『ははは! 君は相変わらずだねぇ~』

 

 いや、割と本音なんだけど。

 

『おっと、君と話すとどうも話が脱線してしまう。いけないいけない」

 

 あっそ。

 本気でどうでもいい。

 

『書類の準備とかに手間取ってね。でも、もう大丈夫だよ』

「ならば……」

『今日の放課後に合わせて、君を迎えに行くよ』

「わかりました」

『それじゃ、放課後に会おう』

 

 通話が切れた。

 

「はぁ……」

 

 またあの人に会うのか。

 正直言って、あの男は苦手なんだが。

 俺の中の『何か』が危険だと言っている。

 

 憂鬱な気分になりながら、午後の授業を受けた俺だった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 放課後。

 俺は帰り支度をしながら教室の窓から外を見る。

 

「一夏は今日も部活か?」

「まぁな。弾は?」

「俺は家の手伝い。少しでも小遣いを稼ぎたいしな」

 

 二人共、放課後は予定が入っているか。

 ま、それは俺も同じなんだけどな。

 

「あれ?」

「どうした? 千夏姉」

「いや……あそこ」

 

 学校の校門の前に一台の車が停車していて、その前にスーツを着た一人の女性がいた。

 どう見ても大島さんじゃない。

 

「誰だ?」

「さぁな。だが、こっちを見ているということは、多分、俺関係だろう」

 

 まずは行ってみてからだな。

 

「それじゃあ、俺は行く。二人も頑張れよ」

「お互いにな」

「おう……って、俺は千夏が何をするかを知らねぇんだけど……」

 

 そうだった。

 ま、気にするな。

 

 俺はカバンを持って校門に向かう事にした。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 女性の元まで行くと、彼女の方からこっちに来た。

 近くで見ると、息を飲むほどの美人で、肌の色が白いことから、外国人だと思われる。

 俺、英語って苦手なんだけど大丈夫か?

 

「貴女が千冬の妹の織斑千夏ちゃんね」

「え? なんで姉さんの事を……」

「あ、まだ自己紹介をしてなかったわね」

 

 思いっきり日本語だった。

 助かったけど、どんな人なんだろうか?

 

 コホンと、わざとらしく咳払いをした後に、彼女が自己紹介をしてくれた。

 

「初めまして。私は松川芳美。IS委員会の日本支部支部長の秘書をしていて、今日は貴女の事を迎えに来たって訳」

 

 まさかの日本人だった。

 しかも、美人秘書。

 フィクションだけの存在じゃなかったんだな、美人秘書。

 

「あの……大島さんは?」

「彼は別の仕事があるから、私が代理で来たの」

「別の仕事?」

「そ。彼もああ見えて忙しいから」

 

 そうなのか。

 見た感じはエリートだったしな。

 社会人は大変だ。

 

(本当は、アイツなんかをこんな美少女ちゃんと二人っきりにしたら、どうなるか分からないから、なんとかして私が来たのよね)

 

 今、一瞬だけ凄い表情になったような気がしたけど、気のせいか?

 

「とにかく、まずは行きましょうか」

「分かりました」

 

 俺は彼女の車の助手席に乗って、車は発進した。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 車内。

 俺は窓の外を見ながら、ボーっとしていた。

 

「にしても、貴女も大変ね。Sランクなんて結果が出たせいで、こんな事になるなんて」

「今更気にしても仕方ないですよ。現実逃避しても無意味ですし」

「うふふ……やっぱり千冬の妹ね。そんな所がそっくりだわ」

 

 そうか?

 よく言われるが、全然自覚は無い。

 

「あの、さっき聞きそびれた事なんですけど、姉さんとは知り合いなんですか?」

「知り合い……って言うよりは、ライバルだったかな?」

「ライバル?」

 

 それって、雷を張ることか?

 それとも、フランス風に威張る事?

 

(雷を張って『(らい)()る』。フランス風に威張って『La()・イバル』。なんちゃって)

 

 ……ちょっとしたお茶目だ。

 軽く聞き流してくれ。

 

「そう。もう引退しちゃったけど、私は日本の代表候補生だったのよ」

「成る程……」

 

 それなら千冬姉さんと知り合いでも不思議じゃない。

 互いに切磋琢磨し合った仲…と言う訳なんだな。

 

「一応、貴女のコーチ的な事もする予定よ」

「コーチ……ですか?」

「うん。本意であれ不本意であれ、貴女は委員会の代表に選ばれてしまった。ならばもう、やる事は一つしかない」

「……ですね」

 

 今から、とことんまで自分を鍛えて、代表に相応しい人間になる。

 

