ISと無気力な救世主 作:憲彦
「だるまさんが~……転んだ!」
「……」
「……」
「暇だな」
「暇じゃねーよ!平日の朝っぱらから来やがって!!」
平日、しかもSHR前の時間だ。何故来た本当に。制服を着ながら、一応客人なので、草加と木場に飲み物を冷蔵庫から取り出した。しかし、特に何もなかった。あるのは買った覚えの無い2リットルのコーラだけ。
「コーラで良いな。飲んだら帰れよ!」
「あぁ。千冬と話したら帰るよ」
「すぐに帰れ!!」
まぁそんな感じはしてたよ。だが何故木場まで?来る理由は……あぁ、真耶か。と言うか一夏、1年生の時からこんな感じなんだから慣れろ。もう2年生だろ。
取り敢えず、自分の分も含めて3人分をコップに注いできたので、草加と木場の分を差し出して、自分も飲んだ。しかしこれを直後に後悔することになった。
「え?ちょ!何これ!!?」
「え?うわぁぁ!!」
「わぁぁぁ!!?」
飲んだ3人の体が光りだしたのだ。そしてどんどん形が変わっていく。一夏は少し身長が縮んで、髪が伸びてくる。腰の辺りまで。そして胸が膨らんできた。IS学園の男子用の制服では少しキツく感じる。草加は身長こそは変わらないが、体の線が細くなっていく。来ている服がダボついている。1番変化があったのは木場だ。身長は140㎝位までに下り、髪の毛も肩の辺りまで伸びている。そして胸は真耶くらいに膨らんでいる。
「「「何じゃこりゃあ!!!?」」」
あまりにも変わり果てた自分達の姿。お互いにお互いの体を見て絶叫した。その直後に、千冬が慌てた様子で一夏の部屋に入ってきた。
「一夏!冷蔵庫のコーラのんで……遅かったか」
「姉貴!?これなんだ!!何で俺達女になってんだ!」
「いや……その……科学の中馬先生居るだろ?この前実験に使う薬品を買い込んだんだが、まだ大量に残ってるのが見つかってな……期限切れが近かったから使わないかと言われて……」
で作った薬がこれだ。何でコーラのペットボトルに入れたんだよ。その前に何で一夏の部屋の冷蔵庫なんだよ。
「何でそれが俺の部屋の冷蔵庫に入ってんだよ!その前にそんな薬作れるかぁぁぁぁ!!!」
「いや~済まなかったな。入れるのにちょうど良いボトルも無かったし、私の部屋の冷蔵庫は隙間が無いからな。昨日の内に言っておこうと思ったんだが、言うタイミングが無くて」
何とも酷い理由だな。つーかマジで何でこんな訳の分からん薬を作れんだよ。何でもありの世界でも、これは流石にスゴすぎるわ。
そんなとき、いつものあの時間が来た。本音が一夏に朝食を貰いに来る時間だ。しかし今このタイミングで来られるのは不味い。
「いっちー!朝ごはん食べに来たよ~!!あれ?」
「一夏~!今月ピンチだから私もお願い!……ん?」
運命とは時に残酷な物だな。本音だけではなく鈴にも見られた。この姿を。
「ほ、本音……鈴……」
最悪の状況だ。女になっただけでもヤバイのに、この状況を見られたのだ。片方は彼女でもう片方は学園で1番仲の良い友人。このカオスをどう説明して良いのやら。
「いっちー……」
「一夏……」
「あ!頼む!見ないでく―」
「「可愛い……」」
「え?」
「「可愛い!!」」
「うわぁぁ!?」
一瞬顔が暗くなった様に感じたが、直後に目を輝かせて一夏に抱きついた。頭を撫でたり頬っぺたを擦り会わせたりしている。相当この一夏が気に入ったようだ。
「明日には戻るだろ。それまで待っとけ」
「あの、千冬さん。何で一夏達、性別変わってるんですか?」
「ん?あぁ。このコーラを飲んだからだ」
そう言って、本音と鈴にそのコーラを注いだコップを渡した。匂いを嗅ごうと鼻の付近に持っていくと、待っていたと言わんばかりに、千冬が2人の口の中に強引に流し込んだ。
「「ンゴッ!?」」
一夏達と同様に、体が光り始めた。本音は段々と身長が伸びていき、髪の毛も短くなっていき、声も低くなっている。が、鈴には変化が無い。強いて言えば、髪型がツインテールからポニーテールに近いものになっただけだ。
「おぉ~!いっちーより大きい!!」
「な、何で私は変わってないの!!?」
「ち○こ付いてるだろ」
「一夏!女の子が真顔でそんなこと言ってはダメだ!」
「姉貴ブッ飛ばすぞ」
そんな馬鹿なやり取りをやっていると、草加は誰にも気付かれないようにコーラをコップに注いだ。そしてそれを持って千冬の背後に移動する。因みに木場は一夏のベッドの布団にくるまって中でシクシク泣いている。
「あぁもう!せめて今の一夏の身長は越えると思ったのに~!!」
「ち~ふ~ゆ~!」
「ん?ンゴアッ!?」
「さぁ~てと……帰るか」
おいぃぃぃぃ!!!何やってんだ!!何状況ややこしくしてんだよ!!状況更に悪くなってんじゃねーか!!馬鹿だろ!お前馬鹿だろ!!
