ソードアートBro's   作:名無しの権左衛門

5 / 19
合計15000文字です。
短いかもしれませんが、これが一話です。


4:邂逅(後編)

 

 さて、迷宮区のボス入り口。

定時になったので、ディアベルが叫ぶ。

 

「さて、未知の世界だ。

 街で待っている皆の為、吉報を持って帰ろう。

 

 最後に一つだけ言わせてもらう。

 死ぬな!」

「「「おおおおお!!!」」」

 

 野郎共の雄たけびがこの空間を裂けんばかりに轟く。

そして扉を開け、中へ吶喊する。

 

勢いそのままと行きたいが、そのまま勢いが止まってしまう。

何故か。

 

 それは目の前に出現した黒い靄から、目の前の天井やら全てを覆い尽くさんとする数多のミサイルが来たからだ。

この状況に最前線のキバオウ達は、慄いてしまう。

 

「まずい、E・F隊、ローテ―――」

 

 数多のミサイルは、この場に居る全てのプレイヤーをオーバーキルする。

 

 

 煙が晴れる。

 

 

 そこには何もいなかった。

 

 

 いや、いた。

 

 

 全てを覆い尽くさんとする乖離の結界。

あの『はじまりの街』を包んだ、あの”warning”の結界。

 

 

「『絶対防御』。戦闘において、一回のみ使用可能なパラディン専用の技術だ」

 

 

 この淡々とした聲。

この静寂の中、それだけが静かに響く。

 

 

「か……っ」

「茅場昌彦!?」

 

 

 大きな盾を目の前に突き上げる彼が、皆の目の前にその背中を魅せる。

 

「その名前はやめてもらいたいかな。

 今の私は”ヒースクリフ”だ。

 さあ、ここからが皆の表舞台だ。舞台を整える黒子は、傍に控えているよ」

 

 と格好良く颯爽とこの場から退散するが、劉玄徳に捕えられてパーティに組み入れられる。

 

 

 さて、黒い靄がようやく晴れる。

この攻撃が前座であれば、どうなるのか。

にわかに広がる不安。

だがそれを打ち破る存在が、まだまだいるのだ。

 

「来たぞ!」

 

 晴れた靄からは虎のような機械獣が、10体……猛烈な速度でプレイヤーに駆け寄り襲う。

この速度は初めてなようで、前線のアタッカーが大きくダメージを喰らう。

直ぐにローテになるが、その虎が陣の奥まで入ってきて尋常じゃない被害を受ける。

 

「ひぃっ!む、無理だ!」

「こ、こんなの、最初から無理だったんだ!」

 

「ふむ、貴様らは真に愚かなのだな。

 皆の者が命を張っているというのに、その恐怖を心で抑えつけ現実から逃げ出さぬというのに、

 なんという傲慢な」

 

 長いひげを蓄えている碧の装備を身に着ける彼は、二人のプレイヤーに立ちふさがる。

 

「じゃ、じゃあどうしろってんだ!」

「この私がお主らの恐怖を露払いしてみせよう」

「だったら、早くやってくれよ!」

 

 

 眼前にまで来ている機械の虎。

目の前で腰抜けの腑抜けを殺そうと、タンクを弾き飛ばして駆け寄ってくる。

ヘイトを溜めた二人は、碧の装備をつける彼……大男の後ろに隠れる。

 

 虎は8体。

2体は他者が受け止め攻撃しているが、微々たるもの。

虎は一気に駆けてきて、間合いに入る一歩前で飛び上がる。

猫のようなしなやかさで飛び上がる。

 機械獣の意味不明さに、周囲プレイヤーは恐怖で戦慄する。

だがこの恐怖に心の炎を燃やす者がいた。

そう、二人が隠れた大男である。

 

戦を思い出す、この命と命の奪い合い。

眼前におこる、命のともしびが消えてしまうそんな未来。

 

だがしかし、兄が見ている中そんな事は絶対にさせない。

そのような思いの中、彼が放つ一撃は虎を微塵へと化す。

 

