なんか長くなりました。つーか、会議室のとこ適当だし、遊真の過去とチーム結成のとこも適当。
相も変わらず適当かつ低クオリティですが、どうぞ。
「……何か言い訳があるなら、聞こう。有栖川隊員」
長机の奥。いつにも増して眉間の皺を深く寄せ、不愉快そうに会議室に訪れた面々を睨みつけるボーダー最高司令官、城戸。迅の考えが読めないだけでも厄介なのに、この男まで揃うなど最悪でしかない。
「では、遠慮なく。あの場で殺すよりも捕らえて情報を引き出した方が組織にとって有益であると独断し、行動しました」
言葉遣いこそ丁寧だが、その表情はどこか小馬鹿にしたような『そんな事も考えられないのか』と言わんばかりで、会議室の面々は一部を除いて一層不愉快になった。
「それが任務を妨害した理由か?」
成程、理屈は最もだ。城戸自身、感情優先で動いてしまったことは否めない。しかも、差し向けた面々が悪かった。実力は疑いようもないが、この男の話を聞くかと考えれば微塵も耳を傾けないだろう。宿敵たる
「情報は時に戦局を左右するものですから。まあ、他にも理由はあります。ま、その話はこのS級エリートがしてくれますよ」
「迅……お前はこの未来が視えていた筈だ。何故、報告しなかった」
「報告してたら、更に大事になってましたよ。件の
「
驚愕する一同。あの性能なら驚くことでもない、とどこ吹く風の時雨。三雲はそもそも黒トリガーがどんなモノか全く理解してないが、幹部たちの反応を見るに凄いモノなんだろうくらいの検討はつく。
根付や鬼怒田が報告しろと叫んでいるが、この騒ぎだ。未来視のサイドエフェクトを使うまでもなく、大事になるのは火を見るよりも明らか。確かに、と営業部長の唐沢克己は一人感心していた。
「……あの、迅さん。
一人置いてけぼりの三雲は隣の迅に
「成程……君たちの言い分は分かった」
「城戸司令。
冷や汗を拭いながら提言するのはメディア対策室室長の
「確かにその通りです。ですが、三雲隊員はその
「……確かに、
一旦、言葉を切る。そして新たに紡がれたのは迅の提案を一蹴する発言だった。
「そのネイバーを始末して、
「ふむ……貴重な
「トップチームは遠征で不在だが、残った正隊員を動員すればやれんことはなかろう」
「馬鹿な! その間の防衛任務はどうする。そもそもそれでは強盗と同じではないか‼︎」
机を叩いて、反論するのは
「忍田君、その心配は無用だ。部隊はどこも動かす必要は、ない」
「では、どうするんですか?」
「三輪隊の報告によれば、そのネイバーのトリガーは『相手の攻撃を学習する』だそうだ。しかも、性能が数段上になるという。並の隊員を動員したところで無意味——迅、黒トリガーには黒トリガーだ。その
しかし、城戸の命令を指揮系統を逆手に取った迅と機転を利かせた命令を下した林藤のお陰で、迅が空閑を始末することはなくなった。だが、あのアンチネイバーの筆頭たる城戸があれしきのことで諦める訳がない。
「——という訳なんだ」
「ほー」
「そうだったのか」
迅の話を聞いても動じる様子は全くない。あの場にいた三雲は冷や汗かきまくりだった。更に時雨はいつからかぼーっと城戸の背後のガラス窓から空を眺めて全く話を聞いていなかった。今ようやく状況を理解したところだ。
「迅さん、どうすればいいんでしょう?」
「うん、ここはシンプル・イズ・ベストだ。遊真、ボーダーに入んない? もちろん、俺たちの玉狛に」
ボーダーの中でも異端として扱われる玉狛支部。その理由は
そして空閑は二人が一緒ならいい、と言うので揃って五人、玉狛支部へと足を向けた。
「空閑にそんな過去があったなんて……」
結局、ボーダー入隊を断り“向こう”へと帰ろうとする空閑。それを見かねてか、レプリカは三雲に空閑の過去を話した。因みに時雨は迅からぼんち揚の箱を二つもらって大変ご満悦な様子で帰宅した。
話を戻すと、空閑の持つ黒トリガーは父親、
