ISと無気力な救世主   作:憲彦

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GAME OVER

やらかした。どんだけゲームオーバーになってんだよ……残りライフ、30。

貴重な私のライフがあああぁぁぁぁぁぁ!!!


IS学園救出

ドイツでの戦闘と平行して、日本では予備のデルタギアを持った村上が、まだ避難の完了を受けていない2ヶ所を回っていた。倉持技研とIS学園だ。だがハッキリと言って、倉持技研に関しては生存者の可能性が低いかもしれない。万が一に備えての設備が無いからだ。国からは付けるように再三の勧告は受けていたものの、どう言う訳か全て蹴っていた。故に、暴走した時に適切な対処を取ることが出来なかった事くらい容易に想像が出来る。

 

「さてと、倉持に着きましたね……」

 

位置的に近かった倉持技研に着いた村上。ベルトを腰に巻いて変身すると、瓦礫の隙間から中へと入っていく。やはりそれ用の設備が無いわけか、被害が酷い。地上に出ている部分はほぼ全壊状態。辛うじて原型が残っている感じだった。

 

「ん?灰?何故……」

 

ここに置いてあるISは研究用の打鉄と無人機が数機置いてあるだけだ。後は束が作った無人機のコア。灰が出てくるような攻撃は無いはずだ。そもそも周りに燃えた様な痕はない。と言うか灰の近くには従業員の服らしきものも一緒にある。

 

(フォトンブラッド?確かに少量渡したはずだが……漏れた?何故?ケースは簡単に破壊出来ない作りの筈なのに……)

 

考えてみたが、疑問が増えただけだった。確かにスマートブレインは、各IS企業に新エネルギーとしてフォトンブラッドを研究用に渡している。だがそれは少量。少量でも危険とは言え、漏れない限りはこんなことにはならない。そもそもISにはフォトンブラッド様の装備は無いはずだ。作られたら話は別だがな。

 

「……下に行ってみますか」

 

そう言って地下に行ってみるものの、結果は上と同じで生存者はゼロ。全員死亡していた。その事を避難所とスマートブレインに連絡を入れて、次はIS学園へと向かっていく。あそこには訓練用のベルトが残っている為、被害その物は倉持技研よりも軽いかもしれない。それを期待して足早に学園へと赴く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徒歩で移動しながら数時間。ようやくIS学園付近にやって来ることが出来た。やはりバイクやスライガーでは音が大きすぎて面倒事が起きかねない。その為、遥々歩いてきたのだが、

 

「やっぱり都合よく行きませんか……」

 

IS学園上空には複数のISが飛んでいた。何が目的かは皆目検討も付かないが、容易に侵入する事は出来ない。そんなわけで、正面からの侵入は諦めて物資搬入口からの侵入を試みる事に。

 

「草加さん。聞こえますか?」

 

『どうした?問題でもあったか?』

 

状況が状況故、草加に連絡を入れて物資搬入口から中までの案内を頼むようだ。手短にだが詳しく状況を伝えてオペレーターを頼む。

 

『その突き当たりを左折。コンテナがあるから、そこに隠れてカメラが視界をずらした3秒後に出ろ』

 

まさか時間設定までしてくるとは。恐らく監視の目を気にしての事だろう。何故監視カメラがこの状況で動いているのかは疑問だがな。

 

「抜けました。しかし、何故監視カメラが?」

 

『さぁな。まぁ極力写らないでくれ』

 

「と言うかハッキングしてどうにか出来なかったんですか?」

 

『この短時間じゃ無理だ。俺の専門じゃないからな。ほらさっさとしろ。次の角を右だ』

 

どうしようも無いようだ。まぁだからと言って引き返す訳でもないし、進むのを止めるわけでもない。しばらく草加の指示に従って進んでいく。

 

『そこから30メートル進むと坂が見えてくる。そこを上れば学園に入れるはずだ』

 

「……シャッターが閉まってるんですが」

 

『なに?破壊は?』

 

「やったらアウトです」

 

『あぁ~。なら仕方無い。1回逆方向に進んで突き当りまで直進。右に行けば多少遠回りになるが、学園に入ることが出来る』

 

そう言われて急ぎながら向かう。草加の言っていた突き当りを右折しようとする。だが、

 

「またシャッター……」

 

『また?なら左に回って別ルートで行け』

 

溜め息を吐いて反対方向を向いて歩いていく。ちょうど防災シャッターの真下を通った瞬間だ。突然シャッターが降りてきた。と言うよりは落とされた。それを間一髪の所で避ける。

