「先輩。大丈夫ですか?」
「麻耶か。ああ、大分落ち着いた。お前も大丈夫なのか?」
「はい。それにしても何なんでしょうね今年は。問題や事件が次から次へと‥‥」
「さぁな。だが、分かるのは此れからもその可能性は十分にありえると言うことだ」
千冬と麻耶以外居なくなった職員室で、二人は今日の予想外のトラブルや生徒会長 更識楯無からの報告を受けての対応などで馬車馬のごとく動き回ったお互いを互いに励ましあった。
「世界の敵の敵であり、味方では無い、か。更識の奴が言うにはそう奴らは言ったんだろう?」
「はい。でも、本当に何が目的なんでしょうか?それに生徒の中で一番の実力者である筈の楯無を相手にして、無傷で居られるだなんて」
「しかもそいつらが使っていたのは、全く未知の武装とまで来た。本当に何者なんだろうな」
未だ正体が掴めない存在に、頭が痛くなるがそれを麻耶に見せようとはせず千冬は、砂糖の入っていないブラックコーヒーを口に入れた。
「お前らはそれで良いと思っているのか?」
「何を今更。お前は俺の性格知ってるだろ?一度決めたならば、どんな手を使ってでも成し遂げる。今も昔も変わらねーよ」
「ははは、夢を簡単に諦めてたまるかよって事だよ」
IS学園とは別の屋上で、双刃は博斗と統真と三人で星空を眺めながらちょっとしたパーティーをしていた。
「それより良いのかい?刃は、門限あったでしょ?」
「心配要らん。織斑先生には言ってある。夜更かししてくるってな」
「それで良いのかよ学校主席」
「IS学園で学ぶ事なんかねぇからな」
鉄双刃という人物が良く知る人はとても少ない。
知っているのは、この場にいる人外二人と双刃の両親、恩師である来夏そして初恋の相手である杏奈の六人だけである。
付き合いのあまり深くない者は、彼を優男や優等生と評するが上記の者たちはそれぞれの感性で様々な評価をする。
博斗は、どうしようもない程のバカ。
統真は、憎たらしい程に尊敬出来る同期。
「それでどうなったんだ?その、デュノアだっけか?週明けに女だって事バラすんだろ?」
「君から手を回すように言われた時は驚いたけど、良いのかい?彼女の親も人だよ?」
「ああ、俺は人の負傷を治すんだ。負傷してなきゃ悪人は罰するだけだ」
そう言って下に置かれている料理を口に入れる。
「‥‥それで、臨海学校の時に来るのか?」
「そうだねー。まぁ、そん時に決めるよ」
「興味ねーわ」
「そうか」
そうして何気ない会話をしながら夜は過ぎていった。
日が明けての朝のSHR。
女子たちの大半は何時ものようにしているが、男子二人や一部の生徒の中にはどこか歪な空気が漂っていた。
「ええとですね……今日は皆さんに転校生を紹介します。転校生というか既に紹介は済んでたり……えっと……」
妙にやつれた感じで教室に入って来た山田先生の突然の言葉にクラスが騒然とする。
「見てもらった方が早いですね……入って下さい」
「失礼します」
扉の奥から聞こえたのは、クラスメイトには聞き覚えのある三人目の男子の声。
だが、そこから現れたのは男子服を身につけたシャルル・デュノアではなく。シャルル・デュノアそっくりの女子生徒だった。
唖然とする女子たちを他所にシャルは口を開く。
「理由があって男として過ごしていましたが、それが解決したので改めて自己紹介します。シャルロット・デュノアです、皆さんよろしくお願いします」
「デュノア君はデュノアさんでした、ということです。はあぁ……また寮の部屋割りを組み立て直さなきゃ……」
時間が止まったような静けさの教室に山田先生のため息が響く。
そして、徐々に時間が動き出す、
「え?デュノア君って女……?」
「この真夏のサマーデビルの目を持ってしても見抜けなんだ……」
「おかしいと思った!美少年じゃなくて美少女だったのね!」
そして、一気に騒然とする教室の中とある女子生徒の言葉で、混沌としたこの場が地獄に変わる。
「ちょっと待って!昨日って確か、男子が大浴場使ったわよね!?」
「織斑くん同室だし、気付かなかったってことは無いわよね!?」
そんな爆弾投下の瞬間、教室に殺気が漂った。
「一夏さん?私一夏さんに聞きたいことがございました」
専用機を展開するセシリア。
「一夏!貴様と言う奴は!!」
何処から取り出したのか分からない真剣を抜刀して構える箒。
正に絶対絶命といった状況の一夏の前に突然黒い影が現れた。
「ら、ラウラか。すまん、助かった」
登場したのはISを展開したラウラだった。
そして、ラウラの登場と教室に織斑先生が入って来た為、騒ぎは一応止まった。
「ら、ラウラ。そろそろ席につこ、んむっ?!」
「き、貴様を私のパートナーにする!異論は認めん!」
だが、どうやら騒ぎは続いてしまうようだ。
本来、嫁にすると言うセリフですけど此処を変更しました。