ソードアートBro's   作:名無しの権左衛門

14 / 19
14672文字。


6:鏡の世界 決戦4 VSカービィ

6:鏡の世界 決戦4 VSカービィ

 

 ガイィィィンッ

 

「クソッ!」

「開幕の威勢はどうした、黒の剣士よ!

 いや、白の剣士かァ?ハハハ!」

 

 キリトは不完全な中、境界であるセーフルームで火花を散らす。

結晶や光を放つ藻・草・岩等が合わさり、実に幻想的だ。

更に透明度の高い水や洞窟と思わせる鍾乳石が、周辺を彩り実に赴きがあって詩作りが盛んにおこなわれるだろう。

 

しかし、今では存在をかけた凄絶な戦闘を繰り広げるばかりである。

 

 

 『光刃』というエフェクトてんこ盛りのソードビームがある。

これをやると、『侵蝕』という技で返される。

此方は闇が蛇の様に動き、対象を喰らう技である。

 

「(どうにかできないか……どうにかッ……!)」

 

 長時間の集中は、彼の精神をむしばむ。

反対にカービィ自身は、何事もなく行動を起こす。

 

「最初の30分は面白かった。

 まさかギャラクティックナイトの剣技を使えるとはな……

 だが貴様もわかっただろう?

 奴の攻撃は、魅せるモノで戦うものではないと」

「隙だらけ……んなもの……わかってるって」

 

 『鳳凰剣』。

剣に纏う覇気を練り上げ、突進を行う。

この攻撃は単調で、カービィに回避される。

 

 普通ならばここで叩き落とされるが、キリトも学習したようで方向転換し直線のみの機動ではなくなっている。

 

 最初のころは、絢爛たる剣嵐だった。

しかし無駄に体力や時間を使うだけで意味がなかった。

あの銀河騎士が使えていたのは、空中という優位な状況があったからだ。

 

だが今は地上のみの戦闘。

ただでさえカービィの身長が低くて戦いにくいのに、最恐に近い剣と最強の剣士が揃い踏みとなると少々精神にくる。

 

 キリトは時間を稼ぐ。

盾を片手に突撃したり、レイピアに『フラッシュチェンジ』して桜花や桜吹雪をかましてやったりする。

別に通常状態でも可能だが、このレイピア[オーバーロード]は個別に熟練度がある。

その為熟練度がMAXなレイピアで、銀河騎士のスキルを使う方が強いのだ。

 

 そのような方法を使ったとしても、無駄に体力や時間が減るだけで敵を圧倒することはできない。

じり貧である。

もしここにアスナ達が乱入しても、カービィの圧倒的優位は覆らないだろう。

 

「(変な違和感には慣れたけれども、依然として攻勢優位は覆っていない。どうすれば……)」

 

 

「仕舞いだ。黒の剣士」

 

 カービィは残像を作るほどの速度で移動する。

キリトはその姿を見ようと躍起になるが、何処へ行ったのかわからない。

その瞬間、背中に這うような悪寒がする。

嫌な予感を感じ取って、後ろを向くと闇を纏うカービィがどこからか出現していて今まさに攻撃されるところだ。

しかし彼は、エスカルゴンから受け取った研究の賜物を利用する。

 

 その中の一つ、『樹形図型並行計算量子PC』を使い、カービィの攻撃予知をして攻撃を防ぎ反撃する。

キリトのHPが4分の三に削れる頃、漸くカービィに一太刀入れられる。

この事実にカービィは、素っ頓狂な顔をした後大きく笑いだす。

 

「いいね、最高だよキリト!

 やっぱり主人公は違うよ!今まで泳がせていた甲斐があった!」

「泳がせていたというより、いつ取って代わろうかという隙が無かっただけなんだろ!」

「そうともいう。だが私の実力はこんなもんじゃないぞ!」

 

 するとリムラを地面から湧きだたせ、彼等による弾幕攻撃を実施してきた。

そこで彼も惜しみなく攻撃を発動する。

その攻撃とは、『雷靭:桜吹雪』だ。

この剣技は雷撃を使うが、属性的に使えないのでドリームエナジーを使う事にした。

 

 このエナジーによって放たれる刃は、弾幕を尽く粉砕しリムラを一つ残らず葬り去った。

更にこの弾幕に紛れて、カービィを攻撃したが葉っぱの如くひらりひらりと躱される。

この回避は緊急回避で、ジャストガードの移動版らしい。

マスターされると、対処法がないので非常に鬱陶しい。

 

 

「ちっ、まさかのドリームエナジーか。まあ、どうせカプセル式だろう。

 それまで回避しまくってやるよ」

「ハッ……」

 

 カービィの中の敵であるゼロは、エスカルゴンという存在を全く知らない。

しかしそのエナジー自体の存在を知っている。

少々危ないと思ったが、自身の身の安全が第一なのでもっと多用することに決定。

 

 

 剣技と通常の攻撃の攻防が、此処にて再開される。

僅かな思考や心残りは、己の命の未来を左右する。

 

誰にも邪魔されない空間で、無心ともいえる無我の境地に至れるような瞬間。

そんなミリ秒、刹那、一瞬の時が過ぎ去る。

 

