要塞空母デスピナ出撃す。 第1篇仮初の世界   作:まはまは

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お待たせしました。第28話です。
今回はいつもより短いです。

ここでお知らせ
現在、投稿ペースがとても遅くなっています。申し訳ありません。
この時期リアルが忙しいなどがあり、作業がなかなか進んでおりません。
当面は、月に1、2回の投稿ペースになります。
読者の皆様には気長にお待ち頂けたら幸いです。




第28話 涙

第3章 北方海域編

第28話 涙

 

18:09

大和「救難信号、デスピナさんから!?」

私は救難信号が発せられている所に急ぐ。

そして、海面が火で明るくなっているのが見えた。そこには、艤装の至る所から火がでて膝をついているデスピナさんの姿があった。私は、思わず叫ぶ。

大和「デスピナさん!」

けれども、デスピナさんはこちらに気づいていない様子。私は、何度もデスピナさんのことを呼びながら近づきます。

デスピナさんまであと少しのところで、デスピナさんが倒れました。海に沈む前に私は、すぐにデスピナさんを抱き抱えました。

大和「デスピナさん!起きてください!デスピナさん!」

私は、デスピナさんの体を揺らします。しかし、デスピナさんからは多くの血が流れておりかなり危険な状態であることが分かります。

副長「大和さん!少し手伝ってください!」

デスピナさんの艤装から妖精さんが出てきました。

大和「妖精さん、デスピナさんの状態は?」

副長「大破しています。しかし、多くの血が流れていて艤装は無事でも体の方が危険な状態です。早く医療施設に!」

大和「でも、ここは広い海にいます。大湊までかなり時間がかかりますよ!」

ここで、もう1人の妖精さんが出てきました。

砲雷長「ヒドラを使いましょう。飛行甲板は一応ヒドラを発艦させれるようにはなっています。」

副長「その手があったか!航空参謀!ヒドラの発艦を急げ!」

大和「妖精さんどうするんですか?」

副長「大和さんも手伝ってください。今からヘリにデスピナさんを乗せて横須賀までいきます。なので、ヘリに乗せるのを手伝ってください!」

大和「わ、分かりました。」

すると、デスピナさんの艤装から横須賀から大湊まで乗ったあの機体の小さいものが出てきて、飛行甲板から飛び立つと、前も見た大きさになりました。

海面スレスレまでヘリは降下します。風圧で海面が波立ちます。

ヘリの下にある入り口が開き、デスピナさんを中に入れます。

副長「大和さんも!」

人間サイズになった妖精さんが私も乗るように言います。しかし

大和「え?でも私、艤装装着したままなのですが?」

副長「大丈夫です!さぁ、早く。」

デスピナさんを急ぎ運ばなければならないので私もヘリに乗ります。そして入り口が閉まり高度が上がっていきます。

周りに、護衛と思われる戦闘機が上空で待機していました。

ヘリは上昇をやめて進み始めました。

妖精さんがデスピナさんの艤装を解除しました。

副長「軍医殿どうですか?」

また、新たな妖精さんたちがでてきました。

軍医妖精「…やはり、血を流しすぎてますね。脈がだんだん弱くなってきてます。一応、止血はしましたので出血は減りましたが…。」

副長「横須賀までは持ちますかね?」

現在、重傷の艦娘を治す施設があるのは横須賀、呉舞鶴、佐世保だけです。大湊はまだ出来ていません。

軍医妖精「…ぎりぎりです。」

横須賀まではおよそ6時間かかります。

大和「あ、あの!」

軍医妖精「どうしましたか?」

大和「輸血をしたらどうでしょうか。私の血をデスピナさんに。」

ただ、デスピナさんを助けたいという一心で提案しました。

副長「なるほど、それならば横須賀まで持たせることが出来るかもしれない。軍医殿、輸血の道具は」

軍医妖精「あります。でも、まずデスピナさんと大和さんの血液型を調べますね。」

大和「はい。よろしくお願いします。」

私の血液型はA型。デスピナさんの血液型は調べた結果同じくA型でした。

直ちに、輸血が行われました。全部で500mlの血をデスピナさんにあげました。

多くの血を渡したのと海をずっとかなりの速さで航行していた疲れもあり、眠ってしまいました。

 

