ロクでなし魔術講師とコード・キャスター   作:皿無き河童

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ルーキー日間16位ですよ。これもこんな私めの小説を読んでくださっている皆様のおかげです。本当にありがとうございます。


code05 転機ーダメ講師覚醒

 

グレンとシスティーナの魔術に対する見方の違いによって起きた騒動の次の日、その日生徒たちは昨日とは別の理由で驚愕と困惑の表情を見せていた。

その理由とは、いつもなら授業が始まってからやってくる遅刻常習犯のグレンが授業開始時間前にやってきていの一番にシスティーナに謝り、予鈴が鳴ると教壇に立ち授業の開始を宣言したからだ。

その突然の行為に唯一ハクノとルミアだけが落ち着いていた。

 

「さて……と。これが呪文学の教科書……だったっけ?」

 

そうやって一つの教科書を手にとってペラペラとページをめくっていく。一通りめくり終えると教科書を閉じ、教科書を持ったまま窓際まで行き、窓を開けた上で教科書を投げ捨てた。

 

その行動を見た生徒たちは、結局自習になるのかと各々自分の好きな教科書を開き始めた。

だが、グレンは再び教壇に立ち授業を始めた。それでも始めにされた暴言と授業内容がとっくに究めたつもりでいる(・・・・・・)【ショック・ボルト】に関するものだったためか、生徒の大半が不平不満を零していた、それをグレンは完全無視して授業を続け、ショック・ボルトの呪文をルーン語で黒板に書い表していく。

 

≪雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ≫

 

「さて、これが【ショック・ボルト】の基本的な詠唱呪文だ。そしてここからが問題な」

 

そう言ってグレンはチョークで黒板に書いた呪文の節を切った。

 

≪雷精よ・紫電の・衝撃以て・撃ち倒せ≫

 

「さて、これを唱えると何が起こる?当ててみな」

 

だが誰もその答えを答えれる者は誰一人いなかった。そして唯一知っているであろうハクノはただ黙っていた。

 

「なんだ?まさか全滅か?」

 

「そんなこと言ったって、そんな所で節を区切った呪文なんてあるはずありませんわ!」

 

「そんな呪文はマトモに起動しませんよ。必ずなんらかの形で失敗しますね」

 

とツインテールの少女ーウェンディと眼鏡の少年ーギイブルが返答する

 

「ぷっくくく。ぎゃーーはっははははははっ!」

「あのなぁ、あえて完成された呪文を違えてんだから失敗するのは当たり前だろ!?俺が聞いてんのは、その失敗がどういう形で現れるかって聞いてんだよ?」

 

「何が起きるのかなんてわかるわけありません(笑)結果はランダムです!」

 

そんなグレンのバカにした態度にウェンディが負けじと吠え立てる。

 

「ラ ン ダ ム!?あ、お前、このクソ簡単な術式捕まえて、ここまで詳細な条件を与えられておいて、ランダム!?お前らこの術、究めたんじゃないの!?俺の腹の皮をよじきり殺す気かぎゃははははははははっ!やめて苦しい助けて!」

 

ひたすらグレンは人を小馬鹿にするように大笑いし続ける。

 

「はぁはぁ。あーやっと落ち着いた。もういいわ。そんじゃハクノ答えよろしく」

 

グレンがそう言うと生徒の視線がハクノに集まる

 

「えーと。答えは右に曲がる、であってたよねグレン」

 

「あぁ、あってるぞ。≪雷精よ・紫電の・衝撃以て・撃ち倒せ≫」

 

そう唱えると【ショック・ボルト】が発動し途中で右に曲がった

 

「そんな馬鹿な!」

 

「ありえませんわ!」

 

ウェンディとギイブルが驚愕の声を上げる他の生徒もありえないと言いたげな表情になる

 

「だが現実だ。そしてさらにこうするとだな……」

 

≪雷・精よ・紫電の・衝撃以て・撃ち倒せ≫

 

「射程が極めて短くなる」

 

これもハクノの答えた通りになる

 

「で、ここをこうすると……」

 

≪雷精よ・紫電 以て・撃ち倒せ≫

 

「出力が物凄く低下する」

 

グレンはハクノに向かってその呪文を唱えて【ショック・ボルト】を放つ。だがハクノがあった通り出力が物凄く低下している為ハクノ自身当たった所で何も感じない

 

「ま、究めたっつーなら、これぐらいはできねーとな」

 

見事なまでのドヤ顔でグレンが言う。

 

「ま、待ってください。先生が知っているのはこの際置いておきますが。なぜハクノが知っているんですか。まさか彼だけ教えていたなんて言いませんよね」

 

誰が言ったのかわからないがそんな非難めいた言葉を聞くとグレンはなんてことないように答える

 