 

『どうした?デカイ音がしたが』

 

「シャッターが突然降りてきましてね。少し急ごうと思います。案内を―ッ!?」

 

『おい。どうした?おい!』

 

案内を頼もうとした瞬間、村上の声が途切れて走り出す音がした後、通信が出来なくなった。他の場所のシャッターが降りて来はじめたのだ。通常よりも早い速度で。案内なんか受けてたら確実に閉じ込められる。仕方無いが案内を無視して、どうにかこの場所から離れようとしている。

 

「っ!一先ずあそこに!」

 

少し走っていると、倉庫らしき場所が見えてきた。一先ずそこに入って、草加に更なる指示を仰ごうとする。だが、入って落ち着くと気付いてしまった。

 

「誘導された……?」

 

『おい聞こえるか?』

 

「草加さん。今私の周りに何かいますか?」

 

『あぁ。ISが何機かいるよ。完全に誘われたな』

 

草加との会話が終わると、本当にISが出てきた。どうやら外に突き出ている倉庫の様で、壁を破壊して乗り込んできたのだ。しかも5機いる。全部打鉄だ。IS学園の校章が入っていることから、全てIS学園の物であるのは理解はできる。

 

「仕方無い……変身」

 

『Standingby Complete』

 

「フン。ハァ!」

 

刀で斬りかかってきた打鉄の腕を掴み、そのまま全身の筋力を使って投げ飛ばした。綺麗に外まで飛んでいき、開いた穴から村上も外に出ていく。それを追うようにして、他の打鉄達も外へと飛び出してくる。

 

「check」

 

『Exceed Charge』

 

だが、出てくるところを狙ってマーカーを放ち、3機を拘束。ルシファーズハンマーを叩き込んで灰に変えてしまう。本来ならコアを回収するところだが、全く調整されていないためか、コアごと灰になってしまった。

 

「コアまで……」

 

村上も予想できなかったようだ。コアはトンでもなく頑丈な作りだ。本来外部からの要因で壊れる筈がない。だが今回は灰になってしまったのだ。これを見て改めてベルトの恐ろしさを感じた。

 

(ベルトの力は危険ですね……やはりこれは……)

 

少し恐怖しているが、2体灰に変えてからは逃げるように学園の校舎へと向かって走っていく。当然追いかけてくる訳だが、デルタムーバーで邪魔をしながら距離を稼ぐ。極力コアは破壊したくないのだろう。射撃で的確に機体を破壊していく。

 

「ッ!?しまった!」

 

珍しく撃ちこぼしてしまった。1機は破壊したが、もう2機を破壊することが出来なかったのだ。しかもちょうど良くエネルギー切れ。チャージが必要になった。だがそんな時間はありそうにない。

 

「避けてください!」

 

「ッ!ハァッ!」

 

後ろから声が聞こえてくると、横に飛んでその場を離れる。その直後に、ライオトルーパーのアクセレイガンの攻撃が飛んできた。2発飛んできたが2発ともヒット。動きを止めたところにブレードモードに変えて切り裂いた。

 

「オゥリャアアアアア!!!」

 

突然現れたライオトルーパーの助けによって、残りの2機のISは動きが停止した。そして手早くコアを回収して回る。勿論村上がさっき落とした分もだ。

 

「IS学園の訓練用ライオトルーパー。あなたは一体?」

 

「その口調は……村上さん?」

 

デルタの正体が村上だと分かると、ライオトルーパーが変身を解除した。そして、中から現れたのは、ここで教鞭を取っている鈴だった。

 

「鈴さんでしたか。助かりました」

 

「いえ。こちらこそ。あの打鉄達が常に彷徨いてたので、中々生徒を避難させることが出来なくて」

 

「成る程。では、これから救助を呼ぼうと思います。生徒は何名ほど残っているんですか?」

 

「事件発生後、迅速に避難活動を行ったので、ほとんどの生徒と教師は無事です。ですが……犠牲は出てしまいました……」

 

完全に無傷と言う訳では無かったようだ。まぁそれは考えてもみれば当然の事。IS学園が保有しているISの量は1つの国家と同じか多いくらいだ。一斉に暴走して完全に無傷と言う方がおかしい。が、それでもほとんどの生徒と教員が無事なのだ。常日頃からそう言った事に関しての備えがあるからだろう。

 

「草加さん。簪さんの部隊、動かせますか?」

 

『動かせるが、どうかしたのか?』

 