9月21日

00:35

横須賀から50km先の上空

ヒドラ機長「横須賀鎮守府へ、こちらデスピナ所属CH-65。」

大淀『こちら横須賀鎮守府。どうしましたか?』

ヒドラ機長「現在、デスピナが艤装は大破し、重傷を負い搬送中。至急、着陸許可を求む。」

大淀『了解。着陸を許可します。第一ヘリポートに医療班を待機させます。』

ヒドラ機長「感謝する。」

 

副長「大和さん。もうすぐ着きます。」

大和「う、うん…。ありがとうございます。」

妖精さんが起こしてくれました。どうやら、もうすぐ横須賀鎮守府に着くようです。艤装を装着したままなので座った状態でしか寝れなかったので体が少しだるいです。

10分後、ヘリは横須賀鎮守府のヘリポートに着陸しました。ハッチが開くとすぐに工廠の妖精さんがタンカでデスピナさんをヘリポートに止まっている車両に運びます。

その車両は、艦娘が重傷の時、集中治療用のカプセルが搭載した救急車の様なもので、カプセルごと工廠施設の特別棟に運びます。

妖精さんたちは、デスピナさんをカプセルの中に入れ治癒を促進する液体をカプセルに満たして、車両は工廠施設へ行ってしまいました。

工廠妖精「大和さん、ドックへ、行きましょう。」

別の工廠の妖精さんが来ました。私も艤装をそろそろ下ろしてゆっくり休みたいので妖精さんに連れられてドックに向かいました。

 

 

07:12

横須賀鎮守府本館 執務室

今日未明にデスピナが大破し、緊急搬送されて来たことを長門から聞いていた。

長門「工廠長の話では、デスピナの命に別状はないとのことだ。しかし、かなりの重傷で治療に時間がかかる。それと、艤装も轟沈に近い大破だそうだ。」

中村「資材がどれだけ飛ぶかな…、は、ははは。とにかくデスピナには早く良くなってもらいたいな。」

長門「あぁ。」

中村「そういえば、付き添いで一緒にいた大和は?」

長門「数日ほど臨時の休暇を与えた。あと、大湊にいる者達は今日の19:42に帰還予定だ。」

中村「うん、それでいいかな。」

とにかく、今回の作戦は陸軍の部隊無事に救出することが出来ていたので良かった。

陸奥「でも、デスピナさんが大破か…。深海棲艦の新型かしら?」

長門「情報が全くないからな、デスピナの回復を待ってからだな。」

中村「とりあえず、通常通り、資材の生産と遠征を行ってくれ。デスピナの事に関しては明日私から全員に伝えるまで情報規制を実施する。」

長門「了解した。」

 

 

9月25日 15:24

工廠エリア 医療棟 集中治療室

3日前、鎮守府の艦娘の皆さんの前で提督からキス島の作戦が成功した事が告げられました。そして、デスピナさんが大破し、意識不明の重傷を負ったことも聞きました。私は、それからデスピナさんのベッドの隣に居続けています。ご飯は、瑞鶴が気を利かせて持って来てくれます。