「(このままだと……いや、もっと感覚を研ぎ澄ませろ!)」

 

鋭利に。

 

「(もっと速く!)」

 

鋭敏に。

 

「(隙を見せるな!)」

 

鋭心を。

 

「(殺せ!剛を柔で制し、無心となり奴の隙を確実に取る!)」

 

気鋭を発し。

 

 

「ハハハ!いい加減に往生せよ!我には到底追いつけぬ!」

 

 

カアァァァン

 

 キリトのマスターソードは、カービィのクレイジーソードに弾かれる。

彼の集中力は、そこで切れてしまう。

 

「ぁ」

 

 意識の覚醒率が低い中、行き成りの目覚めであるため言葉が出ない。

しかし心ではちゃんと、負けたということを受け止める余地があった。

 

「愉しかったが、結局はただの遊びだ。

 我こそ最強の星の戦士なり!ハハハハハハ!」

 

 

 カービィはキリトに向かって、思いっきりクレイジーソードでぶった切った。

 

 

ガッギャアァァァァン

 

 

 

 それにしても、斬ったとはいえ不思議な斬撃音だ。

この音はどうみても、金属物がそのソードの軌跡に割り込んで引き起こされた音だ。

 

 

 

 

「最強か……それはどうかな、ゼロ。いや、今はカービィというのか」

 

 

 

「貴様!?」

「なっ!?」

 

 

 

 カービィとキリトは、目を見開きお互いの間に入る者の姿を目に焼き付ける。

その者は真っ黒でありながら、何かを握りクレイジーソードを防いでいる。

 

 

 

「ククク……貴様……我がダークマター族の面汚し、焦げたヒトデ君じゃないか」

「黙れ、ゼロ」

 

 

 明らかに剣呑な雰囲気を放ち、対立しあっている。

キリトは目の前の影キリトが、本当に敵か味方なのかわからないのでこの場から動けなくなる。

もしもという妄想と想像が、脳裏や思考を埋め尽くし最悪や最高の展開なのかを頭の中で必死に考えた。

 本来ならば、マスターソードに取り付けている量子PCで、未来結果をみればいい。

 しかしこの急展開に、思考がついていけなくなっている。

影キリトは境界の鏡の先にあるボス部屋で、いろんなボスをまとめる立場にいた。

つまり超強力な存在だと認められる。

 

そんなボスのボスが、自分を助けた……少なくとも殺させないという意思がある。

 

「しかし、何時までもクソガキ焦げヒトデ君は、そんなまがい物を着ているのか。

 それは一度問い詰めてみたい。

 いや、何故お前が、奴の陰に憑依しているのか全く見当がつかないんだが?」

 

 

 いまだにカービィは影キリトと己の得物同士で、拮抗しあっている。

この時間こそが、影キリトの返答へとつながる。

 

「我はシリカによって教えられた。真の強さとはなにか。

 それは”得手・不得手であろうと、受入れ妥協し学ぶもの”だという事だ」

 

「幼い子に指導されるとは、お前も落ちたものよ」

 

 カービィは影キリトに対して、侮辱の言葉をぶつける。

更に見下しの表情が見て取れる。

 

「今の地位に恋々とし、満足している奴とは違う」

 

 対して影キリトは、何も表情を変化させていない。

それでも心変わりしたという本人の独白は、明確なものだと判断できる。

 

「……いいだろう」

 

ガッ

 

「くっ……」

 

 カービィはクレイジーソードで、影キリトの武器を弾きあげ彼の腹を蹴り飛ばした。

影キリトは苦しんでいるわけではなく、距離を取られダメージを与えられなかった事を悔やむ。

蹴り飛ばされた彼は、直ぐに態勢を立て直し本体のキリトの所へ駆け寄り、護衛態勢を取る。

 

「焦げたヒトデ。お前が我々の組織から抜けるのであれば、我直々にお前を誅してくれん」

「テメェの腐った口臭でのキスとか、我の清らかな肉体が穢されるだけだ。死んどけ」

「……はっ、吼えとけ下郎。すぐに冥土に送ってやるわ」

 

 そういうピンクカービィを尻目にして、影キリトは本体のキリトに手を差し伸べる。

影キリトは無表情だが、左の瞳が赤という点以外本人と同じ容姿である。

また、聲も口調は違うが同じだ。

 

「起きるんだ、プレイヤーキリト」

「あ、ああ……」

「我はダークゼロ。昔は敵だったが、今は強さの秘訣を知るためお前の仲間になりにきた。

 本体と本来の意識は消滅した。そこで第二の意識と我が住む肉体をこの影にした。

 勝手なようだが、よろしく頼む」

 

 キリトは影キリトに握手を求められる。

本体キリトは、彼の言い分に苦笑いをしながらのこのゲームクリアの為ならと我慢することにした。

少なくとも、ダークマター族に肩入れをすることはなくなるだろう。

 

 握手をした瞬間、影キリトが剣を構え防御する。

その防御姿勢を行った瞬間、剣から火花が飛び散る。

何度か飛び散ったが、キリトや影キリト共々ダメージはない。

 

