二刀は舞い、弾丸は貫く   作:[Schwarznegger]

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うーん、短い。しかし、サクッと大規模侵攻に行きたいので。
それでは、どうぞ。


どうしたって台本には逆らえない

 

 

 

 

 先日の『イレギュラー(ゲート)』は『ラッド』と呼ばれる(ゲート)を開ける能力を持った小型トリオン兵の仕業であることが判明し、C級隊員までを動員した駆除作戦により、騒動は幕を閉じた。

 

 

 

 

「……あれが?」

 

「ああ……おそらく、だが」

 

 視線の先には地味なメガネ。先日の一連の騒動の中で隊務規定違反を犯したが、騒動の沈静への功績で正隊員へと昇格を果たしている。

 その少年——三雲修(ミクモ オサム)を和人は三輪隊の面々と共に尾行していた。その理由は『三雲修は近界民(ネイバー)と接触している可能性がある』、という報告を受けたボーダー本部の最高権力者である司令、城戸正宗(キド マサムネ)による命令だ。

 

『移動するようだぞ』

 

 その通信は三輪隊所属、No.2狙撃手(スナイパー)奈良坂透(ナラサカ トオル)によるもの。狙撃手らしく彼は高所から三雲と小柄な少女、白髪の少年を見張っていた。

 

「了解……行くぞ」

 

「おう」

 

「人型とバトれんのか〜。テンション上がるぜ」

 

 そう語るのは三輪隊所属の米屋陽介(ヨネヤ ヨウスケ)。ポジションはアタッカー。カチューシャによるデコ出しスタイルが特徴。

 軽い雰囲気で語る彼を諌めるのは隊長の三輪秀次(ミワ シュウジ)。城戸正宗の腹心であり、近界民(ネイバー)への強い憎しみを持ち、復讐に燃える。

 

「陽介、遊びじゃないんだぞ」

 

「分かってるって秀次」

 

 目標の移動に合わせて、移動を開始。決定的瞬間を抑え、憎き近界民(ネイバー)を始末する為に。

 

「——さて、どうするか」

 

 ——自分たちも見張られているとは露とも思わずに。

 彼らを尾行する主はその銀髪を寒風にふわりと揺らしながら、物陰から適度な距離を保って監視する。

 

 

 

 しかし、全てはある男の手の平の上。彼らは用意された舞台の上で台本通りに踊る役者でしかない。

 

 

 

 

「——動くな、ボーダーだ」

 

 何故、この人が。三雲の脳内をその思いが支配した。その男は携帯電話を片手に現れた。いや、現れるだけなら大した問題はない。問題なのは——

 

「ボーダーの管理下にないトリガーを確認。加えて、近界民(ネイバー)との接触。——処理を開始する」

 

 ——この状況を見られたこと。

 三雲は近界民(ネイバー)である少年——空閑遊真(クガ ユウマ)とそのお目付役であるトリオン兵『レプリカ』に幼馴染の少女が近界民(ネイバー)につけ狙われる原因を相談し、非常に多いトリオンが問題だと判明した。それまではよかった。既に疑いは掛けられていたのかもしれないが、空閑が近界民(ネイバー)だと断定されたこと。それが問題だった。

 

「「トリガー、起動(オン)」」

 

 三輪と米屋はボーダー隊員たる証であるデバイスを起動し、戦闘態勢に入る。

 

「さて、どいつが近界民(ネイバー)だ?」

 

「トリガーを使っていたのはそこの女だ」

 

 三輪は躊躇うことなく銃口を向ける。ボーダーの弾丸トリガーは安全加工がされており、生身で被弾しても衝撃で気絶するのみだ。

 

「ちっ、違います! コイツは——」

 

「おれだよ、おれ。おれが近界民(ネイバー)だ」

 

 自ら名乗り出た空閑。念押しをするように確認する三輪。間違いないよ、と空閑が答えた瞬間、銃口は火を噴いた。

 

「なっ、何するんですかっ⁉︎」

 

近界民(ネイバー)を殺す。それがボーダーの務めだ」

 

「……おー、あぶない、あぶない。おれがうっかり一般人だったらどうするんだ」

 

「——ッ⁉︎」

 

「うおっ、この距離で防ぐか⁉︎」

 

 円形のシールドを展開して弾丸を防御。あの距離で反応し、防ぐとは流石の一言に尽きる。

 

「なぁ、秀次! 俺に一対一(サシ)でやらせてくれよ‼︎」

 

「ダメだ。二人掛かりで仕留めるぞ」

 

「ふぅん、アンタらつまんない嘘つくね」

 

 ハッ、と僅かに目を見開くがもう遅い。その些細な表情の変化で今の言葉が嘘だと悟られてしまったことだろう。

 しかし、それは真実ではない。彼は『嘘を見抜く』というサイドエフェクトを保持している。故に三輪の言葉に含まれる嘘を見抜いた。

 だが、嘘を見抜いたところで不利なことに変わりはない。数の有利というのはそのまま明確に表れる。紙一重で躱しても当たる槍。正確無比な狙撃。常に挟み込むようなポジショニング。そして、防御を無視する弾丸——『鉛弾(レッドバレット)』を受け、錘によって拘束された。

