MONSTER HUNTER μ's   作:『シュウヤ』

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久しぶりにプレイして、懐かしみながら書いてました。


忍び寄る影

ポッケ村、入り口。

「ほぇ〜、ここがポッケ村かぁ〜」

「落ち着いた、いい雰囲気ですね」

「私、こういう所、好きだなぁ〜」

ドスギアノスを狩った穂乃果、海未、ことりの三人は、ポッケ村に到着した。土だらけの道は乾いているが、雪山の麓にあるからか所々に真っ白な雪が残っている。

村の中心辺りから湧き出る温泉が、この村のライフラインなのだろう。ゆっくりと水車が回っていた。

「む、君達が新しくこの村に配属されたハンターだな? 村長が待ちわびていた。早く行ってあげるといいだろう」

村の入り口で、男が話し掛けてきた。

「申し遅れた。私は、この村の元ハンターだ。今は引退して、現役ハンターの補助をしている。ちょうど、二人の新米ハンターが配属されたばかりだからな」

差し出された手を握り返しながら、穂乃果達も自己紹介をする。

「穂乃果にことりに海未か。これからよろしく頼む。村長なら、端っこにあるでっかいマカライト鉱石の前にいるから、挨拶してくるといい」

男が指差した先には、人の背丈を越える巨大なマカライト鉱石が。その手前で、小さな焚き火から狼煙が上がっていた。

「村長さーん」

三人が側まで行くと、竜人族の老婆がゆっくりとこちらを向いた。その横には若いネコ族、アイルーが佇んでいたが、

「よく来たね」

村長が話し始めたのでアイルーが何者かという疑問は棚上げされた。

「私がポッケ村の村長だよ。聞いているとは思うけど、この村にはハンターが新米の二人しかいなくてね。頑張ってはいるけど、正直あの二人だけに任せるのは荷が重いだろうという事でお前さん達を呼んだんだよ。自然以外何も無い所だけど、ゆっくりしていっておくれ。それからこの村を、よろしく頼むよ」

「「「はい!」」」

元気よく返事をする三人。

それから、

「あの、その例の二人のハンターは、今はどこに? これから一緒に過ごす訳ですし、挨拶をと思いまして」

海未が訊ねる。

「ああ、二人なら今はクエストに出ているよ。簡単なクエストだから、そろそろ戻ってくると思……」

「た、大変だあっ!」

村長の声を遮って、すぐ横の村の出口から男が一人駆け込んできた。

「どうしたんだい?」

「あ、村長……。実は……この村のハンター二人が、狩場の山頂付近の崖の下で見つかったんだ」

「なんと。二人は無事なのかい?」

「ああ……怪我はそこまで酷くないんだが、結構長い間雪に埋もれてたせいか凍傷一歩手前で……」

「ふむ……分かった。ひとまず、集会所へ運ぶように。暖炉を盛大に燃やして、身体を温めるんだよ。毛布もあるだけ出してね」

「わ、分かった!」

男は頷くと、伝達すべく駆け出した。

「「「…………」」」

突然の出来事に言葉が出なかった三人に村長は向き直ると、

「さてお前さん達、慌ただしくて申し訳なかったね。何やら想定外の事態のようだ」

落ち着いた口調で話した。

「あの、私たちに、何かできる事はありませんか?」

「穂乃果ちゃん?」

「看病とかは、した事ありませんけど……荷物運びとか! 何か大変そうなのに、穂乃果達だけノンビリするなんてできません!」

「確かにその通りですね。村長さん、何か私たちにも指示をお願いします」

海未も進み出て、ことりもコクコク頷く。

「ふむそうかい? じゃあ、あの子達のクエストを、代わりに受けてもらえるかい?」

「それは……どういう事ですか?」

意図を汲み取れない海未は、首を傾げる。

「あの子達が行っていたクエストは、雪山草を採取してくるだけの簡単なクエストさね。障害になるのはギアノスかブランゴ、せいぜいブルファンゴくらいさ。山頂付近まで彷徨って遭難するようなクエストではないんだよ」

「なるほど……。つまり、何か異常事態が発生した可能性があるという事ですね?」

「そういう事さ。雪崩でも起きたのか、あるいは……」

「太刀打ちできないほどの、危険なモンスター……」

「うむ。前者なら復旧作業が必要だし、後者なら問題はなお深刻じゃ。調査、頼まれてくれるかな?」

村長の問いに、

『はい!』

三つの揃った声が山脈に木霊した。

 

 

 

 