瑞鶴「デスピナさん、早く目が覚めたらいいね。でも、翔鶴姉もしっかり休んでね。」

翔鶴「分かっているわ。しっかり睡眠も取っているわ。」

瑞鶴「それなら、良いんだけどね。じゃ、そろそろ私、行くね。」

翔鶴「えぇ、いつもごめんね、瑞鶴。」

瑞鶴「気にしないで。また、後でね。」

瑞鶴を見送ったあと、ベッドの隣にあるイスに座り、未だに目を覚まさないデスピナさんの左手を両手で握ります。

すると、左手の指が少しピクっと動きました。

翔鶴「デスピナさん!」

裕一「うん…。」

デスピナさんの瞼が少しずつ開き、

裕一「…知らない天井だ。」

定番のネタを言ってから、寝たまま頭を動かして辺りを見渡します。そして、私と目が合いました。

裕一「翔鶴さん…。俺、どれだけ寝ていました?」

翔鶴「今日は、25日です。鎮守府に運ばれてから4日経っています。」

裕一「そうですか…。本気で死ぬかと思ったので、良かった。どうやら、悪運があるみたいですね。」

と言って、起き上がります。そして、私の方を向きます。

私は、だんだん視界がぼやけてきました。

裕一「翔鶴さん?」

私の目から大粒の涙がぼろぼろと落ちていきます。私はそれを隠そうと俯きます。

翔鶴「ううっ…わたし、しんぱい、したんですよ…。デスピナさんが…大破したって聞いて…。」

裕一「…。」

翔鶴「1人で、たくさんの…敵と戦って…。どうして、随伴艦がいないんですか!」

裕一「ごめんなさい。」

翔鶴「轟沈したら…、どうするつもりだったんですか!私…、まだ恩返しもできていないのに…。」

すると、デスピナさんが私の顔を胸元まで抱き寄せて耳元で

裕一「ごめんなさい、翔鶴さん。心配させてしまって。でも、俺は沈みませんよ。必ず、あなたのもとに生きて帰ってきます。」

私は、胸元に顔を押し付けて静かに続きを待ちます。

裕一「今度からは、ちゃんと随伴艦をつけます。翔鶴さん、顔を上げてください。」

私は、デスピナさんを見上げます。すると、デスピナさんが私の目から溢れ出る涙を指で拭い

裕一「泣きたいなら、今は思いっきり泣いて、すっきりしてください。それから、また翔鶴さんの笑顔を見せてください。あなたに涙は似合わない。」

そう言って、もう1度抱き締めてくれました。それから私は声をあげて泣きました。

 

さて、海上で大破し、そこから意識を失い、目が覚めたら知らない天井が見えたので定番のネタを言った。

その後、翔鶴さんから鎮守府に運ばれて4日、日付けで言えば意識を失ってから5日経っていた。

そして、現在、翔鶴さんを慰めていた。原因は俺なので本当に申し訳なく思う。

10分程泣いて少し落ち着いてきたので、ティッシュ箱を渡しておく。

翔鶴さんは何枚か取って、涙を拭いて後ろを向いて鼻をかんだ。

それから、俺のほうを向いて微笑んでくれた。

裕一「泣き顔も素敵ですが、翔鶴さんのその表情ほうが好きですよ。」

と、言ってみる。

翔鶴「…ありがとうございます。」

翔鶴さんは顔を赤らめ俯く。

そして俺は気づく。今までの言動を。

「あなたに涙は似合わない」とか「泣き顔も素敵です」とか他にも、泣いている時にも耳元で囁いていたことなど、とにかく恥ずかしさで顔から火が出そうになる。

自分でも驚くほどの言葉の数々である。俺も顔を赤くし、翔鶴さんと同じく俯く。

そうこうしていると、部屋に誰か入ってきた。

瑞鶴「翔鶴姉、間宮さんから差し入れ貰ったからたべ…よ…」

瑞鶴がこちらに気づき固まる。手には差し入れが入った箱があり、唖然として箱を落とす…ようなことはしなかった。

裕一「瑞鶴。」

瑞鶴「は、はい。」

裕一「翔鶴さんとはやましい事は無いがこの事は他言無用で。」

瑞鶴「分かったわ。」

とりあえず、青葉にバレることはないだろう。

裕一「翔鶴さん、瑞鶴が差し入れを持って来てくれたので食べましょう。」

と、翔鶴さんに声をかけるが反応がない。

瑞鶴「翔鶴姉?…反応が無い、ただのしかばねのようだ。」

裕一「いや、死んでないでしょうが。」

瑞鶴「翔鶴姉、やっぱりあまり寝てなかったのかな?」

瑞鶴が仕方がないといった感じで話す。翔鶴さんは俯いた状態のまま寝息を立てていた。やはり、彼女にはかなり心配をかけていたようだ。

瑞鶴「とりあえず、翔鶴姉をベッドに寝かしておきますか。」

この後、翔鶴さんを俺の寝ていたベッドに寝かせてから、瑞鶴と間宮さんからの差し入れを美味しくいただきました。

 

