ソードアート・オンライン――紅の聖騎士と白の剣士―― 作:焔威乃火躙
皆さん明けましておめでとうございます。
いよいよ始まる最強プレイヤー同士の対決。これには多くのプレイヤー(読者)が目を光らせていることでしょう。本編はその状況に至るまで一部始終を収めております。ぜひ、お買い上げくださいね。(本当に売ってはいませんよ)
では、本編をお楽しみください。
第55層『グランザム』KoB団長室、その空間には4人の名の通る人物がいた。
赤いローブに身を包み、威風堂々ととした姿は威圧感を放つ。彼はKoB団長、『聖騎士』ヒースクリフ。その戦闘力の高さと類いなきカリスマ性で全プレイヤーの頂点に君臨したSAO最強の男。彼の伝説は多々あり代表的なのは、今まで1度もHPバーがイエローになることがなかったという、正に最強の証明するものがある。
彼女はKoB副団長であり、SAOで指折りの美少女だ。しかしその可憐な容姿とは裏腹に、攻略では驚異の強さを発揮し刺々しい態度でものを言うため、周りからは『狂戦士』だの『攻略の鬼』だの数々の異名がある。その中で彼女の代名詞と言えようものはトップクラスの攻撃の速さと正確さからとられたもので、『閃光』アスナが通り名だ。
もう1人KoBメンバーがいるが、自分のことなのでざっくりと説明する。KoB団長補佐、『白の剣士』レイ。これ以上は流石に恥ずかしいので知りたくなったら適当に資料をあさってほしい……
そして、この場で見るのは珍しい者が1名いる。その者は全身黒装備、2本の剣の柄が両肩から飛び出て見える。SAO最強のソロプレイヤー、『黒の剣士』キリト。この世界で
「さて、君とボス攻略以外で会うのは初めてかな、キリト君」
「いえ、67層の対策会議で少しばかり」
団長の問いに対して、ツンとした態度で返したキリト。
「そうだね、あのときは厳しい戦いだったな。危うく死者を出すところだった。トップギルドとは言われても戦力はギリギリなもんだからねぇ……困るんだよ、我々のギルドの有力者を持っていかれるのは」
「そう思うのなら護衛の人選くらい気を使うべきじゃないのか?」
護衛、クラディールの件のことだ。俺が有休をもらったあの日、クラディールの行き過ぎた態度で問題を起こしたと報告を受けた。その件のことを彼は言っている。
「確かに、彼の件については詫びなくてはならんな。しかし、我々とて引き抜かれておいて、はいそうですかという訳にはいかないな」
事態はますます悪化する一方で、こちらはただ黙って見ていることしかできなかった。戦場と化す中、決定打を打ち込んだのが団長の方だった。
「キリト君、君が勝てばアスナ君を連れて行くがいい。しかし、君が負けたときは……血盟騎士団に入って貰う。どうかな?」
「「なっ!?」」
俺とアスナは唖然とした。一瞬この人何言ってるんだと思った。
「欲しいのなら、その剣で………その[二刀流]で、奪うがいい」
団長に抗議しようと口を開こうとしたとき、
「いいでしょう、剣で語れと言うのであれば受けてたちましょう」
俺たちは絶句した。そして、意識が戻った時には2人して文句の詰まった一言が飛び出していた。
「「何言ってる(んだ/のよ)(あんたら/あなたたち)は!!」」
あの後、キリトはアスナに団長は俺に散々言われる事態が起きた。
決闘するといっても命まで取り合うことは基本はない。しかし、当たりどころが悪ければ最悪のケースを招きかねない。それがソードアート・オンラインのトッププレイヤー同士の闘いとなるとなおさらだ。したがって、決闘なんてホイホイやっていいようなものではない。
団長とキリトは、以後あのような行動は控えるようにするということで今回の件は見逃すことになった。
その後、キリトとアスナはギルドを去り、俺と団長はギルド内攻略会議の行われる会議室に移動する。
「今回は主街区周辺のモンスターの情報に基づき対策の思案を予定。その後、フィールド探索範囲の拡大に伴い先鋒としてでるメンバーの決定、ですね」
