ソードアート・オンライン――紅の聖騎士と白の剣士―― 作:焔威乃火躙
セーレとリグレスのCVが決定しました。セーレ役は名塚佳織さん、リグレス役は梅原裕一郎さんです。イメージは赤紙の白雪姫の木々が感情豊かないじりキャラ追加でミツヒデがボケキャラになった感じです。
これからも2人のことを応援してくださいね。勿論、他のキャラたちも……
そして、本編より『白の剣士 放浪編』となります。最後までよろしくお願いします。
以上、ニュースアート・オンラインでした。
ここは……ボス部屋か?
「やっと気づいたか?」
声の方に顔を向けると、リグレスとセーレ、キリトにアスナ、そして団長がいた。
「……あの後、どうなったんだ?」
「……ボスは倒した。いや、最終的に俺がに止めを刺しただけだ」
意味がわからなかった。ボスを倒したのではなく、止めを刺しただけと言った。どちらも同じではないのかと思った。そこに団長が口を開く。
「完結に説明すると、君はあのボスモンスターを完膚無きまでに叩きのめしたのだ。だが、奴が戦闘不能となったとき、君は倒れ込んだのだよ」
え?理解できなかった。俺が、あいつを倒した?そんな記憶は無いが故、困惑した。上体を起こし、辺りを見回し、不足している情報をかき集めた。そして、ふと自分の手に目線を落とす。その目に映ったものを見て気が動転しそうになった。
「君は……その剣と共に倒れたんだ」
刃はボロボロになり、刀身はヒビだらけになった剣が右手の中で脆弱していた。
その時、俺はあいつとの闘いで剣も殺意もへし折られたのだと悟った。
あれから、俺はギルドに行かず階層を回っている。明け方から真夜中まで、フィールドを彷徨っては狩りに明け暮れた。たびたび、新聞を読んでみると、『50層ボスを叩きのめした『白の剣士』、未だ行方つかめず』と一面を飾っている。
「……なんだそれ……」
あきれの声か、嘆きの声か、思わず心に思ったとおりの言葉が現れた。
2023年1月30日、第32層『ユギレオン』東の外れのフィールド『無名の丘』、そこで風に吹かれながら寝転がっている。そこに一人のプレイヤーが寄ってくる。
「よっ、隣いいか?」
「キリトか、別にいいけど……」
目線を合わせるとすぐにそらしてしまう。キリトも同じように寝転がって風に吹かれている。
「……」
「……」
暫く、長い沈黙が続く。気を緩めると、眠りにつきそうだ。
「なあ」
「ん?」
すると、彼の口からとんでもない言葉が飛んできた。
「
「……わかった」
彼の言葉に驚いたが、それ以上に平然と承諾した自分に驚いている。決闘ということは命を掛けて戦うようなものだ。下手すれば、本当に死ぬことだってあり得るのだ。
「何を掛ける?」
そう聞くと、
「じゃあ、1つだけ何でも言うことを聞くってのは?」
「別にいいけど、死ねって言われても文句は言うなよ」
そう言って、決闘を初撃決着モードで承諾する。
互いに、武器をとる。静けさの中、始まりの鐘がなる。
動き出しはほぼ同時、10メートル離れていた距離は一瞬の内に消え去り、俺と彼を隔てるのは2本の剣のみとなった。ジリジリと音をたてる剣は互いの力を互角であると認識させる。
バックステップで体勢を崩そうと飛び退くと、ちょうど同じタイミングで彼も同じ行動をとった。
「やるな……流石だよ、『黒の剣士』!」
「そりゃ、どうも!『白の剣士』さんよ!」
その言葉と同時に猛突進してくる。気づけばもう目の前だ。咄嗟に両手で受け止めるが、あまりの勢いに吹き飛ばされた。[ヴォーパル・ストライク]の衝撃で多少HPが減る。
「やってくれたな。お返し……」
薄緑色の光が刀身を包み込む。
「だぁ!」
今度はこちらが突進する。剣の軌道は真っ直ぐ後ろをついてきた後、しなやかに進行方向を変え右から襲いかかる。片手剣ソードスキル[ソニックリープ]、この技の名前だ。
しかし、簡単に倒されてくれるわけもない。彼は右回転し剣を左からぶつけ、[ソニックリープ]を受け流した。
ガギィン!その音と共に俺の剣は刃の半分が消え去っていた。背後でドスッと音がした。振り返れば、消えた半刀身が地面に突き刺さっていた。
「あ!」
彼もその事実に気づいた。
真二つに折れた剣はポリゴン片へと姿を変え、空中に消えていった。
「あ、その……すまん……」
「いや、元々そんなに保たなかったんだ。あの時点でもう役目は果たしたんだよ」
そう言って空を見上げる。何か少しスッキリした感じが懐かしいと感じた。そして、大きく息を吸い込み吐き出すと、
「さてと、リザイン」
そう叫ぶとウィンドウが出てきた。『本当にリザインしますか?』に対して『YES』と回答する。
「さ~て、勝ったのは君だ。何でも1つ聞いてやるよ」
「あ、あぁ」
俺は何故ここにいるのか?