9月30日 10:24

鎮守府本館 執務室

裕一「以上で、今作戦の報告を終わります。」

中村「沖ノ島で君が見つけた機体が出てきたか…。性能は聞いたが。今、新型機と戦えるのはデスピナだけだな。」

中村提督は少し苦い表情をした。

中村「とにかくご苦労だった。それにしても、病み上がりだろう?旗艦の大和に報告を頼んでも良かったと思うが?」

裕一「大和さんは派遣艦隊の旗艦とはいえ、キス島の救出作戦には、私が旗艦として向かいました。その時の戦闘の詳細を、ありのままに報告出来るのは私だけです。」

中村「そうか。さて、デスピナ。艤装についてだが、工廠からは修理した場合の必要資材量がとどいているのだが…多すぎだ。」

裕一「轟沈しかけましたからね。そこで一つ頼みたいことがあるのですが。」

中村「なんだ?」

裕一「実は…」

 

2日前

副長「調子はどうですか?裕一さん。」

裕一「副長、久しぶりだね。まぁまぁってところかな。」

副長「今日は第一次改装案についてお話が。」

裕一「改装?艤装の修復が出来ないのか?」

副長「いえ、出来ることには出来るのですが…その、資材の量がとてつもなくて。」

裕一「えっとー、どのくらい?」

副長「鋼材が万を超えてます。改装は6,000の鋼材で済みます。」

裕一「あ…、修復するより改装の方がよさそうだね。」

副長「はい。それで改装についてですが」

裕一「ちょっと待って。」

副長「なんでしょう?」

裕一「デスピナに改装案ってあった?」

副長「博士達に作ってもらいました。」

裕一「うん?博士、達?」

副長「はい。この方達です、どうぞ。」

すると、俺の頭の上から3人の妖精が飛び降りて…、着地。しかし、1名はコケた。

コケた妖精さんはすぐに立ち上がり、3人ともこちらを向いて

オハラ博士「最初は自信満々、だけど途中から超ネガティブ。オバラでもオオハラでもないぞ。オハラだ!」

飯綱博士「イズナーシリーズの生みの親、だけど登場場面が無い…。飯綱だ!」

結城博士「サンダーボウシリーズの生みの親とは私のこと。結城だ!」

3博士「「「3人揃って、EDF三博士!」」」

と決めポーズをとって後ろで小さな爆発と3色の煙幕が出る。

なにコレ。誰だ考えたやつ。まぁ、あいつだな。

裕一「副長。航空参謀に言っておいて。後で片付けろ、って。」

副長「了解です。」

裕一「それで、えっとー、三博士。デスピナの第1次改装案を書いてくれたのですか?」

オハラ博士「そうだとも。これが、改装案だ!」

と1枚の図面を広げた。

裕一「ミサイルハッチの増設、搭載機数の増加、エレメンタルシステムのバージョンアップ。まぁ、ここら辺は順当だな。次に、N5ミサイルをN6に全て換装。対空兵装であるスタンダードミサイルを、対空/対艦両用の汎用型ミサイルに換装。レールガンを4基から6基に増設。最後に装甲を現在の1.5倍か。」

今回の改装は、艤装で少し不満を持っていたところなどを改装するので、劇的な変化は無い。ただ、艤装の巨大化に伴い、艤装から新たに二本の脚が付く。形状は翔鶴型の艤装の主機に近い。

裕一「いいんじゃないかな。」

飯綱博士「では、工廠に頼んでしまいますね。」

裕一「よろしく。」

三博士は図面を持って、艤装がある工廠(鎮守府に運ばれた時に艤装は工廠で預かってもらっている)へ向かった。

 

時は戻り

裕一「…ということです。準備は既に完了しており、提督のゴーサイン待ちです。」

中村「そうか。了承しよう。後で工廠にも伝える。」

裕一「ありがとうございます。」

中村「と、いうことはデスピナ君。今日、ヒマだねー。」

裕一「まぁ、そうですね。」

中村「そろそろ、第2回目の開発をお願いしたいなー。」

裕一「…資材は?」

中村「問題ないよ。必要分は確保してあるから。工廠長にはそろそろデスピナが開発するからよろしくとは伝えてあるから、すぐにでも開発できるよ。」

裕一「分かりました。」

中村「今回も面白いものを頼むよー。」

と、言っているのを聞きながら執務室を後にした。

 


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