「我が義を示す……唸れ、天空の刃よ!」

 

 彼の振るう巨大な薙刀は、灼熱の嵐を吹き荒らす。

この爆風に耐えられる存在は居ない。

傲慢でありながら、その無双となりうる仁義の力……機械獣の虎は耐えきれなかった。

 

圧倒的な力の前に、周囲プレイヤーは咆哮を挙げる。

残り2体の虎を、一瞬で倒すプレイヤー達。

 

 

「来たぞ、あいつだ!」

 

 

 ディアベルが叫ぶ。

その者は、その今までの疾駆の機械とは思えぬ重厚さ、非情であり奇怪を呈する様相。

まるで、殺戮兵器だった。

 

 

「っ!」

 

 機械から一つの煌めき。

黒く禍々しい光線が、この場を貫く。

タンクを狙うが、アタッカーが引き寄せ回避させる。

 

「A・B隊!その体躯を固定させている脚を破壊するんだ!」

「っしゃあ!」

「いくぜ、おるぁぁあああ!!」

 

 

 野郎共は駆ける。

彼等は被弾を免れるが、いまだに近距離へ行こうとしない他部隊はランチャーとミサイル・光線の餌食になってしまう。

 

「瀕死のものは、命あっての物種だ!退却しても構わない!」

 

 

 あるグループが逃げようとしている。

 

「三十六計逃げるに如かず!援護せよ!」

「任せろ!」

 

 劉玄徳が叫び、その配下が撤退中のプレイヤーの背後を守る。

するとこの弱った得物を待っていたかのように、虎やアリクイのようなものまで出現する。

 

虎はいつも通り、削って倒すがアリクイは冷気や灼熱を周囲に撒くので、

大被害しか生まれていない。

 

「このままではまずいぞ、ディアベル」

「わかってる。ここで、主砲を投入する!」

「やるしかないのか」

 

 彼らがそういうのも無理はない。

 

 今回のボス戦、ディアベルはLAを諦めている。

それは劉玄徳を含む彼らに、総大将の有用性を彼に伝えたからだ。

その代わり大きなものをそのうち渡したいという事で、

今後とも行動を共にするという約束を確約した。

 実際、この世界では信用に値する真の人間は少ない。

だからこそ、劉備玄徳らの提案にのったのだった。

 

 そして総大将なりに会議をした結果……主砲である英雄を抱えるプレイヤーには、

削り切ったところで敵の猛攻が来る前に一気呵成に攻めてもらいたかったのだ。

しかし今は状況が最悪だ。

 

戦力の出し惜しみと逐次投入は下策。

故にここで切り札を切ったのだ。

 

 

「主砲!」

 

 

「出番のようだな」

 

 

 光の加減で亜麻色に見える頭髪を持つ女性は、その手に持つ長弓で虎とアリクイを爆散させた。

虎は普通の攻撃が2.5倍以上に食らわせられるようになり、アリクイは継続ダメージで塵芥と化した。

 

 

「マリオ!その熱湯の入ったポンプで、脚のコア周辺をぬらしてくれ!」

「作戦通りに!」

 

 アーロイとマリオが駆ける。

 

 

<マリオサン、許容限界マデ2分デス>

「もう少し待ってくれ、ポンプ。SHOOT!」

 

 容器破損になる位の熱湯を発射したポンプは、脚のコア周辺にヒットさせアーロイが感電させたとき

完全停止する。

お湯を全てつかったが、この機械は使えなくなった。

 

「ありがとう、ポンプ。さて、うまくいけ!」

 

 動かなくなった敵に対して、マリオとアーロイは一端通り過ぎる。

これでヘイトを稼ぎ、全体的なダメージを減らす。

近距離にいるキバオウ達は、既に後方へ下がっている。

彼等は重量が伴う踏みつぶしで、一気にノックダウン。

タンクにより助けられ、後方へ引っ張られた。

 

 この間に、キリトとアスナが駆ける。

 

