ISと無気力な救世主   作:憲彦

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今日は少し思考を変えて、バジン、バッシャー、スライガーの1日です。物語の都合上、全員に感情があって機械同士の意思疎通が可能な設定になっています。

しかし、普通に人間も会話するので、メカ達は『』を使います。


メカ3台の1日

「あれ?ドライバー無いな。部屋に忘れてきたか?」

 

IS学園にある整備室。本来ここは、授業か専用機持ちの整備程度にしか使わない。だが、今日は違う。一夏が中でバジンをいじっていたのだ。そして、ドライバーが無いことに気付いた。整備室なんだからそれくらいあるだろ。

 

「ここにあるか……?」

 

気付いて整備室のドライバーを漁りだした。しかし、いつも使っているサイズが無かった。そこだけピンポイントで。スゲー奇妙だな。

 

「仕方無い。1度部屋に戻るか……」

 

そのサイズでないと合わないので、部屋に戻って取ってくることにした。今日は一晩整備室に籠って、最近調子の悪いバジンを直そうと思っていたので、少しテンションが下がっている。一夏が直せる範囲の異常であることを願う。

 

(ん?人の気配……誰も居ない筈だが……)

 

部屋の中に気配を感じた。この日は本音は居ないし、草加や木場も突然訪ねては来ていない。鈴も食品をたかりに来るときはちゃんと一言声をかける。じゃあ部屋に居るのは誰だ?

 

(姉貴の抜き打ち部屋チェックか?迷惑なことこの上ない……)

 

イヤ抜き打ちなんだから迷惑とか思うなよ。部屋にゴミが溜まってないかとか、なんかヤベー物が転がってないかとか、ベッドの下からアルミホイルとライターとか言う訳の分からないコンビは出てこないかや、机の中から白い粉が出てこないとか。様々な事を考えられた上でのチェックだ。

 

そう言う訳で、中に居るのは千冬だと断定した一夏は、何食わぬ顔で普通にドアを開けた。すると、

 

「おかえりなさ~い。ご飯にする?お風呂にする?そ・れ・と・も……わたsクチャパァ!!!」

 

「不審者かよ……」

 

中に居たのは水着にエプロンとか言うイカれた格好の女が居るだけだった。9月にその格好で居るのはどうかと思う。不審者と判断すると、全力で殴って意識を飛ばした。

 

「マジで誰だよコイツ……仕方無い。あの手で行くか」

 

すると、部屋の棚から長いヒモを取り出してす巻きにした。そして人通りの多い場所まで持っていき、天井から吊るした。顔の辺りに「変態不審者」と書かれた紙を貼り付けて部屋に戻っていった。

 

「ん?家具の配置が少しずれてる……まさか!?」

 

まさかと思い、家具の配置がずれている場所や、目につかない場所などを詳しく見てみた。すると、盗聴器と盗撮カメラがわんさか出てきた。プライバシーもクソも無いな。

 

「あぁ~ここにも……一体何個仕掛けたんだ?」

 

あれから20分ぐらい部屋を漁っているが、まるで盗聴器と盗撮カメラのデパートだ。少し不安だが、流石にキリが無いのでバジンを呼んで探してもらう事にした。

 

『体調が悪いときに呼びやがって……』

 

「悪い悪い」

 

一夏との会話に使うプラカードの文字からも、かなりの恨めしそうにしているのが伺える。

 

『誰にこんなの仕掛けられた?』

 

「水着とエプロンの格好したイカれた女だ」

 

『また妙なのが出てきたな。こっちは終わったぞ』

 

「まぁもう二度と関わんないけどな。こっちも終った。整備室に戻るか」

 

出てきた盗聴器は全て証拠品として、千冬に提出するつもりだ。人通りの多い場所に宙吊りにしているら、所属クラスなどはすぐに分かるだろう。そんなことを考えながら整備室に向かっていたのだが

 

ガシャン!!

