ISと無気力な救世主   作:憲彦

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さてさて2本目。量が多いのでテンポよく行きますよ。


敗北

ショッカーの侵攻を防いだライダー達。今回は万全と言える準備を施した。町への被害も最小限で済んだ。

 

「簪!」

 

「一夏にみんな。そっちも大丈夫だった?」

 

「あぁ。店は壊されたが、怪我人はいない。本音も無事だ」

 

「やぁかんちゃん」

 

「良かった」

 

トルーパー隊の被害は軽微。全員無事なようだ。そして簪は本音の顔を見ると安心したような表情を浮かべた。

 

「そうだ。これ」

 

何かを思い出したかのように、簪は懐から小さい端末を取り出し一夏に渡す。そこには町のマップと小さい点が映っていた。

 

「ヤツらが引き上げた時、敵の1人に発信機を取り付けたの。結構小型のだから気付かれない筈だよ。そして今止まってる場所が本拠地だと思う」

 

「どこだこれ?町の中心からかなり離れてるな……」

 

いつも町のど真ん中に現れていた。その為、町の近いところに本拠地を構えているのかと思っていたが、町の住民ですら知らないような端っこで発信機から信号が送られていたのだ。

 

「今は使われてない工業団地だよ。何十年も前に全ての工場が閉鎖されて、今は無人の一角になってる。範囲もかなり広いから隠れるにはうってつけかも。おまけに工場の機械の一部はまだ使えるみたいだから、ヤツらが改造したのかもしれない」

 

「村上はなんて言ってたんだ?」

 

「まだ情報が少ないから、パトリック隊と黒兎隊の合同部隊が情報を集めに行ってるから、それを待ってだって。たぶん3日くらいじゃないかな?合同部隊が帰ってくるのは」

 

「ならそこから更に情報の整理や部隊の配置の時間を考えると……敵地強襲は早くて1週間後か」

 

「戦闘の感覚は抜けてないみたいですね。流石です、兄さん」

 

「マドカ。お前も復帰したのか」

 

「田舎でのんびり暮らしていたのですが、村上さんに呼び戻されて」

 

「成る程。一旦スマートブレインに行こう。休むためにもな」

 

一夏の提案通り、簪は全体に帰還の命令を出しスマートブレインに戻ることにした。到着後、一夏達と簪、マドカは村上の元へと向かっていく。

 

「どうだ?情報は入ったか?」

 

「早すぎます。と言いたいですが、既にかなりの情報が入ってきましたよ」

 

そう言うと、後ろのホワイトボードに写真を張り付けていった。どうやら潜入したパトリック達が見た目に変化のある怪人ごとに写真を撮って送っていたらしい。

 

「見た感じですけど、様々な種類の怪人が集まっている様で……」

 

「その古臭い格好とデザインの怪人がショッカー。今回の組織の大元だ」

 

「知ってるんですか?」

 

「いろんな世界を回ったからな。大体分かる。ショッカー、GOD機関、バダン、ゲルショッカー、クライシス帝国、ミラーモンスター、オルフェノク、アンデット、ワーム、ファンガイア、財団X、グリード、ゾディアーツ、ロイミュード、最後にアナザーライダーだな。毎度のことながら、どこからこんなにかき集めてきたんだか」

 

「待て。このオルフェノクっての知ってる」

 

「俺もだ」

 

「俺も」

 

士が貼り出された写真にそれぞれ名前を書いていくと、一夏と草加、木場がオルフェノクに反応した。

 

「この世界にはオルフェノクはいないはずだが?」

 

「夢の中でだ。俺はデカイのをもう1人のファイズと一緒に倒した」

 

「俺はそこのロブスターみたいなのを」

 

「俺は1番手前にいるドラゴンみたいなのと戦った。ちょうど流星塾の同窓会の夢を見てるときに」

 

「多分、その世界のターニングポイントとなった時間に精神だけ引っ張られて、それが夢と言う形で現れたんだろうね。君達が戦ったオルフェノク、一夏の言ってた大きいのはいないけど、その世界のファイズ、カイザ、そしてオーガに変身した木場勇治と因縁のあるオルフェノクだから」

 

納得できなくはない。確かにあれは夢の一言で片付けるには難しい。海東の推察が1番しっくりくる。

 

「おしゃべりはそこまでだ、続けるぞ。この中にいる古臭い連中は数と生命力としつこさと迷惑さを除けば能力は大したことはない。問題はこっからだ。アンデットは殺すことができない。つまり封印しか手立てがないってことだ。俺は例外だがな。ワームは擬態能力がある。相手の記憶や能力、容姿を完全にコピーする。見分ける方法は細かい癖しかない。つまり擬態されれば相手が正体を現すまで分からないってことだ。ここに潜入した連中は大丈夫なのか?」

 

そこは心配ない。村上の説明では、潜入したパトリック達のベルトは潜入に特化したもので、光学迷彩やサーモグラフィーを誤魔化す装置、更に片道切符だが緊急脱出用のテレポート機能があるらしい。更に潜入直前から変身させている。恐らく擬態されることは無いだろう。

 