 二人は脚にあるコアを攻撃、破壊する。

そのまま後退し、攻撃したことによるヘイト移譲を貰い、マリオとアーロイに攻撃を引き継ごうとする。

 

アーロイとマリオは、トリプルショットとファイアボールで外装や武装を破壊していく。

残り一か所を破壊すると、黒いナニカがコアから這い出てくる。

 

これに驚き、マリオとアーロイは攻撃できずに、アスナ達の方へ移動してきてしまう。

 

 

「まさか……」

「これが、なのか!」

 

 祟り神のような様相を見せる、狂ったその殺戮機。

そのモノは、殺戮ではなく破壊者としてこの場にいるものを壊そうと動き始める。

あの物の第一撃は、この部屋奥からアームで連れてこられた虎とアリクイの禍ツ機[まがつき]の大量投下からだった。

 

一瞬にして攻防が転換する。

この死地において狙われてしまったのが、アスナとキリトだ。

場面の転換がすさまじく、追いつけていなかった彼等。

撤退しても、弾丸の嵐なのだ。

 

 

展開等、見られるわけがない。

 

この隙が命取りとなり、二人は死を待つのみとなる。

だが命を張るのは、彼等二人の役目ではない。

少なくとも、ここではない。

 

 

「今です!」

 

「兄者の作戦を邪魔するんじゃねえ!」

「うらああああ!!」

「どるぁぁああああ!!」

「タンクを嘗めんじゃねえぞ!!」

 

 今まで多くの辛酸をなめた彼らは、あるものの指示で多くの禍ツ機を遥か奥へスイングヒットさせた。

更にいきなりプレイヤーの背後から吹く強風で、禍ツ機は更に遠くへ行きボスの禍ツ機にヒット。

良い場所に当たったのか、爆炎が発生する。

これが好機と思ったのか、劉備の後ろにいる人が叫ぶ。

 

 その者は頭に錦と云われるほど派手な兜を着た大人である。

その者を筆頭に、キリトの知るクラインや逃げようとした二人・撤退中のプレイヤーを含めた全員が奥歯をかみしめて、

恐怖に立ち向かおうとする。

彼等が持つのは、油や玉薬のはいった小さな壺だ。

その壺には縄がかけられ、振って投げられる様になっていた。

 

「我が西涼の大国魏の橋頭堡や陣を薙ぎ払った大火の焔を、やつら……災いにみせてやれ!」

「クライン、私達もゆくぞ!」

「応、幸村、行くぞ!」

 

 主砲以外に渡されていたその壺は、風に運ばれその禍ツ機の上部を焼き払う。

しかし致命打にはなりにくかったようだが、脚のコアを完全に破壊したようで動かない。

 

「まだだ。まだ、オーバーヒートしていない!これでは、破壊できないぞ!」

「あの攻撃で、放熱ベントが壊せていないのか!どうすればいいんだ……」

 

 近寄ろうにも、ビーム発射装置から射撃されて近寄れない。

その装置は固い外装の奥にある。

オーバーヒートさせなければ、その外装を破壊すらできない。

 

「あるにはある、これに賭けるしかないってわけだ!」

 

 

 

 

 マリオはつなぎから、十字の模様がはいる黄金の珠を取り出す。

そしてその玉を壊す事で、彼に力が漲る。

皆が敵に注目する中、マリオのその姿を見るのはアーロイ・キリト・アスナだけだ。

 

「マリオ!?」

「いいか!これで、破壊できるはずだ!

