要塞空母デスピナ出撃す。 第1篇仮初の世界   作:まはまは

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読者のみなさま、お久しぶりです。作者のまはまはです。
お待たせしました、第36話です

投稿から期間が空きすみません

来月には、次話をしっかり投稿できるようにするのでこれからもよろしくお願いします。


今回、話の感じが変わっているかもしれません。ごめんなさい

それでは、どうぞ



第36話 西方方面反撃作戦 第一段階 ジャワ島攻略戦3

第4章 西方海域編

第36話 西方方面反撃作戦 第一段階 ジャワ島攻略戦3

 

1月28日 11:35

ジャワ島沖

 

時間を遡り、フセイン空港に襲撃があった頃ジャワ島沖でも深海棲艦の大艦隊がスラバヤ沖に侵攻していた。

これを上空哨戒任務中だった佐世保鎮守府の蒼龍偵察隊が発見、同時にカリムン・ジャワ島の北側を航行中だったはぐろ型ミサイル護衛艦2番艦のなちの水上レーダーでも確認された。

 

そして、深海棲艦の大艦隊の上空を先程の蒼龍偵察隊所属の彩雲一機がいまだに、その規模の把握のため偵察をしていた。

「すごいな!これは、海が黒色だぜ!!」

操縦士の妖精が、ガハハハと笑う。

「ちゃんと、艦隊に打電を打っているか?」

「今、一生懸命やっているので話しかけないでください!!」

後ろの偵察妖精が時に、下の艦隊の様子を見つつ高橋名人並の速さで打電を打っている。

「くそ、鬼に姫クラスもいやがる…」

深海棲艦の大艦隊の中央に確認できる限りでも戦艦水鬼、戦艦棲姫、空母棲姫、軽巡棲鬼、駆逐棲姫が50を超えていた。

 

敵艦隊補足

数ハ、2,000ヲ超エル

マタ鬼、姫型ノ深海棲艦モ確認

最低デモ50を優に超エル

 

さらに詳細な情報を打電しようとした時、下からの対空砲火が機体のすぐ近くを通過する。

「ちっ、気づかれたか!ここらでズラがるぜ、お前ら舌噛むなよ!」

操縦妖精が操縦桿を横に倒し旋回、自分たちの母艦へとフルスロットルで飛んでいく。

下からは濃密な対空砲火が彩雲を落とそうと、深海棲艦は撃つが彩雲を捉えることはできない。そこに空母ヲ級から迎撃機が上がり始め後ろから追いかけてくる。

「ちっ、こっちに来るな!」

最後方にいる妖精が武装の7.92mm機銃を撃ちまくる。

深海棲艦の艦載機はこれをバレルロールで器用に避けつつ、20mmチェーンガンで反撃さる。運良く狙いが外れ火線は彩雲の真横を通り過ぎていく。

「救援要請をしてくれー!」

「もちろんやっていますよ!」

偵察妖精の打電スピードは某ゲームの某名人の連打スピードに迫る速さでSOS発信をしていた。(しかし、早すぎてただの連打になりSOSになっていなかったり…)

その間にも深海棲艦の艦載機は彩雲を確実に落とすために迫ってくる。迎撃手が7.92mm機銃を撃つも、威力が弱いためか弾かれてしまう。

「もっとだ、もっと速く!」

スロットルを限界まで上げ、さらに彩雲が加速していき後ろにいた深海棲艦の艦載機がだんだんと小さくなっていき、最終的に深海棲艦の艦載機は追撃を諦めたのか機銃を掃射して、機首を反転して帰って行った。

「よ、良かった…」

「ガハハハ!これは、[我二追イツク敵機ナシ]だな!」

操縦妖精が彩雲の有名なエピソードを出しつつ、機内は一時的に平穏な空気になった。

 

そんな平穏すぐに消えてなくなる。後方から新たな深海棲艦の艦載機が現れ、彩雲を撃つ。

何発か被弾し、機体を揺さぶる。それに操縦妖精は動揺する。

「まさか…追いつかれたのか!?」

「たこ焼き型だ!」

白くいかつい形相の鬼、姫クラスの精鋭機であるたこ焼き型艦載機が彩雲を追尾しており、ついに追いついたのだった。

「くそっ!」

再び、スロットル全開にしてスピードを上げて逃げるが、たこ焼き型艦載機との距離は縮まらずむしろだんだん近くなってきてきた。

「来るな、来るなー!!」

迎撃手が7.92mm機銃をたこ焼き型艦載機に撃つが弾かれ、さらに弾切れとなった。

ついに、たこ焼きが追いつく。操縦妖精は自分の持てる操縦技術を駆使して逃げるがたこ焼きは、後ろにピッタリと付いてくる。

たこ焼きが口を開き、機銃を撃つ態勢になってもまだ諦めず逃げる彩雲。

 

