ISと無気力な救世主   作:憲彦

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中と言うことは、下もあります。

あ、オリジナルは読みたい、やってみろ、読んでやる、読んだ上で笑ってやる。などの声があれば、インフィニット・ネクサスの後に出そうかと思います。もう1つのオリジナル(VRダイブ)と一緒に出そうと思います。


蛇と兎 中

束が境界に来てから少しの時間が経った。まぁ、ここに住んでいる住人からしたら、時間と言う概念はどうでも良くなってくる。なんせ、腹は減らない。食べずとも餓死はしない。夜はなく、寝なくてと疲れることはない。時計と言うものがない。大体感覚でどうにかなる。の世界だ。ここにいる間は特に消滅と言うものもない。時間なんか関係無くなってくる。

 

まぁ、それでは話が成り立たないので、束がここに来てからの時間を、作者同様こちら側に住んでいる人と同じ値に換算すると、約1ヶ月だ。その間束はずっと海堂と一緒に過ごしてた。今日は、食事の材料を買うために市場に来ている。前にも言ったが、ここでは食事は必要ないが、生きていた頃の習慣として食べている人もいる。理由は様々あるが、1番は死んでも口にしたい味があるからだ。だからなのだろう。必要もない行為なのに、必要もない産業なのに、この町では、そう言った食に関するものを扱う店が多い。

 

「あ、いたいた。探しましたよ。海堂さん。篠ノ之さん」

 

「ん?どうした?」

 

海堂と束が歩いているところに、いつぞやの死神が降りてきた。何故か2人を探していたようだ。が、書類の記入は全て終わった筈だ。このあと記入するものは特に無かった筈なのだが。

 

「はい。篠ノ之さんには、この町の案内などがまだ終わっていなかったので、それをしよかと」

 

「真面目だね~。と言うか……なんか、疲れてないか?アンタ」

 

「……少々裁判に手こずりまして。篠ノ之さん。貴女の判決。決定しましたよ」

 

一応聞かされていた。死ぬときに改心したとは言え、束は多くの罪のない人を殺している。それは決して許されることではない。現世に居たときは、束は指名手配されていたとは言え、ISの制作者と言うことで、白騎士事件の犯人とは言われているが、罪が課せられたと言うわけではない。だが、ここではそうは行かない。死者となってしまえば、どんな偉大な人間も全員同レベル。犯罪を犯した者の生前の罪は全て裁判にかけられ、各神の厳正な裁判に基づいて判決が言い渡されるのだ。

 

「貴女の犯した罪は、許されることではありません。当然、貴女の事を地獄行きにしたいと言う声は沢山ありました」

 

「まぁ、そうだよね~。で?地獄行きが決定したの?」

 

「いいえ。貴女の最期に行った行為。白騎士事件に至るまでの経緯。ここに来てからの生活。それが全て考慮され、ご希望通り転生の許可を貰いました」

 

「え?」

 

「おぉ!やったな束!!いやぁ~。良かった~!」

 

余りにも予想外の答えに、束は思考が停止し、海堂はまるで自分の事の様に喜んでいる。束の転生許可が余程嬉しかったのだろう。大声を上げてしまっている。だが、それに続けて死神が1つ付け加えた。

 

「ですが、完全に過去の行いが無罪になった訳ではありません。転生後、約50年間。貴女には1人の死神が24時間監視に付きます。当然、転生後にこの記憶は残りませんし、死神も見えないので実感は無いでしょうが」

 

そんなもの、実質無罪放免と変わらないだろう。死神が付く事によって、何かしらの制限はかかるかもしれない。だが、見えないし感じないし覚えていない。それなら気にすることは無いだろう。

 

「まぁ、来世で人格が全く別の物に変わると言うことは無いので、また白騎士事件の様な事を起こせば、間違いなく地獄行き決定ですので、その辺はご了承下さい」

 

「う、うん。ありがとうね……」

 

まだ飲み込めていないようだ。だが、じきに受け入れて行くだろう。まぁそれだけが今回の目的ではない。この町の案内が目的だ。

 

