ザ・バックホーンの『コバルトブルー』だと思っています。
全部終わった後に聞いてみても面白いかもしれません。
それでは続きをお楽しみくださいませ。
-06:00-
ここは鉄底海峡の東側、闇の結界のすぐ外側である。
伊能を乗せた艦娘形態のあきつ丸は、一人闇夜の海に佇んでいた。目の前には、鉄底海峡を半球状に囲む闇の世界の境界があった。そこから一歩でも踏み出せば、深海棲艦のテリトリーである常闇の世界である。
深海棲艦の中でも一部のモノのみが有する世界を改変する能力によって生み出されたその闇のベールは、深海棲艦たちにとって無敗の牙城、己のテリトリーである。今まで多くの提督たちがそれに挑み、暗黒の世界に没してきた魔境であった
『いよいよだな』
「ええ」
伊能は眼前の結界を睨みつけながら、以前石壁から言われた言葉を思い出していた。
***
『伊能、艦娘と深海棲艦は本質的に同根だ。彼女達は同じ根を持ちながら、正反対の方向へ向かって伸びているだけなんだ』
『深海棲艦が世界に闇の結界を作り出す力を持っているならば、当然それに対応する力を艦娘も持っている筈だ』
『人類が……いや厳密には艦娘が制圧した海域から深海棲艦が生まれないのも、艦娘が撃沈させた深海棲艦が時々艦娘になるのも……恐らくはその『何か』が密接に関係している』
『そう、つまり。深海棲艦が【世界を異常へと改変する力】をもつならば……艦娘にはその逆、【世界を正常へと戻す力】があると僕は思うんだ』
『艦娘がその力を最も最大化するのは、提督と心を……魂を重ね合えたその瞬間だ。二つの魂が渾然一体となり、魂の奥底から二つの力を合一して弾き出すその時が、艦娘の力が最大化する瞬間なんだ』
『僕はお前になら……いや、お前にしか出来ないと思っている。お前に出来なければ、他の誰にもこんな事は出来ない』
『なあ伊能、この世の誰より強く鋭い魂をもつ僕の友よ。お前の回答に僕は命を賭ける。お前になら僕は運命を委ねてもいい。だから、重ねて問うぞ』
『お前は世界を切れるか』
***
『世界をきれるか……か。なんとも凄まじい世迷い言だな、あきつ丸』
「そうでありますなあ、将校殿。まったくもって石壁殿は頭のネジがとんでいるでありますよ」
伊能とあきつ丸はそう笑いながら話す。しかし、それは侮蔑や嘲笑の意味を含んでいない。二人は心底楽しそうに語り合う。
『だが、そんな世迷い言を実現したなら、それは大層愉快なものであろうよ』
「いやはやまったくもってその通りでありますなあ」
二人は笑う。ふてぶてしく笑う。楽しくて仕方がないとそう言いながら、あきつ丸は腰の軍刀を抜刀する。
『……答えなど最初から決まっている。石壁が俺になら出来ると言って、不可能だった事など一度も無いのだからな』
伊能のその言葉に、あきつ丸は笑みを浮かべる。
「『この世の誰でもないお前だから運命を預ける』でありますか。いやはや、相変わらずの人たらしでありますなあ、あの人は。そんな風に言われて滾らぬ戦人が、この世にいる筈がないでありましょうに」
伊能が石壁に己の命を預けたように、石壁は己の運命を伊能に預けたのだ。そうまでされて、この男が奮起せぬ事などあり得ない。
「さて、この前代未聞の采配が、歴史にどのように記録されるでありますかな?」
『神算鬼謀の名将か。無知蒙昧な愚将か。そのどちらになるかは、俺達の一刀にかかっているのだ、あきつ丸』
「なら是が非でも、あの頼りなくも頼れる総司令官に最高の名誉を送りたいでありますなあ。身の丈に合わぬ名声に目を回す様は、さぞや滑稽で見ものでありましょう」
あきつ丸と伊能は、そう軽口を叩きあう。
『……さて、ではいくとするかあきつ丸』
「……ええ」
世界が黎明の時を迎える。背後の水平線から光が溢れ始めた。
それに合わせて、伊能は己の全てをあきつ丸に委ねていく。魂を重ね合わせ、あきつ丸のもつ力を限界まで引き出し、体に充足させていく。
体を重ねるだけでは意味がない。心を通わせるだけでは足りない。魂を溶け合わせ、二つの力を一つに合一させねばならない。
かつて石壁が鳳翔とそうしたように、伊能とあきつ丸は二つの魂を結んで艦娘という種のもつ根源的な力を引き出していく。