 

結果、その足掻きは無駄ではなかった。

上空から、太陽を背に烈風が降下してきて、搭載されている20mm機銃でたこ焼きを撃ち落としていった。

「大丈夫だったか?」

「「「お、おやっさん!」」」

蒼龍の彩雲を救ったのは、佐世保の赤城と共に空母部隊の中核を成す同鎮守府の加賀航空隊であった。

「お前らの情報は、役に立った。よくやった」

「「「あ、ありがとうございます!」」」

「蒼龍は近くまで来ている。もう深海棲艦は来ないから安心しろ」

おやっさんこと加賀航空隊の隊長妖精が彩雲妖精達を褒め、彩雲妖精達は涙を流し再び上空へと上昇していく烈風に向けて敬礼して見送った。

 

13:26

 

佐世保鎮守府の蒼龍偵察隊からの情報に基づき、ブリトゥン島南西200km地点にいる深海棲艦の大艦隊をスラバヤにいた艦隊はカリムン・ジャワ島北東180km地点で迎え撃つことを決定。

国防海軍の護衛艦隊は、バウェアン島沖に展開しミサイルによる支援攻撃を担うことになった。

 

22:32

 

艦隊の配置が完了

護衛艦のいずも及びかがの艦載機SH-60Kによる深海棲艦の監視によると深海棲艦に動きが無いことが分かった。

艦隊は、夜明けと同時に深海棲艦の攻勢が来るものと予想し待機。

引き続き、SH-60Kによる監視任務も続けられることになった。

 

1月29日 00:24

 

監視任務中のSH-60Kから入電

深海棲艦の艦隊が航行を開始。進路はカリムン・ジャワ島北側を通る。

接敵時刻は0530頃。

 

これに伴い、空母艦隊を後方に配備し発着艦可能時刻まで待機させることになった。

 

05:36

 

深海棲艦の艦隊を発見。大和、武蔵による超長距離一斉砲撃が始まりこれがジャワ海海戦の始まりの号砲となった。

 

観測妖精「着だーん、今!至近弾多数、夾叉も確認!」

大和「そのまま、第二斉射撃て!」

大和達の46cm三連装砲が再び吠え、深海棲艦へと徹甲弾を撃ち出す。

大和「次弾、装填急げ!」

装填手の妖精さん達が急ぎ、主砲に徹甲弾を装填していく。

今回艦隊の作戦は空母艦載機の発艦可能時刻、06:35まで大和型戦艦による超長距離砲撃によってある程度の深海棲艦を減らしておき、時間以降航空隊の援護のもと殲滅する算段となっている。

 

大和(今回の敗北条件は、航空隊の全滅又はバウェアン島沖の最終防衛ラインの突破。1時間程の砲撃で多く減らさなきゃ!)

観測妖精「着だーん、今!」

今度は命中弾が多数出て、何隻か撃沈させることに成功していた。さらに観測妖精は、辛うじて撃沈を免れ大破し、火が出て煙が立ち込める深海棲艦の様子を確認できた。

観測妖精「命中弾多数!少なくとも10隻を撃沈!大破炎上中の深海棲艦もう少し確認!」

大和「よし!」

しかし、深海棲艦も撃たれっぱなしではない。

観測妖精「敵艦隊発砲!」

深海棲艦の大艦隊の中央部からこちらの艦隊まで50km以上離れている。

武蔵「まさか、戦艦水鬼の20inch砲か!?」

20inch≒51cm、大和型でも搭載ギリギリである46cm砲を超える大口径砲である。その威力は、巡洋戦艦クラスならば一撃で沈めることが出来るワンパン主砲である。

