勇者「えい、えい」魔王「…」   作:めんぼー

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魔法障壁

遥か昔、人も魔も存在しない、争いのない世界。

天使と呼ばれる種族のみが生きていた時代があった。

 

人の身体に白き翼を生やし、赤子の姿と無邪気な心を持つその天使達には、人間や魔王軍でいうところの、王族が存在していた。

 

その者は、神。

 

神は天使達と平穏な日々を過ごしていた。しかし、ある日天使達の中に異端児が現れる。

本来成長しないはずの天使の中で、赤子の姿であった1人の天使が、突然言葉を発し始め、成長を始めたのだ。

 

神は不気味に思いつつも、その時はただ静観していた。

しかし次の日、同じような天使が2人に増える。

 

神はこの2人の天使を穢れとし、2人から翼を奪い、天界から追放したのであった。

 

人の身になった2人は、今の人間界に。

奪われた翼は、今の魔界に。

 

2人は成長し男と女に

翼は2つの命として異形の姿に

 

その後は落とされた地で繁栄を続けていき、人間界と魔界、そして天界という3世界が誕生したのであった――。

 

 

「神は人間と魔族の祖に恨まれ、大昔に戦争が起きた。」

 

 

淡々と話をしていく側近。

東門の上の勇者陣営は黙って話を聞いていた。

 

 

「天界と地上界との天地聖戦だな、おとぎ話程度には貴様らも知っているだろう。これは、実際に起きた過去の出来事なのだ。」

 

「そんなことはどうでもいいわ!!」

 

ついに痺れを切らした風魔が声を荒げる。

 

「そんなおとぎ話に耳を傾けるほど、私達が暇に見えるの?さっきも言ったけれど、あなたは重罪人。これから魔王城へ連行させてもらう。」

 

「確かに…。だがどうしたんだ風魔?らしくないじゃねーか。」

 

側近に食って掛かる風魔に、火魔は内心驚いていた。

 

「嫌な予感がするの…。」

 

「…上の魔方陣か?」

 

「えぇ、一刻も早く側近を拘束しないといけない気がして…。」

 

こんな風魔は見たことがない。

恐らく彼女の勘が警鐘を鳴らしているのだろう。

火魔にとっても聞きたい事は山積みであったが、ここは風魔の判断を尊重することにした。

 

「…だな。側近!妙な真似はするなよ、これから俺も一緒に魔王城についていく、逃げられねぇぜ。」

 

「…逃げる?」

 

剣を握りなおした火魔に、側近は問いかけ、そして――

 

 

「逃げられないのは貴様らの方だ。」

 

 

側近が言い終えた途端に、東門の内側に浮いていた側近の姿が消えた!

 

「何!?」

 

「後ろよ!」

 

突如姿を消した側近に驚いている火魔を横目に、風魔が東門の外側を睨む。

火魔が後ろを向くと、先程と同じように宙に浮いた状態で、魔法を詠唱している側近の姿があった。

 

「愚か者共が!やはり人間に与する者は等しく愚かだな!」

 

側近の姿を捉えた瞬間、弾けたように1人と1頭が飛び出した!

 

「いけない!!火魔、飛龍!!」

 

「チィッ!!」

 

「ゴァァアアア!!」

 

火魔は燃え盛る炎の剣を一瞬で猛らせ、炎の斬撃を放った!

飛龍は口から灼熱の炎を吐き出した!

 

しかし、見えない壁にぶつかり、2つの炎は遮られた!

 

「言っただろう、ここでゲームオーバーだと。」

 

頭上の魔方陣が上下垂直に分かれ、5つの魔方陣になる!

5つの陣は1つを残して、中間の国を五芒星になるように回りを囲んだ!

 

「火魔よ!我に乗れ!強行突破だ、至近距離から奴に向けて今一度放つぞ!」

 

「あぁ!!背中借りるぜ!!」

 

飛龍は火魔を背に乗せ、翼をはばたかせる!

 

「駄目よ!待ちなさい!」

 

風魔の制止を振り切り、東門から側近へ近づこうと空へ飛び出した瞬間――

 

 

「ぐっ…なんだこれは…!?」

 

「なんなんださっきから…魔法障壁か…?」

 

 

金属音のような甲高い衝撃音をたてて、行く手を阻んだ!

ならばと飛龍は一度、東門の内側へと旋回する。

 

「掴まっておれ!」

 

十分に距離を取った後、飛龍はまたも大きくはばたいた後、翼を畳み側近へ向けて一直線に加速した!

 

「飛龍っ!私も!」

 

頭上を通り過ぎようとして突進してくる飛龍の進路の下へ、土魔は駆け出した。

 

「土魔まで…もう!」

 

土魔は既に進路の下に着き、魔法の詠唱を始めている。

 

「水魔!勇者の傍で結界を!」

 

「わ、わかりました!」

 

風魔は水魔に勇者を守るように叫ぶと走り出した。

勇者を抱き抱え、水魔も結界を張る。

 

「【攻撃強化魔法(バイキルト)】!!」

 

土魔が唱えると、頭上に向かって飛んでくる飛龍と火魔の身体は赤く光りだした!

火魔は炎の剣を構え、刺突の体勢に入った!

 

「【速度増加魔法(ピオリム)】!!」

 

同じくして駆け寄ってきた風魔によって飛龍と火魔に速度増加魔法がかけられる。

更に加速した飛龍はそのまま東門と2人の頭上へ突進する!

 

「ヴォオオオオオオ!!!!!」

 

またも甲高い金属音と衝撃が起こり、飛龍の頭部は阻まれる!!

ぶつかった衝撃を利用し、火魔は飛龍の背を蹴った!!

 

「貫けぇぇぇぇ!!!!!!」

 

魔法障壁に飛龍と火魔の一撃が刺さる!!

 

「無駄な事を。」

 

その様子を、側近は無表情で見つめていた。

 

 

 




炎の一撃――!!

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