 考えてみれば、これはいい機会かもしれない。

 前々から体を鍛えたいとは思っていたが、どうも機会や時間に恵まれなかった。

 いや、これは言い訳だな。

 己の怠慢が招いた結果がこれだ。

 ならば、これからは自分に対する甘えは捨てよう。

 『織斑千冬の妹』に相応しい操縦者にならなくては。

 

 心の中で決意を新たにしながら、車は一路、IS委員会日本支部へと向かっていった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 日本支部は想像以上に大きな建物だった。

 簡単に言うと、超でっかいビル。

 軽く見ても、50階くらいはあると思う。

 

 到着してから、車は地下の駐車場に止めて、俺は芳美さん(名字で呼ぼうとしたら、名前でいいって言われた)と一緒に、建物の中へと入っていった。

 

「まずは支部長室に向かうわよ」

「はい」

 

 案の定、建物内は凄く綺麗で、どこもかしこも豪華絢爛の一言に尽きた。

 流石はIS委員会の日本支部。

 明らかに細かい所まで金を使いまくっているのが分かる。

 

 俺達はエレベーターで最上階にあると言う支部長室に向かう。

 因みに、このエレベーターも凄く豪華で、床に真っ赤な絨毯が敷かれていた。

 生まれて初めてエレベーターに乗るのに躊躇してしまった。

 

 その途中、丁度半分の25階で一度エレベーターが止まった。

 誰かが乗ってくるんだろう。

 扉が開くと、そこにいたのは……。

 

「おや?千夏ちゃん?」

 

 書類の束を持った大島さんだった。

 

「げ」

「出会って早々にその反応は無いんじゃない? 芳美さん」

「名前で呼ばないで」

「酷いなぁ~」

 

 明らかに険悪なムード。

 滅茶苦茶嫌われてるじゃん。

 そんな空気なんて全く気にせずに大島さんはエレベーターに乗ってきた。

 

「千夏ちゃん、こっちに来て」

「え?」

 

 芳美さんに抱き寄せられるように腕を引かれたた。

 

「あんな奴の傍にいたら、貴女もイカ臭くなっちゃうわよ」

「それは流石に傷つく」

「事実じゃない」

 

 え? もしかして大島さんってセクハラ大魔神?

 そのままの状態で、最上階まで上がっていった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 目的の階について芳美さんについていくと、なんでか大島さんも一緒に来た。

 

「なんで一緒に来るのよ」

「二人は親父に会いに行くんだろ? 俺も用事があるんだよ」

 

 そう言って彼は手に持った書類をピラピラと見せびらかす。

 

「ちっ……」

 

 明らかに聞こえるように舌打ちをしたよ…この人。

 

 そのまま歩いていくと、眼前に見ただけで分かる程の高級な扉が見えた。

 あそこが支部長室か?

 

 扉の前まで行くと、芳美さんがノックをする。

 

「支部長。織斑千夏さんをお連れしました」

「分かった。入れ」

「失礼します」

 

 芳美さんが扉を開けて、それに伴って俺と大島さんも一緒に入る。

 

「なんだ、博之も一緒だったのか」

「まぁな」

 

 この感じ……本当に親子だったんだな。

 

 目の前にいる支部長は凄く太っていて、顔中から汗を垂れ流している。

 まるで絵に描いたかのようなお偉いさんだ。

 漫画やアニメから飛び出してきたかのような容姿だ。

 

「少し待っていろ。まずはこっちの用事が先だ」

「りょ~かい」

 

 公私を使い分けるって事を知らないんだろうか?

 敬語ぐらいは使ったらどうだ?

 

「君が織斑千夏さんかね?」

「は……はい」

 

 まるで舐め回すかのように俺を見る支部長。

 こういう所は親子そっくりだな。

 

「私が支部長の大島だ。さっきの会話で分かったと思うが、そこにいる博之は私の息子だ」

「はぁ……」

 

 顔や体はともかく、その性格は凄くそっくりだよ。

 

「もう聞いているとは思うが、君には史上初のIS委員会代表のIS操縦者になってもらいたい」

「はい」

 

 もうここまで来たら、冗談抜きで引き返せない。

 突き進むのみだ。

 

「いい返事だ。君ならばきっと、あの織斑千冬以上の操縦者になってくれるに違いない」

「過分な褒め言葉、ありがとうございます。私自身も姉を超えるような操縦者になれるように日々、努力していきたい所存です」

「そうか、そうか。頑張ってくれたまえよ」

「はい」

 

 一応、こういった場なので、一人称を『私』にしてみた。

 我ながら違和感が半端ない。

 

「松川君。これからはウチのバカ息子と一緒に彼女を支えてくれよ」

「了解です」

「君には主に、千夏君のISの操縦などを指導して欲しい」

「それは分かりましたが、訓練は何処ですれば?」

「それならば問題無い。既に代表候補生達が使用している訓練施設の使用許可を取っている」

「分かりました。では、これから千夏ちゃんは日本の代表候補生達と一緒に訓練をする……と言う事でよろしいのでしょうか?」

「ああ。頼んだぞ」

「はい」

 

 なんか、サラッととんでもない事を言わなかったか?