『……オサム。ユーマはユーゴを蘇らせようとこちらの世界にやって来た。しかし、それが不可能とわかってしまった以上、ユーマに生きる目的はない……オサム、どうかユーマに生きる目的を与えて欲しい』
「生きる、目的……」
兎に角、話すしかないなと空閑を探してリビングに出ると玉狛のメガネ教祖、宇佐美栞に呼ばれて話を聞くと雨取がボーダーに入りたいと言い出した。
それを聞いて彼は大いに頭を悩ませる。片方は入隊を断り、誘われてない方は入隊したいと。どうしたものか。さらに説得を試みてもはっきりと突っぱねる。ここまで芯のある少女だったのか、と驚愕の事実。
「正直に話すしかないな……」
三雲は屋上で空閑に話した。彼の過去を聞いたこと、こちらに来た目的、そして雨取の兄と友人を助けに向こうの世界に行く為にチームを組んでくれ、と。
「オサムは相変わらず面倒見の鬼だな……相手がチカだからか? いや、誰でもか。そして勝手に死にかける」
「ぐっ……い、いやそんなことはない。ただ、目の前のことから逃げたら、その先もずっと逃げるようになる。僕はそういう人間だって知ってる。だからこれは誰の為でもない、自分の為にやってるんだ」
赤面して、慌てて否定する。しかし、そんなことは空閑には無意味。嘘だと見抜かれる。だが、後半は意志を持った言葉をしっかりと紡いだ。
「ほー、なるほど。でも、本当にやばい時は逃げないと死ぬぞ。——だから、俺も手伝ってやるよ。ほっとくと二人とも無茶して死にそうだし、何よりチームを組むのは楽しそうだ」
無事、三人はチームを組むこととなったが、空閑は三雲が隊長じゃなきゃやらん、と言い、なお渋る三雲を雨取が押し切り、揃って林藤支部長の元へ。この未来は迅に見えていたようだが、誰に唆された訳でもない、彼ら自身の決断。
目標はA級昇格そして、遠征部隊入り。長く険しい道になるのは必然。だが、それも不可能ではない。チームとは切磋琢磨し合い、成長し合うことで強くなる。
「——という訳で諸君!」
朝っぱらから声を張り上げ、得意気にメガネを持ち上げる宇佐美。ホワイトボードの前に立ち、まずは目標の再確認と必要事項の確認。
「君たちは今からA級を目指す訳なんだけども、その前にチームを組まねばならない。そしてチームを組むにはB級隊員になるという前提条件があるのだ!」
「ほー。それってどうやってなるの?」
「C級隊員になって隊員同士のランク戦に勝ち抜いてポイントを積み上げれば成れる。けど、遊真。親父さんの黒トリガーは使えないぞ」
「なんで? 本部の人に狙われるから?」
「それもあるけど、黒トリガーは規格外だからな。自動的に外されるんだ」
「それは、寂しいな。使わんとこ」
で、そのランク戦いつやるの、今から、などと大いにテンションが上がるのは結構。しかし、始まるのは次の入隊日である。しかも、その前にボーダーのトリガーに慣れる必要がある。
その後、雨取のポジションが
「あたしのどら焼きがない‼︎」
コロッと騙される純情JK降臨。そんな彼女、
「あたしは今食べたいのよ、いーまっ‼︎」
「騒がしいぞ、小南」
「いつもじゃないですか?」
鍛え上げられた強靭な肉体。筋肉の鎧を纏う男は、木崎レイジ。そして、もさもさイケメン烏丸京介の二人が続いて入ってくる。
「あ、これが新入りっすか?」
「新入り? ウチに弱い奴は要らないんだけど」
「まあそう言うなって小南。こいつら俺の弟と妹なんだ」
「ええっ⁉︎ とりまる、アンタ知ってた⁉︎」
「もちろんですよ、小南先輩」
「えっ、レイジさんも?」
「知ってるよ、迅が一人っ子だってことを」
「そう。実を言うと遊真は俺の弟なんだ」
「……話をややこしくするな、時雨」
突如として現れた銀髪長身の男。迅に負けず劣らずの不敵な笑みでそれに答える。小南は事態に追いつけていないのか、アホ面を晒している。
「えっと、どういうこと?」
「つまり、こいつらは迅さんの弟妹でもなく、遊真は俺の弟でもない他人だ」
