ソードアートBro's   作:名無しの権左衛門

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19124文字です。



6:鏡の世界(前編)

6:鏡の世界(前編)

 

 48層。

実に美しい花びらの絨毯。

満開だらけで蕾どころか、散っている花すらない。

 

 転移門から転移してきたキリト達。

その光景に、息をのむ彼等。

そんな彼らに、聲をかける人がいる。

 

「おーい、キリの字!」

「お、クラインか!」

 

 そう、風林火山ギルドマスタークラインである。

お互いに肩を組んで、再会を喜ぶ。

既に皆とは邂逅済みである。

 

しかしそれはプレイヤー限定である。

だからこそキリトは、風林火山と共に居る彼等に気づいた。

 

「クライン、あの英雄達は?」

「応、早速気づきやがったな!さっすがだぜ!」

 

 そこから紹介の流れになる。

 

「俺は孫策!呉の武将ってことで宜しくだずぇ!」

「私は陸遜です。呉後期の軍師です。皆さん、宜しくお願いします」

「私[わたくし]の名は荀彧と申します。以後、お見知りおきを」

「俺は周泰」

「我が名は曹仁!タンクとして、壁となる所存!宜しくお頼み申す」

 

 呉と魏の猛将が揃い踏みとなる。

しかも真田幸村を合わせて6人の英雄だ。

此れが湧かない筈がない。

 

しかしこの時代で彼等を知って居るのは、黒の英傑連盟団の中でキリト位だ。

何せ皆この仮想現実に精いっぱいで、英雄の知識などさっぱりだからだ。

一応その層毎にある書物で、その英雄の存在を知る事ができる。

だから無知という事はありえない筈だ。

 

 まあささっと紹介を終わらせて、この世界を探索する。

キリトはシリカと共に行動する。

 

途中で休憩を挟んでいると、ナニか黒いものが動いているのを発見する。

キリトは直感でそれがテーマフラグに関係すると思い、そのナニカを追いかけ始める。

シリカもその存在を追いかける。

 

 追いかけていくと、一つの大木の根元に来る。

更にその大木の根元に誰かが入っていく。

それをキリト達が追う。

 

すると、大木に少し登ったところに洞[うろ]があり、そこに入ったと思われる。

それくらい大きな空洞だ。

 

「シリカ、行くぞ」

「はい、キリトさん」

 

 洞に入ろうとすると、足元を滑らせてその中へ入ることになった。

シリカは転移結晶を使おうとするが、結晶無効化エリアのようで戻れなかった。

そのままどこかに転がり込む。

 

「くっ……つぅ……」

「いたたぁ……」

 

 二人が頭を押さえて起き上がった先には、虹がかかった不思議な場所。

沢山の台座があるがそこには何もなく、全ての中心である台座に大きな鏡があった。

鏡には装飾が飾られていながらも、何かおかしいと思わせる様相だ。

 

そんなとき、彼等が追っていた黒い何かを目視する。

その者は小柄で、球体に足が生えた二等身と呼ばれる存在だ。

其れはキリト達を見て、短い手で手招きする。

その存在は走り出し、鏡の中へ入り込む。

 

キリトとシリカは長い階段を一気に飛び越えて、鏡の前までくる。

 

鏡の中には世界があるようで、中の住人が動いている。

更に波打つように波紋が広がっている。

指で鏡に触れると、更に波紋が広がる。

 

「キリトさん。一度アスナさん達に連絡を……?」

「ああ、そうだ……な……?」

 

 二人がお互いに向き合って話している時、何者かに押された。

二人は突然の事に身体を動かせず、そのまま鏡の世界へ投げ込まれた。

 

とぷん。

 

 鏡が彼等を呑みこんだ。

呑んだと確認したのか、押し込んだその者は己の得物で鏡を8に切り分ける。

切り分けた鏡の欠片は、どこかへ飛んでいった。

 

「見つけたぞ、私の陰」

 

 瓜二つだが、色があるその者。

しかし色がないものは、その色あるものから逃げる。

そして鏡があった台座の隣に、光線を放つ。

その光線は台座に光を灯らせ、その場所に乗った者を転移させた。

 

「待て!」

 

 色ある彼の者も同様に、その人物を追いかけて行った。

 

 

 

「ぐ……今度は一体何なんだ……?」

「あぅ……」

 

 二人は目を覚まし、周囲を確認した。

 

此処は先ほどと同じように、中央階段を上った先に大きな鏡があったと思われる台座がある。

そして周辺に小規模な台座が複数ある。

 

 しかし二人はそれだけで同じ世界だと思わなかった。

理由の一つはこの場所だ。

非常に禍々しく、先ほどの光と虹に囲まれた幻想的な空間が恋しくなるほどだ。

この場所から逃げたいと思うが、転移結晶を封じられている。

 

 キリトは立ち上がり、地べたに座っているシリカの手を握って立ち上がらせる。

そして周囲を見て、台座の一部を見る。

そこだけ何故か光っていて、紫電を周囲に散らしている。

どう見ても罠だが、進まないといけない。

現在、結晶もメールもできない状態だ。

進まなければ前に進めない。

 

二人と一匹は、その台座に乗り世界の旅へ出た。

 

 

 

 

 一方その頃アスナとアーロイは、皆をとある大樹の所に集合させた。

何でも一日経過して、シリカとキリトからの言葉も存在もないのだ。

アスナは駆け落ちしたんじゃ?と訝しむが、アーロイは呆れたようにその可能性を無しにする。

 

「アスナ……年上としての余裕を持つんだ」

「うぇ!?」

「とにかく、皆を招集しよう。このフォーカスが示すこの足跡と向かう先は、

どう考えても非常にまずい冒険の始まりの匂いしかしない」

 

 アーロイは冒険心をくすぐるのか、非常に良い笑顔でアスナに言う。

アスナはその顔で冷静になったのか、メールを駆使して皆に救援を請うた。

集まる二つのギルド員。

 

「えー、シリカとキリト君が行方不明です。

 二人はこの木の洞に入ったと思われます。

 しかし彼らが連絡も何もないという事は、それができない状況にあります。

 私からも今まで知り合ったギルドの方々に、応援を送ってもらうメールを送信してあります。

 

 ですので、潜りましょう。私のキリト君を取り戻すために」

「結局私欲か」

 

アーロイが溜息をつくが、うら若き恋する乙女だと知っているのでしょうがないとも思う。

 

「よし、新たな冒険の臭いがするぜ!」

「ピッピカチュウ!」

「素材は俺のもんだ!」

「新たなかわいこちゃんゲットの旅だぜ!」

「新たな熱い奴と出会うチャンスだずぇ!」

 