繋がり、溶け合い、流転しながら魂がその力を増大させていく。熱く燃え盛る闘志を、冷たく鋭い殺意を、固く繋がる絆を、一つへと収斂させていく。
一つとなった魂の中を想いが巡る。巡る。巡る。回り続ける度により重く、より早く、より鋭く。
その全てを刃に込めて、まるで弓を引き絞る様に、ゆっくりと上段へと軍刀を引き上げていく。
世界を切り、運命を捻じ曲げ、友の命を救うために。暴れ狂う想いの濁流を全てを一か所へと収束させていく。
そして、最上段でピタリと刃が停止する。まるで世界が静止したかのような静謐の中、完全に合一した二人の意識はただ眼前の闇のベールにのみ向けられていた。
背後の水平線から暁の気配が迫ってくる。チャンスは一度、一瞬のみ。
『あきつ丸、俺の魂の一切をお前に預けるーー』
水平線から太陽が顔を出す。その刹那、最初の日光が世界を照らし、夜から朝へと世界が切り替わるその瞬間。
『ーー切れ』
神速の破断が、闇のベールへと、走った。
***
「所詮あなた達がどれだけ努力したところで無駄なのよ。ここは私達深海棲艦の領域、常闇の世界!この闇がある限り、私達は無敵なのよ!!」
歯を剝いて嘲笑する飛行場姫。追い込んだ金剛達を前に、その力を振るうべく手を掲げる。
「さあ!この鉄底海峡に沈む鉄塊の一欠片となりなさい!!」
手が振り下ろされた。その瞬間、背後に鎮座する砲座から一斉射撃が放たれる。
火力は金剛達に集中し、轟音と共に爆炎が広がった。
「くふふ……あははは」
爆散する衝撃波が世界を揺らし、水煙と硝煙が界面を包むなか、飛行場姫は心底愉快そうに笑った。
「アハハハハ!!……ッオブゥ!?」
勝利の美酒に酔っていた飛行場棲姫の顔面に凄まじい勢いて飛来した鉄塊が衝突した。その衝撃で飛行場棲姫は前歯が折れ、鼻の骨が歪み、血が溢れ出てくる。
「おっとすまねえなぁアバズレ。あんまりに大口開けてっから屑入れかと思ってついゴミを投げ入れちまったぜい」
煙の向こう側から、くず鉄を投擲した姿勢のまま、額から血を流した金剛が現れる。
「ば、馬鹿な!?あれだけの一斉射撃を食らって、何故生きているの!?」
鼻血を流しながらそう問う飛行場姫に、金剛は凄絶な笑みで答える。
「はん、てやんでいべらぼうめい!!日輪の民をなめるんじゃねえやいダボハゼ野郎が!!!あの程度の小雨でこの金剛を沈められるわきゃぁねえだろうが!!!」
血化粧に彩られた金剛の啖呵が海上に響き渡る。金剛はあの爆撃の瞬間艦隊の前に飛び出して全体の盾になると、その辺に浮いていた深海棲艦の死体を二体引っ掴んだ。そして即座に一体を自身へ集中する砲爆撃へと投げつけて眼前で誘爆させ、もう一体を盾にして爆風を凌いだのだ。まさしく神業である。
だが、流石に無傷とはいかなかった。防ぎきれなかった衝撃で彼女の砲門はほぼ全てがひしゃげ、戦闘能力は殆ど喪失されていた。にも拘らず、彼女は微塵もその自信を揺らがせる事はない。
「それにさっきから黙って聞いてりゃべらべらとくだらねぇ口上たれやがって!!なあにが常闇の世界では無敵でい馬鹿馬鹿しい!!手前に餓鬼でも知ってる当たり前ん事教えてやるから耳ン穴ぁかっぽじってよおく聞きやがれってんだ!!」
響き渡るべらんめい口調が闇の中を切り裂く。その鋭さに、飛行場姫は寸の間動きを止めてしまった。
「確かに今この海は日がささねえ闇の中でい!お天道様も水平線の向こう側で休んでらぁ、だがなぁ!」
金剛は闘気を迸らせて啖呵をきった。
「お天道様は一度沈んじまったら、後は上るしかねえんだよアサガラババァ!!!この金剛が断言してやらぁ!!」
金剛が拳を天に向ける。
「陽はまた昇る!私達の……勝ちでい!!」
その瞬間、金剛の背後、はるか水平線の彼方から太平洋を暁に染め上げる日の丸が昇りはじめた。闇に染められた世界が切り裂かれ、光が世界を塗り替えていくのを見て、飛行場姫はこれ以上ないほどに目を見開いた。
「ば、馬鹿な!!なんで、太陽が!!!」
混乱の極地にある飛行場棲姫に金剛はふてぶてしい笑みを見せつける。
「さあ、目ん玉かっぴろげて活目しやがれい!!これが天下無双の名提督、ショートランド泊地が総司令官、石壁堅持渾身の策でい!!」
飛行場姫は正面にいる金剛を見つめた、彼女は照りつける朝日で黄金色に染め上げられている。