第1層『はじまりの街』、ここに来るのは3ヶ月前に団長の指示でアインクラッド解放軍の調査に来たとき以来だ。
「………………」
「………………」
転移門の前で沈黙する俺たち、正直に言って俺はこの世界で一番面倒なことに会っているのかもしれない。
理由は至ってシンプル、
「いい加減吐いたらどうなんだ!お前らの目的なんて分かりきっているようなものなんだからな!」
今俺たちは、軍の連中にしつこく事情を聞かれているのだ……
たった数分前、キリトから1つクエストの協力を依頼された。勿論、拒否権は無効だ。剣が折れたとは言え、敗けは敗け。仕方ないことではある。
そのクエストとは、第1層の迷宮区前の狼狩りで報酬として、黒の片手直剣がゲットできるというものだ。 彼はその報酬に惹かれ挑もうと思っていたようだが……そのクエストは
「さっきから黙りっぱなしで、言えない理由でもあるのか?あ!?」
「……なあ、俺が率直に思ったことをいうぞ。それを聞いたところで何になる?」
とうとう堪忍袋の緒が切れたのかキリトが半分睨んで言う。
「き、貴様……ここは軍の管理下と知っていってのことか!」
逆ギレとはまさに彼のための言葉だなと、内心思う。俺は憐れみの目で彼を見る。一瞬、殺気が向けられたがその矛先はすぐキリトに戻る。
「お前らにこの地にたつ資格などない!さっさと立ち去れ!」
「言いたい放題言ってくれるじゃないか、なら
「ならば、こっちは慰謝料全額をおいて帰ってもらう」
2人の間にはカウントダウンが出ていた。軍の奴は腰に刺した剣を取る。長いこと戦闘に身をおけば、ひと目見ただけで大体の質はわかる。あれは攻撃特価の良質な両手剣だ。彼はそれを中段に構え、静かに時をまつ。
0になり先に動いたのは軍の奴だ。彼の両手剣は空高く掲げられ、勢いよく落下してくる。未だに剣を取らないキリトは右足を左斜め後ろにスライドし最小限の移動でかわす。
「なに!?」
思わず声を漏らす彼は今にも目が飛び出しそうな顔をしている。
「こんな程度か?さっきの威勢の割には対したことないな」
「この、クソガキが!死ね!」
再び、剣を振り上げる。キリトは背中の剣に手をかけ反撃体制にはいる。そんなこともお構い無しに渾身の一振りを放つ。次の瞬間、キリトは柄と刃の境の部分を1ミリたりともずらさず自身の剣の刃をあてる。耳障りな金属音が響き、ジリジリと擦れ会う音がする。両手剣はキリトの額ギリギリで止まっている。彼がいくら力を入れてもその事実は不変のままだ。
「軽い」
そう呟き、両手剣を弾く。両手剣は彼の手から離れ、10メートル後方に突き刺さる。
「こ、この……」
「俺の勝ちだ」
そう言うキリトの目はあまりにも恐ろしいものだった。
勝負の結果により、俺たちはなんとか通り抜けることに成功した。こんなことは二度とごめんだ。
そんなことを思いつつ、クエスト地点に到着する。
「おお~!この老いぼれのために力を貸してくれるものが来ようとは、神よ、ありがたき祝福」
いやいやいやいや、まだ引き受けるともいっていないのにも関わらず、何言ってるんだこの爺さんは……内心呆れるのを通り越して泣けてくる。
白髪ローブの爺さんは俺たちに依頼の詳細を説明する。まだ何も言ってないのに……
「実は、お主らにとってきてもらいたいものがあってのぉ。このくらいの石なんじゃが……」
爺さんの表現によるとリンゴくらいの大きさのようだ。
「この森の奥にあるのじゃか、ワシでは取りに行けそうになくてのぉ、お主ら頼まれてくれぬか?」
「あぁ、いいぜ」
「即答!?」
あまりにも気が進まないが仕方がない。
「分かりました。その依頼、俺たちが引き受けましょう」
今の今までクエストに興味を持たなかった俺は、今日初めてクエストに挑戦するのだった。
DATE
『白の剣士』
レイの二つ名、血盟騎士団の白装備からその名が生まれた、50層でボスを圧倒したことで名付けられた、『黒の剣士』と同じ時期に出てきた。
初のクエストに挑むレイ
このクエストにて待ち構える野獣たち
2人の剣士のたどり着く先には
思いもよらないものが……
次回『太古の遺産』