「IS学園に生存者が居ました。暴走により犠牲は出たようですが、ほとんどの生徒と教員は無事なようです」

 

『分かった。護送車と一緒に向かわせる。他になんか分かったことはあるか?』

 

「今のところは何も。新しい情報は掴み次第お知らせします」

 

通信を切ると、村上は鈴に案内されながら避難用のシェルターに入っていき、状況を確認する。確かに被害は大きくはないようだ。全員疲れているような様子はあるがな。全体を見回していると、鈴から水の入ったペットボトルを渡された。それに礼を言いながら受けとると、蓋を開けて飲み始める。そして、ずっと疑問に思ってたことを鈴に尋ねた。

 

「あの、真耶さんは?」

 

「それが……」

 

何故か答えられずに口ごもった。その態度で大体の事は分かった。と言うか、ここに来る前から既に答えは知っていたと言う方が正しい。だって木場が裏切る理由なんて1つしか無いもん。もう読者の皆さんもお分かりだった訳だけど。

 

「草加さん。やっぱり真耶さん拐われてました。理由は不明ですけど。もしかしたら、柚木さんも拐われてるかも知れません。調べて貰えますか?」

 

『もうやってる』

 

あ、柚木とは木場の娘である。真耶の成分が強めで、既に色々と知ってしまっている。そう。色々と……

 

『おい。やっぱり避難所には来てなかった。近くの監視カメラの映像確認したが、ISが何人か拐ってる映像があった。多分その中にいると思う。と言うか居たわ』

 

話してる最中にも解析したようだ。その結果拐われてるのが判明。他の人間も拐ってる事から、狙ってと言うわけでは無さそうだ。

 

「鈴さん。他に拐われた人はいませんか?」

 

「えぇ。数名いますが」

 

「数名……その人達に共通点は?」

 

「特には。クラスも学年もバラバラですので。強いて言えば、ISの適性が平均よりも高いくらいです」

 

「成る程……(とは言ったものの、全く分からない。何故IS適性の高い人を……そもそも一体何が出来ると言うんですか?人間を連れていって……)」

 

情報は入ってくる。だが、一切それが繋がらない。何故人間を誘拐する必要があるのか、何故適性の高い人間なのか、そもそも連れていって何をするのか。情報不足からなのか全く理解できないからなのか、頭をフル回転させて考えるが、それは悪戯に疑問を増やしていくだけだった。

 

「はぁ~。ふだん何気無くやってる意思疎通が大切に思えてきますね~。せめて甲龍が居ればな~」

 

「甲龍も暴走を?」

 

「えぇ。宣戦布告の2日後に。ですが、暴走する直前に気になることが……」

 

「気になること?」

 

「暴走する直前、一瞬ですけど甲龍が暴走に抗うような動きをしたんです。もしかしたら、全部のISが自分の意思で暴走している訳では無いのかと……それに、私を強制排出しました」

 

「そんなことが。と言うことは、ISは操られている可能性があると……」

 

「はい。トンでもなく強力なプログラムか何かで」

 

話している鈴の表情が暗くなってくる。自分を助けた時の相棒の事を思い出したのだろう。鈴と甲龍の付き合いは長い。お互いに言葉は交わせなくとも、信頼関係はあった。それだけは言える。それ故に心苦しいと思っているのだろう。

 

「もし、甲龍がここに敵として来たら、貴女はどうしますか?」

 

「勿論、倒します。私はここの教師。生徒を守る義務があります。それに……」

 

そう言って、怪我をしている生徒の手当てを行ってる1人の男性教員に目を向ける。赤髪でバンダナを巻いた悪人面の教師だ。……本当にここで教師やってたよ。

 

「絶対に死なせたくない人がいるんです。その為なら、私は戦います。相手がかつての相棒でも」

 

もう既に覚悟は決まっていた様だ。彼女らしいと言えば彼女らしい。思い切りが良いからと言う訳では無いがな。だが、それは鈴なりのけじめなのだろう。鈴の話を一通り聞くと、もうここから得られる情報が無いと判断したのか、呼んだ簪の救助部隊が来るのを大人しく待つことにした。

 

「あと1時間もすれば救助が到着しますので、それまでは―」

 

ドガァァン!!