 後は作戦通り、行くぞ!」

「っ!わかった、行くぞアスナ!」

「ええ……!」

 

 マリオは体力を振り絞ってジャンプし放つ。

 

「OH,YES!YAHAAAAAH!!」

 

 マリオは虹色の覇気を圧縮させ、三つの極大な灼熱の玉を放つ。

虹色のオーラを放ち、黄金色の輝きを魅せる灼熱の玉はアーロイが先に爆撃していたベント等に直撃。

放熱ベントが大爆発する。

 

その間、灼熱の玉に抜かされたアスナとキリトは、予定地点の数メートル前に駆けていた。

灼熱の玉は光線射撃装置以外を溶かし破壊した。

攻撃手段が一つだからこそ、比較的無防備で一番近い彼らに光線を放つ。

 

「ぐっ……ぅうおおおおお!」

「キリト君!?」

 

 本来なら、攻撃が来たときお互いのソードスキルで払いのけるつもりだった。

それを彼はアスナより一歩前に出て、彼女の代わりに全てを受ける。

そして自慢のアニールブレードを粉々にしてしまった。

代わりにビームを完全に防御する。

 

「いっけえ!」

 

 マリオは煌めく帽子を、犬の遊び道具フリスビーの如く投げる。

その帽子はアスナ達が予定していた地点にくる。

 

「はあっ!」

「はっ!」

 

 二人は帽子に飛び乗り、大きくジャンプする。

彼の禍ツ機が下方に見える。

このジャンプ中に、キリトは細剣を手にする。

 

「チコ!」

「~♪」

 

 戦場に似合わないかわいらしい聲を発する星の子は、二人に回転の力を与える。

まだ位置エネルギーが増す中、運動エネルギーがいまだにかからない。

ここで彼らは『リニアー』を発動する。

だがこの技は、普通とは違う使い方をする。

 

 SAOが枠組みになった瞬間、ソードスキルは本人の意思を優先してからシステムが誘導をするようになった。

連続突きが一点集中の技になったのはこのためだ。

 

チコは銀河の星々が持つ、無限で強大な自転エネルギーを二人に付与する。

 

「行くぞ、アスナ!」

「ええ、ここで終わらせてやるわ!!」

 

 下方ではまだ仲間による遠距離射撃が行われていて、爆発炎上しているが体力ゲージが減っていない。

彼等は高速で回転しながら、位置エネルギーを運動エネルギーに替え落下する。

その姿は回転しながら、速すぎる為か止まっているように見える。

 

ガッ

 

攻撃は、その寸で止まってしまう。

ダメージはない。

 

彼等に禍ツ機からの触手が絡んできてしまう。

彼等のHPが徐々に減っていく。

 

「うあぁ……ぁぁああああああ!!!」

「うぐっ、はああああ!!!」

 

 

 チコは最弱にして最大な重力を発生させた。

そして今までプレイヤー側から吹いていた暴風が止まり、逆に超高気圧と化した。

 

「「いい加減壊れろ、過去の遺物があああああ!!!」」

 

 キリトとアスナの瞳が、黄色く……否、黄金に輝く。

そして、その細剣が二本とも爆ぜたのと同時に、禍ツ機の触手が爆ぜコアも収縮し爆散する。

 

「っ!」

 

 キリトはアスナより早く動き、爆発を利用してプレイヤー側へ着地する。

お姫様抱っことか気にする間もない。

キリトはアスナを地面に下ろす。本人も両手両膝をついて、息を荒々しく吐く。

 

「はーっはーっ」

「はぁはぁ」

 

 そんな彼等に訪れる、音の応酬。

 

”congratulation” ――おめでとう――

 

 

ラストアタックの文字が、二人の眼前に出てくる。

お互いに地面に転がる。

 

其処に駆けてくるマリオとアーロイ。

 

「流石キリト、ナイスファイト!」

 

 帽子を持ってくる白銀のチコを撫でながら、帽子をかぶるマリオ。

 

「ひやひやしたぞ。だけど、凄かったよアスナ」

 

 罠や弓矢を仕舞い、鎧を変更するアーロイ。

 

 

 そして、遠巻きに居る彼等も喜ぶ。

 

「あのキリトがやりやがった!」

「まったく、クラインの仁義ある戦いは素晴らしいの一言だ」

「そんな褒めんなよ、幸村!」

 

 嬉しそうに友人達とじゃれ合うクライン。

 

 

「ふぅ、”Congratulation”。良い戦いだったぜ、お前ら」

 

