「ねぇ、一夏は、トーナメントに出るんだよね?」
「ああ、何処まで行ける分からないし、自分の実力がどんなぐらいなのか分からない。けど、知りたいじゃん。俺は何処まで行けるのかってさ」
「そうなんだ。まぁ、でも。当たっても手加減なんかしたやん無いからね」
「望む所だ」
俺の隣を歩くシャルと、何気なく話題を出たトーナメントで思い出すのは、千冬姉達とシャルの此れからについて話した時、千冬姉が言った。
『此奴の事を守って見せると言う意思を実力で示せ』
そんな千冬姉の言葉に俺は、力強く頷いた。
その後、シャルの家の問題は、大丈夫だ。任せろと千冬姉に言われ、シャルは、元気にやっている。
「其れにしても、やっぱり双刃さんは出ないんだね」
「あの人は、ISよりもやりたいことが多いから仕方ないさ。其れより、今日も模擬戦してくれないか?」
「いいよ。今度も打ち負かせてあげるよ」
「うっ!今度こそ勝ってやるからな!」
そんな風に談笑をしながら、今日の練習場の第三アリーナに来てみたら何処か騒がしかった。
「なんか、アリーナの方が騒がしいな」
「そうだね。どうしたんだろ‥‥‥」
シャルと二人して、その状況に対して怪訝に思いながらフィールドの方へと足を進める。
「誰か戦っているみたいだね。アレは‥‥‥」
「セシリアと鈴と‥‥‥ラウラ?!」
フィールドへと目をやった俺たちの前で戦っていたのは、セシリアと鈴とラウラの三人だった。
セシリアと鈴の二人対ラウラの一人だったが、明らかにセシリア達の方が不利であった。
「どうなってるんだよ‥‥‥!」
「多分、セシリアと鈴が、ラウラと二対一で戦ってるってのは分かるけど、明らかに二人の方が不利だね……」
「いや、そんな事は俺でも分かる!聞きたいのは、何でこうなってるのかだ!」
気持ちが高ぶっているのか、悪気は無いけどシャルに向かって、強く当たってしまう。
「くそっ!」
「あ、ちょっと待ってよ一夏!」
居ても立っても居られなくなった俺は、その場から駆け出してアリーナのピットへと走る。
「アリーナが何か騒がしいな」
散歩をしていて、第三アリーナ辺りに差し掛かった時、アリーナの外からでも聞こえるぐらいアリーナの中が、明らかに騒がしかった。
「‥‥‥確認だけして行くか」
そんな俺の言葉とは違って、俺は駆け足でアリーナへと向かう。
「ん?!こりゃ、どう言う事だ?何で、セシリアと鈴の奴がボーデヴィッヒと戦っているんだ?!」
思わず身を乗り出しそうになったが、取り敢えずフィールドへと向かう。その途中、訓練機を使っていたクラスメイトからラファールを借りて、ピットから飛び出す。
「セシリア!鈴!退がれ!」
「双刃さん?!」
「ふん!もう一人の男か。専用機でも無いくせに!」
「其れは、どうかな?!」
このラファールの装備は確認している。
俺は、ブレードを展開するとそのままボーデヴィッヒへと投げつける。
だが、そのブレードはボーデヴィッヒの目の前で止まった。
「ふん。そんな物このAICの前では、無意味だ!」
「はっ!だから、言っただろ。どうかな?ってな?!」
ブレードを止めたボーデヴィッヒは、冷徹な笑みを見せるが、俺は其れを意に関せず、ショットガンで射撃する。
そして、その攻撃をボーデヴィッヒは、止めようとするが、放たれた弾丸は止められる直前に爆裂を起こした。
「調子に乗るなぁ!!!」
「其れは、こっちのセリフだ。ラウラ・ボーデヴィッヒ!」
怒りを露わにして俺に突撃してくるボーデヴィッヒに対して、ショットガンからマシンガンに変えた俺は、距離を保ちながら射撃を続ける。
にしても、このラファール俺が使ったラファールと同じ装備じゃ無いか?何で、こんな設定になったんだ?
「おいおい、どうしたよ!?言っとくがな!お前の動きは、全部読みやすいんだよ!」
「くっ!貴様ぁ!!!」
俺の挑発に簡単に乗るボーデヴィッヒ。はは、もっと乗れ。そしたら、お前の動きはもっと分かりやすいのだからな。
「今だ!」
「ふっ!何をすると思えば、私の前で接近戦を選ぶなど愚策中の愚策だ!」
「はっ!お前は、見聞が狭いな!其れは、一対一の時だけだぜ!」
「もらったぁ!」
「なっ!ガハッ!」
急に突撃した俺に対して、自慢げにAICを使うボーデヴィッヒに対して、俺は余裕を持った笑みを浮かべると、ガラ空きの背後に一夏からの一撃をモロに受けた。
「ナイスタイミングだぜ一夏」
「そんな事は後にしてください」
「そうだな。どうしたよラウラ・ボーデヴィッヒ。お前、俺の事を睨みよって」
「き、貴様が何故!」
「はっ!言っとくが、此れは俺とお前との一対一じゃ無い。お前と俺たちとの多対一だ。俺にだけ、集中したお前の失態だ」
一触触発と言った雰囲気の中、ボーデヴィッヒと一夏が同時に飛び出した。
俺も構えようかと思ったが、視界の端に見えた人影を確認して武装を解除する。
そして、二人の間合いが重なった時、ボーデヴィッヒのプラズマ手刀が誰かによって受け止めらた。
「……やれやれ、これだからガキの相手は疲れる」
「きょ、教官?!」
「千冬姉?!」
現れた織斑先生は、IS用の近接武装を、ISの補佐なしで扱っていた。織斑先生がぶうん、と刀を振ってボーデヴィッヒを退けた。
「模擬戦をやるのは構わん。――が、アリーナのバリアーまで破壊する事態になられては教師として黙認しかねる。この戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」
「教官がそう仰るのなら」
「分かりました」
織斑先生の言葉を聞いて、二人ともISを解除する。俺は、借りたクラスメイトの方へと飛び抜ける。
返して、お礼をして寮室に戻ろうとして、ふと思い出した事を聞くことにする。
「そういや、このラファールの装備、俺がセシリアと戦った時と同じ装備だけどなんで?申請しないと搭載されない奴が盛りだくさんの設定なのに」
「え、えっと、あは、あはは‥‥」
「OK、聞かないでおくよ」
かなり気になったが、多分知ったところで俺には意味のない事だと完結して寮室への帰路へと着く。