「あぁそれ?別に教えてなんてねぇよ。そもそもぶっちゃけた話こいつをこの学院に編入するのを推薦したのはセリカだ。この意味わざわざ言ってやらんでもわかるよな?」

 

それを聞いた瞬間生徒全員が再度ハクノに視線を向ける。つまりこの教室には第七階梯に至った稀代の魔術師に推薦されて学院に来た者が二人、生徒と非常勤講師として来ていると言うことだからだ。

 

「まぁそう言うことだ。つーわけで、今日、俺はお前らに、【ショック・ボルト】の呪文を教材にした術式構造と呪文のド基礎を教えてやるよ。ま、興味ない奴は寝てな」

 

しかし、今この時において眠気などを抱いている生徒は誰もいなかった。

その後は本当に基礎中の基礎、知る者からしたら常識中の常識のような内容のはずだが、グレンと時折助手のように手伝うハクノによる授業の内容は気にしなければ気がつかないようなことばかりであった。

特に生徒たちを驚かせたのが【ショック・ボルト】の呪文ですらない変な呪文を唱えたはずなのに【ショック・ボルト】の呪文が起動したことだ。

そして、この日この時間にて生徒のグレンとハクノと言う人間を見る目が変わった

 

ダメ講師グレン、覚醒。編入生ハクノの新事実。

その報せは瞬く間に学院内に広がっていった。噂が噂を呼び、他所のクラスの生徒たちも空いている時間に、グレンの授業に潜り込むようになり、そして皆、その授業の質の高さに驚嘆した。そして日を追うごとに今まで空席だった席が他のクラスからの飛び入り参加の生徒で埋まり、いつしか立ち見で受ける生徒が出始め、グレンと同じくらいの年頃の若手の講師の中の数人がグレンの授業に参加して、グレンの教え方や魔術理論を学ぼうとするぐらいだ。

こうして数十日で地のどん底まで落ちていたグレンの評価が同じくらいの日時でそれこそ天に昇るような勢いで上昇していった。

そして、時折そんなグレンに助手のように扱われるハクノもその知識量から生徒ではなく実は講師なんじゃないかと疑われるぐらいにグレンにこき使われていた。

 

そうして1日の授業が終わり、生徒たちがすっかりと帰宅した放課後。ハクノはグレンと二人して学院の屋上に来ていた。とくに目的はなく、ただなんとなくで二人して夕焼けに染まるフェジテの街並みを見ていた。

 

「それで真面目に授業をするようになった感想は?」

 

「まぁ、なんつーか……相変わらず魔術なんて反吐がでるほど嫌いなのは変わらないが……こういうのも悪くはねーかな」

 

そんな取り留めもない会話をする。だが今までセリカと一緒にグレンを見てきたハクノとしては小さいながらも改善していっているグレンの様子に安堵していた。

 

「おーおー。二人して夕日に向かって語り合っちゃってまぁ、青春してるな」

 

そんな突然の冷やかしの言葉に二人して振り返る。

 

「セリカお前。いつからそこにいたんだよ?」

 

「さぁてね。それじゃあ、デキの悪いロクでなしのお前に問題だ。当ててみな」

 

「アホか。お前のことだ、たった今ここまで忍び足で来たに決まってる」

 

「それで?セリカは何しに来たの?」

 

「カワイイ、カワイイ息子に会いにくるのに理由が必要か?」

 

「馬鹿。年齢差を考えろ。親と息子って言うより婆さんと孫だろ」

 

そんないつもの様な会話をする。見る人によってはありえないと言いたくなる様な光景だ。なにせ魔導士にとってまさに天上の人であるセリカがこの二人、特にグレンに対してはどこにでもいる息子が大切で大好きな親馬鹿になるのだから。

その後も特にたいした会話はしなかったが、明日からの五日間に渡って帝都で行われる学会に行っている間の留守中に何かあるかもしれないからとセリカから忠告を受けた。それにより少し重苦しい雰囲気になっていたが、ある二人の生徒の訪問により霧散する。

その生徒とは最近良い意味でグレンに関わる様になったシスティーナと初めから好意的に接して来ていたルミアの二人だ。二人は今まで図書館に残っていたらしく、わからないところがあったために、まだ残っているであろうグレンを探してここまで来たらしい。

そして、そう言う事ならと邪魔にならない様にセリカは退出した。

その後は、二人してグレンに質問していたが、扱いの差が許せないのかシスティーナがグレンに文句を言いルミアがおさめると言うこれまたいつもの様な光景を見ながら、ハクノは今日も何事もなく1日を終えていくのを感じるのだった。




唐突ですがちょっとしたアンケートを活動報告にてしたいと思います。
内容としてはハクノにヒロイン必要?というものです。

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