 スキンヘッドな商人、エギルは4人を労う。

キリト達もエギルや集まってきたタンク隊を労う。

 

そしてこの場の立役者である、劉玄徳やディアベルもこの場に来る。

 

「この場に居る皆が英雄だ。そして、功績も皆のもの。

 でも、君たちがいないと、やり遂げられなかったよ。

 ありがとう」

 

 ディアベルは代表して、彼らに感謝を告げる。

 

 

 

 

 こんなにいい雰囲気の中、闇の足音が聞こえる。

彼等は気づいていない、アーロイの背中を狙う者がいることを。

 

「グフフ……まぬけな奴らめ。勝って兜の緒を締めぬとは、な」

 

 そのものは、竜頭の形をしたキャノンを構え放つ。

その竜頭の口から飛び出る、縁が黄色で内部が黒の矢印がアーロイの背中を狙う。

 

「っ!アーロイ!」

「な……」

 

 

マリオは謎の光線を受ける。

そして、瞬く間にある一定の格好をして、台座が足元につけられる。

 

 

どうみてもこれは、フィギュアだ。

 

 

マリオは誰もが動けぬ触れぬ刹那の内に、その者にアームで奪い取られる。

 

「マリオオオオオオ!!!」

 

 キリトが間髪入れずすぐに立ち上がり、駆け抜ける。

彼以外あまりもの展開に追いつけない。

 

「ガハハ、ワガハイへの攻撃意欲、まことに結構。

 だが、まだ時期尚早だなぁ?さらばだ」

 

 いきなり流星が降って来たかと思えば、黒い体・白い眼・赤い口と白い手がついた大砲が追撃してきた。

大砲手は次の層へ向かう螺旋階段上に居て、キリトを瀕死状態にさせた瞬間転移して台座毎逃げた。

 

「嘘……嘘……だろ……?」

 

ディアベルは、彼の様子を見て劉備に対して頷く。

 

「皆!すぐに二層を解放しにいこう!皆に朗報を知らせるんだ!」

「「「おおおおおおお!!」」」

 

 事態を知らない者、知る者も全て上の階へ行った。

此処にいるのは、アスナ・アーロイ・キリトだけだ。

 

 

意気消沈し、自分の愚かさと戦闘後の隙、そしてテーマ解放とパックによるゲームバランス崩壊の容認が、

何故看過されているのか……。

これらを考え、最悪の想定を見つけてしまう。

 

「この世界をあいつらのものにするのならば、俺達は不要。

 ならば、こいつらを殺したうえで俺達をあいつらと同じ存在にするのが狙いなのか……?」

 

 いつまでも失意に落ち込む彼に、アーロイが近づく。

 

「キリト。気持ちは……全部じゃないが、少しわかる。

 マリオは……気の良い男だった。

 まだあの状態で回収されただけだ。きっと、上に行けば行くほど、真相がわかる。

 だから、今は我慢してくれないか?」

「我慢?我慢なら、とっくにしてるさ。なあ、アスナ・アーロイ」

「何?」

「ん?」

「俺が作るギルドに入ってくれないか」

 

「ええ、いいわよ」

「無論さ」

 

「ありがとう」

 

 キリトは拳を強く握る。

その目と拳は、容易に何を想っているかわかる。

しかしその覚悟は目測では測れないのだ。

 

「暴いてやる。絶対にだ!」

 

 

―――

 

 

 後日、彼らはこのボス部屋に来る。

実は禍ツ機……デスブリンガーは破壊されたが、ポリゴンとなって消えていないのだ。

その調査に、キリト達は来た。

 

「やはりな、間違いない」

「これね?」

「ああ」

 

 彼女たちは、この禍ツ機に対してダブルオーバーライドをする。

すると、このボス部屋の出入り口が締まる。

 

この事には、キリトも驚き。

 

次に、この部屋に演出が流れる。

演出が出てきて、この場に出現するのはスキンヘッドの男。

 

 