 

「我を無視するな。行け、もう一人のボク!」

「……」

 

 カービィが指示し動くのは、影カービィ。

影カービィが持つ剣は、クレイジーソードの贋作だ。

それに対して影キリトが持つ剣は、マスターソードの贋作である。

その為お互いに攻撃が通らず、性能もお互いを食いきれず拮抗してしまう。

 

「キリト、こいつは我がやっておく。

 お前は奴をやれ」

 

「わかった。死ぬなよ!」

「キリトもな」

 

 両者は余裕足るや不敵な笑みを浮かべる。

キリトはカービィに対して、『鳳凰剣』で一気に接近し『一閃:解』を解き放つ。

影カービィは、本体の危機に救援に行こうとする。

しかし影キリトに回り込まれてしまう。

 

「影よ。いや、本体に拒絶されたモノよ。我が相手だ。

 中身のない虚空等、取るに足らぬ相手。

 故に我など簡単に倒せるのだろう?

 星の戦士ならば、我と戦い屈服させてみせよ」

「……っ」

 

 影カービィの表情は変化しないが、口元が少し動く。

その動きは苦虫を噛み潰した様なものだ。

 しかし苦渋の表情と裏腹に、その一頭身による剣捌きは一丁前だ。

 

 人になったダークゼロは、腕の長さもあってか一頭身よりもリーチがある分、振り戻しが遅い。

故に一頭身の近接攻撃は、攻撃速度が高く中々一撃を入れづらかった。

 

「本体をよこすとは……影も不甲斐ないものよ。

 此奴がどれほど脆弱で、雑魚なのか。アイツも知っている筈だ」

「何をブツクサ言ってやがる!ここで倒れろ!」

「倒れるのは、キリト……お前だよ」

 

 そういうとキリトは一刀両断される。

しかし位置を調整されたため、掠りダメージしか入らない。

 キリトは位置調整が得意だ。実際はただの受け流しだが、一種の技と化している。

 その受け流しを会得したのは、ギャラクティックナイトとの戦闘だ。

ポーションの節約や攻撃から身を守るため、キリトは一生懸命に受け流しを訓練した。

結果ほぼ全ての態勢とほぼすべての方面からの攻撃を、受け流し・反撃を行えるようになった。

長時間の戦闘への集中力の他にも、このような防御方法を見いだすことにも成功した。

 

 

 戦闘は長時間続く。

その内、影カービィとカービィにダメージが行くようになる。

4段のHPバーが、二段目になるとカービィは周辺に己の血をまき散らす。

その血液からは、多くのリムラが出現する。そのリムラ達は、キリト達を拘束し行動不能にする。

 

 

「ク…ハ……ハハ……フハハハハハハ!!面白い!実に面白いぞ!」

 

 カービィは謎のフィールドを展開する。

そのフィールド内部には行けず、更に暴風が彼中心に吹き荒れる。

吹き飛ばされることはないが、剣技や行動を起こすことすら不可能だ。

 

 そんな状態の中、影キリトは周辺に影カービィが居ない事に気づく。

 

(「キリト。影カービィを見失った。不意打ちに気を付けよ」)

(「あ、ああ」)

 

 突然の心の聲にびっくりするキリト。

しかしすぐに落ち着く彼。

何せ影と本体はもともと一つである。

思いや考えは常にお互いが知ることができる。これは当然の事である。

 

 

「貴様等ア!よく見て置くがよい!何故、我々が光と闇の鏡界に分けられたのか!

 そしてこのシステムを作った奴が、一番絶望する事を今ここで示してやろう!」

 

 ただの風ではなくなる。

徐々に周辺空間が真っ赤に染まっていく。

セーフルームは幻想的な空間から、徐々に禍々しい色に染まりこの世の闇を示していく。

敵が居ない為、セーフルームなだけでダメージに関する制御は全くない。

 

だから周辺オブジェクトに影響が多大に出る。

 

 

「さあ、諸人共よ括目せよ!これが、終焉よ!」

 

 

 いつの間にか、影のカービィがカービィの隣に十字架の墓標に磔にされている。

 

 

 そしてカービィは影のカービィのHPバーを、全損させこの世からゲームオーバーにさせる。

綺麗なポリゴンではなく、赤と黒の禍々しい具現化されたボーンとエフェクトが周囲に飛び散る。

 

 

「ゼロ!影のカービィを殺して、一体何がしたいんだ!!」

「我はこの肉体を完全にしたいだけだ」

 

 即答の言葉は、この吹き荒れる暴風の中でも鮮明に聞こえた。

鮮明すぎて逆に気持ちが悪いくらいだ。

 

 

「この肉体。カービィは、ゲームとアニメ・漫画の影響を受けている。

 その中で私はアニメの部分が入っている事に感銘を受けた。

 

 何せ、この者にはまだ負の感情が残っているからだ」

 

 純粋無垢な赤ん坊である星の戦士であるカービィ。

彼は一切負の感情を見せなかった。

むしろ無いぐらいだと。

 

だがそれは間違いだった。

 

