ISと無気力な救世主   作:憲彦

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今回の設定で妙な所が多々ありますが、それはうp主が昔書こうとしたオリジナル擬きの設定ですので、後書きに少し説明を交えようかと思います。


蛇と兎 上

あるところに1人の蛇が居た。その蛇は音楽が好きで、夢も音楽に関することだった。そして、それは言葉だけではなく、彼自身その夢を叶えるだけの実力を持っていた。彼の奏でる曲は、多くの人の心に響き、傷付いた心を癒してくれた。

 

その蛇は今日もクラシックギターで曲を奏でる。場所は、周りには綺麗な花畑と透明度の高い川が流れている幻想的な場所。そこに座ってギターを弾いている。聞いているととても落ち着く曲だ。だが、落ち着いているがどこかに悲しみを感じ、それでいて前へ進ませる力のある不思議な曲。それが川辺に響いていたのだ。

 

1人の蛇は、ただ静かにその曲を奏でている。誰かが聴いているわけではないが、そこにいない誰かの為に弾いている様にも受け取ることが出来る。蛇は曲を弾き終わると、フゥーっと息を吐き、愛用しているクラシックギターを自分の側に置き、横になった。

 

「今度木場にでも聞かせるか……あぁ、でもその為には魂こっちに引っ張って来ないとな~。それかまた夢の中にでも出るか?」

 

独り言の様だ。だが、今弾いていた曲は、恐らく木場と言う人間に聞かせたかった曲なのだろう。

 

「約束は守るぜ。絶対聞かせてやるからな。飽きるまでな」

 

蛇はそう言いながら、起き上がると、再びギターに手をかけ、曲を弾き始める。より丁寧に、より強く、より満足出来る曲を奏でる為に、蛇は曲を弾き続けている。目を閉じながら、穏やかな気持ちで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あるところに1人の兎が居た。その兎は、自分の親しい者たちと宇宙に行くことが夢だった。子供なら誰しもが抱く壮大な夢。だが、彼女はそれを夢で終わらせなかった。学生の身でありながら、宇宙へ行くための技術を確立させようとしていた。

 

夢で終わらせないため、兎は自分の得意とする理数系の勉強を極めた。全ては自分の、自分達の壮大な夢の為に。そして完成させた。自分達の夢を叶えるための無限の翼が。兎は喜んだ。これで夢が叶うと。

 

だが、それは世界から拒絶されてしまった。全ては子供の夢物語だと。夢を忘れ、己を忘れ、自分より優れている人間が気に入らないと思う大人達によって、兎の大きくも小さく、大切な夢は粉々に砕かれてしまった。

 

兎が自分の牙を見せたのはそこからだった。自分のただ1つの夢を砕かれ、世界に絶望した兎は、自分の望む世界を造り上げようと、一度全てを破壊しようとした。だが、出来た世界は、兎の望むものではなかった。

 

夢を叶えるための無限の翼は、進むための力をもがれ、ただの醜い兵器と化していた。兎は再び世界に絶望し、可能性を、夢を捨てた。そして、今度こそ自分の幸せになれる世界を造り上げると決意する。

 

だが、それの願いは二度打ち砕かれた。1回目は自分が世界を破壊したときに、自分と同じく大切なものを失った1人の男に。2回目は、自分が唯一認めた心からの心友に。だが、心友に殺されたときは穏やかな心だった。認められなかった、歪められてしまった自分の翼を認められ、再び白く輝かせてくれた存在に、兎は心を救われた。そして決めた。もう、歪んだ目覚めはしないと。

 

だが、ただ消える訳ではない。自分の守るべき物を見付け、自分以上に幸せになって欲しいと心の底から思い、夢を託した娘。兎は今度こそ、安らかに眠ることが出来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?誰だ?」

 

川辺で曲を弾いている男の目の前に、1人の女が現れた。酷く疲れたようで、フラフラの状態だ。宛もなくこの辺をさ迷っていた所、この男の音楽に惹き付けられ、自然と足がここへと向かったようだ。

 

「ちょっと!お姉さん大丈夫!?」

 

声をかけるが、かなり疲弊している様で、倒れてしまった。

 

「え?ちょっと!本当に大丈夫!?」

 

自分の目の前で倒れたことに驚き、曲を弾いているどころでは無くなり、女に慌てて駆け寄った。だが、心配するほどでは無いようだ。単に疲れているだけだと思う。その証拠に倒れているが、すぐにさっきの曲について聞いてきた。

 

「ねぇ、さっきの曲。お前が弾いてたの?」

 

「そうだ。けど、初対面のヤツにお前はねーだろ。俺は海堂直也。アンタは?」

 

「……篠ノ之、束」

 

「そ。よろしくね!束ちゃん」

 

「……ねぇ、さっきの曲。もっと聴かせてくれないかな?」

 

「ん?あぁ、良いぞ」

 

そう言うと、海堂はギターを持ってきて、束の側に座り、さっき弾いていた曲を再び弾き始めた。それを聴いている束の顔は、実に穏やかだ。束にとって、その曲は心地が良いようで、聴いている内に眠ってしまった。

