「ねぇ、ちょっとアレ‥‥‥」
「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」
「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど……」
そんな周りの騒がしい言葉に乱入して来たのが誰か分かった俺は、一気に自分が不機嫌になるのが分かった。
「おい」
ISでの
「‥‥何だよ」
渋々といった感じで一夏は、その言葉に反応を返した。
「貴様も専用機持ちのようだな。なら話は早い。私と戦え」
「イヤだね。理由がねぇ」
「貴様には無くても私にはある。――貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様を――貴様の存在を認めない」
ボーデヴィッヒの怒りを含んだその言葉に俺は、何故彼奴が一夏に対して嫌悪を抱いているのか合点がいった。
第2回のモンド・グロッソで織斑先生は、決勝まで進んだが何故か決勝には出ず準優勝と言う結果で終わっている。
博斗の奴がボーデヴィッヒの事を教えてくれる序でに知った事だが、第2回の時に一夏は何処かの組織に誘拐されて、織斑先生は一夏を助ける為に不戦敗をした。
その時に織斑先生をサポートしたのが、ドイツ軍で織斑先生はその時の恩を返す為に一年ぐらいか教官をしていたらしい。
ボーデヴィッヒは、その時の教え子で。彼奴は、織斑先生の事を狂信しあの人に成りたい思っている。
だから、ボーデヴィッヒは織斑先生の意思とは関係なく二連覇を無くした一夏の事を恨んでいる
だが、俺はあの人が栄誉なんかに興味があるとは思えない。
モンド・グロッソだって、本当は出る気は無かっただろうけど、多分賞金で一夏を養える為だろう。
「また今度な」
「ふん、そうか。――戦わざるを得ないようにしてやる!」
ボーデヴィッヒはその漆黒の機体を戦闘状態へシフトさせ、肩に装備された大型の実体砲が一夏に照準を合わせた。
その行為で、唯でさえボーデヴィッヒ自体にイラついていた俺の心の中は煮えたぎっていた。
「……ちょっと待った」
そんな時シャルルが今にも戦闘を開始しそうな一夏とボーデヴィッヒの間に盾を展開して割り込んだ。
「こんな密集地帯で戦闘を始めるほど、ドイツの人は沸点が低いんだね。ビールだけでなく頭もホットなのかな?」
「貴様……」
シャルルの挑発に簡単に乗るボーデヴィッヒ。此奴、本当に軍人か?だが、此れではっきり分かった。
此奴は俺の大っ嫌いな存在だ。
だが、そんなシャルルの言葉で俺は頭がさっと冷えるのを感じた。
「フランスの
「未だに量産化の目処が立たないドイツの
二人のにらみ合いはその後も数秒続いた。
『そこの生徒! 何をやっている! 学年とクラス、出席番号を言え!』
アリーナのスピーカーから教師の声が聞こえた。大方騒ぎを聞きつけたんだろう。
「……ふん。今日は引こう」
何度も横槍が入って興がそがれたのか、そう言ってボーデヴィッヒはアリーナのゲートに戻っていった。
「‥‥‥一夏、悪いが俺は帰る」
「‥‥‥分かりました」
俺の不機嫌な言葉に納得しているのか、少し間が開いたが一夏は了承したので俺はそのままアリーナから去りとあるものの所へと向かう。
「あー、久々だ。こんなに気持ちが昂ぶってるのは」
そう言えば、前回こんな感じになったのって何時だっけ?まぁ、いいや。どうせ、俺には関係ない事だ。
「よお、ラウラ・ボーデヴィッヒ。いきなりで悪いが」
「ッ!?貴様は‥っ!」
アリーナから出て行ったボーデヴィッヒの前に立って、数十センチの間隔を開けて対面する。
そして、いきなり現れた俺に反射的に襲い掛かったボーデヴィッヒに対応する。
「死ねよ」
「ガハッ!」
拳を軽々と避けて、鳩尾の部分に思いっきり殴りつける。
殴りつけた後、俺は止めずに回し蹴りを頭に当てて隣の壁に叩きつける。
「ガッ!き、さまぁ!!ぐっ!」
「てめぇ、自分が何やったか分かってんのか?まぁ、分かってねぇよな。分かってねぇからやったんだよなぁ?」
やり返そうとするボーデヴィッヒを思いっきり押さえつけて、感情のままに言葉を出す。
アリーナでは、我慢出来るぐらいにはなったが、流石に長くは続かないよな。
「何をしている鉄!」
「ちっ」
「きょ、う、かん‥‥‥」
「ラウラ!答えろ鉄!お前は、何をしていた!」
言葉を続けながらもう一発顔面に入れようかと思ったが、織斑先生が来たのでボーデヴィッヒを解放する。
そして、怒りを露わにしている織斑先生に向き直り何時もの雰囲気で話す。
「見て分からないっすか?このクソッタレをぶっ飛ばしているだけですよ」
「何でそんな事をしている!お前は、人を救うんじゃなかったのか?!」
「は、人?何言ってるですか織斑先生。此奴は、人じゃない。この世で俺が一番大嫌いなものが
お互い感情的になるが、俺の放った言葉に絶句する織斑先生。
「興醒めだよ。織斑先生、此奴がやったことはもう知ってますよね?もし、此奴が彼奴らに害意を加えたら分かってんでしょうね?」
「‥‥‥ああ、分かっている。鉄。後で話しがある寮長室に来い」
「分かりました」
そう言って織斑先生とボーデヴィッヒと別れた。
その晩、織斑先生の居る寮長室に行って、色々と話しをしたが俺のボーデヴィッヒに対する価値観は変わる事は無く。
余計に無関心な物へとなった。
「この世で、一番大嫌いなもの、か。ふふ、じゃあ僕はどうなんだい?君と最も長く過ごした
俺の寮部屋のベランダで呟かれた彼奴の言葉に対して、俺は何にも言わなかった。
いや、何も言えなかった。
ああ、本当に今日は一日中最悪だ。