 負の感情がなければ、反撃も攻撃もしない。

極めつけはデビル・カービィと化して、周囲に危険を晒した。

 

この事から、彼は純粋無垢なだけで正と負という概念がなかっただけ、ということになる。

まだ関連付けも定義もまだ生まれていない、幼い赤子であったからこそともいえる。

 

 

 そんな状態で色のある状態のカービィと影のカービィという存在が、この世に両立すればどうなるか。

色付きカービィは今まで通り。

影カービィは負の感情や概念でありながら、この世の道理に流される空虚な存在になる。

 

 

「そして我は、この者の本当の負を壊した。

 この桃玉には、正の感情しかないが憑依したときに破壊した。

 

 遂にはこの負さえも、我の手で壊して見せた。

 今こいつは、最強の適性と補正を保持した人形である。

 

 

 そこに全ての光・表・正に、憎悪を持つ我がこの人形の貰い手となる。

 ならばどうなるか……」

 

 

 それは……ラスボスが、ゲームに登場する最強武器やキャラクターを、際限なく使用できるという事になるという事だ。

 

 

 カービィの肉体は、ピンク色から影カービィより深く影より暗く闇に堕ちる黒に染まっていく。

天真爛漫な彼の純真を示すその光ある瞳。

それは今虚ろとなり、光を失う。

 

 肉体の色がモノトーンへ変化すると、カービィの灰色になった目からは鮮血の涙が出る。

肉体が黒へ染まっていく過程で、カービィの瞳は閉じていく。

 

 

 キリト達はいまだに動きだせない。

彼等は風もそうだが、その圧倒的存在感に気圧されてその景色を眺めるしかないのだ。

作戦会議もできるし、マスターソードに付けたPCで未来を視ることもできるが、

彼等にそんな余裕はなかった。

 

 

 

 遂に彼の瞳は閉じられ、肉体も漆黒へ染まる。

 

 更に彼の額に、縦の割れ目ができる。

その割れ目は肉眼では暗すぎて見えないが、そこから気が放出されているので認識できる。

 

「今こそ冥土より覚醒し、この光ある全てを喰らい尽くしてくれん!」

 

 その裂け目は開眼される。

縦の裂け目と、左右に開かれる瞼のような皮膚。

 

 

 開眼されたところからは、充血なのか真紅なのかわからない真っ赤な瞳が、彼の額からこの世にその存在を見せしめる。

その瞬間、影キリトはキリトに作戦提示を行う。

風に運ばれていた瘴気を打ち払い、正気を取り戻したようだ。

 

(「キリト。今の変身シーンが最後の機会だ。今のうちに、影キリトとしての情報を渡そう」)

(変身かよ!「ああ、頼む」)

 

 

 この適合中にお互いに話し合う事が決定された。

それはストックの事と、ダークマターの憑依についてだ。

 

 

 ストックとは、『大乱闘スマッシュブラザーズ』に登場するキャラクターの再復活上限数である。

このストックの補充は、『生命の珠』という淡く光るアイテムとして稀に出現するので、これを使うかインベントリに入れておくこと。

ストック制度は、上記ゲームからこのゲームに適用されている。

 

 ストック対象者は、上記ゲームの登場キャラと彼等とフレンド又は相方だと認められたプレイヤー。

このストックはデフォルト3。

これが1以上あると、他者のHPが0になった時このストックを消費して、HPを全快にして再復活する。

 

 またプレイヤーだけでなく、これが適用されるキャラは記憶やレベル等重要項目以外、全て状態が初期化される。

初期化に伴い、スマッシュボールという切り札も3回に一回使用可能になる。

 

 

 ダークマター。基本的に種族名を表す。

この世に存在する意思を持つ生命の負のエネルギーが、塊となって憎悪の念から実体化した思念生物である。

その為負の逆である物体や思念に触れると、消滅または行動が停止し封印することが可能。

 

 彼らの特徴は、体が黒色だったり意識体の気分の増減を感じ取る。

そして感情の起伏や憎悪等、負の情を沸き上がらせるほど彼らに見つかり乗っ取られる。

膨大な時間、正や負の感情に浴びたダークマターは、強い支配欲や強欲を抱くようになる。

 

 結果数多の思念体から受けた負のエネルギーを転換し、仲間を増強する。

数多の感情と状況で、未知数の仲間がいる。

 

彼等との合理性や効率性等、目的が一致すればするほど強力になる。

 

 

 彼等ダークマター族は、憑依が得意である。

大多数がそうであり、肉体は正のエネルギーを中てられるだけで大きな傷と共に、分離と乖離を開始する。

しかし力が強い物ほど、そのエネルギーに耐性を持ち逆に敵に取りつき、内部的破壊を行わせる。

 

 

 彼等は実体を持たないので、思念体と呼ばれる意思や意識・自我を破壊し本体を己のものにしたがる。

 

 対処法は、痛烈な痛みを与える事。

思念体は五感が無いに等しい。

なので五感の中で、一番強烈な痛み・光による刺激等を与えると良い。

 