<なるほど、私の知識のみをゆうしたただのコピーか。

 いや、いいだろう。貴様、アーロイには渡したいものがある>

「なんだ、サイレンス」

 

 スキンヘッドで知識欲の権化で、善悪の判断のないロボットな男。

それがサイレンスであった。

彼は今AIで適当にしゃべらされているだけのもの。

現在この場に於いてARという電子情報の塊な為、危害は加えてこない。

 

 

<此処から西に行ったところの壁の奥に、DNAスキャンがある。

 そこから機械炉『OMEGA』に行ける。そこでオーバーライドすることで、

 前時代の奴が造った機械獣全てを使いこなすことができるようになる。

 

 また、機械炉の更に奥に、リセットボタンがある。

 これを押すのであれば、50層に登りボスを撃破する事が可能な仲間を集める事を推奨する。

 そうでなければ死ぬだけだ。

 秘密が、まだここにある。

 

 さあ、行け>

 

 

 サイレンスがこの場から消えるが、ボス部屋の開放はされていない。

まだイベント中だ。

この先に待っている其れに強い好奇心を持つ、キリトとアスナ。

機械炉の解放は、既に何度も行っているアーロイ。

慣れている様でサイレンスに言われた場所へ行く。

其処にはボス戦やそのあと出ていなかった謎の通路があった。

 

 そこを歩いていくと、徐々に埃っぽくなる。

機械も精巧から粗が出てきて、配線がめちゃくちゃになる廃墟同然の場所になっていく。

 

 この場所最奥部には、三角の扉のようなものがあった。

その扉の前に行くと、この通路から音声が流れてくる。

 

<DNAスキャンを開始します。……適合率、94.9%。

 ようこそ博士、『OMEGA』へ>

 

 扉が開放され、奥から蒸気と共に点灯がついていく。

『フォーカス』から、周辺モジュールを検索・解凍し情報をキリトに渡す。

アスナもアーロイと手分けして、この施設の探索を行う。

 

途中で見たこともない機械を、ショートさせながら最奥部に来る。

その最奥部では、見たこともない機械獣が作られていた。

 

首と尾が長く、ずっしりとした重鈍な体躯。

まさしく雷龍といえる存在だった。

 

「なん……だこれ……」

 

 初めての機械炉に興奮していたキリトは、恐ろしいものを目の当たりにする。

実際アーロイも、他の機械炉とは違う構造に驚きながらこの場所の探索をしていた。

ありえないと思いながらも探索した。

 

「どうみても、セイスモサウルスね。

 スーパーサウルスと云われ、樹羅紀最大の草食生物といわれているわ」

 

 アスナが御叮嚀に、眼前にそびえる塔であり要塞な兵器のオリジナルを想定し話してくれる。

その話で如何に目の前の存在がすさまじいが教えてくれる。

アーロイはモジュールで見ていた、この機械獣のスペックを。

 

勿論、このセイスモサウルス以外にも作られている。

 

「アスナ、あいつが暴れたらやばい。

 だから直ぐに中枢を、私達のオーバーライドで制圧しよう。

 キリトは念のため、護衛としてついてきてくれ」

「つまり、もしもの時アイツのヘイトを稼ぐってことだろ?

 じょ、上等だぜ……!」

 

 明らかな強がり。

だがそれを許される威圧感だ。しょうがないとしか言いようがない。

 

「行くぞ、3――2――1――GO!」

 

 三人は一気に駆ける。

アーロイは梯子を上った先にある機械炉のシステム中枢を、アスナは機械炉の機能命令上書きをオーバーライドして停止させる。

実際には協力させるといったほうがいい。

 

「っぶねー」

 

 キリトはそのセイスモサウルスの尾で、弾き飛ばされるところだった。

一層にいる最弱ウォッチャーのレベルは、せいぜい4くらい。

しかし、このセイスモサウルスは87と圧倒的であった。

その為後少し遅れていれば、キリトは消し粒だったというわけだ。

 

「キリト君、ヘイト稼ぎお疲れさま」

「応。それで、報酬は?」

 

