「―――という訳で、旗艦お願いね秋津洲ちゃん♪」
「ちょ、ちょっと待って欲しいかもっ!!?」
突然執務室に呼び出された私は、これまた突然言いつけられた連合機動部隊の旗艦というあまりにも責任の重すぎる地位に竦み上がってしまう。
「な、なんで私が旗艦なんですか!? 旗艦適任者は他にもいっぱい―――」
「でも、さっき言った高高度からの戦況観察には秋津洲ちゃんの二式大艇が一番適任なのよ。長時間の航行が可能な事と言い、艇内に戦況観察用の器具が置ける広さがある事と言い、ね」
「だ、だからって、別に私が旗艦をやらなくても―――」
「情報を受信、解析する所とそれを基に指示を下す所を別々にすると、いちいち解析した情報を伝達しなければならなくなり、その分戦況に対応する時間が遅れてしまいます。それに、情報伝達時に情報の齟齬が発生する事も考えられるしね」
「…っ! で、でも、私の大艇ちゃんはそんな高高度を飛べないかも…!」
次々に逃げ道を封鎖されていく私だったけど、それでも諦めずに最後の賭けに出る。そう、確かに私の二式大艇ちゃんは長距離航行も可能で機内も広いけど、そんな高度には上がれないのだ。
でも、私の反論を聞いた提督は途端に何やら不気味な笑みを浮かべ始めた。―――こ、怖い! すんごく怖いかもっ!!
「ふふふっ、大丈夫よ秋津洲ちゃん。現在貴女の二式大艇は超改装中よ。当日にはスーパーグレードアップした超二式大艇がお披露目されるから、楽しみにしていてね!」
「いやいやっ!! 私の二式大艇ちゃんに何してるかもっ!? 冗談は容姿だけにして欲しいかもっ!!!」
…って、し、しまった! あんまりにあんまりな状況に、つい提督の容姿の事を言っちゃった!
「―――何か…言いましたか?」
ニコニコと笑みは崩さず、でも物凄い威圧感を発しながら私にそう訊ねる提督。…う、ううう、だ、駄目だ! 先ほどをはるかに上回る恐怖に、反論する事が出来ない!
わ、私、どうなっちゃうかも…? 大艇ちゃんも、助けてあげられなくてゴメンね…。
「…重い責任に緊張するのは分かります」
不意に、威圧感を霧散させて優しい口調で私に話しかけてくる提督。
「ですが、この仕事を任せられるのは秋津洲ちゃん、貴女しかいないんです。ですから、どうか引き受けてはくれませんか…?」
そう言って、私の手を取り私の瞳を覗き込みながら懇願してくる提督、でも…!
「調子のいい事言って、体よくその気にさせようとしても、そうはいかないかもっ…!」
「…あら、ばれちゃった?」
私の恨めしそうな口調に、提督は舌を出していたずらっ子みたいな表情を作る。こういう時に、普段の行動が尾を引いて来るんだよ提督!
「クスクス…。でも、期待しているのは本当だよ秋津洲ちゃん。だから…ね?」
「…う、ううう~…」
そんな可愛い顔でお願いされたら断るに断れないかも~…。