「あんたら、暑苦しいったらないっての」

 

 いわずもがな、よくわかる連中にリズが突っ込む。

しかしこの先には、マスターメイサー目前の鍛冶師も垂涎[スイエン]なインゴットもある。

つまりエギルのいう事は、商売人としても鍛冶師として恰好の餌だという事を示している。

何せ、ここは裏ボスの為の裏ダンジョンだ。

しかも広大な感じと見る。

 

「よし、黒の英傑連盟団副団長アスナが命じます。

 キリト君を救いに行くわよ!ついでに、今後取れないかもしれないアイテムもとっちゃえ!」

「「「おおおおお!!!」」」

「よっしゃ、風林火山もいくぞ!」

「「「オオオオオ!!!」」」

 

 そのまま木の洞に突撃する皆。

そのまま錐もみで落ちていく。

となりのトトロのめいちゃんや探検隊のピカチュウたちもびっくりなその洞の構造に目を回す。

 

皆気づくと、虹と光の世界に居た。

既に起きて探索している無双組の中の軍師二人は、台座に目を付けていた。

 

「ここの台座だけ光っているんですよね」

「はい。先程曹仁殿を先行させたところ、この奥には広大な土地が広がっているとのことです」

「つまり、キリト君はこの台座を伝ってどこかへ行ったわけね」

「早速乗り込むずぇ!」

「新たなアイテム頂きぃ!」

 

 アスナの指示を待たずして、エギルと孫策が突撃していった。

護衛の為に曹仁と風林火山が続く。

周泰だけはこの場所で、キリトを待つと言って聞かない。

 

「其れじゃ皆、手分けしていきましょ」

「じゃ、行きますか。行くわよ、月英」

「え、孔明様と……」

「趙雲と一緒に行くわよ。ったく、熱くてこっちが妬けるわ」

 

 月英と諸葛亮の夫婦仲は非常に良好なので、彼等を組として趙雲と共に行く。

アーロイはアスナと共に行く。

サトシはポケモンを二体出して、合計三体で周辺探索を行う事とする。

 

「コウガ!」

「ピッカ!」

「グルォォオオオ!」

 

 ゲッコウガ・ピカチュウ・リザードンの組み合わせで、水中・空中・地上を探索していく。

 

 

 

 さて、アスナ達がキリトを探索している最中、キリトとシリカは城壁をさまよっていた。

先ほどまで禍々しい雰囲気の場所で、現実感が欠如して居ながらもそこに自身がいるという不思議な感覚に陥っていた。

正に夢のような感覚。

 

台座や鏡に乗ったり入ったり。

これを繰り返していくことで、徐々に景色に現実感が現れ始めた。

そしてその現実感が出始めたところが、城壁の上だったのである。

 

 城壁の上は強い風が吹いており、細い通路が張り巡らされている。

敵は居ない。

なのに何者かに見られているような錯覚を起こす。

 

シリカも感じ取っているようで、彼女はキリトの方を向く。

身長はキリトの方が高いので、彼を見上げるようになる。

キリトは彼女の視線を感じて、彼女の方へ向くが人差し指を口の前に出す。

それは沈黙の意味。

 

無音に次ぐ無音。

風を切る音が周囲に響くだけ。

風景は夕暮れのようで、そこから一向に夜にならない。

 

二人は周囲を警戒していないように見せかけながらも、厳重警戒している。

幸いピナもいる。

何かに気づけは、真っ先に反応するだろう。

 

 その時だった。

いきなりピナが『龍の波導』を放ったのだ。

放った先は、城の上の方。

本城の城壁が崩れ落ちていく。

しかしその見ている者を撃墜することは叶わなかった。

 

 しばらく歩いていくと、丘の上に出る。

丘の上は荒野になっていて、植物が少ししか生えていない。

彼等は歩く。

 

そして、遂にその時が来た。

 

彼等を付けていたその者は、一気にシリカの背中に向かっていった。

 

「!」

「え……?」

 

 キリトは刹那の殺気を感じとり、シリカを押し飛ばす。

しかしその勢いが強すぎて、シリカがいたその空間にキリトの身が置かれることになる。

シリカを獲物として定めていた存在は、キリトを切りつけてしまう。

 

「ぐっ……!」

「キリトさん!」

 

 シリカは突き飛ばされながらも、空中で態勢を整え着地する。

しかしキリトがその者に切られ、涙目となって彼の名を叫ぶ。

斬られた瞬間、キリトは痛覚が変に遮断され違和感を覚えながらも、襲い掛かってきた存在へ刃を振るう。

だがその者は容易にガードし、もう一度キリトを斬る。

 

「っ!」

 

 その瞬間、キリトはその場に膝をついてしまう。

 

「な……にを……した」

「イタダイタ」

 

 その者はキリトの横を通り過ぎる。

シリカの方を狙っているわけではないと目線を向けてわかる。

しかしシリカは口を手で覆って、何かの衝撃で動けていない。

あの創造神達を従える彼女とは思えないその衝撃の強さ。

 

 キリトは何が起こっているのかわからないので、後ろを振り向く。

額に汗を掻くほどの違和感を身に刻まれている最中、その目で見たもの。

 

それは、もう一人の真っ黒なキリトがそこに居て、その者が彼の背中を割きナニカがその中に入った。

 

あまりの衝撃に、二人は動きだせない。

 

 

もう一人のキリトは、びくんと肉体を振るわせると気持ち悪い立ち上がり方をする。

 

「一頭身デハナイ。良イ体ダ。我ガ世界ヲ再度統一スル時ハ近イ」

 

もう一人の真っ黒なキリトは、目を見開き赤い瞳を見せる。

彼は片言でそういい、どこかへ飛び去る。

そんな光景に驚愕しているとき、その者が着ていた其れが動き出した。

 

 いつの間にか違和感が消え去っている事に気づく。

だが気づくのが遅すぎた。

キリトはその者の突撃を受ける。

 

「くっ!このっ!」

 

 胸に刺さる筈の剣を脇に受け、その者の力と拮抗する。

その間にシリカのピナが動き出して、その者を神速で弾き飛ばした。

その者はマントと思っていたものを羽として広げる。

広げたら羽ばたいて、安定した着地を行いキリト達を睨み付ける。

 

 しばらくの間にらみ合いが続く。

そんな時、聲が聞こえた。

 

「そいつを倒してくれ!」

 

その一言は、目の前の真っ黒なその者を動揺させるのに十分だった。

更に攻撃も可能な程、十分な動揺の仕方だ。

おかげで、キリトは一撃でその者を葬ることができた。

 