「——騙したなぁっ‼︎」
愚か者め、騙される方が悪い、と煽ると収拾がつかず、面倒になりそうなので餌をやって猛獣を手懐けることにした。
「まあまあ落ち着けよ。ぼんち揚食う?」
昨日に引き続き、新たなぼんち揚を差し出す。しかし、今までの迅との関わりの中で食べ飽きるほど口にしてきたに違いない。即答だった。
「要らない」
「じゃあ、この豆大福をやろう」
「ありがと」
言葉を言い終わらないうちに差し出した豆大福は手の上から消滅し、小南の胃袋に収められた。そして、頃合いを見計らって迅が話を切り出す。
「——さて、小南が落ち着いたところで本題に入ろう。こいつらをマンツーマンで指導してもらいたい」
「はあ⁉︎ なんであたしが……」
「これは
「仕方ないわね……こいつはあたしがもらうから」
小柄とはいえ、そこそこの体重がある筈の空閑の首根っこを掴んで持ち上げるとはその細腕に似合わない腕力。どうなっているのだろうか。
「見たとこアンタが一番マシっぽいし……あたし、弱い奴嫌いだから」
「ほほう……俺を選ぶとはお目が高い」
「じゃあ、千佳ちゃんはレイジさんだね」
ボーダー隊員唯一の
「……となると俺は必然的に……」
「……よろしくお願いします」
相変わらず感情のない表情で三雲を見やる烏丸。一応これで師弟の組み合わせは決まった。
「よーし、それでは三人。それぞれの師匠の元でしっかりと腕を磨いてくれ」
「……あれ? 迅さんとしぐれ先輩はやんないの?」
「実力派エリートは忙しいんだ」
「俺のスタイルは特殊だからな。手本にはならん。小南の方がまだマシだ」
「マシってどう言う意味よー‼︎」
「感覚派だろ、お前。ほれ、行った行った」
シッシッ、と追い払うような仕草をすると小南に後で勝負しろ、と言われてしまった。無論、約束を履行するつもりはないのでその前に撤退するが。
「……さて、俺も行くかな」
それぞれ訓練室に赴き、迅は暗躍しに行った。ここに居てもすることはない。昼食の時間になるまで休ませてもらおうと借りている空き部屋のベッドに倒れ込む。
「……ん?」
きしり、と音がしたと思えば胸の上に感じるちょっとした重み。天井に向けていた目を向けると三毛猫が大きな目で眼下の人間を眺めていた。
ご主人様は、と尋ねても喋る筈もなく、にゃあと鳴くのみ。
「——アリス、何してんだ?」
「……たまたま通り掛かっただけです」
金髪碧眼の美少女は自分からドアを開けておいてそう宣う。嘘つけ。ドアノブに掛かったその手はなんだ。
だが、そう思っても言わない。この少女はこういう奴だ。素直じゃない。きっと居るか居ないか確認しようとしたらミケが勝手に入ってしまったのだろう。
「ドア閉めた筈だけど」
「絶対、とは言わないのですね」
「お前のご主人様は人の発言の揚げ足を取る嫌な奴だよ」
「にゃ」
「直接言わないあなたも嫌な奴です」
「で、たまたま通り掛かったのに長い立ち話だな」
「良ければ、もう少し立ち話しませんか? その辺を歩いて」
「はあ……」
ベッドから起き上がり、腕に抱えたミケをアリスに渡す。部屋から出るのかと彼女が一歩引いたのを見逃さず、ドアを閉めてしっかりと施錠する。そのことをドアを揺すって確認する。
「ちょっと、時雨!」
『嫌だ。寝る』
ドア越しに聞こえたのはそんな声。少女はその碧眼を大きく瞬かせて、硬直した。
——この男は、人をなんだと思っているのか。
今回はかなりぐだりました。前回、遊真のトリガーが黒トリガーって言うの抜けてたんで、無理矢理詰めたらこうなりました。気づかなかった? 作者も気づきたくなかった。気づいても目を逸らしたかった。でも、後になって直すのも七面倒なので、テキトーにね。
さて、前置きが長くなりましたが、アリスってどこのアリスでしょう? もちろん、今際の国でも不思議の国でもありません。
はい、相変わらず無駄に長い後書き。もちろん無視して下さい。
それじゃあ、また次回とか。