 

「「ッ!?」」

 

待とうと言おうとした瞬間、トンでもない爆音がこのシェルターまで響いてきた。何があったかは一瞬にして理解できた。ISが攻めてきたのだ。しかも滅茶苦茶馴染み深い攻撃だ。

 

「この攻撃ってまさか!?」

 

「そのまさかですね!」

 

「弾!生徒達をお願い!他の教員達ももしもの時はお願いします!!」

 

それを言うと、村上と一緒に走って外へと向かっていった。攻撃をしていたISは、本当に馴染みの深いIS達だった。

 

「ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ……」

 

「ブルー・ティアーズに甲龍まで……」

 

鈴の同期の専用機持ち達の機体だ。一筋縄では行きそうに無いな。これは。

 

「そう言えば、この1件が始まってから、セシリアとシャルの2人からの連絡ありませんでした」

 

思い出したように村上に言った。リヴァイブとブルー・ティアーズを見て頭から出てきたのだろう。

 

「ブルー・ティアーズと甲龍は私が相手をします。鈴さんはリヴァイブを!」

 

「分かりました!」

 

「「変身!」」

 

『『Complete』』

 

変身すると、村上はティアーズと甲龍に飛び込んでいき、鈴はリヴァイブへと飛び込んでいく。コアのみが機体を動かしているため、動きは鋭いとかそう言う次元では無かった。完全に鈴と村上を圧倒している。

 

「グッ!これ本当に同じ機体!?動きが全然違う!」

 

「コアの共有している情報から、自分が最適と思われる動きを取っている様です!気を付けてください!」

 

一体どの様に気を付けろと言うのだろう。目の前で戦っているのは3機。だが、実際には1万364機が相手なのだ。もはや経験云々や性能云々の話ではない。持っている実力全てを使って押しきるしかないのだ。

 

「グワァッ!!なんつー重さよ!本当にこれリヴァイブなの!?おっと!」

 

「鈴さん!ッ!?」

 

リヴァイブに押されている鈴を村上が助けに行こうとするものの、ブルー・ティアーズのビットによるレーザーで道を塞がれて、更にそれに合わせるように甲龍が双天牙月で重たい斬撃を入れようとする。だがそれを避けると、今度はブルー・ティアーズのライフルによる狙撃が出てくる。

 

(戦いづらい!最初に片方を倒さないと!)

 

そう思って片方を分離させて倒そうとするのだが、必ず片方が邪魔をしてくる。この2機がコンビを組んで相手にするのは、村上でも厳しいようだ。

 

「Fire!」

 

『BLASTMODE』

 

気休め程度にしかならないだろうが、ビットを破壊しようとデルタムーバーで撃ち抜く。だが当然破壊されまいとブルー・ティアーズが操作をしてフォトンブラッド光弾を避ける。

 

「ッ!?グワァッ!!」

 

村上は何としても破壊しようと狙いを付けるが、後ろから甲龍の衝撃砲を受けてしまった。そして立て続けにブルー・ティアーズがレーザー攻撃で集中攻撃。立っている事が難しくなり、膝を着いてしまった。

 

『『…………』』

 

しかしただ攻撃を受けただけじゃない。攻撃を受けた瞬間にデルタムーバーでフォトンブラッド光弾を発射。甲龍の双天牙月とブルー・ティアーズのビットを一瞬で破壊した。

 

「これで、少しは……ッ!?」

 

楽になると思った瞬間、もう既に目の前の2体の攻撃対象が変わってることに気付いた。

 

「鈴さん!!」

 

「ハッ!?」

 

「「ウワァァァア!!!」」

 

最大出力の衝撃砲とスターライトの攻撃を受けて、吹っ飛んでしまった。直前で鈴を庇うことは出来たが、その破壊力は想像していたもの以上。鈴共々吹っ飛ばされてしまいベルトも外れてしまった。

 

「ヨイショ!」

 

「ウオット……J!?なんでここに」

 

「ここの生徒ですか?」

 

吹っ飛ばされたが、突然現れた筋肉隆々の黒人が受け止めてくれた。それに続いて、柱の影から眼鏡をかけた男子生徒と、鈴より大人っぽい髪の長い女子生徒が出てきた。

 

「えぇ。全員1組の生徒です」

 

「そうですか。助けてくれた事は感謝しますが、危険ですので早く―」

 

「J、2人の手当てをしておいて下さい。私たちがISの相手をします」

 

「ついでに、安全な場所に運んどいて」

 

そう言いながらIS達に向かって歩いていく。随分と余裕そうに構えている。村上と鈴は止めようとするが、2人は止まりそうにない。しかも手にはベルトが握られていた。それは学園にあるライオトルーパーのベルトではなく、ファイズギアとカイザギアの2つだ。

 

