アンケート見てて皆意外とセリカさん好きなんだなぁて思った。
「……遅い!」
授業が始まっても教室に姿を見せないグレンに、数週間前にも聞いたことがある様なシスティーナの言葉が教室に響いた。ただ少し違うことがあるとすれば、その時とは違いグレンが真面目に授業をする様になったことだろう。
「最近は凄く良い授業してくれるから、少しは見直してやったのに。あいつ、まさか今日が休校日だと勘違いしてるんじゃないでしょうね?」
「流石にグレン先生でもそんなことは……ない、よね?でも、本当。珍しいよね?最近、ずっと遅刻しないで頑張ってたのに。」
そんなシスティーナとルミアの会話を皮切りに教室内はざわざわと騒々しくなる。そんな中ハクノは最近真面目になったから大丈夫だろうとグレンを置いて学院に来てしまったことを少しばかり後悔していた。
ハクノがそんな後悔をしている中、教室の扉が無造作に開かれ、皆やっとグレンが来たのだと扉に視線を向け、システィーナも一言文句を言ってやろうと扉に視線を向けたが、入って来たのはグレンではなく、見覚えのないチンピラ風の男とダークコートの男だった。
「あー、ここかー。いや、皆、勉強熱心ゴクローサマ!頑張れ若人!」
突然教室に現れた二人組のうちチンピラ風の男がふざけた口調で話しかけてくる。
「貴方たち、一体、何者ですか?ここはアルザーノ帝国魔術学院です。部外者は立ち入り禁止のはずです。そもそもどうやって学院に入ったんですか?」
正義感の強いシスティーナが席を立ち、二人に臆せずに言い放つ。
「あ、気になっちゃう?しょうがないなぁ、俺たちはここの弱っちい守衛さんぶっ殺してここまで来ちゃったテロリストでーす」
「は、え……?」
あっけらかんと言ったチンピラ風の男の言葉にシスティーナや生徒たちが呆けた顔をする。そして、正気に戻ったシスティーナが
「ふ、ふざけないで!真面目に答えなさい!」
と少しばかり苛立ちながら声を上げる
「え〜、俺たちこれでも結構真面目なんだけどなぁ。まぁ信じてくれないって言うんなら、取り敢えず…」
下卑た笑みを浮かべたチンピラ風の男がそんなことを言いながら指先をシスティーナの方に向けて呪文を唱える。
「≪ズドン≫」
そうするとシスティーナの頰をかすめながら閃光が駆け抜け背後の壁に小さい穴が穿たれた。その後も三度同じ呪文を唱えどれもシスティーナに当たるギリギリの距離を通り抜けて壁に穴を開ける。そして同じ魔術を四度も見て生徒たちはチンピラ風の男が何の魔術を使ったのか理解する。
「そ、そんな…今のは…まさか…【ライトニング・ピアス】!?」
黒魔【ライトニング・ピアス】。学生が学院で習う汎用魔術とは違い、軍用魔術に分類される殺傷性が高い
そうして生徒のほとんどが抵抗する気を失い、テロリストたちがどういうわけか、ルミアを渡せと言い出す中、ハクノはずっと頭の中でさらなる後悔とこの状況からの打破を考えていた。
(慢心していた。まさかこんなに堂々と真正面から犯行に及んでくるなんて。でもチンピラ風の男の方は力量はだいたいわかった。あれくらいなら自分一人でも対処できる。問題はもう一人の方だ、手に持っているケースの中に何か魔導器を隠し持っていることしかわからないから、迂闊に戦えない。それにここに居ないだけで、まだ仲間がいる可能性もある)
(それ以前に、もし、ここで戦うことになったとしても、ここにいる生徒全員を守りながらじゃ戦えない。せめてグレンがいればまだどうにかできるのに。いやグレンがいなくても【アレ】を使えば人数差や戦力差はどうにかなるかもしれないが、使うにはあの魔導器がないと呪文が恐ろしく長くて使いづらいし、その魔導器はカバンの中だから取りづらい)
そうやって考えていると、一瞬視線を感じて、そちらの方を向くとルミアと目が合う。そうして少しの間目を合わせていると自分から何か感じ取ったのか視線を外し、システィーナの方を向いた後、少し申し訳なさそうな顔をした後何かを決心した顔になり、自ら名乗り出た。
護衛対象を護らなければならない身としては、喜ばしいものではないが、そうしないとどちらにしろ生徒の身が危険に晒されることには変わらないため、何も出来ないでいる自分に殺意が湧き、必ず助けることを決めた。
その後、ダークコートの男ーレイクと呼ばれる男にルミアは連れ出され、チンピラ風の男ージンと呼ばれる男が生徒一人一人に黒魔【スペル・シール】で魔術を封じ、黒魔【マジック・ロープ】で拘束していく。生徒たちはレイクが出ていく前に、グレンが仲間に殺されているだろうと言われたことで、完全に助けがなくなったと絶望し、次々と拘束されていく。
