とらドラ!腐った目の物語 作:手乗りタイガー
サブタイトルは思い付かないので今後変えると思います。
今俺は自分の部屋にこもり、まだ夕方だというのに布団をかぶっている。その原因は間違いなく、今日学校で川嶋に言われたことが原因だ。
『比企谷君...私を助けて』
あの時の言葉と体に伝わる暖かい感触が今この状況を作り出していた。更に言えばその後の会話も問題だろう。
回想
「比企谷君...私を助けて」
「お前なら俺なんかを頼らなくても北村とかが助けてくれるだろ?」
「違うよ...比企谷君。私は貴方に助けてもらいたいの」
川嶋は手を俺の背中から前に回し抱き付いてくる。
「か、川嶋!?」
「ねえ?分からない....かな?」
川嶋の熱を帯びた声、川嶋の体の熱で俺はおかしくなりそうだった。
「何をだよ....」
~~♪。そんな状態の中で川嶋の携帯が鳴る。俺の体がビクッと震えて何故か固まってしまう。
「あー....」
携帯を弄りながら呟く川嶋。抱き付いたままなので早く離れてほしい....流石に色々と限界だった。女の子特有の良い匂いにモデルだからなのかスレンダーな体つきは見なくても伝わってくる。なのに二つの膨らみは、かなり大きく女性という事を俺に認識させてくる。
ぱたんっと携帯を閉まった川嶋は、ようやく俺から離れると残念そうに言ってきた。
「祐作が先生に色々と言って誤魔化して時間を稼いでくれたみたいなんだけど限界だから戻ってこいって」
どうやら北村が機転を利かせてくれたらしい。ありがとう北村。いや北村大先生と言っておこう。これで入学式初日からサボって怒られるなんて事にはならなくてすみそうだ。
「なら早く戻るか」
「そうね...ねえ比企谷君」
急に真剣な目になる川嶋に少したじろぐ。
「さっきの事考えておいてね...」
回想終わり。
で、現在布団の中で半ば悶えているという訳だ。
「お兄ちゃん、ただいま!て、あれ?お兄ちゃん何してるの?」
「....あー小町。俺ちょっと今日動けそうにないから料理作ってくれないか?」
「え?うんそれは大丈夫だけど。どしたの?熱?具合悪いの?」
ああ、ある意味熱かもしれない。
「お兄ちゃん、ちょっとスピリットクライシスだから」
「...はぁ?お兄ちゃん.....スピリットクライシス?精神が病んだとか、直ぐに言うやつに限って決まって録に病んだことなんてねーんだ。つーかいつも家で日がなゴロゴロしてるだけで人との接触避けてきた奴が、ちょっと辛いことがあったからって直ぐにそれを言い訳にするなよ」
「....小町ちゃん?何処でそんな言葉を覚えてきたの?とても汚いわよ?」
「うっ、お兄ちゃんの真似だよ!」
似てねぇ...てかむしろ逢坂の真似だろ。俺の妹がどんどん毒されていっている気がする。
「まっ、何があったか知らないけどさ。一人であんまり抱え込まないようにね?」
「小町....」
「ここに引っ越してきた理由を少しは考えてね?」
小町は、それだけ言うとご飯を作りに行ってしまう。
俺がここに来た理由....。虐めが原因だろう。
俺は、俺が虐められることで誰かが傷ついているなんて思ったことはあの日まで無かった。俺の目の前で小町が涙を見せたあの時までは。
「心配するなよ。そうだなと、友達ももうで来たしな」
「え!?お兄ちゃんに!?誰々!?女の子!?」
おいおいガッツき過ぎだろ。お前は餌を与えられたかまくらか?目輝かせんな。
「もしかしてお兄ちゃんの友達って大河さん?」
「いやあれは違うだろ?」
実際の所どうなんだろうな。友達って関係でもないし、俺があいつの恋を応援してるって感じがしっくりくるか。
友達というのが何なのか、どういった関係を友達というのか俺にはよく分からない。だけど、きっと、そんな曖昧な言葉を用いてでも、友達だと思いたい奴が俺にも出来たということなのだろう。
「じゃあ誰なの?」
「別に誰でも良いだろ」
「ふーん。まっ今のお兄ちゃんの顔は悪くないし、また今度紹介してね小町に」
「いやしないから」
「えーでも。未来のお姉ちゃん候補かもしれないし小町も気になるよー」
ふとそう言った小町から視線を外して居間を見るとモデル雑誌が乱雑に置かれている。その表紙を飾っているのが川嶋で、ふと思った言葉が出てしまう。
「なあ小町。モデルの川嶋って知ってるか?」
「んー?そりゃ今若い子で一番の人気を誇ってるモデルだからね。この頃忙しいらしくてモデル業休んでるけど。どうしてお兄ちゃんの口からそんな人の名前が?」
「いやお前の買う雑誌の表紙によく載ってるから聞いてみただけだ」
「ふーん。まっ人気なのは確かだよ、川嶋亜美が出てないだけで売り上げ落ちてるらしいし」
小町の話を聞いて俺が思っていたよりも川嶋のモデルとしての人気があり、有名なことが分かった。
それ以上川嶋の話題は出ず、小町の美味しいご飯を食べ終えた俺はお風呂に入って早めに寝ることにした。
朝よ来るなといくら思っていても誰しも等しく朝は来るものだ。昨晩布団に入るのは早かったが、このまま寝てしまえば、朝になって学校にいかなければいけない。そう思うと中々寝ることが出来なかった。
現在俺は寝不足という体調不良を抱えたまま、起き上がり学校に行くことになった。
朝食を食べようと襖を開けると昨晩はいなかった人物がいた。
「あ、お兄ちゃんおはよー」
「あんた何時もより、目が濁ってない?」
逢坂大河が小町と朝食を食べていた。
殆ど毎日のように食べに来る逢坂が小町とうちの食卓を囲んでいる。そこまではいい、だが小町がニコニコと俺を見ながら昨日の雑誌を持っている。この姿を見たときに俺は、開けた襖をそのまま閉じた。
「ちょ!お兄ちゃん!どうしてモデルの川嶋さんと友達なのを昨日は隠してたの!?」
逢坂が話したのだろう、小町が詰め寄ってくる。一枚の襖ではなんの意味も持たず簡単に開けられてしまう。
俺の新たな黒歴史になりそうな事で昨日悶えており思い出したくないが小町にこれだけ黒歴史の原因でもある川嶋の話をされると思い出してしまう。俺は勝手に話しただろう主犯を威嚇することにした。
ガルルルルと擬音が付きそうな勢いで朝食を食べている逢坂を睨むとにゃーんという擬音が付きそうな勢いで睨み返された。いやにゃーんに負けるなよ、と思うが怖くて目をそらしてしまった俺の敗けだろう。
朝食を食べているときも小町の質問攻めは止まるところを知らなかった。
逢坂と小町と学校に向かっていると(主に俺は一人、少し後ろを歩いている)櫛枝が歩いているのが見えた。
「おーい、みっのりーん」
俺には決して発しないだろう甘甘な声で櫛枝の背中に抱き付く逢坂に櫛枝も嬉しそうに返している。
「んー?そこにいるのは比企谷きゅんじゃないかい!」
しまった、と思ったときには遅かった。隣にいる小町は目を輝かせているし逢坂は、さっきまでの笑顔が嘘のように俺を睨んでいる。
こういう場合の選択肢としての行動は決まっている。
「ども」
一礼して逃げの一手である。
「比企谷君♪おはよ」
男なら誰しも勘違いしそうな甘ったるい声で抱き付いてきた人物を俺は無意識的に理解してしまった。
「川嶋.....」