 日本の代表候補生達と一緒に訓練する? マジで?

 

「では、これで失礼します。まだやる事があるので」

「そうか」

「えっと……失礼します」

 

 俺は自分に出来る精一杯のお辞儀をしてから、芳美さんと一緒に支部長室を後にした。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 千夏と芳美が出ていってから、大島は支部長と向き合っていた。

 

「……で? どうだった?俺の千夏ちゃんは」

「ふふふ……写真で見るよりも遥かに美しかったな。あれならば、問題あるまい」

「だろ?」

「ところで博之。もう彼女の『味見』はしたのか?」

「いや、まだだ。もうちょっと彼女から信頼を勝ち足らないと。でも、なんで芳美さんに訓練を任せたんだよ? そんなの、適当に訓練所にいる連中でいいだろ?」

「私も最初はそれでいいと思った。だがな、IS委員会全体を彼女に信用させるためには、こちらからも積極的に動かなくてはいけない。お前個人の信頼だけでは駄目なのだ」

「それもそっか」

「それに、松川君は元代表候補生だ。彼女ならば千夏君をいい具合に鍛えてくれるだろう」

「じゃあ、俺はどうなるんだよ?」

「お前はここで彼女のバックアップをすればいい。なぁに、会う機会なんぞ幾らでも作れる。だから心配するな」

 

妖しく笑う支部長の顔は、傍から見ても醜いの一言に尽きた。

 

「それで? お前は何の用で来た? まさか、こんな話をする為ではあるまい?」

「俺はちゃんとした仕事の話だよ。ほら、書類」

「おお、そうか。それどれ……」

 

 そこからは、二人は真面目な口調でビジネスの話をしだした。

 最低の性格と趣味を持っている親子も、仕事だけは真面目にするのだった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 支部長室を出た俺達は、エレベーターで下の階に移動して、客室のような部屋で書類を書かされていた。

 あまりよく分からないので、芳美さんに色々と教えられながら記入していった。

 

「これでいいですか?」

「うん、大丈夫よ。貴女って字が上手なのね」

「そうですか?」

 

 普通だと思うがな。

 

「他の書類とかは既に千冬の元に送っているから、貴女が書く書類はこれで終わりね」

 

 やっと帰れるか。

 早く家に帰ってゆっくりとしたい。

 

「じゃあ、次は訓練所に行こうか?」

「訓練所?」

 

 またどこかに行くのか。

 

「さっきの話にあったように、日本の代表候補生達が訓練している施設よ。これからは、基本的に訓練所に行くことになるから、覚えておいてね」

「分かりました」

 

 ここに来るのは今日だけなのか。

 

「何かある時以外は訓練所で訓練する事になるから」

「訓練……」

 

 一体どんな事をするんだろうか。

 少しだけ興味がある。

 

「まずはそこで、貴女の体のサイズを測ってISスーツを造るから」

「ISスーツ?」

 

 確か……ISの操縦をする際に着るスーツの事で、なんでかスク水のようなデザインをしてるんだよな。

 理由は不明だけど。

 

「初めての委員会代表なのに市販のスーツじゃ格好がつかないでしょ? だから、貴方専用のISスーツを特注するの」

「特注……なんて豪華な響き……」

 

 少なくとも、今までの俺に人生には全く縁が無かった言葉だ。

 

「そして、そこには貴女のこれからの相棒になる専用機もあるのよ」

 

 専用機……俺だけのIS……。

 

「あまり遅くなって君の弟君を心配させちゃいけないから、早速行きましょうか?」

「そうですね」

 

 そんな訳で、俺達は日本支部を後にして、そこから少し離れた代表候補生達がいる訓練所に向かった。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 もう陽が沈みかけているが、俺達は訓練所まで来た。

 

 中は少し豪華なトレーニング施設みたいで、派手ではないが、壁や床や設置してあるベンチなどが綺麗にしてあった。

 

「静かですね」

「もう遅いしね。訓練生の子達はもう帰ったんでしょ」

 

 遅くまではしないのな。

 でも、それもそっか。

 ここで訓練しているのは、俺と同年代の少女達なのだから。

 

 俺が周囲をキョロキョロとしていると、芳美さんに一人のトレーナーらしき女性が話しかけてきた。

 

「あれ? 芳美さんじゃないですか。こんな時間にどうしたんですか?」

「久し振り。彼女にここを見せてあげようと思って」

 

 そう言って、芳美さんは俺を前に出した。

 

「その子って……」

「そう。彼女が噂の子よ」

「史上初の委員会代表の……。確か、千冬さんの妹さんだって」

「その通り。よく見ると目元とか千冬にそっくりよ」

 

 そうなのか?