光り輝き、威風堂々足るその様は正しく現代に蘇った戦乙女。その瞳は金剛石の如く煌き、神々しさと華々しさを世界に向け放っていた。敵であるにもかかわらず、その美しさに飛行場姫は寸の間見惚れてしまった。
「さあ!!真打ち登場でい!!」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!』
金剛がそう啖呵を切った瞬間、世界を轟音が包んだ、飛行場姫を圧倒するように、前方から雄叫びが津波の様に押し寄せる。それは太陽を背に水平線から溢れ出してきた無数の艦娘達の、そして艦娘に搭乗する妖精達の、魂の雄叫びだった。
そう、
石壁達の中でも最も大きな艦隊を率いる新城の、総勢16個艦隊96名の艦娘、その総員が飛行場姫の陣取るアイアンボトムサウンドを取り囲む様に布陣している。
戦艦が、空母が、巡洋艦が、駆逐艦が……世界に名だたる大日本帝国海軍の聯合艦隊が一箇所に終結している。その様はまさしく圧巻の一言であった。凄まじい圧力を伴う大艦隊が、世界に光を取り戻さんと突き進む。
数名の艦娘が、世界へ誇らんとするように旭日旗を掲げている。翻るその旗はまさしく希望の光、暁の水平線から登ってきた無数の太陽達が常闇の世界に光を届けたのだ。
「あ……な……あ……」
そのあまりにも想像の埒外の光景に、飛行場姫は言葉が出てこない。
『待たせたな!!まだ死んでいないよな金剛!!ジャンゴ!!』
無線から、新城の声が響く。
『へッ、おいらがこの程度でくたばるかよジョジョ!楽勝だってのこれぐらい。でもブラザー達はやっぱりサイコーだな!!これ以上ない位のプレゼントだぜ!!』
ジャンゴはそう強がりを言いながら、喝采を上げた。
「さあ!!手前等、いっちょド派手な反撃の狼煙をあげようじゃねえか!!」
そういいながら、金剛が唯一稼働する砲塔を構えると、背後の艦隊の皆が一斉に砲塔を構える。
『了解した!!ありったけの三式弾を叩き込む!!総員!!撃って撃って撃ちまくるんだ!!!行くぞ!!!』
その新城の言葉に、全員が言葉を揃えて、叫んだ。
「「「「「全艦娘!!突撃ーーーーー!!!!」」」」」
石壁達は、飛行場姫の首元に渾身の一撃を突き込んだのだ。
***
「広域無線を発信せよ!!『日ハノボレリ!』繰り返す!!『日ハノボレリ!』」
四方八方へむけ彩雲が飛ぶ、ショートランド泊地航空隊所属の彩雲が空を駆け抜けて飛んでゆく。
全ては孤軍奮闘するショートランド泊地の仲間達を助ける為に、自殺行為である無線での四方八方への通信行為を続けながら、彩雲は飛ぶ。作戦の成功を伝えるために。仲間の命を救うために。
「敵空母の航空隊に補足されました!!」
「突破するんだ!!我々は絶対にこの情報を味方艦隊に届けねばならない!!」
彩雲にのる妖精が、僚機の妖精達へと激を飛ばす。
「世界最強の海鷲達よ、どうか私を味方艦隊の元へ導いてくれ!!」
「「「了解!!」」」
護衛の烈風達が、数十倍の数の敵艦載機に突入し、後先を考えぬ死闘によって撹乱していく。
「いまだ!!行け!!務めを果たせ!!」
護衛隊の隊長が叫ぶ。その瞬間、彩雲の行く手を遮る敵機が全て叩き落とされ、血路が開かれた。
「……すまん!!」
彩雲は、その混乱の中を駆け抜ける。僚機が一騎、また一騎と撃墜される中を、振り向かずに突っ切っていく。
機体のエンジンが焦げ付きそうな最高速でひたすらに飛び抜ける。曳光弾が流れ星のように煌めくたびに、友の操る戦闘機が青空に溶けて消えていく。
それでも尚、彩雲は飛ぶ。加速で体が座席に食い込み意識が飛びそうになる程の苦しみの中、操縦桿を握る手はなお力強く。眼前を睨む瞳の力強さは衰える事無く。
「敵機に捕捉されたぞ!!」
「……ッ!」
後部座席の乗員の警告に、とっさに操縦桿を倒して最高速度で急降下する。だがそれでも飛来する鉄火を避け切れず、数発の銃弾が機体を貫通した。
「ガッ!?」
「ケヒュ……」
操縦桿を握る妖精が腹部に熱い鉄を差し込まれたような熱を感じる。銃弾が一発貫通したのだ。
「ぐ……おい!?状況を報告しろ!!お前は、だいじょ……う……」
振り向いた妖精がみたものは、頭頂部を失ってぐったりとする僚友の姿であった。先ほど操縦者を貫いた銃弾は、僚友の体を貫いて勢いを弱めていたものだったのだ。