 それでも憑依を解きたければ、本体とは別のものを用意して乗っ取られた自我を他者に移したり物に移譲することで

少なくともその本人は、彼らの支配から逃れられる。

 

 

……等。

 

(「そして最後に、プレイヤー側に参戦したという事で得た情報だ」)

 

 ダークゼロは、次々に口にしていく。

目の前の暴風の中心では、ゼロがカービィにダウンロードと共にクレイジーソードの本懐を発揮する段階まで来ている。

 

 

 さて、カービィの場合特殊だった表裏の問題。

通常の場合だと、表裏一体だから片方を消すとその者はこのゲーム的にも異常なので、

そのまま痛みなしに消されてしまうという事だ。

 

 これを踏まえると、現状2VS1の今フレンドリーファイアが恐ろしい。

つまり同士討ちによる攻撃を奴は誘発する筈なので、それに対する処置が必要になる。

 

その処置の一つが、シリカから学んだ三次元内での複素二次元直線(4次元)という位相空間を利用したものだ。

 

 複素二次元直線(4次元)は交わらない。

しかし原点でのみその直線は交わることができる。

光と影の複素二次元の面は、それぞれが描く構造が原点を中心に交わり描かれる物体そのものが、

実体という事をシリカ(アルセウス)が発見した。

 

これを鑑みると、原点周辺座標が実体だとわかるので、光と影が原点で交わるような事や原点を中心に何か構造を

創るような事(左右対称になる行動)をしなければ、本来の実態に被害を及ぼすことはないという事になる。

 

 それを踏まえて、相手を別位相で攻めるとしよう。

この世(実体がある3次元世界)の敵を攻めるには、自分たちが点となり移動することになるので

実体を作るような緻密で精密な行動をしなければ相手から攻撃を受けずにダメージを与えられることになる。

 

 ゼロはカービィの補正を乗っ取って上機嫌だが、逆を返せばカービィという存在に囚われている。

そこで別位相による多次元攻撃を行い、敵が何か防御や思案を始めたら原点に集合し実体になる。

別に点で実体を描かなくても、そういう概念であるだけなので描写とあたり判定の修正はカーディナルに任せる。

 

それと実体になったとしても、複素二次元の直線であることに変わりはない。

故にキリトの判断で、二つのソードスキルを使う事が可能になる。

更にダークゼロという存在も加わったことで、それぞれのソードスキルの隙を見つけて

スキルコネクトを使うことができるようになった。

 

 せこいかもしれないが、こうでもしないとゼロに勝てない。

 

 今のゼロは、額に真っ赤な瞳・カービィの閉じた目から血涙・漆黒の体躯・闇の闘気・右手に真紅の刀身と紫電を纏い、

暗黒の覇気をまき散らすクレイジーソードを持っている。

こんなラスボスを、専用の武器で倒そうにも実力不足もいいところだ。

 

(「とにかく、カービィを倒してストックを使わせる。

  そしてゼロとカービィのフラグをリセットし、彼等を分離させる。

  きっとカービィは元の状態に戻っているだろう。

  そして憑依レベルもリセットなボスを、そこで一網打尽にするしかない」)

 

(「了解。我が力を見せよう」)

 

 

 この時、丁度風が止んだ。

 

「かかってこい、愚かな者ども!我こそはゼロ!絶望へ誘う者だ!」

 

 ゼロは己の身体を滾らせるかのように、周囲に吼える。

その時既に彼等を拘束する暴風は消えていた。

 

既に白と影のキリトは駆けており、ゼロの死角に入り込んでいた。

 

「ハアアアア!!」

 

 白のキリトは、マスターソードを渾身の一撃で振るう。

早期解決に向けて、全身全霊をかけて攻撃を行う。

 

「見えているぞ?」

 

 ゼロは口角を上げ、ニタリと白キリトを見る。

白キリトは気迫で悪寒を振り払い、そのまま切り払う。

 

ゼロに少量のダメージ。効いている気がしない!

 

「そこだな!」

 

 ゼロが覚醒したクレイジーソードを振るう。

その切っ先は影キリトへ向かう。

 

影キリトはそのクレイジーソードを、本体と同じ感覚で受け流し胴体へ拳を打ち込む。

接近戦で振るうのは、剣ではなく拳の方が早い。

ましてやこの一瞬が大事な戦では、この初速が速いスキルのほうがいい場合がある。

 

 クレイジーソードの力を受け流したが、そのまま抑えた状態だと贋作ソードが破壊されてしまう。

よってすぐにその場を離脱する。

そのおかげでゼロによるリムラ召喚とソレの突撃を、まともに食らう事はなかった。

 

「喰らえ」

 

 影キリトはゼロが持つクレイジーソードから放たれる『侵蝕』から、贋作ソードを振るったり違う位相に逃げ込んで回避する。

何故別位相で戦闘を行っているのに、こんなに容易く苦戦を強いられているのか。

理由はただ一つ。

ゼロやカービィ本体ではなく、クレイジーソードの効果が位相そのものを三次元として

強制変化させているからと考えられる。

 

