ISと無気力な救世主   作:憲彦

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本日1本目!


アポロガイスト

アポロガイストが引き上げた後、スマートブレイン内の混乱は収まりつつある。しかし、一夏と本音の2人は社内の医務室へと運び込まれていた。

 

「母さん!親父!」

 

「落ち着け一音。2人とも生きてる」

 

「と言っても、ライフエナジーを吸われてて危ない状況だけどな」

 

士の言う通り、2人の顔色は酷いものだ。かなり青くなっている。更に一夏は背中を撃たれた。幸い骨や筋肉、内臓に異常は無かったが、それでもしばらくは生活に支障をきたす傷であることに違いはない。

 

「いって……」

 

「一夏!?」

 

「親父!大丈夫か?!」

 

「俺は大丈夫だ。ライフエナジーも本音程は吸われてないからな。ただ……」

 

そう言って本音に目を向けた。ライフエナジーは一夏以上に吸われている。体がステンドグラス化して砕ける寸前まで吸われたのだ。一夏がなんとか牙を撃ち抜いたのだが、ジワジワ吸われた一夏に対して本音は普通に吸われていた。その差は大きいのだろう。

 

「一音。少し本音を見ててくれ。行くぞ」

 

「分かった……」

 

一音に本音を任せて、一夏は草加と木場、そして士達と一緒に病室から出ていった。

 

「クソッ!なんでこんな事に!俺は……こんなの!」

 

病室には一音の悲痛な声が響いたが、それを聞いていた人間は誰1人としていない。辛い思いが悪戯に増しただけだった。

 

「良いのか?一緒にいなくて」

 

「俺に何ができるって言うんだよ。目の前にいたのに、あの牙を撃ち抜くしかできなかったんだ。俺より一音の方が安心して任せてられる」

 

一夏は一夏で、無力な自分を呪っていた。ベルトを使い変身したにも関わらず、囚われた本音を見て激情に駆られ冷静さを欠いた状態での戦闘。ファンガイアが現れた事で更に冷静さを失い相手に背を向けると言う失態。今冷静になれば一夏に落ち度は沢山あった。

 

「いま本音があんな状態なのは、俺の責任だ。あんな無様な戦い方をして、助けられる筈が無い……分かってたのにこの有り様だ……!」

 

「アポロガイスト相手なら仕方ないがな」

 

「アポロガイスト……何者なんだ?ショッカーに忠誠を誓う者とか言っていたが」

 

「アポロガイスト。アイツはXライダーの世界の怪人組織、GOD機関の幹部だ。唯一総司令と連絡を取れてた怪人。なんだけど……」

 

「どうした?」

 

急に歯切れが悪くなってきた。

 

「GOD機関はショッカーに吸収された。だけど……元々アポロガイストはGOD機関総司令に忠誠を誓っていた存在。そして自分自身の美学を持っていた。僕達が出会ったショッカーの為に手段を選ばない様な男では無かった筈だ……」

 

GOD機関に所属していた頃のアポロガイストは、自らの美学に添って動いていた。総司令への忠誠心は厚く、更に自分の死を悟った時は2度もXライダーを道連れにしようとする程だった。

 

一度死んだ後はGOD機関に肉体を回収され復活。再生アポロガイストとなった。そしてXライダーとの死闘を繰り広げたが、体が限界を迎えた為にもう一度Xライダーを道連れに自爆しようとした。

 

更にXライダーが瀕死の重症で捕らえられた時には、処刑をせずにXライダーの回復を待ってお互い万全の状態で決着をつけようとした。アポロガイストはXライダーを好敵手と認め、Xライダーもまた「偉大なるGODの好敵手」と認める程の男だったのだ。

 

「それほどのヤツが、なんでショッカーなんかに?」

 

「さぁな。ショッカーに拾われて改造されたのかもな。1年しか生きてられない弱点は残ってるが」

 

「1年……じゃあ何でアイツは生きてるんだ?」

 

「アイツの額に銀色の装飾があったろ?あれは命の炎を奪い取るパーフェクターなんだよ。人の命を無差別に奪って生き延びてる」

 

「命の炎を奪い取る……成る程。ちょっと出掛けてくる」

 

「何しに行くつもりだ?」

 

「アポロガイスト探し」

 

「そんなカブトムシみたいに……簡単に捕まるわけ無いだろ?あてはあるの?」

 

「ない」

 

「はぁ……仕方ない。これ使うか」

 

完全なノープランで動こうとしていた一夏に呆れて、海東が懐から薄いタブレットPCの様なノートを取り出した。

 

「なんだそれ?」

 

「書いたことが現実になるノートさ。これを使えば、未来を操ることができる。完全に全てを現実にすることはできないけど、大雑把な事ならできる。と言うわけで『織斑一夏、アポロガイストと再戦する』うん。これでよし。さぁ、町を歩くといい。これでアポロガイストと会って戦うことができる」

 

「助かる。じゃ、行ってくるわ」

 

軽く礼を言うと、一夏は部屋から出て外へと向かっていった。途中村上のところに寄って改造されたベルトを受け取り、戦う準備も万全にしてだ。

 

「俺たちは行けないの?」

 

「一夏だけに戦わせるのは気が退けるんだが……」

 

一夏が出ていった部屋では、草加と木場が海東に不満をこぼしていた。一夏の状態を見て、海東がノートに文字を書き込んでるときは何も言わなかったが、実際の所は2人も戦いに参加したかったのだ。

 

「一夏がそれを望むなら、お前らも行けば良いだろ。何故アイツが何も言わないのか、考えてみたらどうだ?」

 

ここで草加と木場がアポロガイストとの決闘に参加すれば、一夏の気持ちを踏み躙る事になりかねない。言葉はキツいが、士はそれを伝えたかったのだろう。

 