「うむ、メンバー構成は君に一任する。いつものことだかね」
「了解しました。しかし、念のため確認等にはお付き合い願います」
よかろうと団長は信頼の目を向け言う。
気づけば、会議室前まで来ていた。扉を開けようと手をかけた瞬間、
「しかし驚いた。あのキリト君があぁもすんなり決闘を承諾してくれるとは思っていなかったからね」
「…………団長。何故このタイミングでそれを?」
「ん?不意に思い出しただけだが、どうしたんだね?」
「それが偶然なら、あなたは元から事をかき乱すタイプなのでしょうね……」
団長は一瞬理解できなかったようだがすぐに察した。今の話は完全に先に来ていたKoBの名だたるプレイヤーの耳に吸い込まれてしまった。もう、 俺たちだけの話ではなくなった。
いつもはピリピリしていた空気が団長の一言で一気に緩まった。会議前にも関わらず、団長とキリトの
「会議の予定、先送りになりそうだな」
ため息混じりにそう呟いた。
その後、団長とキリトのデュエルの話を根掘り葉掘り問い詰めてきた。
翌日、75層『コリニア』、主街区には古代のローマをモチーフとした造りの建物が並び、太古の時代を思い描かせる雰囲気になっている。
その中で最もプレイヤーの目を引くものが転移門前に佇むコロシアムだ。まさに街のシンボルと言えようここで、大イベントが開催されようとしている。
俺たちが
「…………何でここまで大騒ぎになっているのか……」
「ハハ、こうも集まって来るとはな」
コロシアム前では最早お祭騒ぎと化している。
元々は穏便に、秘密裏に、誰にも知られずにと考えていた。いや、動いていたはずだ。あの日、あの場所にいた4人だけで納めていた。少なくとも、あの時までは……
団長の挑発を受け、それに乗ったキリトの対決は隠密に行うことを話し合った。勿論、キリトは即承諾し団長も、それは任せようと、一言言っていた。
それであまり他のプレイヤーに知られないよう、75層のコロシアムを選んだ。
コロシアムは外からでは中の様子は知ることが出来ない。例え知られたとしても極少数で止められる。ましてや、デュエルするために造られたようなここにそうそう来る人なんていない。デュエルで初撃決着だとしても死ぬ可能性はゼロではないからだ。
故にここを選んだのだが、そこには大きなリスクがあった。それは事前に知られたとき、大勢のプレイヤーが集まるということだ。
収容できるのはざっと500は軽く超えるだろう。今、コロシアム前でさえ道に人が溢れかえって中々進めなくなっている状況だ。
なんとか人込みを掻き分け中に入ると、観客席へ通じる階段が左右の道にある。正面には選手が待機するような控え室、そしてその先にはコロシアムのリングが一直線に並んでいる。俺と団長はそこから正反対の方へ回り込み、もう1つの控え室に入る。
控え室とは言えど、ただ長椅子が2つサイドに並んでいるだけのシンプルなものだけど。団長は迷うことなく右の椅子へと腰掛ける。俺は団長とは反対側に座る。そこからはただ沈黙だけが続いた。
気づけば開始時間は残り僅か。装備の確認をするとリングに向かって歩き出す。
「団長!」
俺はたくましい背中を呼び止めた。振り向いた顔はまさに覇者そのものの威圧感があった。
「どうかお気をつけて」
「あぁ、では行ってくる」
そう言って、『聖騎士』は戦場へと躍り出た。
私はこの世界で初めてデュエルする。加えてその相手は私を除いた6000のプレイヤーの中で唯一のユニークスキル保有者、『黒の剣士』キリトだ。
彼はこの世界でも一二を争う実力者だ。無論、私も同様だ。そんな私たちが決闘という形で勝者を決するのだ。これほどまでに心踊る
そんな期待を中に押し止め、この戦場に身を踊らす。
対戦者はすでにスタンバイしていた。その顔には嫌悪が表れている。
「すまないね、こんな状況になるとは」
