ISと無気力な救世主   作:憲彦

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さ~て、今日は木場の結婚式。しかし、真耶が悩みを抱えている様に、木場もまた大きな悩みを抱えている。その悩みを解決してくれる人とは?


木場の結婚

一夏の店で二次会の予定を話し合って、早めに抜けてきた木場。車を運転しながら自分の家へと向かうが、何かを考えている表情をしている。

 

「はぁ……」

 

その表情は酷く沈んでいる。どう表現して良いか分からないくらいにだ。真耶が自分の結婚に対して両親に負い目を感じていた様に、木場もまた負い目を感じているのだ。今は亡き友人達に。

 

そんなことを考えながら運転をしていると、村上を見付けた。

 

「こんばんは。打ち合わせの帰りですか?」

 

「はい。村上さんは?」

 

「先程までスピーチの内容を考えてましてね。草加さんからはなるべく短くしろと言われました」

 

村上にとって、自分の部下について語れと言われたら何時間でも語れる。特に、草加や木場、一夏等の深く関わった人達には1日あっても足りないだろう。なので短くと釘をさしたのだ。

 

「木場さんはこれから自宅に?」

 

「いえ。その前に寄りたい場所があるので」

 

「寄りたい場所?」

 

「はい。皆にはまだ結婚すること伝えてないので……」

 

「そうですか。帰りは気を付けてくださいね」

 

「はい。では」

 

そう言うと、木場は皆が待つ場所へと向かった。町の外側にあるのだが、やはりこの時間は人がいない。それもそうだ。ここは墓なのだから。

 

「久しぶり。みんな……大した物は持ってこれなかったけど、これ飲みながらでも話を聞いて……」

 

この墓には、遺骨が入っているかは定かではない。なんせ、白騎士事件の被害者達の墓だからだ。まぁ、そんな記述は何処にも無いがな。そして木場が今酒を注いでいるのは、木場と草加の共通の友人達の墓だ。

 

「連絡が遅れちゃったけど、俺、明日結婚することになったんだ。みんなには1番最初に言うべきだったんだろうけど……中々言い出せなくて……ゴメン」

 

気持ちは分からないでもない。特に海堂直也と長田結花の2人には言うのに躊躇してしまう。

 

「今日はそれを伝えに来ただけだから、もう帰るよ。今度は草加くんと一緒に来るね……」

 

その後は家に着くと、明日のこともあるためすぐにシャワーを浴びて寝ることにした。

 

「海堂……結花……ごめん……」

 

この一言を呟くと、木場は深い眠りへと入っていた。結婚が近付くに連れて、眠れない夜が続くようになった。今夜もそうだ。でも久々に昔使ってた睡眠薬を飲んだので、すぐに眠れた。

 

「……あれ?俺寝た筈だよな」

 

確かに睡眠薬を飲んで寝た筈だ。だが、自分は立っている。何もない白い空間に。

 

「よう。久し振りだな。木場」

 

「なっ!?嘘だろ……」

 

声をかけられ、その方向を見ると衝撃を受けた。何故なら、目の前にいるのは白騎士事件で、目の前で失った自分の親友だからだ。

 

「海堂……何で?夢?」

 

「あぁ夢だ。ちゅうかお前、何だ?墓に来たときの報告や、寝る直前の一言はよ」

 

「え?」

 

「え?じゃねーよ!バカかお前。結婚なんて大事なこと直前になって伝えるわ、落ち込んでるわ、寝る前に俺達に謝るわ。なに考えてんだお前は?」

 

「……俺は、2人を死なせてしまった。他の誰でもない、俺のせいでだ……海堂も結花も、もっと幸せになるべきだったんだ……俺なんかより、もっと……」

 

「うんうんうんうん。……ふざけんな!!!」

 

「ガァッ!?」

 

目の前にいる木場の発した言葉が頭にキタのか、全力で木場を殴り飛ばした。

 

「いきなり何を―」

 

「こっちの台詞だバカ野郎!!何だ!?自分なんかよりもって!何で俺と結花がお前を助けたのか分かってんのか!?お前に生きてて欲しいから!お前を助けたいから助けたんだろうが!!自分のせいで死んだとか訳の分かんねー後悔しやがって!俺達をバカにしてんのか!?」

 

「海堂……」

 

「俺も結花もなぁ、お前のせいで死んだとは思ってねーし、お前を助けたことにも後悔してないんだよ……だから結婚するって報告したときは嬉しかったんだよ……なのに下らねー事で悩みやがって……」

 

「……良いのか?本当に……」

 

「当たり前だ。そろそろ時間か……じゃーな。幸せになれよ、木場。……あ、結婚式は見に行くからな」

 

それを伝えると、海堂は木場に背を向けて歩き出した。

 

「待って、待ってくれ!海堂!!」

 

まだ話したいことがあるのか、手を伸ばして必死に掴もうと追いかける。だが、一向に距離は縮まらず、開くばかりだった。次第に木場の意識は薄れていき、見てる光景にもモヤがかかってきた。

 

ジリジリジリジリ!!!

