ソードアート・オンライン――紅の聖騎士と白の剣士―― 作:焔威乃火躙
本日より『ソードアート・オンライン――紅の聖騎士と白の剣士――』が投稿されました。皆さまにご愛読して頂けるよう頑張りますので、本日より宜しくお願いします。度々、アンケートをとることもありますので、ご協力お願いします。
以上、ニュースアート・オンラインでした。
2022年11月6日、とある一軒家の一室でベッドに仰向けになって眠っている人がいる。いや、正確には『ナーブギア』を被って仰向けになっているだけで眠っているわけではない。では、その者は一体何をしているのか?ただ茫然としているのではなく、来るときに備えているのだ。
そして、13の刻を指すと同時に口元から溢れんばかりの笑みを浮かべ、暗闇の先にある世界に向けて叫んだ。
「リンク・スタート!」
ゆっくりと目を開くと、そこは縦横約4メートル高さ約2メートルの一室ではなく、正面には石畳の広場で数十人の人々が会話しているようだ。その奥には通りがあり、端を埋め尽くさんばかりの露店が出ている。一通り辺りを見回したら、視線を落とし自分の右手を見つめた。2,3回動かすと、大きく深呼吸する。
「ついに、来たんだ。この世界に……」
込み上げる歓喜をその顔に浮かべ、静かに呟いた。
此処は世界初のVRMMORPG『ソードアート・オンライン』、鋼鉄の浮遊城を己の剣技で攻略していく世界。そして、俺は『
まず、右手の人差し指と中指を合わせ上から下に降り下ろすと鈴のような効果音と同時に《メインメニュー》が現れる。少しそれを見ていると、後ろから声をかけられる。
「君、この世界は初めてか?」
驚いて勢い良く振り返って見ると、そこには銀色の髪を持った赤服の男が立っていた。巨大な壁が佇んでいるかのような威圧感に襲われたか後ろに飛び退いた。
「お前、誰だ?」
神経を張り巡らせ警戒しながら、声を低くして問い掛ける。銀髪の男は慌てた様子で答える。
「いや、何も君に危害を加えようとしているわけではないんだ。ただ、良ければレクチャーしてあげようかなって思ったのだが……」
質問の答えになってないと思いながらも、一つ溜め息をつく。
彼の装備を見て襲われる危険が無いことを確認すると、警戒を解き、さっきの答えについて聞き返す。
「『レクチャーしてあげようかな』って、何で俺が初心者だと?」
「……何と無く、かな」
今の回答にイラッとしたのか、さらに口調を悪くして問い詰める。
「『何と無く』で人を初心者呼ばわりかよ。確かに、プレイヤー10000に対してベータテスターは1000人ほどだから、10%の確率だがよ。そうだとしても、初めて会った人に向かってそれはないだろ」
すると、彼は失笑し、
「いやいや、これは失礼した。しかし、なかなか良い見解だが、1つだけ間違いがある」
「間違い?」
「君は初めて会ったと思っているようだが私達は以前に会ったことがあるのだよ」
彼の発言に少し動揺した。無理もない、たとえ現実で会っていたとしても此処はゲームの中、アバターを自身の現実の姿と同じにする人はほとんどいない。そんな中で知人かどうかを見分けるのは至難の技。にもかかわらず、彼は会ったことがあるというのだ。普通なら誰でも驚く。
「お前と会ったことがあるって、一体お前は誰なんだ?」
「フッ、君とは長い付き合いではないか。霧谷君」
その言葉を聞き、レイは動揺を隠し切れなくなった。
「何で、その名を知っている?……まさか、茅場先生!?」
彼は無言で頷いた。
茅場明彦、『ナーブギア』及び『ソードアート・オンライン』を作り出した人であり、レイの恩師である。
「しかし、何故私だとわかったのですか?あなたにプレイヤー
「私は
それからもGM権限で出来ることをいろいろと説明していく茅場。正直、反則だろうと思いながらも聞いている。
一通り話終えると、本題へと移行する。
「さて、どうするんだね?」
「では、お願いします」
「うむ、では改めて、ヒースクリフだ。この世界では上下関係は無しでいいね?」
「わかりま……んんっ!あぁ。俺はレイ。宜しくな、ヒースクリフ」
咳払いをし言い直す。慣れない感じではあるが……こうして、2人はフィールドに向けて駆けていった。
あれからどのくらいの時間が経っただろうか。ひたすら、モンスターを切り裂いては《ソードスキル》の練習台にして、モンスター達にとって見れば散々なものであろう。俺もだいぶ様になってきたがまだまだ至らぬものも多い。
夕陽が差し、鮮やかな緑色の草原をきれいな茜色に染めていた。そのすぐ近くの丘に先生が夕陽を見つめ佇んでいるのが見えた。俺も開いていた《メインメニュー》を閉じて、先生のいる丘に向かった。
「先生~!」
「レイ君、此処では上下関係は無しだよ」
「あ、すまん。つい……」
こんなやり取りを何度繰り返したことか。やはり慣れない……
「それよりもレイ君、見たまえ」
そう言って顔を 西の方角へ向けた。つられるようにして見てみると、そこには夕陽をバックにして天高くそびえ立つ塔が茜色に輝いていた。それはまるで燃え盛る巨大な火柱のようだ。
「どうだい?この世界は」
「最高。その一言しかない」
「そうか……」
先生はしばらくあの塔を見つめていた。でも俺には先生が塔を見ているようには見えなかった。何処か遠くを見ているように見えた。あの塔の遥か彼方を……
『……すまない……』
不意に先生が何かしゃべった気がした。 そして、フィールド全域に、いや、この世界全域に鳴り響く鐘の音がこの世界にダイブしたプレイヤー全ての常識を覆すものと知るのは、このすぐ後のことだった。
DATE
《rei》
主人公、一人称は『俺』、身長170前後、何処にでもいそうな顔立ちのアバターで髪と瞳は白、左腰に片手直剣を装備している。茅場明彦とは
ゲームの世界で再会を果たした2人
そんな彼らに告げられるのは残酷な事実
この世界の真の姿を目にしたとき
彼らは何を思うのか
次回『全ての始まり』