「なら取り敢えず大丈夫か。次にファンガイア。コイツらは人間のライフエナジーを吸ってくる。対峙したら自分の首に気を付けるんだな。ステンドグラスみたいなのでできたデカイ牙があるかもしれない。見付けたらそこから避けろ。最悪死ぬからな。首筋には気を付けろよ」

 

どうやってだよ!と言いたくなったが、話を遮るわけにも行かず全員押し黙った。

 

「ロイミュードだが、コイツらは重加速現象、通称ドンヨリを起こす。身体の動きが遅くなると思え。そして最後にアナザーライダーだが、悪いがお前らが倒せるのはアナザーファイズのみだ」

 

「あ?なんで?」

 

「アナザーライダーを倒せるのは元となったライダーか、そのライダーの世界に存在する別のライダーだけだからだよ。ここは僕らが知っているファイズの世界とは大分違うけど、ファイズの世界であることに変わりはない。君達が僕や士みたいなイレギュラーなら兎も角、ファイズの世界のライダーって言う縛りがある以上、倒せるのはアナザーファイズだけなんだよ。まぁ、他の相手をできない訳じゃないから、倒せなくても取り押さえるくらいはできるよ」

 

ここで一通りの説明は終った。後はパトリック達を呼び戻し、体勢を整えた上で突入すれば良いだけだ。だが、ここで追加の写真が1枚送られてきた。

 

「ん?ライダー?」

 

「あぁ……厄介なことになったな。ソイツらはネガの世界のライダーだ」

 

「ネガの世界?」

 

「9つの世界を旅し終えた士が行き着いた世界さ」

 

響鬼の世界を巡った後に士達が訪れた世界。ここでの士の役割は大富豪であり、偶然入ったレストランの10000人目の客となり、先代オーナーの遺言で100億円と言う莫大な資産を手に入れた。この世界では来て早々に士は「生きる世界を手に入れた」と言われたり、士を敵視し続けてきた存在からは幸せな人生が待っていると声をかけられた。

 

この言葉の通り、たくさんの幸運が舞い込むのだが、実はこの世界は怪人達が暮らす世界だった。勿論、住民は全て怪人か改造人間。人間はほとんど残っていない。残っていたとしても、迫害や差別の対照となっている。写真に写っているライダーはその世界で怪人達を管理している存在だ。

 

「コイツらの相手はするな。特に、このコウモリはな」

 

送られてきた写真の1枚を取り出し、一夏達に見せた。写真にはコウモリを彷彿とさせる黒いライダーが写っている。

 

「コイツはネガの世界のダークライダーを統治する存在でな。平たく言えばその世界の王だ。強さも他とは桁が違う」

 

「なんでそんなヤツがここに……」

 

十中八九、士が狙いだろう。ネガの世界で、このライダーは士を留めようとしていた。恐らく旅を続けられる事が不都合だったからだ。故に士に幸運が舞い込むように色々と操作をし、旅を終わらせようとした。しかし士はその世界でケータッチを入手。コンプリートフォームになり数名のダークライダーを撃破し旅を続けた。それが気に入らない為、ショッカーに手を貸しているのだろう。

 

「もう情報は十分だ。とっとと呼び戻した方が良いぞ」

 

士の説明を聞いて、危険すぎる事が判明。村上はすぐにパトリック達に脱出するように命じた。戻されたパトリック達はまだ情報が十分じゃないと村上に言ってきたが、士の説明を要約して伝えると如何に危険な状況にあったのかを理解して、村上の判断に納得した。

 

「事態は一刻を争います。時間を置いて万全の体制を整えてからと思っていましたが、事を急ぐ必要がありそうですね。皆さんには申し訳ありませんが、今すぐ行って貰います。良いですね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「村上さんがこんなに焦るなんて……」

 

「本当にそれだけ強い相手なのか?」

 

「士が言うんだ。俺らじゃ勝てないかもな」

 

現在敵が本拠地として使っている元工業地帯にパトリック隊と一夏達、士と海東、簪が集まっていた。他は周辺の警備に行っている。黒兎隊はドイツ軍所属の為、流石に村上の独断で動かすことはできないので待機中だ。

 

「いいかお前ら。厄介な敵に遭遇したら逃げることだけを考えろ。多分この建物の中心にはこの事件の元凶がいる筈だ。そこを目指して一気に走れ」

 

「なんで中心にいるって分かるんだよ?」

 

「敵の配置だ」

 

士が言うには、何故か怪人達はある1つの部屋を避けるようにしているとのことだ。と言うよりも、見えていない。まるで怪人やダークライダーが存在を認識していないかの様にしていると言うのだ。

 

「誰か1人でもその部屋に入ればこっちのもんだ。敵は無視してでもその部屋を目指すんだ」

 

その作戦に異を唱える者はいなかった。全員変身して建物の中に入っていく。侵入に気付かれると怪人がわんさか出てきた。様々な部屋から出てきたのだ。しかし、何故か士の言っていた部屋からだけは誰も何も出てこなかった。

 

「とっとと行くぞ」

 

士の言葉と共に、怪人達とぶつかりに行く。士の言う通り、怪人達は大したことない。普通にガンガン倒すことができる。だがここで1番遭遇したくない連中。スマートブレインで士が説明した厄介な敵達が出てきた。