「……出演料と慰謝料、たんまり貰わないとな」
「いや、明日からは私のギルドの一員だ。さすれば、任務として扱えよう」
他愛ない会話でも緊張感は解れるどころかいっそう増している。彼の場合、それは私の比ではないだろうが。
彼から10m離れた辺りまで移動し、なれた手つきでデュエルメッセージを送る。最も、実際に操作したのは初めてなのだがね。
彼の下にウィンドウが出現すると、私と同じかそれよりも手早く操作するとカウントダウン始まった。互いに戦闘体勢に入る。
DUELの合図とほぼ同時に駆け出す。それは彼も同じだ。一瞬で距離は縮小し、互いの武器は交差する。
蒼白い剣と十字盾の衝突で火花が散り、一瞬時間停止した感覚が伝わるはずのない全身の神経を刺激する。
そこからは私たちだけの世界となった。飛び交う剣撃の攻防は、最早プレイヤーの域を超えるものだ。恐らく、この試合を観ている多くのプレイヤーは目の前で何が起きているのか正確に理解できたものは指の数もいないだろう。
互いにクリティカルを取ろうと力の限りを尽くすが、流石はデスゲームを勝ち抜くだけあって中々通らない。ソードスキルも互いに見切り、その隙を突かんと頭をフルに回転させる。
ヒートアップする中、彼は『二刀流』上位ソードスキル[スターバースト・ストリーム]を発動させる。素早い剣撃で敵を灼き尽くさんばかりの威力とスピードを持ったスキル。それは星屑の如き輝きを放ち、天を焦がす数多の流星の如き剣技だ。
だが、
正確には、あのソードスキルを作り出した私にはどのような攻撃か分かるのだ。それに対する防御姿勢もまた然り。
しかし、それが可能なのはGMのみ。今ここでそれは使えない。したがって、ただ構えることしか出来ない。[スターバースト・ストリーム]は一撃一撃が強力な訳でなく、その手数と速さが大きな武器となる。後半に差し掛かれば、耐え凌ぐことも困難なのだ。そして、15撃目で盾は弾かれ守りが崩れた。このソードスキルは16連撃、次の一撃が決まればHPがイエローゾーンに突入し、彼の勝利となる。
だが、ここで問題が生じる。私のHPは何があろうと
システム的不死、それがある限り私はイエローゾーンまで減ることはない。そして、それが公となれば、私がGMだという証拠の1つになる。それは何としても避けなければならない。いや、私は彼に負けるものかと思ったのだ。
彼の剣が私の額を捉える寸前、私はGM権限の1つを使用した。額を剣が真っ二つにするその瞬間、弾かれた盾が割って入る。カァァンと最後の一撃が防がれたキリトは驚愕の顔を見せた。
彼に大きな隙が出来、それを逃す前に一撃を彼の左脇腹に撃ち込む。彼は左に飛ばされ、HPバーがイエローに変わる。
それを以て、この試合は終了し勝者を告げるウィンドウが空に現れた。
控え室に戻ると、レイが待っていた。
「何やってくれちゃってるんですか」
「いや~、つい負けじと力が入って『オーバーアシスト』を使ってしまったよ」
『オーバーアシスト』とはその名の通り、プレイヤーの能力をアシストする補助機能のようなものだ。
「これでバレても知りませんよ」
「ハハハ、そうだな。まあ、それもネットゲームの醍醐味だがね」
そんな呑気なこと言ってる場合ではない、と一言彼は言うと、控え室を後にした。
キリト君、か。この世界で10存在するユニークスキルの中で『二刀流』を手にしたプレイヤーか。
次にやるときは最後の戦いになるだろう。そこで、決着を着けよう。
DATE
ユニークスキル
ソードアート・オンラインに存在する10の特異スキル、それぞれ1つずつあり、その所得方法は不明、現時点で知られているのは『神聖剣』と『二刀流』の2つ、どちらも並のスキルを遥かに超えるスキル補正とソードスキルを持つ
団長とキリトの決闘から時が経ち
いろいろ落ち着いた頃合いでついに
最終クォーター・ポイントボスに到達
しかしそこで待ち受けるのは……
次回『絶望の扉』