 アーロイに聴くキリト。

アーロイはサイレンスに言われたように、最奥部へ移動する。

 

「まあついてきてくれ。この奥にまだあるんだ」

「でもさ、挑むには……」

「オーバーライドをしなけりゃいいんだ。

 行くぞ?」

 

 アーロイの後を追っていくと、再び扉があった。

今までと違う、なんとも旧世代の構造だ。

 

さて……この最奥部には、何があるのか。

 

 

 

「嘘……だろ……?」

「どうしたんだ、アーロイ」

「こいつはやばい。50層とか精鋭をそろえるのが大変なのかとか、

そういう次元じゃない」

「?」

 

 キリトとアスナは、アーロイからこいつらについて話を聴く。

話を聞いていくうちに、二人は顔面蒼白と絶望していく。

ついでにアーロイの世界がどのような感じだったのかも説明をうけて、

更に失望する。

 

「これ……クリアしないといけないんだろ?」

「ああ。これがあいつの云う、最大の秘密なのだろう」

「ホルス級タイタンの統合司令とか、絶望しかないわ。

 いえ、この施設の研究員全てが、絶望と悲痛に塗れた日記が多かったわ。

 どれだけの事だったのか」

「絶滅主義者か。どこにでもいるようだな」

 

 ありえないといいつつも、現実を見ることとする。

 

 最奥部にあるのは、数多のホルス級タイタンに囲まれた5つの存在。

全てが停止中であるのにも関わらず、今にも動き出しそうだ。

そんな雰囲気を醸し出す存在は、それぞれの宗教の頂点に立つものだった。

 

カオス級ヤハウェ・カオス級イエス・カオス級アラー・カオス級シヴァ。

 

そして、全てに君臨するのは、当時最大人数であった民族の皇帝。

 

皇帝級始皇帝。

 

更に数多のホルス級タイタンに、先ほどのセイスモサウルス『ブライトプレッシャー』……等。

全時代の全てが、この一層とは思えないほど広く開けた場所に集約されている。

 

「つまりだ、本当のボスは禍ツ機デスブリンガーではなく、こいつらだ」

「……それを踏まえると、全ての層のテーマフラグ持ち英雄は、

 仲間を伴ってその本当のボスを倒さないといけないのか。

 ……裏がある?」

「ボスはマスターハンド。マスターは全ての上のようなもので、その裏……?」

「秩序の逆は渾沌であるから、カオスかクレイジーだな」

「主なる手、と考えると一般論からして創造は右手となるわ。

 だからその逆は左手」

 

「最悪、両手を相手にするか、その両手を伴う至高の相手をしないといけないな」

 

 アーロイが説明づける。

キリトが道を見つけ、アスナがそのヒントを提示しアーロイが選択を出す。

そしてアスナが右手社会の事を添えて、最終の判断を下す。

 

 結局、ここは退散することになった。

しかしアーロイは強化と機械獣探しの旅に出ると言い出した。

勿論アスナも同行する。

キリトは逆に今後のギルド構築の為の仲間探しの旅に出ることにした。

 

 キリトは後にその容姿と言動で、女たらしと化す。

逆にアスナはアーロイに影響されて、男勝りとなったり女帝が板についてくる。

キリトは情報屋やクライン・エギル・ディアベルらと出会い、この世界を巡る。

アスナとアーロイは、前時代と現世の機械獣をオーバーライドして巡る。

 

 機械獣の層移動が可能だと分かると、すぐに行動を開始することとなる。

一匹毎にレベルがある。

この引き上げ……精鋭の軍隊を作る事が先決となる。

ブライトプレッシャーやデスブリンガー、ストームバード、サンダージョ―、ケンタウロス……。

数多の機械獣を従え、世間を牛耳る。

 

いつしか彼らは、攻略組と呼ばれるようになった。

 




 流れと雰囲気をこの一話で感じ取れましたでしょうか?
ストックはそれほどございませんので、不定期更新と致します。
たまに見に来てください。
お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。