「……何にも無かったねー」

「地形に変化はありませんでしたし、モンスターらしき痕跡も確認できませんでした……」

「ずっと吹雪だったみたいだから、足跡とかはあっても消えちゃったのかもね〜……」

三十分ほど件の狩場を調査した穂乃果達だったが、結論から言って異常な点は皆無だった。ポポやガウシカといった草食モンスター、ギアノスなどを散見したくらいで問題は見られなかったのだ。

「ひとまず、村長に報告に行きましょう」

「そうだね〜」

出発前から変わらず巨大マカライト鉱石の前に座る村長に、三人は異常は無かったと報告を済ませる。村長は労いとお礼を伝えると、

「あの二人、目を覚ましたようじゃ。見舞いに行ってはどうかな?」

と付け足した。

容体も心配だし挨拶もしたいと、三人は道を挟んだ反対側の大きな建物に入る。村のハンターが集いチームを形成してクエストを受注する場所で、村民の酒場も兼ねているのでポッケ村では最大規模の建物である。

件の二人は、酒場の長椅子に毛布にくるまって座っていた。すでに何人かの村民に囲まれ、何かを話していた。

「こんにちは。二人が、この村のハンターだよね?」

穂乃果が話しかけると、二人が顔を向けた。

「聞いてるかもしれないけど、今日からこの村の専属ハンターになった穂乃果です。こっちは、ことりちゃんと海未ちゃん」

「どうも」「よろしくね〜」

「あ、えっと……私は、花陽っていいます。こっちは、」

「凛だにゃ」

自己紹介を済ませると、三人は花陽と凛の具合を心配する。

「大丈夫にゃ。ちょっと慌てちゃっただけだったから」

「焦って崖から落ちちゃって……下に雪が積もってたから、怪我は無かったんだけど……」

二人を介抱した村人も、怪我は無かったし凍傷などの後遺症も心配いらないと告げる。

「それなら一安心だね!」

穂乃果は笑顔を見せるが、その横で海未が疑問を投げかける。

「しかし、何故崖から落ちるような事態に? 先ほど私達も同じクエストで現場に赴きましたが、変わった様子はありませんでしたよ」

すると二人は、驚いたように目を見開く。

「えっ? ポポは⁉︎」

「ポポはいましたが……襲われた様子もありませんでした」

「そんなはず……。凛達、倒れてるポポを見つけて、そしたら……」

「そしたら?」

「後ろから、見た事ないモンスターに襲われて……」

「見た事のないモンスター? 何か特徴は分かりますか?」

「吹雪だったからよく見えなかったけど……、黄色っぽい色で、四本脚、大きな爪があって、鋭い牙で突進してきて……」

凛の話からモンスターの姿を想像し、穂乃果はブルリと身体を震わせる。

「聞くだけで恐ろしいモンスターですね……。一体その正体は……」

「……ふうむ。それは恐らく、ティガレックスじゃろうな」

突如響いた声に、全員が入り口を向く。

「あ、村長さん」

いつからそこにいたのか、村長が集団へと歩み寄ってきた。

「ティガレックス、と仰いましたか?」

「うむ。このポッケ村付近では、昔から目撃例がある飛竜種さ。原始的な見た目で、突進攻撃を得意とする手強いモンスター。最近は聞かなかったが……そうかい、また現れたんだね」

「かく言う私も、ティガレックスと闘い引退に追い込まれた身だ」

穂乃果達を村長へと案内してくれた、元ハンターが神妙に口を開く。

「何とか追い返す事には成功したんだが、その傷が癒えてまた活動を始めたんだろう……」

「なるほど……ティガレックスですか。厄介な相手のようですね」

「今の私達で、勝てるのかな……」

不安そうなことりに、

「なあに、すぐにとは言わんよ。ティガレックスもまだ活発ではないようじゃし、着実に実力を付けて挑むが良かろ」

村長はノンビリと声をかける。

「それに、ティガレックス以外にも村を悩ませるモンスターは多いからねぇ。そっちもよろしく頼むよ」

「わ、分かりました」

村長はそれだけ告げると、集会所から出て行った。

「そうですね……ここで悩んでいても仕方ありません。私達はハンターの腕もまだまだ未熟ですし、この村で鍛錬を積みましょう」

「そうだよ! ティガレックスだって、きっと穂乃果達なら大丈夫だよ!」

穂乃果はグッと拳を握る。

「凛達も忘れないで欲しいにゃー! やられっぱなしは嫌だもん!」

「そ、そうだよね……。ちょっと怖いけど、私も頑張らなきゃ……!」

凛と花陽が元気よく立ち上がると、

「もう大丈夫なの?」

「うん! 凛は元気が取り柄だからね!」

「穂乃果ちゃんにことりちゃんに海未ちゃん。ポッケ村を案内してあげます」

三人を引き連れて、集会所をあとにした。


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