そして、戦艦水鬼の20inch連装砲から放たれた砲弾は大和たちの近くに着弾。46cm砲以上の水しぶきが上がる。

大和「至近弾…やりますね。では、お礼です!第三斉射撃て!」

大和たちがお返しの第三斉射を撃つ。しかし、深海棲艦の艦隊中央部には届かず先頭の深海棲艦を再び複数沈める。

航空隊使用可能まで40分、開幕の1時間は大和型と戦艦水鬼による超長距離砲撃戦となった。

 

06:38

 

約1時間ほどの超長距離砲撃戦の成果は、106隻を撃沈した。

そして、後方にいた空母艦娘から艦載機が空に上がり始め1時間で出撃可能全機が発艦を完了した。その数は、1,000機近くにもなっており一糸乱れることのない編隊を組み、高度を上げていく航空隊の光景は、中々爽快なものであった。

制空隊を率いるのは、先程蒼龍の偵察隊の彩雲を救った佐世保鎮守府所属の加賀航空隊の隊長で烈風改に搭乗する妖精さんである。

攻撃隊は、お馴染みの佐世保鎮守府所属の赤城の村田隊長である。

艦隊から離れ敵艦隊に向かって飛んでいると、航空隊の上を飛ぶ機影を航空隊は確認した。

「あれは、タウイタウイの基地航空隊か」

そう、太田提督が指示を出し深海棲艦の襲撃も無く平穏なフライトをしてきた一式陸攻112機である。隊長機から攻撃の旨が伝えられる。

「ふっ、一番槍は譲るぜ」

健闘を祈る。と伝えると一式陸攻からさらに[スマナイ]と伝えられ、深海棲艦へと向かっていった。

村田隊長は、それが何を意味するのか理解できなかった。

 

 

「おいおい…、深海棲艦の数が砲撃後とほとんど減ってないんだが…」

村田隊長率いる攻撃隊が、深海棲艦のいる上空で目にしたのは一式陸攻による攻撃を受けたはずなのに轟沈もしくは損傷もない深海棲艦の大艦隊であった。

 

この後、村田隊長率いる攻撃隊が敵艦隊への攻撃を行うも深海棲艦の数は減らずむしろ増えていった。

 

10:45

航空機の損害も大きくなり航空劣勢となり、敵の弾着観測射撃がはじまり艦娘に被害が出始めジャワ海海戦の敗北が濃厚となった。

 

11:00

旗艦大和の判断によりバウェアン島南沖に防衛線を後退させる態勢を整えることに。

 

13:48

深海棲艦は、後退中の艦隊を追撃。

空母13隻、戦艦2隻、重巡4隻、軽巡2隻、駆逐艦3隻が大破しスラバヤの拠点に護衛を含め48隻が退避。

 

16:15

護衛退避により艦隊の戦闘能力が低下する中、バウェアン島南南東沖40㎞地点で深海棲艦を迎え撃つ。

結果は、制空権の確保が出来ず終始航空劣勢のままだったため敗北。

艦隊は甚大な被害を出しスラバヤへと撤退。

これにより、ジャワ海の制海権を喪失。

 

 

スラバヤの要塞に撤退した大和たちは中破、大破した艦娘以外でスラバヤ沖の哨戒を行いつつ、タウイタウイ泊地に救援要請を出していた。

しかし、

大和「救援を出すことができない⁉なぜ!」

大淀『こちらにも深海棲艦の襲撃を受けており救援部隊を出そうにも阻まれてしまうんです』

大和「1艦隊でいいので送れないのですか?」

大淀『それも難しいです(ウゥゥゥーー‼)ごめんなさい襲撃のようですので』

大和「あ、ちょっと…」

通信が切れ、大和は苛立ちを見せながら通信室を出て会議室に戻る。

赤城「どうだった? 救援は来るのか?」

佐世保の赤城が成果を大和に聞く。

大和「ダメでした」

その言葉を聞いた会議室に集まった艦隊の幹部メンバー(海軍将校を含む)は一様に厳しい表情になる。

「やはり完全撤退するしかないですかね」

「第6師団を見捨てるのか!」

「そうじゃない、第6師団も連れて帰るに決まっているだろう」

「でも、どうやって助けるんだ?包囲されている第6師団を救援する戦力はないぞ」

「それならば、無事な艦娘に歩兵装備を持たせれば…」

赤城「…私たちに犬死しろと?」

佐世保の赤城が低い声で将校に問う。

「すまない、不適切な発言だった」

すぐさま、将校は謝罪する。それを受け入れ赤城は椅子にもたれかかる。

大和「たしかに、私たち艦娘は人より丈夫ですが艤装をつけている時だけなので実際は普通の一般女性と変わりませんよ」

大和の説明の後、再び会議が続くも方針が決まることなくその日の会議は終了した。

その後も、会議では方針が決まらずただただ無駄に時間が過ぎていった。

 

