デレマスマフィアパロ置き場   作:ホルマリン漬けパトラッシュ

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前回もそうだったんですが、年齢を+2~3していただければ読みやすいかなあと。

キャラは全然違いますので注意。




マパロその02(アナスタシア)

 違法な代物の取引の警護。報酬は良くないが、イレギュラーが起きる可能性が低く、比較的安全な仕事とされる。食いつなぐためにはちょうどいいので、たまに請ける仕事だ。

報酬は良くないと言っても、一人で食べるだけならある程度の期間過ごせる分のギャラは入るので、ワタシはこの仕事を主に請け負って生計を立てている。

今回の取引も無事に終了できそうだ。他の護衛達が最後まで気を緩めない中、ワタシはふと、昔のことを思い出していた。あの日も、こんな風に雨が降っていたはずだ。

 

 

 

 日本に来てから、2回か3回目に受けた仕事の時だったと思う。警察のガサ入れに出くわした。逮捕されるのも殺されるのも御免だと最低限クライアントが逃げ出すまでの時間を稼ぐと、自分も一目散に逃げ出した。

しかし警察もしつこく、わざわざ区画ごと閉鎖して一網打尽にすると言わんばかりに激しく追い立ててきた。

 ─チクショウ。妙に"美味しい"話だと思って参加してみれば。警察に最も狙われる可能性の高い銃器取引の現場だったとは。しかもライフルの詰め合わせなんて優先度が高いであろうものを。

冷たい雨にイラついて、あの胡散臭い依頼仲介人(ブローカー)の息の根を脳内で3回ほど止め、現実でも息の根を止めてやろうかと思っていた時。網を張っている警察官と出くわした。

警察官はワタシの姿を認めると、笑顔で声をかけてくる。多分職務質問をしたいのだろう。しかし身分証も無しに懐にある拳銃を認められたら間違いなく捕まる。隠し通せるか?無理だ。

ならば先手必勝、声を掛けてきた警察官の顔面に左手で拳を叩き込みながら、右手でショルダーホルスターから拳銃(マカロフ)を抜き放ち、もう一人の警官の顔面を撃ち抜いた。

殴られて怯んでいた警察官は優秀だったのだろう。銃声を聞いて拳銃を引き抜こうとするが、こちらが頭に狙いをつけるほうが早い。少し狙いがブレたのか首に命中。仕方なくもう一発。頭に命中。

 

 

 なんてことだ。あと少しで逃げ切れただろうに、自分から目立つ音(銃声)を作り出してしまった。更に逃げる。拳銃の残弾を思い出す。時間稼ぎで3本、途中で1本の弾倉を使った。残りは今装填されてる5発だけ。

それを使い切れば残りはナイフだけ。考えれば考えるほど自分の状況が最悪に近い事に気がついて、余計に腹が立つ。

追手を振り切り、人通りのない裏路地にたどり着いた。セーフハウスに帰るなら、息と服を整えるべきだろう。

「ちょっと君、こんなところで何して──」

 不意に、後ろから声を掛けられた。女の声、しかも至近距離だ。半ば反射で振り向いて銃を向けると、とても小柄だが──婦警ではないか。

躊躇わず引き金を引く。撃鉄が撃針を叩き、更に雷管を撃針が叩いて、薬室に居る弾が飛び出せば、その婦警の命も一瞬で奪えるはずだった。

しかし引き金を引いても弾は出ない。不発弾だ。このオンボロめ。私が引き金を引いたことを認めた婦警は、腰を落としてワタシの銃を奪いに来た。

当時のワタシは、まだ体が幼かったこともあり肉弾戦が苦手だった。婦警はワタシの拳銃をいとも簡単に叩き落とすと、腕を捻り上げにかかってきた。させじと腕を引き、相手を蹴って間合いを切る。

腰につけたナイフを抜いたが、それもまた叩き落される。空手で婦警と揉み合いになる。しかし向こうはあくまで確保に留めるつもりなのか、攻撃が甘い。甘んじて一発を受けながら、ワタシは意識を刈り取る一撃を繰り出した。

 

 

気絶した婦警を横目に、武器を拾うことも忘れセーフハウス目指して歩き出す。一歩一歩が重く感じた。あの婦警、妙なダメージを残しやがって、と口の中に溜まった唾液と血液を吐き捨てる。

今思えば、脳が揺さぶられでもしていたんだろう。武器を拾うことすら忘れるなんて、あまりにも素人臭すぎる。

 

 

セーフハウスまであと少し。もう目の前だ。そんな中、ワタシの視界は突如黒く染まった。

 

 

目が覚めた時、ワタシは知らない部屋のベッドで寝ていた。病院にしては調度品の具合が違う。どこだここは?