「っし、汚名返上!」

「キリトさん、かっこいいです!」

 

 ブレードを振るって、血を振るい落とすような行動をとる。

真っ黒なそのものはポリゴンとなって、その場から消える。

しかしポリゴンは全く消えず、そのまま風に逆らって彼の者の所へ行く。

其処には真っ白で、あの真っ黒な者と瓜二つ。

 

そして真っ白だった彼は、徐々に己の本来の色を取り戻していった。

 

 

 

 さて、キリトとシリカ・ピナは、彼――メタナイト――とその場で駄弁る。

 

 

「つまり?」

「私も驚いた。いきなり後ろから斬られるとはな」

「いや、そこじゃなくてですね」

「まあ、道すがら説明しよう」

 

 

 仮面を被りその奥から黄色い瞳を覗かせる群青色の騎士。

実に一頭身で可愛げがあるが、言葉から渋みが増すばかりだ。

 

 メタナイトはこの世界に降りてきて一週間だそうだ。

そこで何者かに狙われ、気が付いた時には真っ白。

そして探し出したのが、真っ黒な自分。

 

「俺もなんか、抜けた感じがするんだけど、やばい?」

「ああ、最高にまずい。君たちはテーマフラグ英雄という言葉を知っているか?」

「知っているも何も、俺達はそのためにここに来たようなもんさ。

 いや、でも……」

「追ってきた方とはちがいますよね」

「ああ」

 

 シリカとキリトが追ってきたのは、もっと不定形だった。

その事を話したが、見当がつかないとのこと。

さて話を再開しよう。

 

 

 メタナイトの話だと、此処は数多の英雄がいて更に数多の敵が居る場所だというものだ。

しかもフラグは立っているとのこと。

だがそのフラグは全く感じられない。

 

「俺達は仲間と共にここに来ただけで、誰にも会っていないんだけどな」

「キリトにシリカ。君たちは何か勘違いしてないか?」

「「へ?」」

 

 

 

 

「いつ、テーマフラグ解放が自分たちの仲間となるであろう、善良なキャラだと思っている?」

「「!?」」

 

 この情報は48層で初めて聞いた事だった。

つまりこれは、ダークヒーローだったり英雄ではない敵だったりするものが勝手に思う事で、ランダムに発生していることになる。

 

 

 

「そして、解放に必要なキャラはたった一人という限定され、かつ確率の低い方法に確 定されていると断言できるんだ?」

 

 ぐうの音もでない。

今までの47層は、たった一人のテーマフラグ英雄を従えたプレイヤーによって、表裏共にクリアしてきた。

無論全てではないが。

 

 この発言はメタナイトによるテーマフラグ解放の影響で、

知識等がアップロードされた結果だろう。

故にこの発言は信用できる。

だからこそ、この後の発言は度肝を抜いた。

 

「今回のテーマフラグ解放は、ダークマター族が世界侵略を目論んだ事で生まれた。

 その中で私の陰を使ったそいつらは、誰にも計画を邪魔されないがため鏡を均等に  割った。

 この後回収しやすいようにな。

 

 ダークマター族は、他者の感情を利用したり他人の肉体に憑依することで、自分の脆 弱さを補っている。

 だから今回は、非常に辛い戦いになるだろう。

 例のナイトメアも復活したのだ、魔獣という名のレプリカと本物が戦闘する日も遠く はないだろう」

 

 レプリカとは他者の影を抜き、その影を元に戦闘能力等をコピーしたものをダークマターに転写させ、自我を確立させながら本物を確実に殺すという殺戮マシーンの事だ。

 

 

「あの、それで……キリトさんが真っ白になってしまいましたが、

 何か問題はありますか?」

「抜けたのは影でありレプリカに使われるという意味でまずいが、

 これも非常にまずい。

 簡単に言うと、この世界。木の洞から出ると、勝手に死ぬ」

「はあ!?」

「お、落ち着け若者よ」

「此れが落ち着けられるか!」

「大丈夫だ、おちつくんだ。基本的に洞から出られるのは、ダークマター族が全ての光 の世界の守護者を撃破したときだ。

 それか彼等を全部ぶっつぶしたときだ」

「なるほどね……」

 

 暴れて疲れたのか、肩を上下させているキリト。

シリカやピナも、彼を心配するが今は行動を起こすしかない。

 

「そういえば、光の世界の守護者ってなんですか?」

「ああ、それは……」

 

 

 

 

 この裏ダンジョンは、広大な大迷宮になっている。

多くのテーマフラグ解放英雄が跋扈しながら、敵もテーマフラグ解放の役を担っている。

この事が原因で、敵味方の判断を付ける為光と闇の世界を別々にしたのだ。

もしも光の世界側が、テーマフラグ解放のフラグを踏むと簡単になるが逆は修羅と化す。

 

 

 だがどちらがテーマフラグを踏もうが、鏡の欠片を集めなければ光と影のお互いのボスの所へ行けない。

実際どっちもボコればクリアになる。

 

「つまり、フルボッコにしろと?」

「そういうことだ。また、光の守護者を倒せば、光の鏡の欠片を入手できる。

 そして影の守護者を倒せば、影の鏡の欠片の回収……そして、残ったボスへの道が開け る」

 

 ご親切にも、迷い込まないようになっているとのことだ。

更に困難はまだあるようだが、大迷宮をクリアしていけばどうにでもなるとのこと。

 

 

「そうなんですか、ありがとうございます」

「ああ」

「で、この先が最初のボス部屋か?」

「そうだ。ダークマター族は鏡の奥だから、安心して狩れるだろう?」

 

 

 キリトとシリカはメタナイトと共に、城壁の上を通って元の陰の世界へ戻った。

そこから歩いていける最初の扉に来る。

その扉の前で会話を終わらせる。

 

「そんじゃ、行こうか」

「はい、キリトさん」

「私も行こう」

 

 

 三人がこの空間に入った瞬間、足場が動き出す。

足場は浮き上がり、徐々に室内と思われるこの場所に光が差し込む。

 

すると彼等が立っている場所は、円形の足場であった。

球体ではない。

そして出てくるのは、赤・青・緑の物体。

 

 物体を見ると普通に名前が出てくる。

 

幾何学的ボスは、『ピクス』という。

倒し方は同じ色の弾丸を中てる事。

しかしどうやって中てるかわからない。

 

そこでメタナイトがやることと同じことをする。

 

その方法は……。

 

 

 まず対象を斬る。

すると星型の物体になるので、こいつを剣でもいいので斬る。

そしたらこの物体が放射状に飛んでいく。

斬ると星型弾頭になるので、これを利用すればいい。

 