2月3日

 

スラバヤに撤退してから5日後、事態が動く。

ついに、深海棲艦がスラバヤ沖に侵攻した。大和たちはすぐさま迎撃にあたる。

しかし

大和「くっ、こんな所で、」

武蔵「姉さん!」

複数の戦艦棲姫の砲撃が直撃し、艤装の第二砲塔が大破、機銃群が壊滅、第三砲塔の砲身が1つダメになるも第二砲塔の弾薬庫が無事のため中破で留まっていたが、これ以上の戦闘は難しいものであった。

大和「武蔵、ごめんなさい。後方に下がるね…」

武蔵「あぁ、任せておけ。全艦へ、旗艦負傷に伴いこの武蔵が指揮を執る!」

大和の戦線離脱後、武蔵をはじめ呉の艦娘の活躍によって深海棲艦の撃退に成功した。

 

20:48

ここにきて最も恐れていた事態が起きてしまう。

大和「え、物資が底を尽きた!?」

今日の戦闘でスラバヤの補給施設に空襲が発生。迎撃するも施設の8割が被害を受け、艤装の補給で物資が尽きてしまったのだ。

これに伴い、艦隊はスラバヤからの撤退を決定。

明朝、スラバヤ沖を囲む深海棲艦を突破する事となった。

作戦は、大破した艦娘はいずもに乗せ、それ以外は海軍艦艇を護衛しつつ撤退するものであった。

旗艦いずもの艦長は、

「今作戦は、いったい何隻沈むのだろうか。沈むのは、我々かもしれない」

と、話していたそうだ。

 

2月4日 2:15

 

スラバヤから艦隊が出港

日の昇らないうちにスラバヤ沖から脱出を試みる。

 

04:48

 

深海棲艦の潜水艦に発見され艦娘数名が雷撃を受け大破

 

05:26

 

深海棲艦の艦隊と接敵する。

 

空がだんだん明るくなり始めたころ、艦隊は前方に姫級のみの深海棲艦の艦隊と後方からflagship、eliteのみの深海棲艦の大艦隊に挟み撃ちにされてしまった。

敵の砲撃が降り注ぎ艦隊は何とか回避する。しかし

大和「ここまでかな…」

大和をはじめ何名かの船速が低下

そこに、戻ってきた武蔵が手を引いて連れて行こうとするが、首を横に振り真剣な表情になる。

大和「武蔵、損傷の被害が少ない艦を連れて海軍の人たちと突破しなさい」

武蔵「!?…、姉さんはどうするんだ」

その問いに、大和はにっこり笑って

大和「私は、残って殿を務める」

武蔵「できない、わたしが残って―」

大和「武蔵!あなたは、残りを必ず帰還させなさい…、いい?」

武蔵「―――、わかった」

武蔵の強く握り占めた手からは、血が流れていた

大和「うん。私は、あなたの姉で幸せだった。そして、最後までいれなくてごめんね」

 

06:18

損傷のひどい36名を除く艦娘と、国防海軍の護衛艦が無事戦線を離脱

大和「行きましたね…」

赤城「あぁ…」

殿には、佐世保の赤城の姿もあった。彼女も昨日の戦いで中破していた。

大和「そういえば、赤城さん戦えるんですか?」

赤城「大和、私を誰だと思っているんだ。弓などなくとも戦える」

そういうと、赤城は艤装から10cmほどの棒を取り出し、棒についたボタンを押すと棒が変形し刃が60cm、柄が約170cmの薙刀になった。

赤城「鳳翔さんの直伝だ。心配はいらん」

大和「そう、みたいですね」

大和たち殿組は、背中合わせになり、それぞれ戦闘態勢になる。

大和(やっぱりあの時、言っておけばよかったな…)

大和は、一人の男を思い浮かべる。

大和(デスピナさん…。翔鶴さんみたいに私も助けてくれないんですか…)

赤城「くるぞ!」

大和は、深海棲艦からの砲撃と航空機から落ちてくる爆弾を眺めつつ

大和(また…逝くのね…さようなら、デスピナさん…)

瞼を閉じた彼女の目からは、いくつもの大粒の涙がこぼれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドオオオォォォォォォンンンンンンン‼!!!!!!!!

