「まさか、一戦目で当たるとはな。待つ手間が省けたというものだ」
「そりゃあ何よりだ。こっちもお前と全く同じ気持ちだぜ」
アリーナのフィールドで向かい合いながら、獰猛な雰囲気の一夏とラウラは開始の合図を今か今かと待ち望んでいた。
そして、その空間をアリーナの観客席に座る観客達は固唾を飲んで見守っていた。
其れもその筈だ。世界で三人しか居ない男性IS操縦者のペアとドイツのIS部隊の隊長とIS開発者の妹のペアが戦うのだ。世界各国のIS関係者や政府関係者が集まっているのだ。様々な思惑があるが、注目度は一年の部で一番と言っても良いだろう。
ピリピリと緊張が走るアリーナのモニターにカウントが始まった。
そして、カウントがゼロになると同時に一夏とラウラはスラスターを吹かして一気に接近して言った。
「「叩きのめす!」」
意地と高慢のぶつかり合いが始まった。
「ハアァァ!!」
「甘い!」
ラウラと一夏のぶつかり合いで、先手を取ったのは意外にも一夏であった。
だが、ISを動かして数ヶ月の一夏の攻撃などベテランの操縦者であるラウラはいとも容易く受け流す。
「貴様の様な攻撃が当たると思うな!」
「くっ!其れが、どうしたぁ!!」
一夏の攻撃をいなしたラウラは、プラズマ手刀を展開するとそのまま一夏へと斬りかかる。
だが、その攻撃を一夏は雪片二型で受け止めると後方へとラウラを吹き飛ばす。
「少しはやる様だ、な!」
「そりゃどうも!」
一連の攻防から一夏の評価を少しだけ上げるラウラだったが、すぐさま体勢を整えると先ほどよりもスピードを上げた連撃を与える。
その連撃を一夏は、多少のダメージを受けてはいるものの受けきっていた。
そして、場面は変わり箒とシャルロットの対決。
「はあぁ!!」
「おおぉぉ!!」
ラウラと一夏の戦いと違い派手さや緊張感は無かったが、二人の気迫は注目を集めるには十分なものであった。
「やるね!」
「私は、お前な様に器用では無いのでな!」
ラファール・リヴァイブの汎用性の高さを生かして、あの手この手で攻めるシャルロットと剣道の頂点に達したと言う実力を発揮して、己の強みを活かして攻め立てる箒。
何方が有利かと言えばシャルロットであったが、拮抗した対戦を見せる箒に世界の名のある者達は目をつけていた。
方向は違えど、篠ノ之姉妹は二人して天才だったのだ。
「一夏っ!」
「ああ!」
二つの戦いが拮抗を続けていたが、突如として流れは変わった。
シャルロットの呼びかけで、一夏は
そして、一撃必殺であり尊敬する姉の切り札でもある零落白夜を発動する。
当たれば必殺。此れは決まるか。観戦していた一年生の誰もがそう思った。だが、其れは間違いだった。
「舐めるなよ!AIC発動!」
「くっ!?止まった?!何でだ?!」
手を前へと突き出したラウラによって、一夏の突貫は瞬く間に止まった。
『AIC』
「はあぁ!!」
「ぐはっ!」
「一夏ぁ?!」
停止した一夏に対して、レールカノンで吹き飛ばすラウラは先ほどの間に堕とされた箒の事に目を向けずワイヤーブレードを展開して一夏とシャルロットの二人へ攻撃をする。
「っ!シャル!仕方ないがあの作戦で行くぞ!」
「うん!そうだね!」
ワイヤーブレードを避けながら作戦を決めた様子の一夏とシャルロットは、別方向に別れると一夏は雪片二型でシャルロットは多彩な銃火器でラウラを攻め立てる。
「くっ!舐めるなよ貴様らぁ!!!」
「今だシャル!」
「任して!」
二人の目障りな攻撃に業を煮やしたラウラは、一夏を先に堕とそうとするがその時に生まれた一瞬の隙の間にシャルロットに迫られていた。
「なっ!
「今、初めて使ったけどね!」
そして、そう言うシャルロットの片腕には一つの武装が展開される。
性能では第三世代のラウラのシュヴァルツァ・レーゲンと第二世代のシャルロットのラファール・リヴァイブ・カスタムⅡではラウラの方が長けているが、たった一つ第二世代武装の中で第三世代にも引けを取らない物が存在する。
「
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
第二世代最強の矛が、ラウラのシュヴァルツァ・レーゲンへと突き立てる。
勝負は決まった。今度は一年生だけでなく全ての観客がそう思った。その時だった。
『汝、自らの変革を望むか……? より強い力を欲するか……?』
「うあ"あ"あ"あ"ぁぁぁ!!!!」
「うわぁ!!!」
Damage Level……D.
Mind Condition……Uplift.
Certification……Clear.
《Valkyrie Trace System》………boot.
ラウラの絶叫の後、其処にはシュヴァルツァ・レーゲンでは無く。嘗て、世界の頂きにたった者の姿があった。