ロクでなし魔術講師とコード・キャスター   作:皿無き河童

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はっはっは。やったぞ遂にメリトリリスが宝具レベル5だ。もうガチャに思い残すことはない…えっキアラ…誰それ


code04 魔術に対する思い

グレンとシスティーナの決闘騒動が起きて、グレンに対する生徒たちの評価や信用がドン底に落ちて数日。反省も悪びれる様子もなく、いつものように不真面目に授業を行なっていた。だがその日のグレンは少しいつもと違った

 

「魔術って……そんなに偉大で崇高なもんかね?」

 

そんな誰に問いかけるでもない独り言をこぼした。そしてそれを聞いたシスティーナが喰いつきく。

 

「何を言いだしたかと思えば。偉大で崇高に決まっているでしょう?もっとも、あなたのような人には理解できないでしょうけど」

 

鼻で笑い、グレンを馬鹿にするように言い捨てる。そしていつもならそれで終わるような会話にグレンが反応して言い争いに発展する。

正直な話自分はグレンと同じで魔術のどこが偉大で崇高なのかわからないのだが。そんなことを考えながらグレンとシスティーナの言い争いを見守る。

他の生徒たちも自分と同じように自習の手を止めて二人を見守る。言い争いはグレンが優勢でシスティーナは言い返そうとするが反論できる部分を見つけ出せないのか唇を震わせているだけだった。そんな様子のシスティーナを見てかグレンは突然自身の言葉を取り消す。その行動にシスティーナや自分を除く生徒全員が目を丸くする。そしてその後にグレンが言い放った一言に驚愕することになる

 

「あぁ、確かに魔術は凄ぇ役に立ってたよ

 

 

 

 

人殺しにな」

 

酷薄に細められた暗い瞳、薄ら寒く歪められた唇、普段の怠惰なグレンとはまるで別人のような表情で言い放たれた言葉に何も言えなくなった。それでもそんなこと認めないと言わんばかりに再度システィーナが言い返す…だがそれでもグレンがこれが現実だと声色を強めて突きつけてくる言葉に遂に何も言い返せなくなる。周りの生徒はそれを見て、ただただ圧倒されるだけだった。そんな生徒たちにとどめでも刺すようにさらにグレンが何かを言おうとするが、システィーナがグレンの頬を叩くことで止められる。グレンは頬を叩かれたことで文句を言おうとするが、涙目になったシスティーナを見て言葉につまり。システィーナは最後にグレンを罵倒して荒々しく教室を出て行った。それに続くようにいつもの怠惰な雰囲気に戻ったグレンが

 

「なんかやる気でないから、本日の授業は自習な」

 

とため息をついて教室を後にした。その日。グレンはそれ以降の授業に顔を出すこともせず。システィーナも戻ってこなかった。

 

放課後になり、皆帰路について行くなかルミアだけが帰ろうとせずにどこかへ向かっていることに気がついたハクノはルミアに近づいて話しかける

 

「皆帰って行ってるけどルミアは帰らないの?」

 

「あっハクノくん。うん。実は私、法陣が苦手で最近授業についていけなくて…今日はいつも教えてくれるシスティがいないけど、どうしても法陣の復習がしたいから…その…ちょっと魔術実験室にね」

 

「へ〜そうなんだ。でも、生徒による魔術実験室の個人使用って原則禁止だよね」

 

「そこはその…内緒にしててくれないかな?」

 

そんなルミアの様子を見てどうしようかと悩んでいると、ふと都合のいいツテがあることを思い出す。

 

「あっそうだ。ちょっと待っててもしかしたら許可下りるかもしれないから」

 

「えっちょっとハクノくん!?」

 

それだけ言うとルミアから離れて人のいないところまで行き、通信用の魔導器を取り出す。もちろん通信する相手は

 

「セリカちょっとお願いがあるんだけど」

 

「どうしたお前からなんて珍しい」

 

「少しの間、魔術実験室を使いたいから許可が欲しいんだ。俺は今生徒だから勝手に使えないからね」

 

「何を考えているか知らんが、そのぐらいならどうと言うことはない。見つかっても私から言っておくから勝手に事務室から鍵を取っていけ」

 

「わかったありがとうセリカ」

 

そう言って通信を切る。許可は下りたので待たせてあるルミアのところまで戻る

 

「ルミア、魔術実験室の個人使用の許可取ってきたから鍵を取りに事務室に行こう。あとこの後暇してるから手伝うよ」

 

「えっ許可って何!ってちょっとハクノくん待ってよ!」

 

何か後で言い寄られそうだが、今は時間がおしい。言い訳は後で考えよう。そう考えながら事務室に忍び込み鍵を回収し魔術実験室に向かった。ルミアに聞いたところ復習したい法陣は学術用の特になんの特色もない魔力円環陣だった。

とりあえずはあまり手出しせずルミア一人に任せて間違っていたら指摘し、修正していくやり方をし、飲み込みが早いのか着実に法陣が完成していく

 

「そう言えば、ハクノくんにとって魔術ってどう言うものなの?」

 

そんな中何を思ったのかルミアがそんな質問をしてくる

 

「?…なんでそんな事を聞くのかな?」

 

「今日グレン先生とシスティが言い争ってるのを見てて、ハクノくんはどう思ってるのかちょっと気になって」

 

「そうだなぁ。俺にとって魔術は……諦めの悪い自分が切れる手札のひとつって感じかな。昔死にかけたことがあってね、その時生きる事を諦めたくなかった俺が助かるきっかけになったのが魔術で、例え凡才でも俺にも使うことができるから護身として学んでるかんじだよ」

「っと完成したね。それじゃあ早速発動してみようか」

 