大和「ふぇ?」

深海棲艦に無数のミサイルが着弾する。さらに

ゴオオオオォォォォォォーーーーーーーーー!!!!!!!

200機を超える大型の全翼機が大和たちの上空数メートルを飛んで行き、後方にいた深海棲艦の大艦隊を空爆で吹き飛ばしていく。

「ふぅー、間に合ったみたいですね」

後ろを見ていた大和が聞き覚えのある助けを求めた人物の声に反応し振り返ると、

裕一「もう、大丈夫ですよ。大和さん」

デスピナこと裕一がそこに立っていた。

大和「デ…デスピナさん…うぅぅ…うわぁぁん!」

大和が裕一へと飛びつき声の限り泣き叫び始めた。裕一はいきなりの出来事で慌てるも、大和をやさしく抱きしめ子供をあやす様に背中をポン、ポン、と叩いて慰めていた。

 

 

裕一「すっきりしました?」

裕一がハンカチを差し出しかけて、ポケットティシュを渡す。テンプレは起こさない。

大和はポケットティシュを受け取り、涙を拭き鼻をかんで

大和「はい、大丈夫です。それであの…」

裕一「どうしました?」

大和「どうやってここに?タウイタウイも襲撃を受けていたはず…」

裕一「ええ、昨日深海棲艦の襲撃を撃退した後、大和さんたちの状況を知りました。タウイタウイからは最低でも2日かかるので、カロンに乗って空挺降下でここにやって来たんです」

大和「他の皆さんは?」

裕一「あー…、空挺降下がイヤだったらしく普通に来るそうです」

苦笑いしながら答えていた裕一だったが、表情が真剣なものになる。

裕一「すみません、大和さん少し待ってもらってもいいですか」

裕一たちの周りには、再び深海棲艦が取り囲み始めていた。

大和「デスピナさん…周りが…」

海上で女の子座りをしている大和が裕一の手を握り心配そうに見上げる。握られた手を裕一は握り返す。

裕一「大丈夫ですよ、しかしミサイルで潰すのも鬱陶しいですね…」

裕一は少し考えコマンドのホログラムをだし

裕一「副長、砲雷長、A制限を解除する」

 

 

副長「裕一さん、まさか…」

裕一「あぁ、今回のは流石にちょっとキレてるんだ」

副長の問いに俺は少し声のトーンを下げて答える。

砲雷長「いいんですか?あれは、我々の切り札ですよ」

裕一「切り札でも使わなければ意味がない。それに、ひとり艤装だけじゃなく身体のほうに致命的なダメージを負っている。あまり時間はない」

視線を向けた先には、デスピナの軍医妖精と救護班、応急修理妖精が、大破した赤城に応急処置と修理を行っていた。

裕一「では、兵装制限Aを解除」

副長、砲雷長「はい」

パスワードを入力し、副長と砲雷長によってシステムの物理ロックも解除される。

すると―兵装制限Aを解除 衛星軌道兵器ノートゥング攻撃態勢に移行します―と表示される。

CDC「衛星軌道兵器ノートゥング、エネルギー充電を開始」

砲雷長「ノートゥングとシステムリンク。上空からの目標映像を出します」

ホログラムに、ノートゥングからの映像が表示される。

裕一「攻撃モード スプライトフォール」

砲雷長「了解、攻撃モード スプライトフォール」

CDC「攻撃範囲を確認。…計算完了、攻撃地点入力」

ホログラムで表示されるレーダー上に、攻撃予定ポイントの範囲が表示される。

CDC「エネルギー充電完了」

副長「攻撃モード スプライトフォール システムオールグリーン」

副長の報告を聞き

裕一「最終安全装置解除!」

砲雷長「ターゲットロック、誤差修正完了、スタンバイ!」

副長「カウントダウン5秒前…3、2、1」

裕一「消えろ…この世界から。スプライトフォール、ファイヤ!」

すると、空から無数のエネルギー弾がまず、目の前の深海棲艦に降り注ぐ。

エネルギー弾が直撃した深海棲艦は蒸発し、エネルギー弾の着弾地点の近くにいた深海棲艦は爆発に巻き込まれ沈んでいく。目の前にいた深海棲艦が9割方いなくなると、今度は後ろのほうに無数のエネルギー弾が降り注ぎ始めた。