「結局、できることはなしか……」

 

「ま、各々役目ってもんがある。その時がくるまで待ってるんだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか本当に会えるとは。驚いたな」

 

「ほう。まさかここでお前に会えるとはな。散歩もたまにはしてみるものだな」

 

「そうか。こっちも幸運だ。またお前と戦えるんだからな。今度こそ叩き潰す!」

 

『555 ENTER』

 

『Standingby』

 

「変身!」

 

『complete』

 

「アポロチェンジ!」

 

「ハアアアアア!」

 

お互いに変身すると、一夏は走り出して勢いを着けたままアポロガイストに拳を叩き付けた。

 

「グッ!先程より威力が上がっているだと…!?」

 

「お前を叩き潰す為だ!」

 

「チィ!舐めるな!」

 

「ウワァ!?」

 

フォトンブラッドの濃度を上げ、ベルトその物の出力を上げている。その事に驚いたアポロガイストに攻撃を入れ続け圧倒していた。が、向こうは組織幹部。すぐに対応されてしまう。盾であるアポロカッターで攻撃を防ぎ、銃と剣が合体した強力な対戦車兵器、アポロマグナムで攻撃を入れてきた。

 

「厄介な盾と銃だな…!ハァ!」

 

だが今の一夏に形振り構ってご丁寧に相手をしている時間はない。手にファイズショットをはめ込んでアポロガイストに突っ込んで行く。

 

「ふん。バカめ。そんなの私にとっては的だ」

 

「グワッ!ウオォオ!!」

 

「なに!?」

 

『ENTER』

 

『Exceed Charge』

 

「オラァ!」

 

「グオワァ!!」

 

盾で防ぐも、威力はかなり大きくなっている。完全に防ぐことはできずに大きく後ろに殴り飛ばされてしまった。

 

「チッ。盾割る勢いで殴ったのにな。どんだけ硬いんだよ」

 

「グゥ…!まさかここまでとは……何故短時間でここまで!」

 

「ベルトを調整したからだよ」

 

「バカな!?その程度でここまで差ができる筈が無い!貴様の体もただでは済まない筈だ!なのに何故!?」

 

「昔のお前のこと聞いたよ。昔のお前なら、例えベルトを調整しても勝てるかどうか分からなかった。だが、どうやら蘇っても、本当のお前は蘇ってなかったみたいだな」

 

「ふん。それがどうした?何度も蘇れば自分と言う物は失われ、新たな自分が現れる。お前もそうだろ?何度も生と死を繰り返し、幾度となく蘇っているのだから」

 

「悪いが、それは外れだ!」

 

「ウワッ!」

 

アポロガイストに自分と同じだと言われたが、それは大外れだった。

 

「悪いな。俺は確かに何度も死んだ。そして何度も蘇った。時間が巻き戻り、記憶もそのままに何度もな。大切なヤツが死ぬ所を何回も見た。蘇って出てくるのが俺じゃなくて、他の俺だったらどんなに楽だったかと何度も思ったよ。だがな、出てきたのは俺だった。何度死んでもしつこく俺が出てきた。お前が負けたのはな、蘇ったお前が、本当のお前より弱かったからだ」

 

倒れているアポロガイストにジワジワと歩み寄り、額についているパーフェクターを奪い取ろうとする。だが、アポロガイストは起き上がり、再び一夏と対峙した。

 

「ふざけるな……ふざけるな!!その程度、その程度でこの私が負けると言うのか!?そんなことは認めん!認めるわけにはいかないのだ!!」

 

「ッ!?」

 

「蘇った私が弱いだと?ふざけるな!!弱いかどうか、貴様の身をもって味わわせてやる!」

 

激しさの増した攻撃が一夏を襲った。攻撃の正確性はかなり落ちているが、強力なアポロマグナムを連射し一夏の動きを制限。動きが止まった所にアポロカッターを投げ付ける。特にアポロカッターの攻撃は強力で、ファイズのアーマーに大きな傷を付ける程だった。

 

「チッ!時間が無いときに限ってこうなる!俺の運の悪さはどうにかならないのかよ!」

 

「バカな男だ。黙ってショッカーに支配されていれば良いものを。逆らい、苦しみ、死に、それを繰り返す。全く以て無駄な足掻きだ」

 

「時々理屈に合わない動きをする。それが人間なんでな。俺は世界を守る。自分の命1つで救えるなら、理屈なんかいくらでも捨ててやるよ!!」

 

「愛する人間を捨ててでもか?ご立派なヒーロー様だな。世界と愛する人間を天秤にかけ、世界を取る。見上げた物だ」

 

「悪いな。俺は欲張りなんだ」

 

『complete』

 

「よしなれた!」

 

『startup』

 

「ッ!?」

 

高速で動く一夏は、邪魔なアポロマグナムとアポロカッターを殴り飛ばし、完全に無防備にした上でポインターでガチガチに拘束した。

 

「ハァァァァア!!!」

 

「グオオオ!!グッ!今回は負けた。だが!いずれ必ず蘇り、貴様を地獄に叩き落としてやる!!宇宙1迷惑な存在となり、何度でも貴様ら仮面ライダーを苦しめてやる!!ウワアアアアアアア!!!」

 

アクセルクリムゾンスマッシュでアポロガイストを降すことができた。

 

「コイツは貰っていくぞ」

 

灰になる直前にパーフェクターを奪っておいた。アポロガイストが完全に灰になるのを見届けると、パーフェクター片手にスマートブレインへと戻っていった。

 

病室に入るとパーフェクターを使い、自分の命を本音へと分け与えた。当然草加達からは止められ、なんなら自分の命を使えと言い出したが、それら一切を黙らせ自分のを渡した。




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