薄目で周りを見る。──誰もいない。手足に感覚を集める。──拘束はされていない。

音を立てないよう、ゆっくりと体を起こして周りを見る。部屋の毛色からして、若い女性の部屋だろう。ふと鏡が目に入った。全身鏡と呼ばれる、縦長の鏡だ。

そこに写ったのは、自分のものではない服を着た自分の姿だった。

「あら、起きたんですね。」

 ふと、声をかけられる。ソプラノボイスだが、落ち着きのある声だ。そちらを見れば、若い女性の姿。

「びっくりしたんですよ、帰り道にボロボロの女の子が倒れてるんですもん。」

 話す内容から、ワタシの正体はバレていないのだろう。ならば、。

「アー…ちょっと、事故、遭いました。ココ、どこデスカ?貴方は、誰…デスカ?」

 自分の容姿を利用して、わざとらしく、片言の日本語で返す。

「私は新田美波といいます。ココは私の部屋。貴方のお名前を教えてもらっても?」

 ワタシは名乗るかを悩んだが、恩人に名乗らないのも失礼だろう。

「ワタシの名前、アナスタシアといいます。」

 

 

 

──これが後々長く付き合うことになる、新田美波との出会いだった。

今思えば、美波はなんと不用心な女性だろうか。治安の良くないこの街で、道端に怪我だらけの人間が倒れていたら、ワタシはまず見なかったことにする。例えそれが子供でも、ましてや女でもだ。

 

 

 

 美波に拾われ、目覚めたその日の夜中にに美波の部屋を出た。いつまでもココにいれば美波を巻き込むかもしれないし、何よりこの場所の安全が確保できていない。

美波は大学生だという。この国で大学に進むことの出来るのは、所謂エリートと呼ばれる層の人間たちだ。だったら尚更ワタシのような人間と関わるべきではない。そう思い部屋を出たはずだが、驚愕した。なんと美波の部屋があるアパートはセーフハウスがすぐそこではないか。

 セーフハウスを変える算段をするが、どうやっても今すぐと言うのは無理だ。まず資金が足りない。野宿も考えたが、リスクが高すぎる。どうするかを考えながら、ひとまずセーフハウスに入る。

 

 

今回の一件で拳銃とナイフを落としてしまった。駆け出しとは言え、これを生業とする人間としてはあるまじき行為だ。ため息をつきながら、隠していた予備の拳銃を取り出し、メンテナンスをする。

落ち着いてから、状況を整理する。問題はあの美波とかいう女学生だ。素性は知れていないし、ひとまず置いておいて良いだろう。どちらかと言えば、気絶させた婦警のほうが不安だ。顔を覚えられていたら厄介だ。

あれだけ頭部を殴ったら記憶が飛んでいたりしないだろうか。不安要素を頭の隅に追いやりながら、睡眠をとるべく瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

──その後何もなかったから良かったものの、これも今思えば相当危険な行為である。何事も無かったため、ワタシはセーフハウスを変えずにそのまま暮らしていた。

幸いしばらく仕事をしなくても済むぐらいの報酬はその仕事で手に入ったし、きちんと時間稼ぎをしたおかげか評判も良い方についた。あの仲介人からは二度と仕事を受けなかったが。

 

 今回の取引は無事に終了したようだ。依頼人はそれなりに高価そうな車に乗り込むと、自らの住処に引き上げていった。ワタシもセーフハウスに帰るべく、自前の二輪車(バイク)に跨った。

もちろん正規の免許なんて無い。汚職に塗れた警官に賄賂を渡して、99%本物の免許を取得した。この国なら良くある話だ。尾行が居ないかだけ警戒しつつ、何度かダミーのルートを噛ませてセーフハウスに到着する。

また暫くの間は仕事をしなくて済むだろう。ワタシは暫く送ることが出来るであろう、悠々自適な生活を想像し、上機嫌で風呂を浴びた。




デレマスマフィアパロの需要広がれ。

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