戦場にて灰燼と呼ばれる悪鬼の類。
その者、名を火の魔神と申す。
紅蓮の命を燃やし戦う姿、正に修羅―
~東門・外部~
東門の上に土魔を降ろすと、一度街道の方へ大きく旋回する飛龍。
そのまま2人の下へ飛んでくる。水魔と火魔の前に下り立つや否や
「先の闘争、実に見事。賞賛を送ろう、勇者の仲間よ。」
どこか楽しげな、声の抑揚。
2人は驚きを隠せなかった。
龍が人の言葉を話す…そんな話は聞いたことがない。
「こいつは驚いた…。」
「龍が喋るなんて初耳なんですけど…。」
およそ、普通の反応。
飽き飽きするほど、飛龍には見慣れた光景。
「龍とは知性を持つ優れたる種族。魔物のような劣等種族とは違う。長命な個体であれば人の言葉を喋るなど、造作もない。」
流暢に、ただ淡々と。
先程の楽しそうな抑揚は消え、道端に落ちている小石を蹴るような―
極端に言えば興味がない、そんな雰囲気を醸し出していた。
「そいつは…悪かったな…。」
「…。」
平謝りする火魔と、押し黙る水魔。
2人を睨み、大きく目を見開く飛龍。
―圧倒的
(こりゃぁ…)
(まずいですね…強さの桁が違う…)
気圧される2人。
だが、闘志だけは絶やさなかった。
(腹ァ…括るか…。)
ふと、火魔が飛龍の前に踊り出る。
「俺は火の魔神…『元』魔王軍四天王の一人、【
「我の名を知りながら、それでも尚、挑もうとするその意気や良し。元よりそのつもりだ、火の者よ。」
2つの猛々しい命の間を、風が吹き荒ぶ!
剣を正中線に構え、炎の剣は激しく燃え上がる。
そして火魔は飛龍を見据え、構えを解くことなく―
「水魔!一騎討ちだ…邪魔するなよ!」
「なっ…はぁっ!?何馬鹿な事言ってるんですか!!殺されますよ!?」
水魔は声を荒げ、火魔の発言に猛反発する。
しかし火魔は一向に構えを解かず、無言を貫く。
火魔が易々と、その身を噛み砕かれるイメージが沸いてくる威圧感。
当然だった、魔王に次ぐ魔力量を持つ、土の魔神よりも強いのだ。
むしろ、魔王に匹敵すると言っても過言ではなかった。
―勝てるわけがない―
とうとうその言葉を口にする事は出来なかった。
かつて自分に何度も、腕試しと称して挑んできた火魔。
水と火という最悪の相性であるにも関わらず、果敢に挑んできた勇将である事を、水魔は覚えている。
(あぁ…そうでしたね、あなたはそういう人でしたね…。)
同じ『元』四天王である前に、勇者の『仲間』である前に、一人の『武人』
「わかりました。好きなだけ戦いなさい、でも―」
これだけは言っておかねばと、握った拳に力が入り、叫ぶ。
「死んで勇者様を悲しませたら…今度こそ私がぶっ殺しますよ!!」
「ははっ、お前の魔法は怖いからなぁ…殺されねぇようにしねーとなぁ。」
そう言い終えると、火魔は右肩まで両手で握る剣の柄を持ち上げ、刃先を飛龍に向けた構えに変える。
そして飛龍に語りかけた。
「さっきの口上、やっぱ取り消すぜ。」
「なんだ、怖気づいたか?」
「いや…俺は―」
顔を伏せる火魔。
―勇者との出会いから、今まで旅の記憶が蘇る!―
『あっ…あ゛り゛がどう゛…』
『ぼくゆうきある!?』
『ったりめぇだろ!!おめぇ程勇気があるやつはそうはいねぇ!!』
『だめーーーーーっ!』
『ひとごろしはだめ!このひとにもかぞくがいるからだめっ!』
『わーい!せんしさんも、なかまー!せんゆうー!』
『つーわけで、よろしくな!【僧侶】!』
『ぬえぇーい!!これだから男って奴は!!』
『あのねあのね!!おいしいっごはんとかたべられる!?えっとね、あとね?!』
『待て待て勇者、落ち着け。気持ちはわかるがあんまりはしゃぐと…』
『いや、そんな暇はないな、おい勇者!』
『なに~?わっ!』
戦士は勇者を 肩車した!
『わぁあぁぁ!わぁぁぁぁ!たかーい!!せんしさんすごーい!』
『いくぞー!戦士号発進ー!』
『わーい!はっしーん!』
『そうだな、いつまでもおんぶじゃ可哀想だ、だがその前にメシも食わせてやらないと。あぁ、風呂も入れ…何じっと見てんだよ?』
『…ふふっ』
『おかしな事言ってるか?』
『いえ、【灰塵】の火の魔神も…子供の前では形無しだなと』
『そんな古臭い通り名忘れちまったよ。ほら、行くぞ』
『えっとね…そうりょさんがたおれちゃったから…おいしいものたべればよくなるかなって…これ』
『お前、僧侶のために?』
『うん…』
『勇者』
『え?』
~『明日いっぱい町の中回ろうな!美味しいもの、3人で一緒に食べよう!』~
~『っ!うん!!』~
――――――――――――――
(約束…したもんな。)
顔を伏せたまま優しく微笑む戦士。
ふいに顔を上げ飛龍を睨み、突き刺すような殺気を放つ!
「俺の名は【戦士】!勇者の仲間の…【戦士】だ!ガキのお守りが好きでなぁ!もう一人の仲間のアホな暴走も、俺が止めてんだ!あいつら俺がいねぇと、ほんとどうしようもねぇからよ!だから!俺は死ぬわけにはいかねぇ!」
飛龍の目がギラリと鋭く光った!
その刹那、翼を広げ、落葉が舞い上がるほどの突風!
「よく言った!我が前で屍を晒さぬと!そう申すか!」
「ったりめぇだろ!俺にはまだやる事があんだよ!」
龍族を前に一歩も引かない戦士を相手に高揚し、飛龍は叫ぶ。
ぶつかる剣気と覇気。
「ならば来い!貴様の紅蓮の命…我が灼熱の業火で吞み込んでくれる!!!!」
舞い上がる落葉が乾いた破裂音と共に2つに裂ける!
「ヴ オ オ オ オ オ オ オ ォ ォ ォ ! ! !」
「いくぜぇぇぇぁあああああああ!!!!!!!」
飛龍は咆哮を上げ、その声を合図に走り出す戦士。
衝突する、2つの命の炎。
―戦士はその日、生涯で最も命を燃やす戦いに臨む―
いかがでしたでしょうか?
色々とお粗末な文章お恥ずかしいですが
温かく見守って頂ければ幸いです。
台本形式じゃないと結構難しいんですね…
普通に書ける方々が凄いと思いました。
長い文章を半分に区切ったので
次回まではこのまま台本形式無しになります。
コメディどこいったんでしょうね、王様?