 

「バジン?バジン!!」

 

頭の辺りから煙を出しながら、バジンの機能が完全に停止した。スマートブレインのメカは、原則として強制的に機能が落ちることは無い。だが、バジンは今機能が強制終了されている。かなり状態が悪いようだ。

 

「スマートブレインに持っていくか……」

 

ここまでくると直すのは無理だ。木場に頼んで運んでもらう事にした。まさかここまで悪いとはな。一夏自身、これ程までに悪いことに気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?バジンの状態はどう?」

 

「直せるところまで直して、昨日の夜中に何とか意識は戻したよ……まだ歩くしか出来ないけどな」

 

木場がバジンに目を向けると、ぎこちなくではあるが手を挙げた。しかし、やはり調子が悪いからなのか油が切れた様な動きをしている。

 

「早く楽にしてあげたい……」

 

「それだとスクラップ望んでる様に聞こえるよ!?」

 

もちろんそう言う訳では無い。早く直って欲しいと言う意味だ。

 

出発すると、後部座席に座っているバジンを気にかけながらゆっくりとスマートブレインに向かっている。時折声をかけながらだ。

 

「バジン大丈夫?一晩でどれくらい直った?」

 

自己修復機能が付いているので、それの事だろう。流石に自己修復は壊れはしない。そこまで壊れてたら木場ではなく村上自身が運びにくる。いつも通りにバジンがプラカードで話そうとするが、文字が滅茶苦茶だ。日本語や英語、中国語にラテン語、アラビア語と使用国すら不明の文字と解読困難な感じになっている。幸い、日本語と英語があるので、「言語機能に異常あり」と言うことは伝わった。だが、それ以降の文は全く分からない。

 

「早く連れていかなきゃ……」

 

昔の相棒のこんな姿は見ていられないのだろう。スピードを上げて、普段は通らない近道をしながら急いだ。

 

スマートブレインに着くと、真っ先に村上が出迎えてくれた。そして、バジンの状況を妙な機械で読み取ると、地下にある整備室へと連れていった。そこに連れていくと言うことはフルメンテだな。

 

『めんどくせー事になったな~』

 

悪態を付きながら、大人しく地下へと向かっていった。そして、病院で言う待合室的な場所に通されて待っていたのだが、そこには驚く先客が居た。

 

『あれ?お前らもフルメンテ?』

 

『あぁ~バジンか。その調子じゃあお前もか』

 

『まぁ、2人は俺と違ってよく使われるからね』

 

バジンの他に、サイドバッシャーとジェットスライガーがそこに居た。メカ同士での会話は可能なので、久し振りにあった3人で何故ここに来たのかを話し合うことにした。

 

『バッシャーは何でここに?草加はよくお前の手入れしてるだろ』

 

『最近調子が悪くてな。この前買い物に行ったときに急にエンジンが停まって危うく事故るところだった。村上に見に来てもらったら、ここに入れられた』

 

バッシャーは、と言うかバジンもだが、普通の店で見てもらったら警察を呼ばれかねない。スマートブレインのやっていることは、仮面ライダーの存在が世間に知られたと同時に発表されたが、武器が大量に詰められたバイク何てもんを見たら店員はびっくりするし、一歩間違えば店ごと吹っ飛ぶ。なのでここで受けるのだが、まさかバッシャーも調子が悪かったとは……

 

『スライガーは?』

 

『知らん。何故か今日がフルメンテの日になった。ぶっちゃけ俺、2人程使われてないからミサイルとか武器を外したら機能を停止して眠ってるんだけど、今日起こされてここに運ばれた』

 

『まぁ、お前壊れやすいからな~』

 

『壊れやすいと言うか、主に壊されてんだけどね。お前らの主に。俺の先輩が』

 

『はてさて何の事やら』

 

『皆目検討もつかんな』

 

『誤魔化すな!!』

 

確かに、スライガーは昔草加に破壊されたことがある。訓練中にだ。因みに一夏も訓練中に1機壊している。ここで話をしているスライガーをだ。そして十数年後に、今度は後輩が形も無くなるほど木端微塵になる予定があるのだ。スライガーだけ不憫だな。

 

『と言うか、俺の扱いもう少しどうにかなんないの?』

 

『作者に言うんだな。それは』

 

『だな。俺たちではどうしようも無い』

 

…………どうしようも無い。イヤ、バッシャーは兎も角ね。スライガーはキツいわ~。子供達の遊び相手になってくれるしか無いよ。それで良いなら構わないけど。

 

『まぁぶっちゃけ、俺達の会話も作者が暇だから作ってるだけだしな。ネタ切れに陥ってるから』

 

『リクエスト使えば良いだろうが……』

 

『あ、そう言えばこの前、座談会作ってる作者に会いに行こうとしたんだけど―』

 

『いや無理だろ!』

 

『話は最後まで聞け。それでネタがまとまらないんだって。なんかやりたいことあるし、就職もあるしで混乱してたよ。絵描きながら』

 

『そりゃあ混乱するだろ……絵なんか描けば尚更』

 

