IS〜愛しき貴女へ捧げる我が人生〜   作:TENC

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episode. 4

『敵捕捉。数、三機』

 

「了解!」

 

耳のインカムからのアリスの声を聞き、稲叢神楽経由で表示されるレーダーサイトを頼りに其処へと駆ける。

 

「ゴーレム?いや、彼奴の固有能力か」

 

抜け出て俺の前に現れた敵は、博斗の奴が誘った新入りが持つAUWの固有能力で造られたであろうゴーレム達だった。

成る程、だからアリスが三“機”って言ったのか。

 

「まぁ、さっさと片付けますか」

 

未だ納刀したままの神楽の柄に手を掛け、接続する。

 

「んじゃ、散れ」

 

只今俺は、絶賛模擬戦中である。

 

 

「ーーーーッ!」

 

「言語能力は無い訳か。まぁ、んな事関係ねぇがな」

 

俺を視認したゴーレム達は、言葉になっていない叫びを上げて俺に拳を振りかざす。

いくら神楽でも、余り硬い物を切れば刃毀れするし折れる事だってあるのだ。だから、避けられる物であれは避ける事を優先するし、硬すぎる物だったら、出来る限り切ったりはしない。

 

ただ、其れは博斗の頭の中での戦い方だ。

 

「オラァ!」

 

バァンッ!

 

あのヤブ医者が俺の事を人外と言うのは、並外れた身体能力があるというだけではない。普通の人間とは比べ物にならないぐらいの身体の強靭性と言う事も入っているのだ。

一体目の拳を、自分の拳で殴り返して弾け飛ばし、すぐ様跳躍して距離を取る。

 

「さぁて、彼奴らは何をどんな風にやって来るのやら」

 

この時の俺は、ヤブ医者の野郎と喧嘩した時並みの高揚感が俺を包んでいた。

 

 

 

「見ました?今の?可笑しく無いですか?幾ら、強化されてるからって、原爆以上の衝撃でもビクともしなかったゴーレムですよ?其れを片手で殴り返して弾け飛ばすなんて、人じゃないですよ」

 

「落ち着け。あの人が言ってただろ。人外だって」

 

統真が暴れている場所から少し離れた場所で、三つの人影は先ほどから確認できる人外の所業に、驚かされてばっかりだった。

 

「博斗さんが言ってた。この模擬戦実力を測ると同時に、他の意図があるのだと」

 

「個人的には、他の意図ってのが物凄く気になりますが、あの人の事だ。分かる訳が無いですね」

 

落ち着きのない女性の声と、何処か呆れたような口調の男の声。そして、最初の女性とは違う落ち着きのある男の声。

そんか声の持ち主達は、此れから如何するのか話しを始める。

 

「先ず、目的の確認をしましょう。今回は、別に勝つのが目的ではなく。我々の実力の示す事です」

 

「て事は、玉砕覚悟で行くよりも如何やってあの人の裏を書くかって事か?」

 

「そうなります」

 

冷静に作戦を会議をする男二人に対して、女の方は二人の会話の内容をイマイチ分かっていないようで、頭の上にはハテナマークが、飛び交っているようだ。

 

「加奈さん。仕事しますよ」

 

「え!?う、うん!任せて!」

 

いきなりの呼びかけに慌てて応じ、冷静な男から内容を簡単に聞いて実行する。

目指すは、一撃。

 

 

『敵沈黙。彼方は、時間稼ぎのようです』

 

「ああ、言わなくて良い。分かってて時間掛けた。そこんとこ、減点されるのか?」

 

『博斗様から“多めにみる”だそうです。其れから“存分にやれ”です』

 

「はっはっ!アリアからそんな風に聞くと色々と、気が狂うわ」

 

抑揚の無い冷たい言葉をインカムから聞き流しながら、来るであろう襲撃に備えてAUWの力を最大限に使って五感を限界まで研ぎ澄ます。

 

「アリア。感覚同調と制限解除。それから、六感の解放よろしく」

 

『了解しました。統真様』

 

眼を閉じ、腰にこさえた神楽の柄に手をやる。

六感。と言っても、簡単に言えば直感が鋭くなるってだけだが、ヤブ医者や博斗曰く感覚派の俺には、其れがあるか無いかで変わって来る。

 

『敵行動に移しました。会敵まで5秒』

 

「了解!」

 

殆んど無音の世界の中で、ほんの微かに聞こえる音などに神経を研ぎ澄まし、アリアが宣言した5秒から3秒経った瞬間に、神楽を抜き居合斬る。

一瞬の内に三度ほぼ同時に。

 

「獣爪」

 

三つに飛んでいった斬撃は、血を切り裂くように木々を切り裂いて行く。

 

「外した?いや、明らかに手応えはあった。‥‥‥成る程、て事は、此れは如何だ?!」

 

抜き身になっている刀身を横薙ぎに払う。円と言う一対多用の技だが、此れは弱点がある。

射程の短さ。威力が徐々に減っていく。次の技への繋ぎが難しい。など、連続攻撃を主とした俺の剣術には合わない物だが、神楽と言うバケモノを持てば其れは、全て解消される。

 

「拡張斬撃」

 

円を描かれた斬撃は、俺の呟きと同時に大きさを変え、幅を広げ超速で、周りの殆んど木々の根元を斬り捨て、見晴らしの悪かった一面から、障害物の無い更地へと変えた。

 

「策は悪かねぇ!けど、こちとら常識外れの人外って言われたんだ。普通の策が通じると思うな!」

 

突然の事で戸惑っている新人三人に対して、俺は高々と声を上げた。

 

「自由断絶+拡張斬撃」

 

その後、俺の必殺技が放たれ、この模擬戦は俺の勝ちで終わった。

 

 

 

「お疲れ様です皆様。ドリンクをお持ちしましたどうぞ」

 

「あ、ありがとうございます?」

 

「何故、疑問形なんだよ」

 

「まぁまぁ、僅か数日前まで、こんな事は無かったんだ。戸惑うさ」

 

模擬戦を終え、神楽の手入れをしていたら俺のサポートをしていたアリアが、栄養ドリンクを持ってきて、ぶっ倒れている三人に渡した。

 

「それにしてもお前ら詰めが甘いな。特に加奈は、咄嗟の事に対応しきれて無いな。其れと策は、悪く無いが其れは普通の奴にしか通じんな」

 

俺の指摘に加奈は、「うっ!」と声を上げ、策を考えたであろう四郎は、顎に手を置き考えしだす。

だが、まぁ此れならちゃんとやっていければ、ヤブ医者のクソッタレぐらい超えられるだろうな。いつか。

 

「其れにしても、最初の奴で辺り一面更地にした技ってなんですか?」

 

「ん?なんだ海斗。知りたいのか?って言っても、ありゃ技じゃなくて神楽の能力だよ」

 

「拡張斬撃と言う。放たれた斬撃を威力そのまま、大きくするというものです」

 

「おい、アリア。何人のセリフ取ってんの?」

 

「行けませんでしたか?」

 

「ダメじゃねぇけどな」

 

アリアの奴にセリフを取られたが、別に拘っていないので、スルーする事にしたが、何故か海斗や加奈の奴があんぐりと口を開けていた気がするが今はどうでも良い。

 

「よし。休憩終了だ。各自、自由時間!」

 

「「「は、はい!」」」

 

なんか、胸騒ぎがするな。

危ないと言うよりも、メンドくさい方面で。

 

 


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