 

「本当に……夢だったのか……」

 

うるさく鳴り響く目覚まし時計によって目を覚まし、先程までのやり取りが夢であることを自覚した。だが、目にはうっすらと涙が付いており、海堂に殴られた頬も少し痛みが残っている。

 

「ありがとう。みんな」

 

昨日の夜とは変わって、曇り1つ無い表情で式場へと向かっていった。夢の中とは言え、海堂に殴られたことで悩みごとが吹っ飛んだ様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく来ましたか」

 

「遅いぞ。木場」

 

「イヤ予定時間の筈だけど!?」

 

木場はちゃんと時間通りに現地に到着したが、他の人がそれよりも早く到着していた。もう会場の準備は完璧に終わっている。後は新郎新婦が着替えて始めるだけだ。

 

「あとは真耶さんとマドカさんだけですね」

 

「あれ?マドカって今日本に居ないんじゃ……」

 

「昨日の夜に空自に連絡したので、そろそろ来ると思いますよ」

 

そんなことを話していると、上空から聞き覚えのあるジェットの音が聞こえてきた。そして、ゆっくりと降りてきた。サイガが。

 

「お久しぶりです。村上社長」

 

変身を解くと、中の人はマドカだった。一夏がスマートブレインにマドカを送ったあと、色々とあってそのまま就職したのだ。そして、正式にサイガの装着者になったのだ。世の中何が起こるか分からないな。

 

「マドカ、お前も仮面ライダーになったのか?」

 

「えぇ。姉さんが指導してくたお陰で」

 

「そうか。それは良かった」

 

「はい。兄さんもお久し振りです」

 

「あ、あぁ……(こんなキャラだっけ?)」

 

あれから色々あってキャラ変更したのだ。決して崩壊では無いぞ。例えるなら、今ジードに出ているゼロと昔のゼロみたいな物。角が取れて丸くなったのだ。

 

何故村上が空自に連絡をしたのか。それは、戦闘機をスクランブルさせないためだ。いくらISのお陰で空を飛ぶ人が増えたからと言って、突然レーダーに人型の影が映れば慌てる。日本の領空に入った瞬間に空自が戦闘機を飛ばすことになるかもしれないからだ。もしそうなったらスマートブレインはかなり怒られる。

 

その直後に、車で来た真耶達が到着して開始時間まで各々準備して待つことにした。バジンは今日もスーツを着用している。後ろの邪魔な部分は、着るときに村上に頼んで外して貰った。お陰で前回よりも着やすくなっている。

 

式が始まると、いつも通りの牧師の話が始って、一通りの事が終わると村上の2人への祝福の言葉。その後に友人代表として草加がスピーチをし、最後に真耶の父親が話をした。

 

ここまでは普通の結婚式だ。だがこれが終わると、どう言う訳か司会の人と牧師、スマートブレイン関係者以外は後ろに下りだした。前に出てきたスマートブレインの人間は、全員腰に量産型のベルトを巻いている。

 

「え?何?」

 

この完全に意味不明な状況に、木場も真耶も戸惑ってる。確かにこの状況は訳が分からない。

 

『『『『Complete』』』』

 

変身すると、アクセレイガンをホルダーから抜いて胸の前で構えた。カリ○ストロの伯爵ですかい?しかもそれが外まで続いている。

 

「では、私が先頭に立って2人の先を歩こう」

 

『315』

 

『ENTER』

 

『Standingby』

 

『Complete』

 

「では私達はお2人の後ろを歩きましょう」

 

『555』

 

『913』

 

『『ENTER』』

 

「変身」

 

『『『Standingby』』』

 

『『『Complete』』』

 

「……これ俺も変身した方が良いですか?」

 

「私が気まずくなるからそのままで居てください!!」

 

空気を読んで、木場もオーガに変身しようとしたが、真耶が涙目になって全力で止められた。確かに、少し真耶が可哀想だ。

 

マドカが歩き出すと、木場と真耶もそれに続いて進んでいき、その後ろを更に一夏達3人が付いていく。そしてしばらくするとライオトルーパー達も外に出てきた。

 

外では、ロケットランチャーの様なものをもったバジンと、バトルモードで砲門を上に向けたバッシャー、そして上空にはスライガーが飛んでいる。

 

「え?まさか……またみんな花火撃つの!?大丈夫?」

 

「ん?木場さん、バジン達だけではありませんよ」

 

「え?」

 

「ここにいる全員です。構え!」

 

デルタの村上が全員に指示を出すと、一夏はファイズブラスター、草加はカイザブレイガン、村上はデルタムーバー、マドカはフライングアタッカーのブースターライフルモードを、ライオトルーパー達はアクセレイガンを空へと構えた。

 

「全員って……そう言うこと!?」

 

「大丈夫なんですかそれ!?」

 

「大丈夫です。あらかじめ近隣の住民の方には言っておりますので。では、撃ち方始め!」

 

絶対に大丈夫では無い。許可を取っていても少なからず苦情は来るだろう。だって音がスゴいもん。花火大会で上げられる花火を、全て1回で同タイミングで打ち上げるような物だ。

 

「綺麗だけど……」

 

「迫力がスゴい……」

 

結婚式は華やかにとか言う人がいるが、村上の華やかの基準が分からない。まぁ一つ言えるのは、これがやり過ぎだと言うとだ。華やかさが迫力で掻き消されてる。

 

『何か……俺様の知ってる結婚式じゃないな……』

 

『まぁ、個性的で良いんじゃないですか?木場さんも楽しそうですし』

 

『確かにそうだけどよ~……まぁ良いか』

 

どこかで見覚えのある2人が木場の結婚式を離れた場所から見ていた。木場の様子を確認すると、その場所から離れて消えて行った。

 

「ん?」

 

「どうかしました?」

 

「……イヤ。何でもない(本当に来たんだな。海堂、結花)」




あぁ~中途半端~!!次回はようやく座談会を投稿します。書き終わった後の作者の感覚と、普通に今まで通りに皆さんが楽しんでくれたら今後も企画しようと思います。

次回もお楽しみに!感想、評価、活動報告、質問もよろしくお願いします!!

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