 つまり別位相で戦闘しても、結局は同士討ちしないだけの戦闘になっているだけなのだ。

このゼロではなく剣の効果だと知ることは、大分時間がかかった。

しかし思考の先で、戦術的に打ち勝とうと戦闘する二人がいる。

 

「うおおおお!」

「フッ」

「甘いわ!」

 

 二人の一斉同時攻撃を、覇気と闘気で防ぎクレイジーソードで薙ぎ払う。

影キリトは後方へずり下がり、白キリトはバックステップで下がる。

 

「合わせろ!」

「了解」

 

 お互いの死角に入らない様に、一気にラッシュをかけていく。

影キリトは左手に剣を持ち、白キリトは右手に剣を持っている。

 

 攻撃は近距離もそうだが、ギャラクティックナイトのスキルを持つ白キリトが遠距離剣技を放つ。

影キリトはゼロの性格と攻撃の手順を知っている。

基本的にやることは、たいして変化しない。

 

 その為影キリトがこのようにタゲを取る行為は、非常に理にかなっており容易に囮をすることができる。

 

 二人がお互いの領分をはっきりして行動を行うので、ゼロは体力を徐々に減らしていく。

しかし徐々に隙がなくなっていく。

それでもあきらめず『紫電』を放ち、相手の行動領域を狭め回避選択を縮小する。

 

これが功を成したのか、麻痺状態へ陥る。

本人は気づいていないようだ。

偶に行動が鈍っている。

 

「キリト」

「『空靭:冥』!」

 

 空間を切り裂き、亜空間から極太光線を出させる。

此れがゼロに当たる。

 

 

ゼロはスタン状態に移行する。

 

 

「(キリト、陰陽同化するぞ。我が援護する故、今まで通り戦闘してくれ。

  そして同化したら、もう一人の自分がいるような感じで我を操ってくれ。

  お前は一人ではない、今は二人だ。

  つまり、三倍以上の強さを出せる)」

 

 ゼロは自分なりにキリトを応援する。

直ぐに影キリトは、白キリトと同化する。

影と白が交わり一つになる。

この様相を、陰陽同化という。

 

 今回のように混ざっても、再び分割されるという事で陰陽玉を連想。

陰陽同化とした。

また陰陽同化を行った事で、ダークゼロ(影キリト)の情報が更新される。

 

 この更新によって、お互いの整合性が100%となり信頼性を確実にする。

ダークゼロのアップデート情報は、銀河騎士の剣技使用可・本体の剣術・勘による思考ルート模索。

おかげで戦闘で息の合わせ方を覚え、本体キリトの動きをトレースする事ができるようになった。

 今までは本体の思考を、そのまま指示として受け取っていた。だから思って解って行動するという、この手順によって隙が生まれ一秒以下のズレが発生していた。

極わずかな隙でも、フレーム猶予外だと確実にシンクロやユニゾン・フュージョンの判定外となってしまう。

故にこの困った仕様がなくなり、完全な同体として機能するようになった。

 

 

 それとこれこそが、本来の同化のメリット。

 

 能力面では色を含め左右対称な白と影の性能が同じになり、陰陽同化後の単一本体能力が1.2倍になる。

1.2倍になるのは、通常の表記されているステータス全てである。

陰陽離脱という、同化から再度分離する能力を使うと再度白と影の存在になれる。

これになるとそれぞれの能力が、ステータスと同じ高さになる。

 

 戦闘面では同化により、二刀流が使える。

左手は影、右手は白が持つ。

しかし本体は利き手にもつ武器こそが、白の者の戦闘武器である。

故に左手が利き手ならば左手に持った武器が、陰陽離脱によって登場した影の右手に同じような性能を持つ剣をおさめてくれる。

 更に戦闘中だと片手ずつが、別々のソードスキルを使えるようになる。

陰陽同化による同化率(シンクロ率)が100%に近くなると、同じスキルを使うことで上位互換剣技を使えるようにもなる。

クールタイムや隙もあるが、そこはお互いの領分単一の本体にかかり別処理となるので硬直はない。

勿論抜け道が多いので、同化と離脱を多用することでバグや仕様を見つけるのも面白いと思う。

 

 特殊条件の場合。

今回はダークゼロが、半身に宿っている。

これにより彼の者が持つ、オリジナルスキルを使う事ができる。

このスキルは彼の者だけに影響したり、単一本体に影響を及ぼす可能性があるので注意が必要になる。

 

 

 纏め:デメリットは片方がやられると、確実に片方も時間経過で死ぬ。

    しかしその究極のデメリット以外は、非常に反則な戦闘能力だ。

    これを有効活用すると、必然的に2VS1(離脱時)または10VS1(同化率100%)の状況に追いつめられる。

 

 

 これらの情報を本体キリトは、ダークゼロから情報共有される。

正に今こそ、コレの使い時だ。

 

 

「「陰陽同化!!」」

 

 

 白キリトは裂帛の気合を込めて吼え、影キリトは白キリト(本体)に釣られてただ喉を張り上げる。

 

 

 この瞬間、純白な光が影キリトを……漆黒の闇が白キリトを包み込む。

そして影キリトを包んだ白光が、闇に包まれた白キリトの方へ吸い込まれる。

 