 これを何回も繰り返すとピクスを撃破することができた。

そして出てきた影の鏡の欠片が出現したと思ったら消えた。

これでクリアである。

 

「というわけだ」

「ありがとうございます、メタナイトさん」

「役に立てたようだな」

 

「はい。皆さんの役に立てました」

 

「は?」

 

 シリカの意味深な雰囲気に気圧されるキリト。

するとやぶれた世界に通じる穴が、シリカのイヤリング付近にできたいた。

つまり……。

 

 

「なるほど、そういうわけなんだな」

「ギラティナがサトシのいう事を聞く良い子で良かったわ」

 

 穴の奥から聞こえてくるのは、サトシとアスナの聲。

どのような経緯で知ることができたのか。

別にどう云う訳でもない。

 

何せアスナは別行動をしようとしていたサトシを引っ張って、

そのまま広大なダンジョンを旅していただけなのだから。

 

 その途中にサトシの目の前にダム穴ができて、そこからギラティナが顔を出した。

そしてサトシのポケモン語読解力を通じて、アスナがこのやぶれた世界を通じて

シリカ達の方にダム穴を出現させ話を聴いていたというわけだ。

ダム穴出現座標は、シリカのイヤリング付近だ。

 

後はシリカに小声で情報を伝えて、相互通信にした。

 

 それと英雄達の働きにより、同じ鏡の領域内だとメールが可能になったことを知る。

キリトはシリカを抱き寄せ、聲がよく聞こえる様にする。

シリカは顔を真っ赤にしているが、キリトは気にせずそのまま会話をする。

 

「アスナ、今俺達は影の鏡の方に居る。

 こっちの方に来るには、光の鏡の世界を探検しその際たまにあるダンジョンスイッチ をおさないと、最終的にこっちに来るどころか元の世界に戻れないんだそうだ」

「ええ、わかったわ。

 それと数分前に、多く攻略組の皆が、このダンジョンクリアの為に総力をあげてきて くれたわ」

「そっか。理由はどうであれ、さっさとここから出たいよ」

「その前に裏ボスよ」

「解ってる」

 

 めのまえでいちゃついている二名に、シリカは若干嫉妬する。

まあ妬けるのはわかる。

だが今はキリトの存在が比較的危うい。

故にこの世界の探索を優先することが目先の理由となるだろう。

 

 影の鏡の世界は、残り7枚の欠片。

 

2枚目はシリカのポケモン、鳳凰を借りてカブーラーの撃破。

3枚目はランディアを撃破してから、その者に乗ってローアの撃破。

4枚目はメタナイトの劣化レプリカ作成工場で、全てのメタナイトを撃破。

5枚目はミラクルマター。

形態変化に苦戦させられたが、ポケモンによるタイプ一致で速攻撃破。

 

6枚目は毛糸の世界で、絶対に死なない中でアミーボと戦闘し撃破。

7枚目は力の根源を集めて、ネクロディアスを負の世界から解き放った。

 

 光の鏡の世界は、残り8枚の欠片。

 

2枚目はウィスピーウッズ。アスナ・サトシらにより撃破。

3枚目はワムバムロック。

地下迷宮攻略で、アーロイやリズ・エギル・三國武将が全てを回収。

 

4枚目はDDD。途中までアスナとアーロイの機械獣。

王位の復権の時にアスナが参戦し、見事勝利。

 

5枚目はダイナブレイド。クラインら風林火山のチームワークで撃破。

6枚目はメガタイタン。孫策を含めた風林火山の三國武将が接近戦で挑み勝利。

7枚目はドロッチェ団。そしてドロッチェ団改。

血盟騎士団と蒼龍同盟が、意気投合して完全攻略。

 

8枚目はボスラッシュの塔。聖龍連合と軍が、数にものをいわせ一気に撃破した。

 

 

 これらのボス討伐事情の途中、キリトとシリカ・メタナイトはもう一人の英雄と出会った。

その名はカービィ。

カービィはとあるプレイヤーをかくまっているようで、彼らに警戒心を抱いている。

 

「俺はキリト。陰を奪われているんだ、何もしないよ」

「私はシリカです。陰の世界から出るために、カケラを集めてるんです。

 できれば力を貸してくれませんか?」

「カービィ。私はメタナイトだ。世界線が違うかもしれないが、協力してくれ……頼む」

 

 

「ボクはカービィ。この子を……サチを救えるのならいいよ」

 

 話を聞くところによると、キリトとよく似た黒い者が彼女のパーティを襲ってそのまま連れ去ったというのだ。

そこで今までカケラを手に入れるのと同時に、プレイヤーや英雄の解放をボス撃破に行ってきた方々に話を伺う。

その者はアスナを筆頭とした光の世界を攻略しているプレイヤーだ。

 

「確かに。軍のキバオウさんから、ボスラッシュの最後の方に複数のプレイヤーがとら われていたのを解放し、今身柄を預かるのと共に事情聴取をしているとのことよ」

 

 やぶれた世界経由で報告される。

報告によると、既に確保されていて安心と云える状態だ。

安心は安心だが、光の世界側にプレイヤーが沢山いる事に驚いたカービィ。

そこで彼は、聞いたのだ。

 

「影側が暴走してるけど、対処法……ちゃんと見出してる?」

「え?そんなのあるのか?」

 

 キリトはびっくり、メタナイトもびっくり。

このダンジョンにいる英雄は、アップロードされる情報がバラバラな事が判明した。

そこで話を聞いてみると、光と影は表裏一体であるということ。

全ての欠片を手に入れたら、光と影の境界の世界へ行ける。

そこから全ての決着の地へ行けるという事を知る。

 

 しかしその決着の場にいる者は、ゲームでいうラスボス。

対抗手段がなければ、全滅は必至。

だから光の世界で、ちゃんと集めておかなければクリア以前にラスボスと戦う事すらままならないという。

 

というわけで、カービィ主導の武器集めが開始された。

 

 

 影と光の世界が直接つながるのは、カケラが必要だがダンジョン内から移動することは可能。

よってカービィに連れてこられるのは、Mr.シャイン・Mr.ブライトのボス部屋。

此処で彼等を撃破して素材を手に入れ、機械の星メックアイのオーバーテクノロジーの恩恵を受ける。

これによって、スターシップの完成。

 

 次にキリトの足を確保するために、ナイトメア大要塞にカスタマーサービスから乗り込む。

村の住人やフーム・ブンに、説明責任を果たせと言及される。

それをキリト達はすぐに抜けて、メタナイトに押し付けた。

デデデ大王やエスカルゴンが居ない今がチャンスといわんばかりである。

 