 

「終わりだ、近界民(ネイバー)!」

 

 しかし、彼らは見誤っていた。空閑のトリガーが規格外であるということを。

 

『解析完了。『印』は『(アンカー)』と『(ボルト)』にしておいた』

 

 そう囁く空閑の頼れる相棒レプリカ。

 

「『(ボルト)』+『(アンカー)』——『四重(クアドラ)』」

 

「うおっ⁉︎」

「なっ⁉︎」

 

 飛び掛かる格好だった彼らに躱す術はなく、物の見事に被弾した。その攻撃は鉛弾と同様ながら威力は倍以上だ。

 

「おお〜。便利だな、コレ」

 

 ふむふむ、と新たな攻撃方法に感心しながら、米屋が手放した槍を手に取り検分する。どうやら穂先を持ち主の意思に応じて変形させることができるようだ。これが紙一重で躱しても当たる理由か。

 

「さて、話し合いをしましょうか——あれ?」

 

 何故、胸から剣が生えている。気づく頃にはトリオン体への換装は解かれ通常の姿へと戻された。

 

「死ね、近界民(ネイバー)

 

 物陰で自身の気配を隠蔽し、機会を窺っていた和人はバッグワームを解除し、左手の剣を振るう。

 しかし、それは確かな手応えをもって弾かれる。

 

「落ち着けよ、桐ヶ谷」

 

 長身の男はへらへらと構えも取らずに脱力して、身の丈程の長刀を肩の上に担ぐようにする。

 

「有栖川先輩……何の、つもりですか?」

 

 荒い息を抑え込むように途切れ途切れに紡がれる言葉。目の前の男を無視して後ろの空閑を斬り刻みたいが、その真意を問うておかねばなるまい。この男と斬り結べば、隊務規定の『正隊員同士のランク戦以外での戦闘を禁ずる』という項目に反してしまう。だが、この『ルールブレイカー』にその理論が通ずるかはかなり怪しい。

 

「見りゃわかるだろ。お前らの邪魔」

 

「そいつはッ、近界民(ネイバー)だぞ! 何故、殺さないかと聞いているんだ‼︎」

 

「殺す理由がない。近界民(ネイバー)に復讐したいお前らはそれが理由なんだろうがな。生憎、俺はそれなりに感情を横において損得で勘定する質なんでね」

 

 激昂する三輪に事も無げに答える時雨。ハァ、と溜息まで吐いてみせる様子は復讐など馬鹿らしいと言われているにも等しい。

 

「損得、だと? そいつを生かしておくことに何のメリットがあるというんだ‼︎」

 

「情報。……お前、頭ん中にオートミールでも詰めてるのか? 殺すことはお前らの心が少しばかり満たされるだけで、組織全体の利益には繋がらない。捕らえて情報を引き出してから、煮るなり焼くなり好きにすればいい」

 

「……アンタがどうしてボーダーに入隊したかは知らない。だが、俺たちにとってそんな簡単に納得できるもんじゃないんだよ」

 

 俺たちは任務を遂行するだけだ、と再び剣を構える。一方、時雨はそれを見ても構える様子はない。

 

「——おー、派手にやってんなお前ら」

 

「結局、俺もお前らも台本通りに動く滑稽な役者ってことだ」

 

 この剣呑な空気に似合わぬ呑気な声。この全てを予見していた男が三輪隊の狙撃手二人を引き連れて現れた。

 迅が現れたのを確認して時雨は換装を解く。しかし、和人はギリギリと奥歯を噛み締め、時雨と迅、空閑を睨みつける。

 

「……フン」

 

 鼻を鳴らして、立ち去る和人。捨て台詞と共に本部へと緊急脱出(ベイルアウト)して送還される三輪。換装を解いて、空閑と一対一で戦う約束を取り付けて狙撃手二人と去る米屋。

 

「さて、久しぶりだな。イレギュラー(ゲート)以来か」

 

「どうもあぶないところを助けていただいて。おれは空閑遊真」

 

「どういたしまして。俺は有栖川時雨。君の友人には学校での危機を救ってもらったからな。その恩返しだ」

 

 その後、本部からの呼び出しがあるだろうとのことで迅と三雲は本部へ赴く。時雨も面倒だが、仕方なしに彼らに同行した。

 

 

 

 

 

 







乾選手のバルサ戦での2ゴール。素晴らしかったですね。負けちゃいましたけど。しかも、バルサ優勝しなかったし。でも、ジダンには監督としても歴史に名を刻んで欲しいですね。さらにローマの王子、トッティが退団。残念です。


はい、上の話は適当に流しておいてください。相変わらず適当な感じですが、適当な作品なので適当にお楽しみください。
それでは、また次回。とか。


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