その後も、左右にいた深海棲艦もスプライトフォールの餌食になり、姫、鬼級も残らず全て沈めたのだった。

 

砲雷長「周囲の深海棲艦を殲滅しました」

CDC「ノートゥング、冷却に入ります」

裕一「了解。冷却完了後、通常モードへ移行」

コマンドの衛星攻撃のホログラムを閉じる。それと同時に体にどっと疲れがやってきた。あー、甘いもの食べたい。

 

俺がこんなにも疲れている理由は、衛星攻撃システムは本来エレメンタルシステムver2.5から実装されるはずであり、現在のバージョンであるver2.1でも使えるようダウングレードしたもののため、演算処理量が大きくなっているからだ。

結果、使用後は艦娘の身体が艤装状態のフィードバックを受けるのに従い、倦怠感や頭痛などの症状がでるのだ。

 

そんなことを考えていたら、大和さんが服の袖を引っ張ってきた。

大和「デスピナさん…今の攻撃は?」

頭痛がし始めたが我慢しながら答える。

裕一「えっと…オフレコで頼みたいんですが…。さっきのは、衛星軌道兵器ノートゥング、による攻撃です」

大和「衛星軌道兵器。ということは宇宙から攻撃したってことですか?」

裕一「えぇ、俺が持つ、切り札でも、あります」

やばい、頭痛が…。

軍医妖精「裕一さん、薬です」

裕一「あぁ、ありがとう」

軍医妖精から頭痛薬とミネラルウォーターをもらい飲む。

ふぅ…、だいぶ楽になった。

 

軍医のくれた薬は即効性が高い。過去に一度風邪をひいた時も薬を軍医から処方してもらったのだが、飲んで30分ほどでほぼ元気になった。

その時、なんの成分が入っているのか軍医妖精に聞くと「え?知りたいんですか??」と笑顔で言われたので聞くのをやめた。そのため即効性の高さの理由はわからない。

 

再び、余計なことを考えていると、通信が入る。

航空参謀『アタッカーからビッグフォートレスへ』

裕一「こちらビッグフォートレス、状況は?」

航空参謀『はい、第6師団はチルボンまで後退。そこにフォーリナーのヘクトルによる攻撃を受けていたので救援に入り、敵部隊を殲滅。しかし戦闘部隊の3割を喪失、ほぼ全滅状態です』

裕一「住民は?」

航空参謀『ないとのことです』

裕一「そう…か。戦闘機と迎えのヒドラを向かわせる。全機帰還せよ」

住民が無事ならばいいか。兵士の皆さんは己の職務を全うしたからな。後で、遺体の回収にもいかないとね。

航空参謀『了解です。それともう一つ』

裕一「どうした?」

航空参謀『実は、ヘクトルの中に変わったやつがいたんです。データを送りますね』

航空参謀から送られてきたデータを開く。5枚の航空写真と、第6師団からだろうか地上で撮影された4枚の写真であった。

写真には、多くの銀色のヘクトルたちのなかに金色の人型が数体写っていた。

そのうちの1枚に金色の人型から足がとれ、紫色の液体が流れている写真。

さらに、その脚部が再生している様子が写った写真もあった。

裕一「これは、一体…」

副長「生物的な印象がありますね…。生体兵器ですかね…」

裕一「しかし、このタイプはデータ上にはなかった。フォーリナーが新兵器を開発した…?」

前世で地球防衛軍4.1の本編はもちろんDLCにもこのタイプの敵はいなかった。

おそらく、俺の出現でフォーリナーの兵器が変化しつつあるのか?

裕一「調査チームを送るか。副長、3博士連れて現地に行ってきてくれ」

副長「了解です。レンジャー部隊を護衛で借りていいですか」

裕一「かまわない」

副長に3博士以外の調査チーム人選を任せ、俺はヒドラの発艦準備を始めるのだった。

 

 




ノートゥングがついに使用されました。
これで、自重する必要がなくなったので次の段階からは、もっと出したいですね。


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