仮に、銃弾がそのまま直撃していたなら、操縦者の妖精は一撃で事切れていただろう。友の命が、己の命を紙一重に繋いだのだ。
「ぐっ……おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
操縦者の妖精は、何かを訴える様に雄叫びを上げる。意味などはない。だが、そうせざるを得ないのだ。感情の迸りにまかせて、一人の男が叫んだ。
「『日ハノボレリ!!!日ハノボレリ!』ゲホッ……『日ハノボレリ!!!』」
声を上げるたびに命が抜け落ちていく。
それでもやめない。今生の命が尽きる瞬間まで、決して叫ぶ事をやめない。
それが、命をかけた僚友達に報いる唯一の手段であるから、今なお命をかけて戦い続ける仲間たちの為になるから。
「日ハノボレリ!!!!」
世界の果てまで届けと、そう思いを込めて、男は叫び続ける。
そして、彼らの魂の叫びが、捨て身の献身が、世界を動かす。
***
「無線を探知、『日ハノボレリ』繰り返します!『日ハノボレリ』」
「石壁提督の作戦が……成功しました!!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」
ラバウル基地に集う提督達はその報告に沸いた。あの鉄壁の牙城を、石壁達は突き崩したのだ。
「各々方!機は熟した!!石壁提督は確かに約定を果たしたのだ!!今度は我々の番だ!!」
ラバウル基地司令の南雲がそういうと、その場の全ての提督が同意した。
「おう!各艦隊へ通達だ!!これより『遭難した民間船救助の為に』艦隊を動かす!」
「うちの輸送艦隊が敵と『遭遇』した。これを助けるために援軍を出そう」
「威力偵察部隊が敵と衝突、この撤退を助けるために増援艦隊を出す」
「おっと、輸送艦隊と間違えて主力艦隊を遠征に出してしまったぞ、年を取るといかんな」
その瞬間、ソロモン諸島各地で『偶発的な戦闘が一斉に発生』これを助けるために各泊地の主力艦隊がぞくぞくとショートランド泊地近海へ集結し、深海棲艦と『偶然』死闘を繰り広げる事になる。
(ははは、すごい。あれだけ本土への憎悪で凝り固まっていた皆の意識が一つになっている)
南雲は、石壁を中心として停滞していた自分たちの世界が大きく動きだしたのを確かに感じていた。
(世界が、時代が動こうとしている。一人の男を中心として広がる波紋が、世界へと広がっているのだ)
そんな影響を与える存在を、歴史はこう呼ぶ。
(『英雄』か。はは、彼には似合わないな)
脳裏に浮かぶ青年の顔がひきつっている。付き合いの浅い南雲でもわかる。平々凡々とした安穏を好む彼は、その称号を好まないだろうということが。だが、そんな彼だからこそ、南雲達は惹かれるのだろう。
「さて、では我々の『英雄』を助けに行こうか」
「「「おう!」」」
「総員抜錨!!最大戦速!!」
「ショートランド泊地近海の味方を支援せよ!」
「ラバウル航空隊、友軍支援の為、戦略爆撃開始します」
「パラオ泊地艦隊、戦場へ到着、戦闘に参加します!」
「リンガ泊地艦隊!友軍の救援へ向かいます!」
「トラック諸島遠征隊、哨戒活動を開始します!」
「ブルネイ潜水艦隊、威力偵察を開始する!」
「タウイタウイ泊地艦隊!鉄底海峡近隣の輸送隊を確認!!彼等の輸送作戦を補助する!」
ショートランド海域周辺で同時多発的に発生した『偶発的な会敵と戦闘』、それに加勢するために大勢の艦娘が戦場へと結集していく。
表立っての支援を行えば大本営からどういう報復を受けるかわからないが故に、彼らは全力でショートランド泊地近縁の敵と偶然遭遇し、偶然戦っているのである。
だが、そんな事をしらない深海棲艦達はショートランド泊地への援軍であると誤解して迎撃にあたる。これによってショートランド泊地への兵員の増員を防ぎつつ、敵本拠地への帰投を妨げているのだ。これによって飛行場姫が増援艦隊阻止に振り分けた数千名にも及ぶ深海棲艦の遊撃隊が動くことが出来なくなったのである。
近海の制海権は取り戻した。敵の本拠地へは刃を差し込んだ。今戦場で自由に動けるのはショートランド泊地へ押しかけている深海棲艦達と、石壁だけであった。
後は決着の時まで泊地に押し寄せている数千隻の深海棲艦を釘付けにすればいいだけだ。
石壁の渾身の策が、今花開こうとしていた。