ロクでなし魔術講師とコード・キャスター   作:皿無き河童

3 / 9
予想を上回る勢いでお気に入りが増えていく。ドウシテコウナッタ


code02 編入魔術学院

アルザーノ帝国魔術学院。アルザーノ帝国のその南部、ヨクシャー地方にある都市フェジテの呼ばれる都市に設置されたアルザーノ帝国に住む人間なら知らぬ者はいないであろう魔術師育成専門学校にして魔術を志すほぼ全ての者たちの憧れの地

 

そんな学内の廊下にて

 

「セリカ本当にグレンを置いてきてよかったの?グレンの事だから時計に細工されたのに気づいたらどっかで寝て遅刻しそうなんだけど」

 

「しそうと言うかするな。まぁあいつはあんな性格だが約束は破らん男だ。遅刻こそすれ逃げることはしないだろう……たぶん」

 

「そこは自信を持って欲しいんだけどなぁ」

 

そんな会話をしながら魔術学院の制服に身にまとったハクノと、いつものように丈長の黒のドレス・ローブを身にまとったセリカは歩いていた

 

「グレンのことは今は置いておいてハクノ。お前の方は大丈夫なのか?任務もあるが、学院生活自体初めての体験で分からないことも色々あるだろう」

 

「そこの所は大丈夫かな。分からなければそれこそ誰かに頼れば良いし。実技はともかく知識なら頑張ればセリカにも負けないぐらいは持ってるつもりだしね」

「それにしても運命の悪戯か偶然か知らないけど護衛対象があの子なんてねぇ」

 

「?…あぁそれに関しては私としては感謝しているよ。もしかしたらグレンに良い影響を与えてくらもしれないからな。それにしてもよく覚えてたな」

 

「覚えるのは得意だし。初任務だったから色々と印象に残ってるんですよ」

 

そうやって話し合っているうちに目的の部屋に着いたのか扉の前でセリカが立ち止まったので、自分もその扉の前で立ち止まる。

 

「さて、学友とのご対面だが緊張してるか?」

 

「う〜ん。そこまで緊張はしないかな。任務に支障が出ないくらいには仲良くなりたいなってぐらいで」

 

「ふっ。それは実にお前らしいな。なら入るぞ」

 

言うが早いかセリカは扉を開けて教室内に入っていく、その後ろをついて行くが魔術師の位階の中でも最高位、第七階梯に至り大陸屈指の魔術師として知られるセリカが入ってきたせいか教室内がざわざわと騒がしい。

 

「少し静かにしてくれ」

「今日はこのクラスに、退任したヒューイ先生の後任を務める非常勤講師と今隣にいるが新しく編入生が入る。ほら自己紹介しろ。(ふざけずにな)」

 

そう言って自己紹介をしろと進めつつ、自分にしか聞こえないほどの声で注意してくる。解せぬせっかくこのクラスに早く慣れようと洒落た自己紹介をしようと思ってたのに。フランシスコ=ザビエルって言ってみたりとか。まぁいいここで文句を言っても仕方ない真面目にするか、なにこの後にも自己紹介する機会なんていつでもあるさ

 

「今日からこのクラスに編入することになりましたハクノ=キシナミです。これからよろしくお願いします」

 

周りを見渡しながら反応を見ると、まぁ掴みは悪くなさそうだ。興味・好奇心の視線が大半、残りは格下と思って見下してたり初めから興味なしか…

あとはグレンがどのくらい自分に突っかかってくるかで変わるかな。

 

「あっあの!アルフォネア教授!」

 

クラスの自分に対する印象を分析していると、最前列に座っている銀髪のロングヘアーの少女がセリカに質問していた

 

「なんだ何か聞きたいことでもあるのか?」

 

「そこの編入生の事は分かりましたが。その非常勤講師はどんな人なんですか」

 

「あいつか?あいつはまぁ、普段はダメそうに見えるがなかなかに優秀な奴だよ」

 

銀髪少女は自分なんか興味がないと言わんばかりにまだ来ていないグレンについて聞いてきた。それにセリカが親馬鹿な自己評価でそれに答える。これグレンが本当に遅刻して来たらどうするんだろ。フォローしないとダメなやつかな。

 

「とりあえず、私としては以上だ。それじゃあ生徒諸君。今後とも頑張りたまえ」

 

役目は終えたと言わんばかりにセリカはそう言うと教室から出て行った。

 

 

 

ーそしてセリカが教室から出て約一時間後

 

「どういうことなのよ!もうとっくに授業開始時間過ぎてるじゃない!?」

 

やっぱりと言うべきか予想通りと言うべきか、グレンはまだ教室にすら来ておらず大遅刻をしており。耐えきれなくなったのか銀髪少女ーシスティーナは苛立ちを隠さずに言い放った。周りの生徒もまだ来ないグレンに訝しむようにざわめき立っている。この時点でセリカが生徒にグレンの印象を良くしようと伝えた前評判はすでに瓦解寸前。唯一ルミアだけは何か事情があるのではないかとフォローしている。

 

そんな雰囲気に包まれた教室の扉が開かれると同時にグレンのやる気のない声が聞こえた

 

「あー、悪りぃ悪りぃ、遅れたわー」

 

「やっと来たわね!貴方、一体どういうつもりなの!?貴方にはこの学院の講師としての自覚は……」

 

やっと来たグレンに今までの苛々をぶつけるように説教をしようとしていたシスティーナがグレンを見て硬直する

 

「あ、あ、あああ……貴方は……ッ!?」

 

「………違います。人違いです」

 

「人違いなわけないでしょ!?貴方みたいな男がそういてたまるものですかっ!」

 

あれ?いつ出会ったのか知らないが何か知り合いっぽい?なんていう偶然。まるで小説のようだ。そう思っている間に漫才の如くシスティーナとグレンが言い合いをしつつグレンが自己紹介を終え授業が漸く始まるという時に、またグレンがやらかした

 

「それでは、早速本日の一限目の授業ですが自習にしまーす」「…眠いから」

 

さも当然の如くグレンは最悪な理由とともに自習と宣言した。周りの生徒はそんなグレンの姿に圧倒され沈黙し、自分はまともに授業をしないだろうとは思っていたがあまりにも想像の斜め上をいっていて頭を痛めていた。そして漸く正気に戻ったシスティーナが寝ているグレンに教科書を投げつけると同時に無慈悲にも授業終了のチャイムが鳴り響いた

 

 

 

「これで任務に支障が出たらグレンの奴縛り付けて動けなくした上でリィエルの目の前に置き去りにしてやる」

 

そんな愚痴を誰にも聞かれないよう小声で呟くのだった


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。