 

そこに、黒いローブを身にまとった男が現れた。

 

「あ、ここに居ましたか」

 

「死神のにーちゃんじゃんか。どうした?」

 

「イエ。篠ノ之束さんの書類の記入がまだったので、聞こうと思ったんですが……寝てるようですね」

 

「あぁ。何でこんなに疲れてんだ?この娘」

 

「……3日前に輪廻の輪に案内していたんですが、途中動物霊を運んでいる業者がミスをしまして。動物霊の大群に流され、それからずっと……」

 

「この境界をさ迷ってたと……」

 

ここは完全にあの世と言う訳ではない。そこに行くための通過点の様な場所だ。まだ転生するつもりのない沢山の魂がここに集り、生活を行っている。

 

「まぁ、彼女からは転生希望と聞いていますので、別に今書類をまとめる必要はありませんね。海堂さん。しばらく彼女と生活してみてはどうですか?」

 

まさか、海堂を殺した元凶と一緒に生活をさせるとは。かなり思いきった事をする死神の様だ。海堂も束がどんな人間かは知っている筈だが……

 

「まぁ、部屋は余ってるから良いけどよ……」

 

「では、しばらくの間お願いしますね」

 

そう言うと、死神は書類をまとめるために自分の仕事場に帰り、海堂は束を背負って自分の家へと向かっていった。束を布団に寝かせると、一応食事の準備をした。ここにいる者には必要ないが、生きていた頃の習慣として、沢山の者が行っている。まぁ、空腹がないと言うわけではないがな。ただ食べなくても死なないだけだ。

 

「味噌汁と焼魚と玉子焼きで良いか……」

 

手際よく、考えたメニューを作り、2人ぶんの食器にそれを盛った。味噌汁の香りが広がり、海堂は料理の出来に自画自讃していた。この匂いを嗅ぎ付け、束が目を覚ました。

 

「お!起きたか。飯できてるぞ!」

 

束は海堂の作った料理を見ると、息を飲んだ。海堂の見た目的に、料理をするようには見えないからだ。カップラーメンなどがポンと出てきても不思議ではない。

 

「冷めない内に食いな。今日は出来が良いからよ!」

 

「う、うん……ッ!?」

 

食べると衝撃を受けた。余りにも上手かったからだ。海堂が見ているが、そんなこと気にせずにかき込んでいる。

 

「上手かったか?」

 

「う、うん。美味しかったよ……」

 

「そいつは良かった」

 

食器を洗いながら、椅子に座っている束と何気無い会話をしていた。

 

「ねぇ、海堂だっけ?君はいつ死んだの?」

 

「んあ?あ~10年くらい前の8月9日だっけかな~。ミサイルで吹っ飛ばされた」

 

「ッ!?……そう、なんだ」

 

「まぁ、俺は別に気にしちゃあいねーから。お前も気にするなよ」

 

「……知ってるの?」

 

「まぁな。まぁ気にする必要はねーから。今後の事を決めるまでゆっくりしろ」

 

海堂にそう言われると、もう1度眠りに付いた。海堂も洗い物を済ませると、ソファーで眠った。明日からは色々と苦労しそうだけどな。




海堂は余り扱ってなかったから、やっぱり少し少なくなりますね。

では今回の設定の説明をさせてもらいます。今回の設定は、俺が昔、オリジナルで死神と漫画家を目指して専門学校に通う女性とのラブコメ?日常物?を考えていたときのネタです。

死神と言う存在が、死者の魂を管理し、地獄行き、天国行き、転生行きかの説明をして、死者の魂を導く存在。そこで出会った霊感とか全く持っていない女性との物語です。地獄行きの魂には、少しでも刑を軽くするために弁護をするときもあります。

その話では、死神は寿命を決める存在ではなく、別の神が定めた、その人間の寿命に到達する前に死ぬのを防ぐ存在として出てきます。死んだ者の魂には、46日の間に輪廻転生の輪があるところまで来てもらう。それらが死神の仕事の1つです。

他にも、呪いなどに用いられた物の後処理や、人間や現世に悪影響を及ぼそうとした悪霊の始末。地縛霊の悩みを解決させ成仏してもらう。など様々な仕事があります。その仕事をしている過程で、出会ってしまった2人のエピソードをと思っていたんですが、余りにも在り来たりだなと思いまして、文章にはしていません。今後陽の目を見ることはあるのやら……読みたい、やってみろ、読んでやる、読んだ上で笑ってやる。などの声があれば、インフィニット・ネクサスの後に出そうかと思います。もう1つのオリジナル(VRダイブ)と一緒に。

現世に留まっている、ファイズ本編のメンバーは、この死神君に支援してもらってると言う状況です。

境界とは、今回の本編にある通り、まだ転生するつもりのない魂が生活する場所です。ここなら悪霊になる心配がなく、現世に影響することはありません。現世との行き来も可能で、現世に残した者を見るために出ることも出来る。悪霊にならない特異体質の人以外は1週間以上外で過ごすことは出来ませんけどね。

次回もお楽しみに!感想と評価、活動報告もよろしくお願いします!!

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