乗り込んだらそこから、伝説の装備がそろっている研究所へいく。

 

 研究所を強襲して、研究されていたドラグーンを入手。

また、他の伝説の武器やボスそれぞれの特徴を入手する。

再度カスタマーサービスから、DDD城に転送される。

 

この世界は少々おかしくなっているので、これくらいの事をしても大丈夫。

それとサチはランディアに亜空間から守られているので、比較的安全だろう。

 

「最後に、もう一人のボクに逢いに行こう」

 

 その言葉は非常に強烈的であった。

向かった先は夢の泉。

此処は影側で、私欲に塗れた醜い想いがあふれ出ている。

こんな所に身を隠しているのは、影であるカービィだ。

 

カービィと瓜二つ。

しかしこっちのカービィは真っ白じゃない。寧ろ、綺麗なピンクだ。

 

「もう一人のボク。本当の救世主が来たんだ。

 そのマスターソードを、彼に渡してくれないか」

 

 カービィは、今までにない表情で彼を見る。

黒というより影であるカービィは頭を横に振る。

そして彼は、マスターソードを出して身構える。

 

 刹那。

 

「何……してるんです……?」

 

 カービィの剣はキリトの胸先三寸で止まっていた。

それはシリカがダガーで横槍を入れたから、そこで止まって居るといえた。

シリカはダガーを握る腕を振るわせている。

つまりもう一人のカービィの筋力は、とても高い事になる。

 

「「……」」

 

 シリカはもう一人のカービィを睨み付ける。

そして短剣スキルを発動させようとすると、もう一人のカービィは飛び退く。

もう一人のカービィ[影カービィ]は、刀身が黄金色に輝いているマスターソードを構える。

 

「シリカ。もう大丈夫だ、俺が行く」

「駄目です。先程はグラードンとユニゾンしての防御でした」

「……それでも、俺はこいつに認められないといけない」

 

 マスターソードの詳細はナイトメア大要塞で、ダークマインド等ダークマター族にクリティカルダメージを与えられる事を

映像投影機で得た。

基本的に伝説の装備は、試練や何かの制約を紐解かないと入手できないという。

だからこれは、純粋な試練だとキリトは思う。

 

「キリト。これから先は、ボクでも介入は難しいよ」

「その言葉を聞いて安心した。形勢逆転のチャンスじゃないか」

「キリトさん!」

「大丈夫。本当に大丈夫だから、待っててくれないかシリカ」

 

 キリトはシリカの頭を撫でて、直ぐに影のカービィの前に出る。

そしてキリトが剣を抜こうとした瞬間、影カービィの突きが来る。

これを間一髪で回避する。

 

そこからは力と力のぶつかり合いだ。

 

 

 キリトは基本的に、STRに力を注いでいる。

だから攻撃力や防御力、パリィ能力はダントツだ。

更に機械獣やポケモンと多くの戦闘をし、場数を踏んでいるので経験で己の隙を埋める。

矢だったり光線だったりミサイルだったり、ここらの捌きや気配は目をつぶってでもできるようになった。

 

 数多の不確定要素の中を生き抜いてきた、その自信と度胸が彼を形作っている。

だがそれでも、足りないものが有ったりする。

完璧超人でも、僅かにたどり着かない領域がある。

 

それは不可視の攻撃範囲を計算しての戦闘だ。

 

 かなり前に圏内でちょっとした事件があった。

その時プレイヤーの対処をしていたのがキリトで、目の前の事全てを受け止めて攻防を行った。

しかしプレイヤーからダークヒーローを相手どる事になった瞬間、一気に押され始めてしまった。

そのままその事件はPKギルドによって、強制終了と共に仲間英雄二人のフィギュア化と3人の死去によって幕が閉じた。

 

彼が押されたのは、ダークヒーローが不可視の剣撃を普通の様に行ってきたからだ。

 

プレイヤーの攻撃範囲は、武器そのもののあたり判定で決まっている。

普通に現実の通りの再現だ。

だが英雄にそんな制約はない。

 

 今回のダークヒーローは、佐々木小次郎だ。

彼の攻撃範囲は全くの不可解。更に攻撃を行っていないのに、ダメージを受けて吹っ飛んだ。

これによって現実感覚の乖離が起きてしまったのだが、そこは後に治す。

この時は全く正体が分からなかった。

 

 だがこれらの事を攻略組と呼ばれる者達に、メールを送ってみる事で詳細が分かった。

 

三國無双や戦国無双等、無双系ゲーム出身キャラは『真空書』というもので攻撃範囲を1.5~2倍に上昇させている。

またアイテムを装備することで、強力なバフや能力上昇が行われる。

 

装備の事は、リズやエギルによって知ることができたがプレイヤーが装備しても効果がないことが分かった。

 

 

 そんな状態の中、更にキリトを鍛えさせ不可視攻撃の把握をある程度可能とし、それらを使う者との戦闘を

普通の苦手へと昇華させた人物がいる。

その者は諸葛亮孔明という。

 

知っている人は知っている有名な後漢の軍師。

 

彼はキリトの要請を受けて、特訓をした。

その特訓方法は、エスパータイプのポケモン・玉等の特殊攻撃を付与し不可視攻撃ができる荀彧らを使ったリンチだ。

炎を纏った突撃、目にも留まらぬ剣撃や拳、杖による点結びの魔法攻撃、分身と本体による連続攻撃……。

彼等による猛特訓は、この戦闘で十分に生かされていた。

 

 

 

「あれは鳳凰剣。マスターソードに常時纏う気を鳳凰の形に練り上げ、途方もない破壊 力を持つ突進技だペポ」

「そ、そんな恐ろしい技がって、なんですか?その……語尾」

「真面目モードが続くと、集中力が続か無くなるペポ」

「そうなんですか……」

 

 賢者モードなカービィは、徐々に軽い雰囲気を纏ってくる。

更に今まで昏睡状態だったサチが、口を挟む。

 

「最初カー君はすっごい軽かったよ?」

「へ?」

「それは言っちゃいけないお約束だペポ」

 

 三人が談笑をしている中、剣の殺し合いをしている影カービィとキリトがいる。

 

 

ガインッ

 

「くそっ!(前ばかりじゃ防がれるな……だったら……)」

「……」

 

 キリトは走り出す。突進系スキルを使用し、上から剣を振るう。

影カービィはその剣を受け止める。

キリトは振るった反動を使い、そのまま空中に躍り出て前宙と共に攻撃を行いながら後方へ移動。

そのまま連続攻撃を行う。

 