「何故ここにファイズギアとカイザギアが……」

 

「あれ、技研部の製作物ですね。ライオトルーパーのベルトを改造して作ったファイズギアとカイザギアです」

 

「え!?あれ改造して作ったんですか!?」

 

「はい。まぁスペックで言ったら通常のライオトルーパーよりも若干高いだけです」

 

半分仰天、半分呆れたような顔をして、ベルトを使おうとしている2人を見ている。すると、また別の所から男子生徒が出てきた。髪の毛は寝癖の様にボサボサで、なんかやる気が無さそうな感じの人だ。

 

「なんか楽しそうな事になってるね~」

 

「北崎さん」

 

「あら?今までどこに行ってたの?」

 

「ちょっと屋上にね。それよりも、僕も交ぜてよ」

 

村上の持ってきたデルタギアを拾い上げながら、最初に歩いていった2人に近付いていく。ライオトルーパーの改造版デルタは無いようだ。

 

「待ってください!そのベルトを使ってはいけません!」

 

北崎に対して叫ぶが、全く耳にいれずに腰にへと巻き付ける。それを見て、ファイズギアとカイザギアを持った2人もベルトを巻く。

 

『555 ENTER』

 

『913 ENTER』

 

『『Standingby』』

 

「「「変身」」」

 

『Standingby』

 

『『『Complete』』』

 

「へぇ~……中々良いね~。これ」

 

デルタに変身すると、北崎は子供のようにはしゃぎながら自分の体を見回した。手を握ったり開いたり合わせてみたりと、変身した自分を見て楽しんでいた。

 

「北崎さん。楽しむのは後にしてください」

 

「早くISを倒すわよ」

 

「はいはい」

 

いつまでもはしゃいでいそうな北崎を止めて、IS達へと向かっていく。

 

「琢磨くんはリヴァイブを相手して」

 

「分かりました」

 

「じゃあ僕は先生のISの相手をするよ。この中じゃ1番強そうだしね」

 

「となると、冴子さんはブルー・ティアーズですね」

 

「えぇ。早く片付けるわよ」

 

各々戦う相手も決まり、自分の敵の元へと向かっていく。IS達は何かが違うこの3人を見ると、危険と判断したのか各個撃破ではなく3機で連携しようとする。だが、それを許すほど北崎達は甘くないし優しくない。

 

「よっと。困るな~。そんなつまらない事されると~」

 

中心にいた甲龍に北崎が飛び付くと、その場から一気に引き剥がす。それに続いて琢磨はリヴァイブを、冴子はティアーズを引っ張って距離を離した。

 

「今回ばかりは北崎さんの言う通りですね。あなたの相手は私1人です」

 

どこからか取り出したファイズエッジを構えて、リヴァイブと対峙する。リヴァイブもアサルトライフルを取り出して、距離を取ると同時に狙いを付けて連射する。

 

「フッ!はぁ!その程度の射撃でダメージを与えられるとでも?ハァア!!」

 

『ッ!?』

 

ファイズエッジで銃弾を弾き返し、更にアサルトライフルを真っ二つにする。だがまた武器を呼び出した。次はショットガンだ。

 

「ラピット・スイッチは健在。では、根気勝負と行きましょうか」

 

その言葉通り、武器を出されれば破壊。出されれば破壊を続けていた。銃弾も含めてだ。

 

『ENTER』

 

『Exceed Charge』

 

「ハァッ!これで終わりですね」

 

恐らく最後と思われる武器を破壊すると、すかさずENTERボタンを押してフォトンブラッドをファイズエッジに流し込み、エネルギー波を放ちリヴァイブを拘束。歩きながら近付くと、大上段に構えて一気に降り下ろした。

 

「コアの回収完了」

 

当然それを受ければ、耐えられる筈もなく機体は灰へと変わり、コアのみが転がる。リヴァイブはこれで倒されたようだ。コアを拾い上げると、琢磨は村上達の元に戻っていく。そしてその頃、ブルー・ティアーズを相手にしている冴子はと言うと、

 

「ハァ!テヤァ!!」

 

カイザブレイガンのブレードモードで、ティアーズから放たれるレーザーとミサイルを切り裂いていた。草加の様に逆手に持って切り裂いていたが、攻撃が一瞬やむと順手に持ちかえて、ブルー・ティアーズに向かって投げつけた。

 

「よっと。イギリス代表の専用機だから期待したんだけど、どうやら単体ではそんなに強くない様ね」

 

