ISと無気力な救世主   作:憲彦

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破壊者と救世主

異世界の仮面ライダー2人の介入により、危機を脱した一夏とバジン。今は海東のカードで誰もいない高台に座り込んでいる。

 

「何でまたこの世界に来たんだよ」

 

「知るか。気づいたらこの世界にまた来て、お前らが倒されそうになってる所に遭遇したんだ」

 

バジンは一夏の手当てをして、士は自分のカメラのシャッターを切りながらこの世界に来た経緯を説明。紛れもない偶然が重なって一夏は命拾いしたようだ。

 

「ところで、アイツらは何なんだ?」

 

「秘密結社ショッカー。世界各国から能力の高い人間を誘拐しては改造手術を施し、洗脳して世界征服を企む連中さ。現れたのはこの世で初めて現れた仮面ライダー、仮面ライダー1号の世界。と言っても、もう既に何回か壊滅したんだけどね」

 

「壊滅した?」

 

「壊滅してもしつこく何度も甦るんだよ。揃いも揃って面白い顔だがいい加減飽きた」

 

「さっきも言ってたな。一体何回相手にして来たんだよ」

 

「3回越えた辺りからは数えてない」

 

「あぁそりゃあ飽きるわ」

 

「僕のディエンドライバーや士のディケイドライバーも本来はショッカーの物さ。僕のは盗んできてるけどね。士は元大首領だし」

 

「成る程テメーの差し金か」

 

「祭り上げられただけだ。もうアイツらとは関係ない」

 

そうは言っているが、2回程ショッカー及びその他秘密結社との連合を率いていた事がある。後者に関しては敵を油断させる作戦ではあったが……。

 

「それよりも、なんでさっきは生身で戦ってたんだ?ベルトはどうしたベルトは」

 

「お前達がこの世界を出ていってから暫くして、ISとの戦争が起こった。町を見ればそれは分かるだろ?で、その後ISもライダーズギアも封印された。らしい」

 

「らしい?」

 

「どうも記憶がハッキリしないんだ。その戦争の後、俺はフォトンブラッドの影響で灰になって死んだ。なのにここに俺がいる。周りの奴らの話じゃ、俺は普通に生活していたそうなんだ。でも俺にはその記憶が無い。フォトンブラッドの影響かもしれないとは言われたが、その部分だけがスッポリと抜け落ちるなんて変だろ?」

 

 

「原因は?」

 

「分かってたら苦労しねーよ。皆目検討も付かない。まるで自分だけが別の世界に出された気分だ」

 

「別の世界って訳じゃないけどな……」

 

一夏の現状に、士は言葉が出なかった。士自身、沢山の世界を旅して様々な物を見て感じてきた。完全に同じと言うわけではないが、一夏の気持ちを理解できるのだろう。

 

「何をするにもベルトが無ければ話にならねー。どうにかしねーとな」

 

「ベルトは僕が取ってこよう。どうせ話したところで通じるわけ無いし」

 

「あぁ。頼んだ。警備システムに殺されるなよ」

 

「用心しとくよ」

 

海東はそのままスマートブレイン方向へと向かっていく。今夜辺りには忍び込んでベルトを取ってくるだろう。村上自作の警備システムに引っ掛からなければの話だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「家に着いたか……」

 

「おかしい」

 

「なにがだ?」

 

「襲撃と言いここまでの道のりと言い、ショッカーにしてはやり方が手緩すぎる。本来なら戦闘員以外にも怪人がいる筈なんだが、何故か全く出てこない。いつも詰めが甘いが、今回は甘過ぎる」

 

「お前本当に容赦なく文句言うよな」

 

士に引きながらも、店の扉を開けて中に入っていく。昼間の敵の襲撃の影響か、客がいる様子はなかった。

 

「イッチー!」

 

「ウオッ!……本音」

 

「大丈夫だった?!変なのが町を襲ってるってニュースで出てたよ!怪我してない?!」

 

「あぁ。大丈夫だ。士と海東も来てるぞ。入れてやってくれ」

 

「は~い!」

 

士を招き入れて客室に案内していく。3人が使うことを想定されて設計した部屋のお陰で、海東が来ても余裕をもって過ごすことができる。

 

「飯できたぞ~」

 

帰宅してからわずか20分。もう夕食が完成した。海東はまだ帰ってこないため、4人で食事を始める。相変わらずの美味さの様で、そこそこ作っていた物はあっと言う間に完食されてしまった。

 

それから4時間程経った真夜中に、海東が店に入ってきた。手にはベルトが入っているであろうケースが握られており、やってやったと言う顔をして士と一夏に見せ付ける。

 

「さぁ、ご注文のベルトだよ」

 

「ん?おい、なんでデルタギアまで入ってるんだ?」

 

「あぁそれね。それは―」

 

「俺が頼んだ」

 

「一音?なんで」

 

「散歩してる途中で見付けてな。何をするか大体分かったから俺のベルトも頼んでおいたんだよ。アンタにまた命を投げ出す様な戦い方されたら面倒だからな」

 

「はぁ……言っても聞くわけないか」

 

なにかしらを言おうとしたのかもしれないが、一音の性格はよく知っている。余計なことを言って止めるのは止めることにした。大人しくベルトを渡して部屋に帰らせた。

 

「村上達にはバレなかったのか?」

 

「その辺は大丈夫だったよ。流石に警備には危ない目に会わされたけど……」

 

「どうりで服が所々焦げてる訳だ」

 

服以外にも髪の毛も少し焦げてる。村上自作の警備システムは相当手強い相手だったようだ。ショッカーからディケイドライバーを盗んだ人間が髪の毛や服をやられているのだ。かなりの難易度であった事は間違いない。

 

「夜食作ってくる。少し待ってろ」

 

「材料残ってるのか?」

 

「まぁうどん位なら作れるだろ。ナマコ残ってたから乗っけてやるよ」

 

「待て一夏。悪いことは言わない。ナマコは止めておけ。この店が穴だらけになるぞ」

 

なに言ってんだと言う顔をするが、士の目を見て冗談ではないことを察し、ナマコのトッピングは止めてえらく質素なうどんが完成。それを海東に渡して一夏は眠りに就いた。




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