 しかしそこにカービィはいなかった。

スキルによる反動が来る中、死角である右下方にその者はいた。

彼の者は回転切りを行う。

 

キリトはその存在に気づき、後方へ大きく下がるが脚に掠りダメージ。

 

また後方へ移動するその隙に、彼の者はマスターソードに纏う闘気を練り上げそれを放つ。

 

 

「ぽぺっ!あれは”こうじん[光刃]”ってわざペポ!」

「カービィさん……尊敬してましたが、カー君って呼びますね」

 

 シリカの笑顔は、シリアスブレイクを行ったカービィにとってつらい物であった。

何せ昔の自分の格好いい頃は戻ってこないのだ。

ヒロイン的美麗さを誇るシリカに、主人公のように慕われるイケメンカービィ。

その構図はこの時を以って瓦解する。

 

サチはこの空気を和やかに過ごす。

 

「ああん!せっかくボクのイケメンっぷりがあ!?」

「残念なイケメンですね」

「カー君は可愛さだけあれば十分だよ?」

「可愛さだけで主人公は勤められないんだよー!」

 

 

 『光刃』と云われるソードビームは、圧倒的な覇気を持ってキリトに向かう。

彼は頭を下げる事でその横長いエフェクトてんこ盛りなビームを避ける。

ビームはそのまま後方の大地に激突。

枯れた夢の泉に水はないが、そこらにある砂利が爆散し周囲に散乱する。

 

散乱した砂利は砕け散る。衝突地点にあるのは溶岩池。

どれだけ多くのエネルギーを保有しているか、容易に推し量れるものだ。

 

「……クッ」

 

 腕に違和感が出る。

激しいエフェクトから目を守るため、頭周辺を守る様に動かした腕。

そこにわずかな残痕。HPが少し減る。

 

まだ、戦闘は始まったばかりだ。

 

 

―――

 

 

 キリト達が伝説の武器巡りの旅にでている最中、アスナ・サトシとアーロイはとあるボスを倒していた。

そのボスというのは、この丘の上の城の主”DDD”。

 

ペンギンに赤の帽子やガウンを着せたような姿だ。

黄色い手足は素肌でなく、手袋・靴下と推測できる。

 

 彼と戦うという事は、既に機械獣が行っていた。

この機械獣はアーロイが鍛えた精鋭だ。

彼等精鋭はDDDを三回程倒した。

 

何度も立ち上がってくるDDD。

そして無機質で命令を忠実に実行する心なき僕は、心折れることなく討伐する。

9回目ともなると、マスクをかぶってきて木槌も鋼鉄製のものとなる。

 

遂に精鋭にダメージを与え始めたとき、ウォッチャーが危険性を感知してアーロイらに救援を求めた。

これによって、『マッハドラゴン』という『OMEGA』の中にあった設計図を元に作った機龍にのってきた。

サトシだけはリザードン。

 

 機龍はレーダージャミングという機能があるが、正直役立ってない。

そんな中、サトシのポケモンたちはマスクをしたDDDを倒すことに成功。

もう終わりかと思うと、更に覇気を出してきて槌から斧[ハルバード]に装備転換。

超強いDDDが誕生した。

 

流石にまずいと思ったのか、ロロロとラララを撃破したアスナとアーロイが急いで救援に入る。

 

 

 トリプルショットや罠・スタングレネードを使い、DDDを追いつめるがむしろ強くなっていく。

最後はアスナのサイレントキルで、DDDの喉元を刺した。

血はでないが、中々きつい戦闘だった。

 

そしてDDDは倒れたのと同時に、マスクが割れた。

割れたDDDが目を開けてからの第一声。

 

「ここはどこゾイ?」

「は?」

「まあまてアスナ。正気を取り戻したのだろう、穏便にいこう。な?」

「分かったわよ」

 

 

 目の前のペンギンと同じ土俵に立つアスナ。

 

「此処は光の鏡の世界よ。

 今私達は貴方と戦ったばかりなの」

「何!?わしと戦っただと?そんな記憶なんぞないゾイ」

「そう。ところで、帰る場所がないなら私達と来ない?」

 

 アスナは目の前のDDDに手を差し出す。

 

「ふむ……よし、力の足りぬお主らの為、わし自らの力を貸してやるゾイ!

 ところでエスカルゴンは見なかったかゾイ?」

「いえ、今は貴方だけよDDD」

「そうか……よぉし、では行くゾイ!」

「ちょ、戻るの!?」

「わしの勘はよく当たるゾイ!」

「訳わからないわよ!」

 

 DDDはプププランドの王様をしている。

そこで愚民から間接税・法人税・消費税等を三重掛けにして、税金を搾り取って栄華を極めているという。

UFO襲来・酸性雨・宇宙ゴミ廃棄等の危機的状況を、カービィやその他と共に切り抜けてきた。

また文字の多くは読めないが、博識で無駄に技術力や知識欲が高く多い。

 

DDDは槌を持って、来るように腕を振る。

 

 

「DDDか、面白いペンギンだ」

「エンペルトか?」

「態度はポッチャマに近いわよ」

 

 シリカとサトシにポケモン知識を仕込まれたアスナは、直ぐにサトシの思いへツッコミを入れる。

彼等はDDDの後についていき、その目的となる場所に近づく。

その場所は近くとも遠い、しかしとても懐かしい場所だった。

 

 

 

「帰って来たゾイ、我が愛しのプププランド!」

 

 DDDが先行している中、後ろから駆け寄るアスナ達。

しかしDDDが走っているその先に立ちふさがる者がいた。

 

「なぁーにが愛しのプププランド、よ」

「そーだそーだ、半年も国を空けやがって。

 あんたそれでも王様か!」

「デハハハハ!久しいな、フームにブン!

 わしの国はわしの物!故に、何年空けて居ようとわしはこの国の王だゾイ!」

「威勢がいいのはいいわよ。ところで、後ろの人たちは?」

 

 黄色い頭髪をした少女は、その明快な頭脳でもってして後ろの人物の事を知らぬように指差す。

丁度DDDの所に到達するアスナ達。

到達したことで、DDDはフームに応える。

 

「わしの下僕ゾイ!」

「うそも方便ね。馬鹿らしいわ。DDDに配下がつくなんて、カスタマーサービスが何か仕 掛けたんでしょ」

「デェハハハハ!面白い事をいうゾイ。フーム、こいつ等はわしが発掘した優良物件ゾ イ!イエスマンで、何事も文句を言わず好きに仕事をしてくれる残業代いらずの社畜 ゾイ!」

「労働管理局が黙っちゃいないわ!すぐに起訴してやる」

「やってみるがいいゾイ、監視しているときは良い子の振りをしていれば、簡単に疑い の眼は晴れるゾイ」

 

 知的なのかそうでないのかよくわからない会話が続く。

そこにアスナが首を突っ込む。

 

「えーと、フームさん。私たちは、ある人を探す為の旅をしているんです」

「ええ、知っているわ」

「え」

 

 なんとフームが、アスナ達の事を知っているではないか。

偶然の遭遇だ。ちゃんと意識が覚醒していて、自分を確立している存在は珍しい。

 

「貴方達、アスナ・アーロイ・サトシっていうんでしょ?

