IS〜愛しき貴女へ捧げる我が人生〜   作:TENC

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タッグマッチ双刃サイドラストです。



episode. 11

「うあ"あ"あ"あ"ぁぁぁ!!!!」

 

叫び上げるラウラに会場中から不安の声が彼方此方から聞こえ出す。

だが、そんな声は次の瞬間には絶叫へと変わっていた。

 

「な、何だよ一体?!」

 

「分かんないよ!本当に!」

 

何が起きているのか全く分からない俺とシャルは、次の瞬間起きた現象に驚き固まってしまう。

ラウラの専用機が、ゲル状の何かに変わったと思ったら表に見えていた電撃を浴び叫び続けているラウラを飲み込んだかと思ったら徐々に形を変えていく。

 

異形の物へと変わったそれは、掌を握り何か武器のような物を作り出す。

作り出されたその武器は、一振りの刀だった。そして、その刀にはとても見覚えが合った。

 

「ゆ‥‥雪片‥‥?」

 

“雪片”千冬姉の専用機の武器であり、千冬姉が世界一に輝いた理由の一つであり、千冬姉を示す物の一つである。

つまり、あの異形の物は千冬姉を偽ったのである。

 

「‥‥ぁ」

 

そう考えた瞬間俺の中で何かが弾ける音が聞こえた。

 

「‥‥ぉぉおおお"お"ォォォォォ!!!!!」

 

「ちょっと、一夏?!」

 

シャルの制止の言葉を耳に入れず、その手に雪片を強く握り千冬姉を偽った奴に突っ込む。

 

「グハッ!」

 

「一夏?!!」

 

だが、彼奴は剣を握った片手で俺を吹き飛ばす。

 

「クソッ!」

 

ただ、無力な自分に腹が立った。

 

 

 

「‥‥‥セシリア」

 

「は、はい?!」

 

フィールドでの光景を見た俺は、自然とセシリアを呼んでいた。

そして、何故か怯えているセシリアに伝えたい事を伝える。

 

「織斑先生に繋いでくれ‥‥」

 

「わ、分かりましたわ!」

 

そうして織斑先生に通信をするセシリアが数秒後に繋がったのか俺に通信機を渡してきた。

 

『どうした鉄』

 

「俺がフィールドに行きます。ラファールの準備は」

 

そこまで言いかけたところで織斑先生はフッと少しだけ笑うと俺の言葉を遮って要件伝えてきた。

 

『こちらもそのつもりだ。何故かその通路の出入り口は開いている。そこから此処まで来い。ラファールはあの時と同じ設定している。すぐに来い!』

 

「了解しました!」

 

織斑先生からの指示を聞き入れ、通路を駆け抜ける。

何故此処の出入り口が開いているのか、俺はその理由を知っている。あのマッドサイエンティストは、ボーデヴィッヒの機体について知っていた筈だ。

そこに俺が関わっているならば、後は簡単だ。

 

今現在進行形で起きている出来事を予想しての対策なんだろう。

なんて事を考えていたら織斑先生の待っているピットへと着いた。

 

少しの注意と激励を受け、ラファールに乗り込みフィールドへと飛び出る。

 

「ぶっ飛びやがれぇ!!!!」

 

飛び出るや否や俺はランチャーを展開し、あの黒い何かへぶっ放す。

 

「無傷か。いや、自己再生ってとこか」

 

ランチャーの煙が晴れたそこには、ゲル状の何かが蠢いて欠損した部分を再生していく。

 

「ちっ、ダメージは皆無ってとこか」

 

「双刃さん!」

 

先制攻撃での結果を簡単にまとめて未だ俺の事を観察しているように向かい合っている異形を睨んでいたら、フィールドに出ていたシャルルたちが声を掛けて近寄ってくる。

そんな時、ふと一夏が目に入り作戦を考え着いた。

 

「一夏!俺が彼奴を引きつけてやるから一瞬の隙を見つけてお前の零落白夜でぶった斬れ!ボーデヴィッヒを包んでるアレは多分エネルギーを使った流体金属だ!」

 

「分かりました!」

 

液体の様な感じだったが、形状を維持できる程の強度を持っている。確証は無いが、可能性としては流体金属が一番近いと思う。

 

「シャル!お前はまだ動けるな!?」

 

「は、はい!」

 

「だったら、あいつをロックオンして射撃し続けろ!心配すんな俺が合わせる!」

 

「はい!」

 

それぞれのやる事を決めた俺たちは、俺を先頭に一夏、シャルの順で立ち並び戦闘を開始する。

 

 

 

「堕ちろ!」

 

ブーストを吹かして一気に加速して近づく俺に対して、アレは手に持ったブレードを振り下ろす。

俺はその攻撃に対して、左手にシールドを展開して思い切り振りかぶりシールドバッシュをぶち当てて機体を仰け反らす。

崩すと同時に俺は右に避け、右手にサブマシンガンを展開して発泡する。

それと同時にシャルからの援護射撃が合わさり、アレに十字砲火(クロスファイア)で嵌る。

 

「ちっ!流石に一筋縄じゃいかないか!シャル!交替(スイッチ)!」

 

「はい!」

 

俺とシャルの十字砲火を食いながら多少ダメージを負った様だが、直ぐにまたあの黒い何かが損傷を補う様に集めながら俺にブレードを振り下ろそうとしている。

だが、俺がそのまま居っとく筈もなく。直ぐにシャルと交替して攻撃のテンポを変える。

 

「はあぁ!!!」

 

「身体を左に反らせ!!」

 

「はい!」

 

パイルバンカーでアレの左手を吹き飛ばすシャルに指示し出し、空いた右側にマテリアルライフルの銃口を向けて引き金を引く。

 

「今だ一夏!」

 

「行って!一夏!」

 

「オオォォォォォ!!!!!」

 

俺の攻撃で一瞬だけ動きが止まるアレの隙を見逃さず飛び出す一夏に俺とシャルの言葉が飛ぶ。

一夏に反応したアレだったが、その時には零落白夜を発動した雪片二型はその漆黒の体を振り抜いていた。

 

眩い光の後、そこにはボーデヴィッヒを横抱きした一夏の姿だけが残っていた。

 

 




流体金属ってのは、自分が見て思ったものです。
間違ってたらすみません。

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