「「‥‥‥‥」」
先ほどの第三アリーナでの一件から一時間が経った。保健室ではセシリアと鈴がの二人は何処か不満そうな表情でベッドの上にいた。
模擬戦を始めてから其処まで経っていなかったからか、鈴は打撲や切り傷程度で、セシリアは痣や打撃痕と二人の体に巻かれている包帯の量は、大袈裟にする程の物では無いと語っていた。
「別に助けてくれなくても良かったのに」
「あのまま続けていれば勝っていましたわ」
「いや、強がんなよ‥‥‥」
大袈裟な事にはなっていないが、明らかに怪我をしていながら強がる二人に対して、一夏の奴が呆れているが、今度はその呆れている一夏に対して当たり始めた。
はぁ、鈴は唯たんにこう言う事が嫌なだけで、セシリアは好きな奴に醜態を晒したのが嫌だったんだろうな。
「其れより、何であんな事してたんだ?お前らとボーデヴィッヒは、繋がりが無いだろ」
「そう言えば、どうして何だ?」
「そ、それはですわね‥‥‥」
「はぁ、私たちが彼奴の挑発に乗ったのよ。ああ、思い出しただけで、イラついて来た」
俺と一夏の問いに対して、言いづらそうにしているセシリア見かねてか、鈴の奴が説明するが、その時のボーデヴィッヒの言葉を思い出したのか怪我しているにもかかわらず、ベッドを叩いている。
その光景に、多少呆れるが、直ぐに意識を戻す。
「お前ら、何てその時に言われたんだ?並大抵の挑発には、あんまり乗らないだろ」
「そう思いたいんだけどね。あの時はイロイロと冷静じゃなかったかも」
「そうですわね。わたくしも、やはり冷静で入られませんでしたかもしれませんわ」
具体的な事は、言わなかったが二人のしだれ具合で大体は予想出来た。
大方、ボーデヴィッヒの奴は一夏の事を目の敵にしているから、一夏と親しい此奴らに対して、一夏の事を誹謗中傷したんだろうな。
ほんと、気に入らねぇ事しやがるな。
其処まで考えた所で、何か音が近付いてくるのが分かった。
ドドドドドドドドドドドドド!!!!
はっきりと騒音が聞こえたと同時に病室のドアがバタァン!と勢い良く開かれて、というか蹴破られて、大量の女子が雪崩れ込んできた。怪我人に悪いことこの上ない。
「織斑君!」
「デュノアくん!」
「鉄さん!」
「「「「「これ!」」」」」
状況がいまいち飲み込めない俺たちに、女子一同がいっせいに差し出したのは、緊急告知が書かれた申込書だった
其れを受け取った一夏が、朗読し始める。
「『今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行うため、二人組での参加を必須とする。なお、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りは』――」
「ああ!其処までで、良いから!」
其処まで言った所で、大体の流れは分かった。つまり、此処に来た女子達は、男子である俺や一夏と男子と認識されているシャルルと組みたいと言う訳か。
「悪いな。俺はシャルルと組むから諦めてくれ!」
詰め寄られる一夏の口から出た苦し紛れの一言は、シャルルの奴と組むと言うことだった。
「まあ、そういうことなら…」
「他の女子と組まれるよりはいいし……」
「男同士っていうのも絵になるし……ゴホンゴホン!」
一夏がシャルルと組むと聞くと、残念がっていたが何処か安心したような様子だったが、最後はちょっと許し難いなぁ。
そして、一夏達の方を見ていた女子達は、顔を俯いていたが俺を見た途端に、獲物を見つけたハンターの様に詰め寄って来た。
「あー、俺は出ないぞ?」
期待に満ちた目をしていた所為か、物凄く言いづらかったが、此処はきっぱりと断る。
まぁ、仕方ないんだよな。
「あ、そう言えば何で双刃さんは、出ないんですか?」
「んー、あー、其れ聞いちゃう?」
コクコクと、俺の言葉に頷く一夏達に降参と言った方にして、椅子に腰掛けて理由を話す。
「一夏とかには、言ったが俺の志望職は医者な訳だ。此処に来ると決まるまでは、大学の医学部目指してたからな」
まぁ、合格したけど、こんな状況だ。と皮肉りながら、話しを続ける。
「IS学園に居る今でも、その目標を諦めちゃいない。だから、トーナメントは出ないで、そっち方面の事をするんだよ。あ、因みに織斑先生には、ちゃんと許可貰ってるから」
俺の言葉に納得したのか、其々の話しをし始める。
悪いな。彼奴らが、来るかもしれないんだ。俺が、引き受けないといけねぇんだよ。