 

 吸い込まれ、同一の場所で色が混ざっていき虹色になる。

その虹色は徐々に透明な結晶へと変化していき、最後には透明で綺麗な結晶を周囲に爆風のようなもので散乱させる。

 

 

 ゼロはスタン状態で、その場から動くことができない。

思考すらも止まっている。

そんな中この者の目の前まで、歩いて接近する者がいる。

 

 基本容姿はそのまま。服装は縁が白色で、布地の色は黒。服装は今まで通り着ていたもの。

瞳は同化100%ではないので、左目は黒で右目は白色となっている。

実に無言でその内に殺意を抱き、明確な終止符を打つ覚悟が見える。

 彼らは真っ黒な肉体と赤い剣を持つカービィに近づく。

右手にはマスターソード、左手にはマスターソード。

同化による更新で、贋作は消えてなくなった。

 

 

 

「カービィ。戻ってきてくれ」

 

 基本的な意思は、本体が受け持つ。

心の中でダークゼロは、考えを与える。

 

 

(「奴の闘気により、我々の肉体と同化が脅かされる。

 よって、ここにて強化を行う」)

 

 闇の闘気と暗黒の覇気により、位相原点に交わる彼らの同化に綻びを入れ始める。

まずはこれを防がないと、全てが始まらない。

初期シンクロ率は30%。今は10%。

 

(「『青の場合』」)

 

 ダークゼロがそう宣言すると、周辺にマイナス200度程の冷気が走る。

そして冷気はこの空間を冷やしに冷やし、同化した彼らにこの空間に存在する全てから護るようにまとわりつく。

この瞬間にシンクロ率の低下は止まった。

すぐさまキリトは、空中にとどまり硬直しているカービィを攻撃し始める。

 

 しかし攻撃しても、そのHPは下がる事を知らない。

そこでダークゼロがスキル発動の提案をする。

 

(「キリト、奴の防御は異常だ。そこで、此方も超火力を当てる。

 『赤の場合』」)

 

 

 キリトの頭上に紅蓮の火球が出現し、周辺一帯を赤に染める。

火球はこの空間を極寒の地へ変化させた冷気から、影響されたり逆に影響させることはなかった。

その火球はそのまま、キリト周辺戦闘域を爆炎で薙ぎ払う。

これは強化中の隙を埋め合わせるための支援効果だ。

 

だが今敵は硬直中なので、この支援効果を見ることは叶わない。

 

「『ホリゾンタル・スクエア』!」

 

 水平攻撃4連撃。

これを左右同時に行う。

しかしシンクロ率が低いので、そんなにダメージを与えられない。

 

 

「『クロスエッジ』!」

 

 双剣突進攻撃。

突進しても意味がないので、前への威力を剣に持たせそのまま斬る。

 

 

スタン状態、残り60秒。

 

 時間は多いようで少ない。

このままの速度では、確実に仕留められない。

そこでダークゼロは、最後のスキルを発動する。

 

(「これ以上の遅延は、命の危機に関わる。最後のスキルを使おう。

 『緑の場合』」)

 

 周辺に黄緑や黄色の稲光が走り、キリトとカービィを檻に閉じ込める様な感じで雷が包囲する。

その檻の中では、自身が電子化し粒子中を高速移動できる。

また硬直時間の短縮や思考速度の上昇、技の発生等が速くなる。

 

これが最後の攻め時。

 

しかしキリトはこの強化された速度に、頭は追いつくが体との調和がとれず中々攻撃とスキルコネクトが発動できない。

そこでダークゼロはラスボス級の思考速度を以って、キリトの思考速度や運動能力を支援する。

 

(「キリト。最後のスキルフュージョンだ」)

 

 現状一つの自動発生条件外の手動切り替えスキル。

これを使うとシンクロ率・ユニゾン・フュージョン等の確立が非常に高くなり、攻撃速度等の補正が異常に高くなる。

おかげで戦闘能力の上昇と、周辺の檻のような雷の結界により四方八方から攻撃できる。

スキル使用後のクールダウン受付のフレーム猶予も簡単に狙って、次のスキルを使用できるスキルコネクトを狙える。

 

 

「『並行展開≪パラレルアクティブ≫』!!」

 

 覚えている全ての技を、相手にぶつける。

スキルコネクトと強制キャンセルで、剣技(ソードスキル)のクールダウンを拒否して無茶苦茶なインファイトをする。

それとマスターソードに装着している、オリジナルスターロッド幾何学群でドリームエナジーを抽出する。

これをマスターソードに付与して、カービィを内側から破壊していく。

 

 ドリームエナジーは、反対の存在であるゼロを傷つけHPを大いに減少させた。

今までドットレベルで減っていた体力は、ごっそりと消え失せる。

 

体力は0になる。

 

 