あらかた話し合えると法陣が完成していたのでルミアに発動するように促す。ルミアは自分の話を聞いて少し考え込んでいたが促されると我に返り言われたように法陣の前に立ち呪文を唱え起動させる。そうすると法陣から光が溢れ出す。

 

「綺麗……」

 

ルミアがそう呟きながら法陣を見つめていると突然扉が開きグレンが入ってくる。突然のグレンの訪問に二人して驚きながらグレンの方を見る

 

「何してんだお前ら、生徒による魔術実験室の個人使用は原則禁止だろ」

 

「あぁそれなら許可は貰ってるから大丈夫です」

 

「はぁ、誰だよそんな許可出したの」

 

「あっそうだ!ハクノくん許可って結局誰にして貰ったの」

 

「セリカ=アルフォネア教授だよ。たまたま近くにいたのを見かけたからね。駄目元で頼んだら許可してくれたよ」

 

少し嘘を交えてそう返答する。そうするとグレンは少し嫌そうな顔になり、ルミアは驚いた顔になる

 

「誰かと思えばセリカかよ。まぁらしいっちゃらしいか」

 

「ハクノくんアルフォネア教授に会ったの!ちょっと羨ましいなぁ」

 

「そう言う事だから大丈夫ですし、今ちょうどやる事も終わったから後は鍵を閉めて事務室に返して帰るだけですから」

 

「そうかよ。それじゃあ気をつけて帰れよ。俺はもう帰るから」

 

「あっ……ちょ、ちょっと待ってください!」

 

ルミアはそう言って帰ろうとするグレンの後ろの袖をつかんで引き止める。

 

「……なんだよ?」

 

「そ、その…先生、今から帰るんですよね?」

 

「そうだな」

 

「それなら、途中まで私とハクノくんと一緒に帰りませんか?」

 

「……はぁ?」

 

突然のルミアの提案に、グレンは眉をひそめる。

 

「やだ」

 

にべもなくグレンは切り捨てる。

 

「そう…ですか」

 

グレンの返答を聞いてルミアは残念そうに、哀しそうに肩を落として目を伏せた。その姿を見かねたグレンは

 

「一緒に帰るのはごめんだが……勝手について来る分には好きにしろよ」

 

「あ、……ありがとうございます、先生!それじゃあ急いで片付けますから待っててくださいね!ほら、ハクノくん手伝って」

 

ルミアは嬉しそうに笑って片付け始める。ここまで付き合って嫌とも言えずその片付けを手伝う。

 

片付けを終えて三人で学院を出て、フェジテの表通りを歩いていく。その道中、ルミアが積極的にグレンと話していた。内容としてはシスティーナの事だったり、グレンについての事である。そして、グレンがルミアになぜ魔術を志すのかを聞き始めてからにふと思い出した事を聞いてみる。

 

「そう言えば、ルミアにとっての魔術って何?俺だけ答えてルミアが答えないのは不公平だと思うんだが」

 

「あっそうだったね」

 

「なんだ?おまえらそんなくだらないこと話してたのか?」

 

「そうだよ。誰かさんが魔術なんて人殺しにしか役に立たないなんて言うからね」

 

「俺は事実を言っただけだ。魔術ほど人殺しに適したロクでもない技術はねぇよ」

 

「まぁグレン…先生の話は置いといて、もう一度聞くけどルミアにとって魔術って何?」

 

「そうですね…私にとって魔術は恩返しをする為の手段です」

 

「恩返し?」

 

「はい。あれは今から三年くらい前の話です。私が家の都合でついほ…いえ、追い出されてシスティの家の居候し始めた頃。私、悪い魔術師たちに捕まって殺されかけそうになったことがあったんです…」

「その時の私は、前の家にいられなくなった事もあって不安定で…捕まった時もう死ぬんだと諦めて…でもそんな時、どこからともなく現れた別の魔術師が現れて私を助けてくれたんです」

「でもその時の私は悪い魔術師たちを躊躇いなく殺すその人のことがとても恐ろしくて怖かった。その人はそれが仕事だって言っていたけど、殺めていくたびに酷く辛そうな顔をしていて…それでも私を守ってくれました。その時の私は怖くてお礼も言えませんでした。」

「だから決めたんです。いつかその人にその時のお礼が言えるように魔術を学んで、今度は私があの人を助けてあげようって。人が魔術で道を踏み外したりしないように導けていけるようになろうって。だから私にとって魔術は恩返しをする為の手段なんです」

 

「そんなこと本当に出来ると思ってるのか。いやもし出来るとしてどれだけ時間がかかるか、わかってるのか?」

 

ルミアが言い終わったところでグレンが問いかける。

 

「わかっているつもりです。それでも私がやりたいと思ったことなんです。だからどれだけ時間がかかっても、無謀だと言われても絶対にやり遂げてみせます」

 

ルミアは強い意志を感じさせるような声でグレンの問いに答える。

そんな事をしていると十字路まで辿り着き、それに気づいたルミアが立ち止まる

 

「あ、私こっちなのでここでお別れです。今日はありがとうございました」

 

「そうかい。じゃあな、気をつけて帰れよ」

 

「はい!それじゃ先生、ハクノくんまた明日!」

 

そう言うとルミアは走り出していく。そして次第に小さくなっていくルミアの姿を見つめつつ、グレンに問いかける

 

「それで?今日1日生徒からの思いを聞いた非常勤講師様は明日からどうするんです?」

 

「はぁ?んなことしらねぇよ……ただ…」

 

「ただ?」

 

「イヤなんでもない。……なぁハクノ俺が手伝えって言ったら手伝う?」

 

「さぁ、やることによるかな」

 

「そうか……さぁて……どうしたものかね」

 

そんな会話を続けながら二人してセリカの家に帰っていく


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