実はこの前、夢の中にスライガー出てきました。何故か夢の中でも小説の事考えたり、座談会用の絵を描いてました。目覚めがスゴく悪かった……(※実話です)

 

『リクエストにあったんだし、その内俺とスライガーのストーリー書くだろ』

 

その内書きます。はい。

 

『そう言えば、最近一夏と本音どう?』

 

『普通に交際してるぞ。高校生にありがちな、異常なまでにベッタリしているなんて事は無いから助かるぞ』

 

『あぁ~うん。バジン、お前が羨ましいよ……俺の方は休日が辛い。主に周りの視線が』

 

『まぁ、片方プリュンヒルデで、もう片方はかなりのイケメンだからね。そりゃあ注目も浴びるよ』

 

バッシャーの苦悩に、スライガーがフォローを入れてくれた。何となくだが辛さを理解したのだろう。素直にフォローと受け取って良いのか疑問ではある。

 

『あれ?バジンも一夏にメンテされてるのな?何でお前は故障が酷いんだ?』

 

『さぁな。突発性のポンコツ病か、誰かに中を適当に弄られたかもな。……そう言えば先月、一夏が俺の整備から抜けたときに触られたな。IS学園の生徒に……リボンの色的に、多分2年生の整備課の生徒だな……』

 

『完全にそれ原因だろ』

 

『よく今まで無事だったね……』

 

『むしろ今来た感があるけどな』

 

そんな感じで近況を話し合っていたが、ついにメンテナンスの時間が来た。フルメンテの場合は、最初はオーバーホールをして、古くなった部品の取り換えを行い、プログラム関係の修復に入る。そして最後に人の手で微調整が行われるのだ。

 

『スライガー行ってら~』

 

『俺からで良いの?』

 

『うん。お前早く終わりそうだし。それに比べて俺らは今日中に終われば奇跡だよ』

 

確かに、スライガーは1番早く終わりそうだ。まぁ、スライガーはメンテナンスと言うよりも検診みたいな物だ。大した時間は取らない。恐らくだが、1番時間がかかるのはバジンだ。言語機能に障害が出てる時点で長時間のメンテナンスは決まったような物だからな。

 

予想通り、スライガーはすぐに終った。バッシャーも時間はかかったが、単にパーツが劣化していただけなので比較的すぐに終了した。自分で帰ることは出来るので、サイドカーの部分に予備のパーツを積めてもらっている。

 

そして問題のバジンだ。まずはオーバーホール。この時点でメンテナンスさんは驚かない。普通に一部のパーツが劣化しているだけだからだ。本来傷付かない場所が傷付いていたので疑問の声を挙げたが。取り敢えず、そこは劣化したパーツと傷付いたパーツを換えて再び組み立て直した。この作業は、職員の方は日常的にやっているので、大した時間はかからない。

 

しかし、メンテナンスさんが驚いたのは様々な機能を操作するプログラムの方だ。何故か偉いことになっていたのだ。一夏はこの作業には慣れているためこんなことは起こらない。やはり、バジンがさっき言っていた学生の可能性がある。

 

担当していた人は、今夜は帰れない的な顔をして作業をしている。お疲れ様で~す。

 

この作業は、次の日の早朝に何とか完了した。作業していた人は倒れていた状態で発見されたとかされなかったとか。まぁ過労で大変な事になっていたとだけ伝えよう。たった一晩の作業の筈なのに、一体どれ程過酷な作業だったのだろうか?

 

「どうですか?」

 

『随分と懐かしい光景だな』

 

バジンが目を覚ますと、初めて起動した時と同じ様に、村上の顔が目に写った。バジンが最初に見た人は村上なので、起動した時の事を思い出して懐かしくなったのだろう。だから「懐かしい光景」とプラカードで伝えたのだろう。

 

「覚えていてくれたんですね。確かに、初めて貴方を起動した時もこんな感じでしたね。懐かしいです」

 

『あれから少し老けたか?』

 

「まぁ……10年以上経ってますからね。初めて会ったときから数えるとですけど」

 

一夏には連絡を入れているそうなので、バトルモードで歩いて帰っていった。この状態でも、普通に電車やバスを乗り継いで学園の受付を通れた。非日常も慣れれば日常になると言うことだろう。




そう言えば、先週からビルド始まりましたね。個人的には結構好きな感じになりそうですね。CG量が多い気がするけど……

次回もお楽しみに!感想、評価、活動報告、質問もよろしくお願いします!!

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