そして、ついにハクノの番となった時、ハクノはジンにゆっくりと近づいて行き、自分の拳がジンに当たるところまで来ると、踏み込み、構えを取り勢いよく相手の鳩尾に拳を打ち付ける。
そうして体勢が崩れたところに、
そして、気絶させたジンを【マジック・ロープ】と【スペル・シール】で逆に拘束する。
その光景を見た生徒が可笑しなものを見たかの様にハクノを見るが、無視して自分のカバンの中から通信用の魔導器ともう一つ【アレ】用の魔導器を取り出す。
そして、通信用の魔導器を起動すると、すぐに通信が繋がりグレンの声が聞こえる
『ハクノ、てめえ!やっと通信に出やがったな!』
そんなグレンの声を聞いて生徒全員がグレンが生きていることに安堵する。
「ごめん、グレン。こっちはこっちで色々あったんだ。それで、グレンは今どこにいる?」
『今は校内だ。それで今どんな状況だ?』
「ルミアが犯人の一人に連れていかれて。もう一人は今教室で拘束した。今からルミアを取り返しに行くところ」
『そうか、ならいったん合流するか。場所は…魔術実験室でいいか?あぁ後、拘束した犯人連れてこい。』
「わかった。それじゃまた後で」
会話が終わると通信を切る
「それじゃ俺は犯人連れて、グレンに会いに行って来る。皆にはここで待ってて欲しいんだけど…」
「ま、待って。ルミアを助けに行くなら私も連れて行って!」
そうして、犯人を連れて出て行こうとすると、システィーナが付いてくると言ってくる。
「いいの?もしかしたら死ぬかもしれないんだよ?」
「!?……それでも、連れて行って!」
そんな何としても意見を変えようとしないシスティーナに少し呆れながらも、しょうがないと受諾する。
「わかったよ。でも危なくなったらすぐに逃げること、無茶をしないこと、これが守れる?」
「守るわ」
「なら、いいよ。それじゃこの後のことは皆、他言無用でお願いするね」
そう言うと、【アレ】用の魔導器ー指輪型のそれをはめて、呪文を唱える
「≪来い・アーチャー≫。≪来い・セイバー≫」
そう唱えると何もない空間から赤い外套を纏った褐色白髪の男と、赤い男装を身に纏った金髪の女性が現れた
「やっと仕事かな…マスター」
「うむ、であるならば奏者のサーヴァントとして一騎当千の活躍をしてみせよう」
「うん。セイバーにはここにいる皆の護衛をお願い。アーチャーはそこにいる犯人を連れて俺に付いて来てくれる?」
「あぁ、了解した」
「むむむ…せっかく奏者に良いところを見せようと思ったのだがしょうがない。此度はそこの弓兵に出番を譲るとしよう」
そうやって会話をしていると生徒がまた可笑しなものを見るようにハクノを見る。それがわかったハクノはもう隠すのも面倒だなと思いながら話す。
「安心して良いよ。この人たちは味方だし。帝国宮廷魔導師団の一員として皆の安全を保障するよ」
そう言うとクラス内がかなり慌ただしくなる。
「それじゃ、セイバー後は任せたから。アーチャー、システィーナ行くよ」
それを無視するようにハクノはセイバーに後を任せ、教室を出る。それをアーチャーは犯人を担いで付いて行き。システィーナは呆然としていたが、正気に戻ると慌てて付いて行く。
どう…だったかな…
もしかしたら消して書き直すかも。とりあえず、次回には原作一巻分が終わるよう頑張ります。
【サモン・サーヴァント】
ハクノのもう一つの固有魔術
サーヴァントを呼び出す
本来の詠唱
≪告げる・汝の身は我の下に・我が命運は汝の剣に・契約のよるべに従い・この意・この理に従うのなら・我に従え・ならばこの命運・汝が剣に預けよう≫
〔レガリア〕
ハクノの【サモン・サーヴァント】用の指輪型の魔導器
詠唱の省略。マナの消費軽減
おまけ〜数年前のある店での会話〜
「そう言えば、○○○○質問があるんだけど」
「どうした同士?何か悩み事か?」
「いやぁ〜。悩みってほどじゃないけど、俺普通に呪文を唱えると時間がかかるんだけど、どうしたら良いかなって」
「なるほど、そう言うことか。ならば聖職として迷える子羊に助言を送ろう『口よりも手を動かせ』」
「え?」
「なに、要は相手との呪文を唱える速度を気にしているのだろう。ならばその相手が詠唱よりも早く行動し相手の詠唱を妨害すれば良い……想像してみろ、呪文を短く唱えることが出来るからと粋がっている相手が自信満々で唱えようとしているのを妨害して悔しがっている様を……実に愉しい(愉悦)じゃないか」悪い笑み
「アッソウスッネ」
その後、その人にマジカルな拳法を学んだ