 初めて言われた。

 

「まだ大丈夫? この子のサイズとかを調べたいんだけど」

「ISスーツの為ですね。分かりました。まだ鍵は閉めてませんから、適当な更衣室を使っていいですよ」

「ありがとう」

「ありがとうございます」

 

 芳美さん先導の元、俺は近くにあった更衣室に入った。

 

「えっと~……メジャーメジャー……あった」

 

 芳美さんがそこら辺からメジャーを持って来た。

 

「メジャーで測るんですか?」

「意外?」

「はい。なんかの装置を使うと思ってました」

「こう言うのって、アナログな方が正確に測れたりするのよ」

「成る程……なのか?」

「そうよ。ほら、服を脱いで」

「分かりました」

 

 普通ならば、ここで多少は羞恥心が出たりするんだろうが、俺のような人格破綻者にそんな上等なものは期待しない方がいい。

 実際、前に一夏が間違えて俺の着替えを覗いた時があったが、何にも思わなかったしな。

 俺は下着姿になって芳美さんの前に立った。

 

「……自分で言っといてなんだけど、少しは羞恥心を持った方がいいわよ?」

「努力します」

「………ま、いいわ。じゃあ測るわよ」

 

 芳美さんの持つメジャーが俺の身体を巻いていく。

 

「トップは……85。本当に中学生?」

「失敬な。立派な中学生です」

 

 男だけど。

 

「そしてアンダーは……65。やるわね……」

「どうも」

 

 自分の胸のサイズとか気にした事ないから、褒められても何にも感じない。

 

 それからも、ヒップや首の周りなんかを調べて終わった。

 

「着替えたら、今度は格納庫に行きましょ。そこに貴女の相棒が待ってるわ」

「わかりました」

 

 俺の専用機……か。

 どんな機体なんだろうか?

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 格納庫につき、芳美さんが明かりをつけると、沢山のハンガーに前に雑誌で見たISが鎮座していた。

 

「あそこにあるのは、日本製の第2世代型ISの『打鉄』。ここの訓練生達が普段使用している物ね。私や千冬も使った経験があるわ」

「へぇ~……」

 

 本物のISなんて初めて見た。

 ちょっとカッコいいな。

 

「で、貴女の機体はこっち」

「あ……はい」

 

 芳美さんがどんどんと歩いていく。

 慌ててそれについていく。

 暫く歩くと、端の方に全身装甲の漆黒のISが立っていた。

 

 関節部は銀色に染まり、蛇腹のようになっていて、爪先や膝パーツ、肩パーツの回りなんかが暗い金色になっており、肩部や膝部の一部が灰色のクリアパーツになっている。

 

「これが……?」

「ええ。この機体こそが、貴女の専用機。その名も『ディナイアル』よ」

「ディナイアル……」

 

 確か、英語で『否定』って意味だったか?

 全体的に細身のISだな。

 他の機体とは全くデザインが違う。

 

「この機体はね、ドイツから送られてきたんだって」

「ドイツから?」

「お詫びの証らしいけど、詳しいことは教えられてないのよね」

 

 詫びって…もしかして、俺や一夏が誘拐されたことに対する事か?

 謝罪をするのは分かるが、それがISを送る事って。

 国家間のやり取りって凄いな。

 

「詳しい機体データは今度、整備員にでも聞けばいいわ」

「はい」

 

 見上げてみると、なんだかディナイアルに見下ろされている気がした。

 

「そうだ。ちょっと触ってみる?」

「いいんですか?」

「搭乗さえしなければ大丈夫よ」

「なら……」

 

 恐る恐る近づいて、そっとディナイアルの装甲に触れてみる。

 すると……。

 

「!!?」

 

 いきなり、俺の頭の中に様々な情報が流れてきた。

 

 それは主に、色んな格闘技についての事だった。

 型や特徴、その他にも沢山。

 そして、最後に流れてきた情報が……。

 

「次元……覇王流……?」

 

 聞いたことも無い格闘技に関する情報が頭の中に流れた時、俺の意識はいきなり遠くなった。

 

「ち……千夏ちゃん!? 一体どうしたの!? ねぇっ!?」

 

 芳美さんの声を聞きながら、俺の意識は暗闇に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そんな訳で、千夏の専用機はディナイアルガンダム(黒・金カラー)でした。

本来はディナイアルが一番最後なんですが、今回は一番最初になってもらいました。

じゃあ、パワーアップしたら当然……?

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