「あ、織斑くんと鉄さんだ!」
「う、うそッ! 私の水着変じゃないよね!? 大丈夫だよね!?」
「わ、わ~。体かっこい~。鍛えてるね!」
「織斑く~ん。あとでビーチバレーしようよ~」
着替えを手短に済ませた俺と一夏がビーチに出ると、周りが騒がしくなった。
自惚れる訳じゃないが、そこまで興味惹かれるか?鍛えてるって言っても、簡単な事しかしてないぜ?
にしても、慣れたつもりだったがこの好奇の視線には本当に慣れんな。
「お、おう。分かったよ」
そして、ちょっとあたりの激しい女子たちに一夏は戸惑いながらも準備運動をし始める。
まぁ、どんなに遊びたくても準備運動をちゃんとしなければ大怪我になるかもしれないからな。
そんな事を考えながら、俺も準備運動をする。
「い、ち、か〜〜!」
「うわわぁ!!??誰だ?!」
「私よ!」
一夏が丁度準備運動を終えたところで鈴が走ってきて、一夏に飛びついた。ちょうど肩車みたいな構図である。
年齢やらを考えれば、カップルみたいな構図だが側から見れば仲の良い兄と妹のじゃれつきである。
本当、楽しげだな。こいつらは。
「おい、お前ら余りはしゃぐなよ」
「分かってるわよ!何せ、私の前世は人魚姫なのよ!」
「何処を根拠に言ってるんだよ」
二人して海に飛び込み競争し出そうとした為、一応注意しておくが鈴から意味不明の返しが返ってきた。
というか、人魚じゃなくて人魚姫かよ。
「で、前世はなんだっけ?」
「う、うるさいわね!きょ、今日は調子が悪かったのよ!」
「準備運動しないで、あんな泳ぎするからだ。怪我したらどうすんだよ」
競争の結果を言うと、鈴が途中で溺れかけたので無効試合になった。
今は、海から上がり鈴の事を揶揄いながら手当てする。
「んじゃあ、安静にしてろよ。治っていない状態で、動いたら余計に悪化するからな」
「分かってるわよ!」
そんな会話をしながら、クラスメイト達の方へと向かい時間になるまで一日を楽しんだ。
「やぁ、また会ったね」
「えぇ、おひさしですね」
刃が来ていた浜辺の近くで、僕は篠ノ之束博士と会っていた。
束博士の格好は、いつか会った時と変わらないワンピースにエプロンと機械のウサギ耳と言うなんともミスマッチで、ファンタジーな服装で立っていた。
「何をしに来たのかな?」
「さぁ、何でしょうね。もしかしたら、起きるかもしれないトラブルを止めるかもしれません」
「そうなんだ。起きたら大変だね」
「えぇ、大変ですね。博士は何をしに?」
「さぁ、何だろうね。色々なものを見に来ただけかもよ?」
「そうですか。良いものが観れると良いですね」
「そうだね」
言外に自分達が此処に来た理由を述べる。
「いつか、言いましたね?貴女を超えると」
「そうだね。けど、どうやってとは言ってなかったね」
「えぇ、ですから此処で宣言しておきます。貴女の生み出したISを超える存在を作ると」
「へぇー、出来ると良いね」
「出来ますよ。貴女は、大天災なだけで人なだけだ。だったら、僕は超えられる。人の域を外れて人外と言われようとも、そこに人の一字がある限り、僕は超えられる」
どこかバカにした様な表情の束博士に向けて、しっかりとした気持ちを持って言う。
刃と僕は何処か似ていて、決定的に違う。いつか統真が、僕と刃に言った言葉だ。
刃は言った。
“人が人であるならば人は、誰にも勝て誰にも負ける”と。
僕は言った
“人は変わっても人だ。だから超えられる”と。
僕も刃も人の人としての可能性を信じている。けど、僕はそれよりも機械の無限性を信じている。
だから、僕と刃は決定的に違うのだ。
「本当、君
俺の言葉を聞いた後、束博士はそんな言葉を残して姿を消した。
「統真。帰ったら準備だよ。明日は、大仕事だ」
「ああ、分かった」
明日は、色んな意味で楽しみだなぁー。