IS〜愛しき貴女へ捧げる我が人生〜   作:TENC

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episode.4

「ちょっと、宜しくて?」

 

「ん?」

 

「え?」

 

 その言葉に振り向くと、金髪の女子が、如何にも「私は、貴方より位が高いのよ」と言っている様な状態で、立っていた。

 

「まぁ、何ですの。そのお返事は!私に話しかけられるというだけでも光栄だというのに、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

 その一言で、俺は彼女が、女尊男卑。今の世の中を表している人間だと言う事を判断する。

 俺の面倒くさそうな気持ちを他所に、彼女は言葉を続ける。

 

「悪いけど、俺、君が誰か知らないし」

 

 ちょっと興味無さそうに答える一夏。まぁ、此奴の感じ的には、女尊男卑は好きじゃ無いみたいだな。

 其れと、一夏の言い分は、最もだ。何せ、自己紹介は途中で終わったのだから。

 

 しかし目の前の金髪女子には俺達の答えは気に入らなかったらしい。

 

「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして、入試主席のこの私を!?」

 

 金髪女子もといセシリア・オルコットは、あからさまに腰を引いて驚く動作をする。

 てか、ISに興味がある奴なら兎も角、全く持って無関係の奴らが、国家代表ならまだしも、その国の候補生まで、分かるわけが無いだろうが。

 はっきり言って、ウザい。

 

「なぁ、質問良いか?」

 

「ふん。下々のものの要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

 貴族ねぇ。もうなんか、俺の頭の中では、貴族は皆んな傲慢で、態度がデカイって印象が出来始めている。ちゃんとした、貴族がいる事を望みたいが、難しそうだ。

 其れと一夏。こんな奴に聞きたい事なんてあるのか?

 

「代表候補生ってなんだ?」

 

 ガタガタガタッ!

 

 抜けてるって思っていたが、まさかここまでとはな。逆に感心するぜ。

 

「あ、あ、あ……」

 

「あ?」

 

「あなたっ、本気でおっしゃってますの!?」

 

 一夏に突っ込み(物理)をしようとしたら、オルコットが、代わりにやってくれた。

 さっきのは、同意するぜ。

 

「おう!」

 

 そして、オルコットの言葉に、自信満々に答える。何とも清々しい。顔面をぶん殴りたくなるほどに。

 

「信じられない。信じられませんわ。極東の島国というのは、こうまで未開の地なのかしら。常識ですわよ、常識。テレビがないのかしら……」

 

 未開の地って、何時の時代の話だよ。

 其れに、その常識は、IS関係者には常識だが、俺や一夏みたいな一般人からしたら、常識じゃねぇよ。

 てか、テレビぐらいあるわ。

 

「あ、あの、代表候補生って?其れに、常識なんですか?」

 

 流石の一夏も、オルコットと周りの女子の反応を感じて、拙いと思ったのか、俺に聞いてきた。

 仕方ない。教えてやるよ。

 

「心配すんな。ISしか頭に無いバカなら、常識だが、普通知らなくても問題無い。其れと代表候補生は、書いた字の如くだが、分かりやすく言うとエリートだ」

 

「バ?!んん!そうエリートなのですわ!本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡……幸運ですのよ。その現実をもう少し理解していただける?」

 

 俺のバカという言葉に、少し反応したが、咳払いをして、先ほどまでのように、返してきた。

 ああ、面倒くさ。

 

「そうか。それはラッキーだ」

 

「……馬鹿にしていますの?」

 

 馬鹿には、してないと思うぜ。多分、興味の無いだけかもな。

 

「大体、あなた方はISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。男でISを操縦できると聞いていましたから、少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、期待はずれですわね。まあそこにいる人は多少あなたよりマシですが」

 

「俺に勝手に期待されても困るんだが‥‥」

 

「確かにな」

 

「ふん。まあでも? わたくしは優秀ですから、あなたのような人間にも優しくしてあげますわよ。ISのことでわからないことがあれば、まあ……泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

 

 お前に聞くぐらいだったら、先生に聞くわ。チラッと聞いたが、先生達もエリートらしいからな。

 其れに、山田先生なら、教えるの上手いからな。

 

「入試って……もしかしてあれか? ISを動かして戦うってやつ?」

 

「そうだと思うぜ」

 

「それ以外に入試などありませんわ」

 

 俺とオルコットの返答に一夏は思い出した顔になる。

 てか、そんなのあったんだな。確か、試験の時、俺はキレてたから、そん時に来た奴の誰かが、学園の人だったのかもな。

 でも、ケガさせて無いから、大丈夫だよな?

 

「あれ、其れなら俺も倒したぞ?」

 

 てか、倒したんかい。

 先生方、何やってんすか。

 

「わ、わたくしだけと聞きましたが?」

 

「女子だけって、オチじゃ無いか?」

 

「つ、つまり、わたくしだけではないと……?」

 

「そんな事、俺に聞くなよな」

 

 気持ちを抑えきれていないオルコットに対して、どうでも良い風に答える一夏。

 まぁ、一夏よ。どうでも良い事は分かるが、其れはお前に限っての話しだ。

 

「貴方!貴方も教官を倒したっていうの!?」

 

「いんや、俺はやってないぜ?」

 

「其れより、落ち着けって」

 

「此れが、落ち着いて入られーー」

 

 オルコットが、喋っている途中で、次の時限の始まりの鐘が、なったので、捨て台詞を残して、去っていったオルコットに、何とも言えない表情の俺は、取り敢えず、一夏を自分の席に戻してから、授業に集中する。

 


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