 すると、この空間を覆っていた闇は晴れ、青空が広がる。

本来ならば草原やなだらかな丘陵が、背景を席巻するように周囲へ広がる。

しかし今は雷の檻や極寒の冷気が、空間を支配しているのでそんなさわやかな景色は現れなかった。

 そんな悲惨な状態だが、かわりにカービィはHP0によるポリゴンを散乱させ初期状態へ戻る。

体力も全快にする。

また覚醒したクレイジーソードやカービィ本人が纏っていた闘気は、一気に鳴りを潜めてしまう。

クレイジーソードは休眠状態となって、カービィの右手に収まっている。

 

 カービィの目元にあった血涙は消えており、同時に額の瞳は存在していない。

真っ黒な体躯も、既に元のピンクボールに戻っている。

全てが戻ると、クレイジーソードを持ったままの彼は地面にポトリと落ちる。

 

 

「カービィ!」

 

 

 キリトは地面に膝をついて座り、四つん這いになって右手で彼の身体を揺さぶる。

ダークゼロは静観している。

 

 

 

「……ぁれ?キリト……?」

 

 

 

 彼の者はそういい、瞳を開ける。

ちゃんと目に光が灯されている。

 

 

 発動から3分経過。極寒と雷電のフィールドは終幕を迎える。

これによりカービィは極寒と痺れに侵されることは無くなる。

 

 

「よかった……」

「キリト……変な目になったね……ありがとう、ボクの為に……」

 

 

 そういってカービィは瞳を細くしていたのを、ぱっちりと開けて起き上がる。

傍に落ちているクレイジーソードを吸い込み、ソードカービィへ変化する。

この変化は既に、欠片収集で見たことがある。

だから驚くことはない。

 

 

 さて、結構無視していたが、今青空の下の草原の少し先に地面を真っ赤に濡らしている物体がある。

それは真っ赤な球体で、偶に白い物体が見えている。

 

「あーあ、ボクの心に入ってくるからそうなるんだよ。

 だから中途半端に残ってストックを使えず、そのまま額から出てきた口でしょ?」

 

 

「キ……サマ……ユルサ…ン……」

 

 

 その白(肉体)と赤(血)がミックスされたグロイ状態。

実に満身創痍だ。

この状態を早速撃破しようと動く。

 

だがこの動きよりも速く動いたのは、ゼロである。

 

 

「我が無念!今ここで、晴らさで置くべきか!」

 

 いきなり饒舌になるゼロ。

この状態に違和感を覚えたのか、ダークゼロは警鐘を鳴らす。

 

 

(「キリト。ゼロはこの世遍く意識体の負の感情。そのものの塊である。

  彼奴が行おうとしているのは、善良な心を負へと堕とす攻撃だ」)

 

 気を付けるように云おうとした瞬間、カービィはゼロにクレイジーソードで切りかかる。

キリトはダークゼロとの念話に集中していたので、その突発的行動に気づくことができなかった。

そのため結果として、ゼロの行動を早めることになってしまう。

 

 

「ハハハハハ!!死ね!滅べ!この世を統べる理よ!森羅万象よ!天上天下の三千世界諸共、我が憎悪によって堕落せよ!」

 

 最高にハイとなっているゼロは、視認できる程の真っ黒でどす黒い憎しみ等の感情を周囲に放つ。

これにより周辺空間や景色が、酸化・風化・劣化したインクの様にぺリぺリと剥がれ飛ばされていく。

 

「ぐぅっ……!」

 

 カービィはクレイジーソードを前に突き出して防御する。

必死で耐えているが、徐々に押されている。

その様子を見て、ダークゼロはあきれ返る。

 

今は純粋で素直なカービィ。

そんな者が、クレイジーソードの本懐を遂げられるわけがない。

 

 同化キリトから、影キリトが分離し傍にいるカービィの目の前に立つ。

影キリトはこの程度の憎悪ならば耐えきれる。

今のゼロは狂気に陥っている。その為、純粋な怒りや苛立ちという一番の割合を占める負の感情まで、

この周辺に放っている覇気に載せる事はかなわない。

 

 これらを%で言うなら、40%程。

結局ゼロも命が惜しいようだ。

何故か。

 

 それらすべてを載せると、ゼロの存在意義がなくなり完全消滅してしまうからだ。

つまりこの世の全てを赦してしまう事になってしまうのだ。

生にしがみつく彼の者。

憎しみでしか生きることができなかった者の末路だ。

 

 

「カービィ」

「だ、誰……?暗くてよくわからないよ…?」

「その剣を貸してくれ」

「だ、ダメだよ!今は、防御しないと……」

 

 じれったいカービィを、銀河騎士剣技である『空靭:冥』で亜空間を開いてそこに投げ入れる。

ついでにクレイジーソードを奪い取る。

 

 後に亜空間から出れなくなったランディアとローアに勝利し、マホロアと戦闘しに行こうとしたギルドに拾われることになる。

 

 

 さてクレイジーソードを左手に持ち替えることで、マスターソードは空中に露散した。

別に影キリトはその理壊の剣によって、己の力を溜め裏切ろう等とは思っていない。

 

 

「キリト、行けるか」

「嗚呼。いける」

 

 其れに頷くことで、最終局面へ向かう事になる。

 




 長ったらしくなりましたが、いかがでしょうか。
楽しんで頂ければ幸いです。

 是非またいらっしゃってください。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。