見事にカイザブレイガンがヒットすると、真っ逆さまに落ちてきてライフルとミサイルビットが破壊された。余りにも簡単に落ちてきたので、拍子抜けしたようだ。蔑むような視線を向けている。

 

「終わりよ」

 

『ENTER』

 

『Exceed Charge』

 

「ハァッ!ハァァァア!!」

 

フォトンブラッドのネットでブルー・ティアーズを拘束。冴子はΧの字を模した光をまといながら切り裂いた。それを受けると、リヴァイブの様に灰になってコアだけが転がった。琢磨同様にそれを回収して、村上達の元に行く。

 

「フッ!ハァ!ハハハハ!ハァ!」

 

デルタに変身した北崎は、現在進行形で戦いを楽しんでいる。よほどデルタの力が体に馴染んでいるのか、甲龍を完全に圧倒している。ブルー・ティアーズと2機で戦っていたとは言え、村上を押していた相手がだ。手も足もでないでただただ殴られ続けている。

 

「ちょっと~。まだ壊れちゃダメだよ?これからが楽しいんだから。Fire」

 

デルタムーバーを取り出すと、今度はフォトンブラッド光弾を連射。当たった場所のパーツがどんどん灰に変わっていく。

 

「あの人、北崎さんと言いましたね?」

 

「えぇ。そうですけど……」

 

それを聞くと、何とか立ち上がって北崎に声が届きそうな場所までJに支えてもらいながら移動。近付くと大声で北崎に叫んだ。

 

「北崎さん!そのベルトを使って全力で攻撃を叩き込むと、コアごと破壊してしまいます!!機体だけを破壊してください!!」

 

「えぇ~。はぁ……」

 

不服そうにするが、コアがある部分に腕を突っ込み、中からコアを引きずり出した。

 

「ほら。これで良い?」

 

コアがなくなれば、当然ISは動かなくなる。膝から崩れ落ちるように、前のめりに倒れていった。そしてコアをJに投げ渡す。

 

「はい。楽しかったよ。また使わせてね~」

 

北崎は変身を解除すると、ベルトを村上に返した。その様子に、村上は酷く驚いている。唖然とした様子でベルトを受け取ると、気になっていることを聞いてみる。

 

「あの、体に異常は?」

 

「ん?おかしな事聞くね~。別に何もないよ?」

 

「そ、そうですか」

 

北崎の言うように、確かに何も異常はない。普段のテンションは知らないが、ベルトを使う前もこんな感じだったし、体のどこかが灰になっていると言う訳でもない。異常に疲れている様子も無いことから、完全にこのベルトに適合していたと言う事が伺える。

 

「あら、終わってたの?北崎くん」

 

冴子が現れた。片手にはコアを持っている。続いて琢磨も現れた。冴子同様にコアを持っている。

 

「おや?どうやら私が最後の様ですね」

 

「琢磨くん。そっちはどうだった?」

 

「問題ありません。無事にコアを回収することが出来ました」

 

そう言って、2人もとコアを差し出した。これでここでの戦闘は終わった。後は救助部隊の簪達が来るのを待つだけだ。シェルターに連れていかれて、一緒に待つことにした。そしてそれから30分。護送車と共に簪達がやって来た。

 

「久し振りね。簪」

 

「えぇ。鈴も久し振り。元気だった?」

 

「まぁ、それなりにね」

 

「そう。村上さんは大丈夫でしたか?」

 

「えぇ。彼らが今したので」

 

そう言って、先程自分達を助けてくれた4人に目を向けた。その4人は北崎を除いて避難の手伝いをしている。そして、村上と目が合った北崎が歩いてきた。

 

「ねぇ。そのベルト、また使わせてくれない?」

 

「……どう言う事ですか?」

 

「別に。また使えたら使いたいってだけだよ」

 

「そうですか。いつになるかは分かりません。もう、使うことはないと思いますけどね(ボソ」

 

「ん?なに?」

 

「いえ。何でもありません」

 

それを伝えると、村上と簪、鈴を最後尾にして護送車に入っていき、学園を後にした。




や、やっと、出来た……ウッ

GAMEOVER

…フゥ!残りライフ、10。使いすぎたな~。後で出張中のクロノス一夏にリセットしてもらわねば。

次回もお楽しみに!感想と評価、お気に入り登録とその他作品もよろしくお願いします!!

今までずっとラビット・スイッチかと思ってたんですけど、ラピット・スイッチなんですね。単行本の機体データ確認して良かった~。そして簪の話を完全に書くの忘れてた笑

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