ガシ!
「雅人さん?いや、雅人。逃げられると思ったか?」
「ビクッ///」
低い声のイケボで、しかも耳元で呟かれたら体が反応してしまう。脚に力が入らなくなったのか、体を震わせながら膝を付いてしまった。そんな草加を見た千冬がニヤリと笑みを見せると、また草加の耳元に近付き呟き始めた。
「雅人が望むなら、今日は2人で過ごそうか?学園じゃ気分も出ないな~2人っきりになれる場所に行こうか?それとも、見られるのに興奮する方?」
「ちょ//!やめ……て//!ハァハァハァ//……」
はい。作品が変わるからそこまでな。後は作品外でやってくれ。そこなら自由だから。
「織斑先生~そろそろ職員会議始まりますよ~……」
状況を見ると、すぐに携帯を取り出して電話をかけた。主任に。
「あ、主任。問題が発生したので会議欠席します。1組のSHRに誰かよこしてください。では」
冷静に対応してくれた。この1年でスゴく成長してくれたな。
「あの、勇治さんは居ますか?」
「あそこに居るよ」
木場の居場所を聞くと、一夏が自分のベッドの上にある布団の塊を指差した。
「原因はこのコーラですね」
コーラのボトルを手に取ると、残ってる分を全部飲み込んだ。丸みのある女性的な体型から、体は細いが確かに男性的な筋肉質の体へと変わっていく。
「あ~。あ~。あぁ……織斑先生。今日休みますね」
爽やかな笑顔を千冬に向けると、木場のくるまっている布団に近付いた。そして勢いよく布団を剥いだ。
「勇治さん?」
「ヴゥ……ま、真耶さん?」
「さ!落ち着ける場所に行きましょうか?大丈夫です。2人きりになれば落ち着けますから。さぁ。行きましょう」
「う、うん……お願い……します///」
「(なにこの可愛い生き物)はい。安心してください。私の理性が持ってる間はね(ボソ」
「え?」
「何でもないよ。行こうか」
爽やかに言っているが、真耶の目は底冷えしそうなぐらいに鋭い眼光をしていた。木場は女になったからか、その辺が少し鈍くなっているが、他の全員はそれに気付いている。
「今日のMVPはやまやんかな~?」
「でしょうね」
「ん~まぁ良いか。一夏、この服を貸してやる。今日はこれで過ごせ」
差し出されたのは千冬が中学の時に着ていたセーラー服だ。着るものが無かったから仕方無く来てみた。これがまた似合っている。再び本音と鈴が興奮したのは言うまでも無いだろう。
次の日、男性陣は顔を赤くして自分達の恋人と目を合わせられなかった。恥ずかしかったのだろう。特に木場。
平和な日常を書いたときの一夏の「姉貴の作った変な薬を飲んだ方がマシだ」の一言を思い出したので、形にしました。
次回もお楽しみに!感想、評価もよろしくお願いします!!