一週間後の日曜日。
とうとう、クラス代表決定戦が始まる前日となった。
そんな中俺は、織斑先生と一緒に整備室に来ていた。
「いや〜、すいませんね。面倒なお願い聞いて貰って」
「そう思うんなら、私が、納得する結果を残すんだな」
「まぁ、やるだけやってやりますよ」
明日の決定戦。専用機持ちで、イギリス代表候補生のオルコットと戦うのだが、一夏には専用機が渡される。
別に不満も文句も無い。一夏の奴が、俺よりも早く見つかっていて、俺が遅くに見つかったのだから、仕方がない。それに、コアは、世界に500とない貴重な物。
其れをポンポン、人に渡すのはバカがやる事だ。
「さて、チェックを始めますかなー」
「少し待て、聞きたいことがある」
「ん?何ですか?」
目の前に佇むフランス製IS『ラファール・リヴァイヴ』の内容を確認しようとしたら、後ろで仁王立ちしている織斑先生に呼び止められた。
其れに、聞きたい事とは?
「二つだけ、聞かせろ。クラス代表になりたく無いと言いながら、こんな願いをした?」
「そうですね‥‥‥」
そう言って、数瞬考える。
一番の理由は、負けるのが嫌だから。けど、そんな理由じゃ納得しないだろうな。
「先生には、俺の夢を話しましたっけ?」
「‥‥‥君の両親から聞いている」
「そうですか。俺の夢は、“人を救う”けど、今の俺には、人を救う技術も知識も経験も無い。でも、ISは、凄いですよね。操縦者を守る為の機能が、沢山ある。生命維持装置なんて、一番良いですね」
でも、と一呼吸置いて、続きを言う。
「でも、それじゃあ、ダメなんです。人の身で、救い。人の手で、救い。人の心で、救う。俺は、精神的にも肉体的にも弱いんです。だから、見栄でも建前でも、靡かない力が必要なんです」
勿論、全ての命を救うなんて事は出来ない。けど、こんな俺でもこんな俺だからこそ、救える命があるとするならば、俺はその命の為に強くありたい。
三年前に、
「そうか。お前は、医者志望だったな」
「ええ、まぁ、その夢も少し難しくなりましたけどね」
皮肉混じりの笑みを見せると、織斑先生が苦い顔をする。あれ?何か、ダメなこと言ったかな?
「それじゃあ、あと一つとは?」
「ああ、最後に聞かせろ。お前の信念は、何だ?」
ワーワーと、騒がしい観客席を見ながら、今回限りのパートナーをチェックする。
「よし。準備オーケー」
『おい、鉄』
「ん?」
準備を終えた所で、織斑先生から通信が入る。どうやら、一夏の専用機が届いて無いらしい。其処で、準備が終わっているのなら、俺に出てくれないかと言う事らしい。
うーん。本当に、胡散臭い。
「あー、大丈夫ですよ。丁度、終わったので」
『そうか。すまないが、出てくれ。オルコットは、既に準備を終えて、フィールドに出ている』
「了解です」
織斑先生との通話を終えた俺は、ラファールを起動し、身に纏う。
そして、そのまま、ピットに立ち、フィールドへと飛び立つ。
そして、試合の舞台へと、入り込んだ。