 キリト・シリカ・メタナイト卿から話は伺っているわ」

 

 DDDを除外して話がトントン拍子に進んでいく。

話していくと、話がだんだん見えてくる。

そしてこの世界のもう一人の英雄が、カービィというピンクボールだという事が分かる。

 

 一年前程からカービィが失踪し、同時刻にメタナイト卿が行方を暗ませた。

次に半年前にDDDが失踪し、3か月前にエスカルゴンが失踪した。

別にDDDらが失踪するのはいい。

何せカスタマーサービスというナイトメアが生んだ、魔獣というその高価な生物を売りつける敵はこの世にもう存在しないのだから。

 

 しかし問題はカービィとメタナイト卿だ。

エスカルゴンが失踪し始めた頃合いから、プププランドの地上に鏡や台座のようなものが出現し始めた。

それらからは、異界の住人である敵が沢山出現したのだ。

 今では鎮静化していて、そんなにこのプププランドに入ってくる事はなくなった。

だが最初期は住人を巻き込む酷い戦争状態となってしまった。

 

 このプププランドに残る最後の希望となった、シリカ・ソード・ブレイド・ナックルジョー・他星の戦士。

彼等と彼らが使いこなすデストロイヤー三機の御蔭で、今現在のプププランドが存在していると言っても

過言ではない。

 

 

 さて、フーム達はこの事に関して、静観に徹して解決を待っているだけの愚か者ではなかった。

カービィが消えて、DDDやメタナイト卿が失踪したことでこのプププランド一の技工士を集め、とある物を開発した。

 それは皮下チップやDNA探索機。

他にも人工衛星があるが、これは打ち上げられずに終わっている。

 

 皮下チップは、住人全てに埋め込まれで巨大なPCにその情報を入れている。

これは住人を管理する手段に過ぎない。

目的は偽者の流入を防ぐための一つの防衛機構である。

 

 DNA探索機。

唾液や皮膚からのDNAを使って、その者全ての座標を記してくれる超有能マシン。

エスカルゴンが1ヶ月で作り上げた、スーパーコンピューターだ。

使い方や補修の仕方は、助手で入っていたフームやキュリオが全て覚えている。

その為オーバーヒートであったり、電磁パルスによる故障も予定の範囲内だったりするわけだ。

 

 結局、動き出す為の戦力が整ってきた時には、カービィとDDD・メタナイト卿の位置が激変してきた。

エスカルゴンだけはかわりないようだ。

 

 ちなみにDNAの大元は……カービィは自宅の唾液付枕・DDDは数多の服から・メタナイト卿は彼の和室から・エスカルゴンも同じく自室から入手した。

 

 

「今失踪している中で動いていないのは、エスカルゴンだけよ。

 DDDはここにいるし、メタナイト卿も高速で移動中。

 カービィも大移動してから、とある場所で停滞しているわ。

 

 場所は……穢れた夢の泉ね。

 行き方を教えてあげるわ、皆を助けたら一度戻ってきなさい。いいわね?」

 

「うん、ありがとう、フームさん」

「フームでいいわよ。

 こんなに知的で上品な女性に会えたのは、本当にうれしいからね」

 

 知的な雰囲気を漂わせる彼女は、まさしく才女と呼ぶにふさわしい。

プププランドの住人は、基本的に抜けている所があり警察官ですらもあまりの平和に腑抜けている。

だからこの世界の暢気さに呑まれない、その胆力はこの鏡の世界で大いに貢献していると言える。

 

 また電気すらもない後進的な時代背景っぽいのに、遠目に見える丘の上の城内では

現代に近い技術がそこにあるという先見の明を通り越した何かがある。

 

「さてと……長旅だったでしょう?家で休んでかない?」

 

 この提案はうれしいが、先に進まなければならない。

アスナはキリトの元へ急ぎたいが、ここでサトシが休んでいくことを決定する。

 

「ちょ」

「アスナ、長旅だったんだ。ちょっと休んで行こうぜ」

「う……分かったわよ」

「チャ~」

 

 サトシの肩にのるピカチュウがあくびをする。

そしてサトシと共に、アーロイも休憩に賛成をする。

結局アスナは逃げられないわけだ。

 

 決定したので、彼らはフームが住む城へ案内される。

 

 

 

――――

 

「……」

「ハアッ!」

 

ガインッ!

 

(くそっ、埒が明かない。どうすればいいんだ)

 

 

 影カービィと戦闘し続けているキリト。

疲れは全くないが、状況が全く好転されない事に少々焦っているようだ。

 それと共に、遠巻きに見ているシリカだけがこの事に焦燥感に駆られている。

しかし見える防げるとは言っても、圧倒的力の差に自分がやられるかもしれないという不安により二の足を踏ませる。

それくらいキリトとカービィの攻撃は重かった。

 更に時折来る、ヒースクリフが使うオーバーアシストという人間以上の身体能力を見せるが、それ以上の攻撃速度になってきている。

実際シリカが行っても、足手まといになるだけだった。

ピナはこの泉に入ってくる雑魚敵を、リスキルしている。

 

「ぺぽーっ!そろそろだよ!やっとキリトが、人間の限界を超えるペポ!」

「何言ってるんですか。まだ、人間の範疇でしょ?」

「「へ?」」

 

 一度デルタ化したシリカは、通常の状態に戻っても動体視力だけはその状態に保たれていた。

結局彼女の場合、見えるだけで体が付いていかないという事を察していただけだ。

無論体がついていくのなら、そのままキリトと双璧をなす人物となっただろう。

 

 キリト本人はというと……実際徐々に相手を追いつめていた。

まだまだ自覚するにはほど遠いが、一つの事に集中するというその継続力を高めて行っている。

影カービィは、キリトの集中力を決定的に鍛えてから、マスターソードを渡そうという魂胆なのだろう。

 キリトは不可視攻撃を回避し、徐々に武器破壊に以降する。

ただマスターソードの耐久は皆無で、壊れることはない。

また能力がそのままそれに乗るので、自身の強さがその剣の強さになるのだ。

 

「はあっ!せっ、そこか!」

「……!」

 

 影カービィの陰分身!

