箒や一夏、織斑先生と言った人たちに何とも変なスキンシップをする兎博士の登場に周りの生徒たちは唖然としていた。
「おい、束。自己紹介くらいしろ。うちの生徒たちが困っている」
「えー、めんどくさいなぁ。私が天才の束さんだよ、はろー。終わり」
極めて簡潔、というか手抜きとも言える自己紹介であった。
だが、この世界で最も有名と言っても過言ではない天災、篠ノ之束の登場に一般生徒たちが騒がしくなるが、織斑先生によって静かにされる。
「ほら、お前ら。こいつのことは無視して作業を続けろ」
「うわ、そいつは酷いなぁ、ちーちゃん」
「黙れ」
「そ、それで頼んでいたものは……?」
そんな中、何故呼ばれているのか何となく分かっていたが躊躇いながら、箒はおずおずと篠ノ之束に話しかけた。
「うっふっふ。それはすでに準備済みだよ。大空をご覧あれ!」
篠ノ之束の言葉と共に、空から金属の塊が飛来してきた。
ズズーン、と派手な音を立てて砂浜に落下したそれは、形を変えると、中からあるものを出現させた。
「じゃじゃーん! これこそが箒ちゃん専用機こと『
そこに立っていたのは、名にある通りの紅色のISだった。
だが、全スペックが現行ISを上回る機体か。あのうさ耳野郎は、それが何を意味するのか分かってない。いや、興味が無いのか。
「さ~て、すぐにパーソナライズとフィッティングを始めようか、箒ちゃん!」
「……お願いします」
紅椿の装甲が左右に開き、操縦者を受け入れるスペースを作る。
そこに箒が乗り込むと、各種装甲が箒に取り付いていくと篠ノ之束がコンソールに目にもとまらぬ速さで情報を入力していく。
開いては閉じる画面を尻目に俺は、一般生徒たちの方に眼を見やる。
やはり、何処か妬みを孕んだ雰囲気が漂っていた。
「ねえねえ、篠ノ之さんって、あれがもらえるの? 身内ってだけで」
「だよね、ちょっとずるいよねぇ」
そして、とうとうそんな言葉が聞こえて来た。
すると、篠ノ之束は作業を一旦止めるとその言葉を発した生徒たちの方を向くと口を開いた。
「おやおや、可笑しい事を言うね。歴史を勉強したことがないのかな? 有史以来、世界が平等であったことは一度もないよ」
そんな言葉を放った篠ノ之束に、俺は我慢の限界が来た。
「お前こそ歴史の勉強してねぇのか?最新鋭機は、時に戦争を生むぞ。そして、今のこの世界を平等にぶっ壊したお前に言われたかない」
「へぇ‥‥」
「こっち向いて息すんじゃねぇよ。と言うか消えろよ」
なんか知らんが、一夏たちが驚いているが気にしない。と言うか興味無い。
ああ、なんか昔に戻った気分だ。
統真と始めて会った時の俺みたいだな。
「そうそう、君にも用事があったんだ。いっくんは無理だから、君を
「
「カハッ!」
「そうそう、君にも用事があったんだ。いっくんは無理だから、君を診させてよ」
「てめぇは早く死ねよ」
ただちょっと、イラっとしたから懲らしめてあげようと思っただけだった。
細胞レベルでオーバースペックな私が、本気になればこんな奴痛い目に合わせるのなんて簡単だ。
簡単なのに、簡単なはずなのに
「カハッ!」
そこまで考えた所で、私は砂浜に打ち付けられた。
「おい、お前らそこまでにしろ。鉄。お前は少し落ち着け」
「‥‥すいません」
「そして、いつまで寝転がってるつもりだ?」
「あ、ごめんごめん。早くやるよ」
何でだろう。
普通だったら、何か感じるのに何も感じないんだろう?
「――やれる! この『紅椿』なら!」
自身に満ち溢れた声の箒を無視して、俺は岩場に座り込む。
「全くつまんねぇな。お前らもそう思うだろ?」
「お、織斑先生っ! 大変ですっ!」
そんな中、山田先生が焦燥した様子で駆け寄ってきた。
どうやら、この臨海学校でもハプニングは行われるようだ。
一応、言っておきますが自分は束さんは嫌いじゃないですよ。あくまで、双刃は人外が嫌いなだけです。