「まぁ伝えることも伝えたので、案内しますね。海堂さんもどうです?今思えば、貴方にも主要な場所以外は案内していませんからね」

 

「そうだな~。考えてみれば市場以外使ったことないからな」

 

と言うことで、海堂も一緒に死神君の案内を受けることにした。まぁ1番栄えているのがここだから、特に今更案内を受けるところは余りないのだがな。だが、いろんな人が沢山いる。

 

「結構人が居るね~。あのMの一文字が入った全身赤い服を着てる髭のおっさんと、そのおっさんと一緒に話してるトゲトゲパンクなでっかい亀はなに?」

 

「あぁ、あの人たちは何故か天国行きも地獄行きも転生も出来なくて、ここに留まっている方々ですね。亀の方が姫を毎度拐って、赤い人がいつも助けています」

 

「なんで姫さん拐われてるのに、助けるのが王子とかじゃなくて、髭もじゃ?」

 

「そこは触れてはいけません。シリーズ化してからいつも疑問に思っていることですが、触れないのがマナーです」

 

何言ってんの?それ自体1番触れちゃダメじゃね?

 

「へぇ~。じゃぁあっちは?」

 

ザ・勇者な感じな服を着ている筋肉質な男性と、完全に人間ではない、例えるなら魔王的な何かが楽しく話をしている所を指さした。

 

「あれは、昔人間界を我が物にしようとした方と、その野望を打ち砕いた方ですね。魔王さんの名前は分かりませんが、勇者的な方は、確かロトシックスと名乗ってましたね」

 

「宝くじか?と言うか大丈夫なのか?ここにいて」

 

…………ノーコメント。流石に何も言えない。映像にしたら全身モザイクの塊になるのは間違いないがな。

 

「それにしても……ロボットみたいなのも居るんだね」

 

「魂のあるものは全員我々死神が管理していますからね。元が何かなど、小さな問題です」

 

確かに、そこら辺にロボットの様なのも居る。ほとんど人間に近いアンドロイドや、どこからどう見てもロボットとしか言い様の無いオーソドックスな者まで全ている。そんなロボットが居ると、当然束は興味を持っていろんな所を回る。そして、1番興味を持ったのが、チェスをしている2人組だ。チェスと言っても、盤も駒も木を彫って作った手作りの物だ。片方はロボット。もう片方は人間だ。

 

「ん~……」

 

「リク、まだ?」

 

「もうちょい待て……!」

 

「ほい」

 

「「あ」」

 

悩んでいたので、束が駒を1つ進めた。この行動に、2人組は大層驚いていたが、女のロボットがそれを見て自分の駒を1つ動かす。束はその後にまた自分の駒を進める。それが数分の間続いた。

 

「チェックメイト」

 

「ウソ……負け、た?」

 

「お前……スゴいな」

 

「まぁ~ね~。じゃ」

 

やるだけの事をやって、海堂たちの場所へと帰って行った。戻ると、海堂に何をやっていたか聞かれたが、遊んでたと答えて、他の事は何も言わなかった。

 

「取り敢えず、境界にある様々な場所を案内しました。買い物は、お金を払う必要は無いので、店の人に声をかけるだけですが、無断で持っていったりはしないでくださいね」

 

死神君の説明に返事を返すと、死神君はさっき貰ってきた糖分を持って仕事場へと帰って行った。どうやら、他にも仕事があるようだ。それを置いてここに来た辺り、どれ程人の魂を大切にしているのかが伺える。まぁ、その事に礼を言った所で、「仕事ですから」の一言が返ってくるのは間違いない。

 

「……少しお腹空いたな~。直也、帰ったらオムライス作って!」

 

「オムライス?まぁ……何とかなるか……」

 

こっちはこっちで充実した生活を送っているようだな。




今回はここまで!

次回もお楽しみに!感想と評価、『教えて!憲八先生!!』の活動報告もよろしくねお願いします!!

さてと、次回はどうなるのやら……

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