しかし本体がすぐに見つかった。

剣が打ち払われたが、その反動を生かして回転切り。

キリトの打ち払いに使った力と影カービィの回転による総合威力が、キリトの剣に負荷をかける。

 

 しかしキリトは徐々に剣を斜めにしながら、自身の身体を横へずらしていく。

これこそ受け流しだ。

真っ向から受けるのではなく、武器のベクトルを変えるだけなので必要な膂力や能力はそれほどなくていい。

 

 

 話が長くなったが、結論はというとメタナイトが割り込んできた。

その時躓いて、ギャラクシアの切っ先が影カービィに突き刺さったのだ。

結局それでカービィは白旗を、何処からか知らないがそれを出した。

 

 で、マスターソードを受け取って、帯剣する。

 

陰カービィは、どこかに行ってしまった。

 

「探したぞ、4人共」

「メタナイトもどこ行ってたんだ?」

「君たちが私に説明責任を押し付け、そのままカービィと共に武器の徴収に向かっただろう?」

「そういえばそうだったな」

 

 キリトは戦闘が終わったのか、表情を強面から崩す。

二人が戦闘後の会話をし終わった時、シリカがキリトに抱き付く。

 

「キリトさん!無事でよかったです!」

「ただいま、シリカ」

 

 キリトは左腕をシリカの腰の後ろへ回し、右手で彼女の頭を撫でる。

心配を掛けさせたので、これくらいの褒美をやらねばならないと悟ったと思われる。

この様子に、メタナイトはため息をつく。

いや、ただ単に本当に戦闘が終わったという意味で、行った行為だ。

 

「メタナイト!ぼく、頑張って実況したんだぺぽ!」

「実況じゃなくて、それは説明だ」

「あばば」

 

 カービィのシリアスな雰囲気が完全に崩壊したことによるギャグ路線な顔面を見て、

キリトやシリカ・メタナイト・サチはひとしきり笑った。

 

 

 

 さて、今度はサチの出番だ。

しかしフレンドにメールを送っても、びくともすんとも言わない返さないので今は無視を決めた。

なんせ、フレンド欄の名前が、灰色になっていないからだ。

灰色になると、その人物は死んだ事になる。

 

「どうするぺぽ?」

「……このダンジョンをクリアしたら、皆解放されるんでしょ?」

「そうだよ!」

「それじゃ、ちゃっちゃと終わらせないと」

「だったら、光と闇の境界に居たらいいよ。あそこは一種のセーフルームだからね!」

 

 セーフルームではなく、元々は洞窟大冒険のセーブルームである。

故に敵はでない。死ぬ可能性があるので、そこで待っていた方が無難である。

 

「よし。それじゃ、カービィはサチをセーフルームに送って行ってやってくれないか」

「まかせて!」

 

 キリトは膝を少し曲げて、そこに手のひらをつき前かがみになりカービィにお願いする。

態勢を戻して今度はシリカやメタナイトを見る。

 

「俺達は皆と合流してから、境界へいこうとしよう」

「解りました」

「うむ、わかった」

 

 キリト達は先に走って向かう。

別に急ぐことはないのだが、此処からフーム達のいるプププランドはかなり遠い。

だから走る。

 

 カービィは、サチを送るために少し準備する。

スターシップの起動をして、その場所に浮かばせる。

 

「こっちに乗って」

「うん、ありがと……」

 

 二人はそれに乗って、天を駆ける。

 

 悠々と空を飛んでいく最中、二人は会話する。

 

「あのキリトがまさか、影カービィを倒すなんてね。

 メタナイトが割り込んできたのは、ちょっとびっくりしちゃった。

 でも、これでアイテムフラグは全部入手済みになったし、後はおわりかな!」

「うん。これで、ケイタ達も戻ってくるね。皆が戻ってきたら、一緒に皆でパーティし よ……?」

「うん、約束だよ、サチ!」

「約束」

 

 そういって、サチはカービィに抱き付く。

装甲は動きにくいという事で外している。

それによって、柔らかい感触が彼を包む。

カービィはそれを甘んじて受ける。

 

しかし、その抱き付きがちょっと強くなる。

 

「?」

「カービィ。やっぱり、怖いよ……。せっかくあえたのに……」

「しょうがないよ、君を襲ったのはゼロだったんだから。

 でも大丈夫!ボクがやっつけたからさ!」

「ありがと、ほんとに……」

「なはは……あぐ……ガッ?!」

 

 いつの間にか、カービィは滅茶苦茶きつく締めつけられていた。

更に黒い靄がカービィを包む。

 

「え、待って……え、わ、うわああああああ!!」

 

 カービィは思い出す。

あの時の悲鳴は、女の子の聲。

なのに一つの傷もない女の子と少し傷ついたゼロ。

 

 そしていきなり立ち去ろうとしたゼロ。

やっつけたとき、血涙を浮かべていたのは……。

 

「お前か……ゼロ!」

「ご明察♪」

「サチの聲で、その身姿でいうな!」

「でも、貴方は終わり」

「っ! ガハッ……憎い……殺す……違う、ボクの心じゃなッ……」

 

 カービィは虚ろな目になり、うなだれる。

歪な笑顔を作り上げ、己の物となったカービィに憑依先を変える。

そしてサチは、リムラに取りつかせ演技するようにさせた。

 

 そう、気絶という演技をな。

 

「ハハハ……ついに手に入れたぞ、無垢な赤子を」

 

 目が赤く染まるが、直ぐに平常心を保ち自己意識と身体を同調させる。

スターシップは、このカービィの操縦を受け入れないというようにはじく。

しかし、その乗り物は一瞬で操作を受け入れてしまう。

 

「ぽよっ!そ、そうだ、サチと一緒にセーフルームにいかないと!

 さ、ダンジョンをクリアしよっと。

 そのためには、ノヴァの内部基盤をこれでぐちゃぐちゃにしないとね♪」

 

 狂気を宿す赤子は、ぼけーっとするサチを後ろに乗せてスターシップを駆る。

勿論盛大なパーティの為の準備をする。

今回が本当の最後だ。

 

今回の為に、己を全て捨てた。

行くぞ。

 

 




 内容は無い様です。
ひまつぶしなので、真摯に読まなくても結構ですよ?

 一応前編です。
ちょっとぐだぐだしましたが、後編からちょっと頭を捻ってみましたので、
そちらの方がお楽しみできるかもしれません。

 とにもかくにも、愉快なことだと御思いになるのでしたら幸いです。
これからも是非いらしてください。

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