ざわざわと次第に賑やかになって行く観客席の一角で、俺はクラスのメンバー達と談笑しながら時間を潰していた。
「そう言えば、何で双刃さんは出なかったんですか?」
「はは、それ聞かれるの2回目。まぁ、単に興味がなかったからかなぁー」
「えー、本当ですかー?」
「おうおう、マジも大マジだぜ」
他愛ない会話をしながら俺は、此れから起こるであろう不測の事態がどんなものなのか出来る限り考えていた。
だが、考えつくものはどれもあのアホどもが出向いて解決しようとしなくてもいいものばかりが思い浮かんで来た。
「‥‥‥所詮、俺にはあいつらの考えは分からんか」
「?何か、仰いました?」
「いや、何にも気にしないでくれ」
「?そうですか。分かりましたわ」
誰にも聞かれないと思って呟いた言葉を隣に居るセシリアに聞かれたかと思ったが、どうやら上手く誤魔化せたようだ。
そして、隣に座るセシリアの容態を今一度見る。
「それより良かったのか?お前も出なくて。身体の方は大丈夫だろうが、色々とお前に取っても良いことがあるんじゃ無いのか?」
「そうですわね。確かに、私が出場したら私にとって沢山の経験を得られるのでしょうけど、ボーデヴィッヒさんと戦い己の弱さを実感しましたわ」
そう言うセシリアの顔には、何かを覚悟したような確固たる強い意志を見て取れた。
今まで傲慢とも取れるほど自分にかなりの自信を持っているセシリアにとって、ボーデヴィッヒと言う同い年で本当に強いと思える存在は意志を確立させるには十分だったんだろうな。
「私の今の目標は、私の強さを見つける事ですわ。出来るでしょうか?」
「出来るさ。なんせ‥‥いや、やめとくわ」
「何ですの?かなり気になりますわよ?」
「はは、気にすんな」
俺の言葉に訝しそうに顔を向けるが、少しして諦めたようにアリーナのフィールドへと視線を戻す。
「(心配する事はない。なんせ、お前はもう既に自分の強さを見つけているのだから)」
そう心で思いながら、第一回戦の組み合わせが発表されそこに目を向けて思わず呆れた。
「あいつは運が良いのか悪いのか分からんな」
「ええ、全くですわ」
第一回戦
織斑一夏&シャルル・デュノア
vs
ラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒
「いよいよだな。シャル」
「そうだね。でも、凄い偶然だね。初戦の相手があのボーデヴィッヒさんだなんて」
「はは、確かにな。でも、どの道戦う相手なんだその時が早まっただけだからな。俺としては、色々と都合は良かったな」
トーナメントの選手室で俺は、次の相手に選ばれたボーデヴィッヒの事を考えていた。
ボーデヴィッヒは多分、専用機持ちの中で最も強い奴だと思う。
双刃さんが応戦していた時もあいつは、殆んどの攻撃を防いでいた。
双刃さんは、代表候補生であるセシリアや鈴を相手にしても高確率で勝つ人だ。そんな人の攻撃を訓練機とは言え全て防ぎきるのだから、ボーデヴィッヒの実力は相当な物なのだろう。
「一夏。作戦の内容は覚えている?」
「ああ、大丈夫だ。双刃さんの言葉を借りるなら「力の強さと試合の結果は同列じゃない」って感じた」
「ふふ、意味分かんないけど何となく言いたい事は分かったよ」
「そろそろ行くか」
「そうだね。頑張ろうか」
「おう!」
そう言葉を返し、俺とシャルはISを展開してフィールドへと飛び立った。
さてと、始めますか!