 

「やっべ……」

 

誰かが呟いた瞬間、大爆発をおこして全員まとめて外に弾き出されてしまった。

 

「マジでヤベェ……」

 

「久し振りだな~士。ネガの世界以来か?」

 

「紅音也……」

 

「黙って俺達の世界で暮らしてれば良かったものを。態々辛い思いをしないで済んだのにな」

 

「ショッカー程度に着いたヤツの言葉とは思えないな」

 

「こっちにも色々とあってな~。だがそれでまたお前に会えた。あの時俺の世界で好き勝手やってくれたんだ。そのお返しをさせてもらうぞ」

 

士はそのままダークキバとの戦闘に突入。一夏や草加、木場に一音もそれぞれの戦闘に入った。

 

「数が多すぎる!グッ!」

 

「分かりきってた事だろ!しつこさと数だけなら一気に消し飛ばすぞ!」

 

『Exceed Charge』

 

草加はカイザブレイガンで敵を複数一気に拘束。そのままカイザスラッシュで灰に変える。一夏と一音も同じく強烈な攻撃を叩き込んで始末。木場も続いてオーガストラッシュを発動し敵を切り裂こうとした。だが、

 

「ッ!?ウワッ!!」

 

「ッ!木場!」

 

「木場さん!!」

 

「今の攻撃って……」

 

「オーガストラッシュ……だと!?」

 

木場が吹っ飛ばされた方向の逆を見ると、もう1人のオーガが立っていた。

 

「オーガだと!?どう言う事だ?!」

 

 全員もう1人のオーガを見て驚いていた。海東が呼び出した様子はない。と言うことは敵側の存在と言うことになる。

 

「ガッカリだな。この世界のオーガがこの程度とは」

 

男の声だ。しかし木場の声ではない、聞こえてくるのは別の男の声。

 

「……フッ!」

 

「グッ!」

 

全員もう1人のオーガに目を向けていた。にも関わらず、いつの間にか自分達の背後で倒れていた木場の首を掴んで持ち上げられていた。

 

「木場アアアアア!!!ウオォォオ!」

 

『Exceed Charge』

 

草加と一夏、そしてマドカが走り出し3人同時にグランインパクトを叩き込んだ。だがビクともしない。それどころか確り胴体に当たったにも関わらず、弾かれた様な感覚さえ覚えた。

 

「チェック!」

 

『Exceed Charge』

 

「ハアアアアア!!!」

 

一音のルシファーズハンマーで漸く木場を離した。しかしダメージを与えた感じはしない。4人の強力な技を受けたにも関わらず、膝すら着かないその様子には、恐怖すら感じてしまう。

 

「このままじゃ不味いな……士!逃げる準備だ!」

 

『FINALATTACK RIDE DIDIDI DIEND』

 

状況が最悪と判断し、撤退の準備をするためにディメンションシュートで敵の数を削る。それを見て士も逃げる準備に入るのだが、敵はそれを良しとしなかった。

 

「そうはさせるか!」

 

『ウェイクアップ・2』

 

「ッ!?グッ……!」

 

ダークキバがディエンドに手を伸ばすと、地面からコウモリの紋章が現れ、ディエンドへと伸びていく。それが重なると、突然金縛りにあったように動きが封じられてしまった。

 

「ハァァァ……ハアアアアア!!!」

 

「ウッ!不味っウワァァァア!!」

 

そのまま海東は爆発。大きく吹き飛ばされ変身が解除されてしまった。

 

「海東!!」

 

「つ、士……うっ」

 

一瞬立ち上がるも、すぐに膝から崩れ落ち倒れてしまった。恐らくもう立ち上がることは無いだろう。

 

「グッ!……あぁ……」

 

次に木場と草加にもう1人のオーガがオーガストランザーを突き刺し、命を奪っていた。

 

『FINAL VENT』

 

「フッ!?ウワアアアア!!」

 

「一音!!」

 

一音は突如現れた黒い龍騎の攻撃を受け倒れ、マドカと簪、パトリックも敵の集中砲火の前になす術なく散っていった。

 

「クソがあああああ!!!ウォォォォォオ!!」

 

『555 ENTER』

 

『Awakening』

 

『5532 ENTER』

 

『Exceed Charge』

 

「ハァァァア!!!」

 

全身全霊の攻撃をオーガに叩き込んだ。巨大な衝撃は多くの怪人を消滅させ、その場に巨大なクレーターが生まれた。見ていた士は流石にもう1人のオーガを仕留めたと思った。だが、現実は非情な物だった。

 

「……グッ」

 

左腕で一夏の脚を受け止め、右腕に持っていたオーガストランザーで腹部を貫いていた。

 

「所詮、お前達のベルトはただの玩具だ。本物じゃない。お前達は、偽物の仮面ライダーなんだよ。本物の強さを見せてやる」

 

『ENTER』

 

『Exceed Charge』

 

「フンッ!」

 

オーガストラッシュを発動、そのまま凪ぎ払った。それはショッカーが根城にしていた工場跡や怪人を全て切り裂き、一夏と士を倒した。




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