自分なりの終わり方でしたので賛否両論あるかないかも知れませんが、次からはラウラ編です。
「え、えっとシャルルで良いんだよな?」
「う、うん」
衝撃の瞬間が終わった後、取り敢えずシャルルにはジャージを着てもらいベッドに腰掛けながら話す事にした。
もう一度シャルルの身体を確認するが、やはり胸の辺りには女性の証である物がはっきりと分かる。
けど、今はこんな事を考えている場合じゃない。
「取り敢えず、説明してくれないか?何でこんな事をしたのか」
「うん、分かったよ」
二人とも落ち着いた所で俺は話しを切り出した。
今日の実技でも思った事だけど、シャルルは良い奴だと思う。そんな奴が男装までしてくるなんて、何かあるに決まっている。
「僕がこうやって来たのはね。僕のお父さんのほら、デュノア社って知ってるでしょ?」
「ああ、今日の実技にも出てたな」
「うん、其れでね僕は中性的な顔だからって事で、一夏の専用機のデータを取って来いって理由で送り込まれたんだ」
シャルルから言われた事に俺は、開いた口が塞がらなかった。
「何で、そんな事シャルルにやらすんだよ!お前の親なんだろ!?」
「そうだね。でも、僕は愛人の娘なんだ」
「なっ!?」
最早意味が分からなかった。
愛人の娘とは言え、実の娘を道具のように親が扱う何て間違っている。
「引き取られたのが二年前。ちょうどお母さんが亡くなったときにね。父の部下がやってきたの。それで色々と検査をする過程でIS適応が高いことがわかって、非公式ではあったけれどデュノア社のテストパイロットをやることになってね」
バレてしまったとは言えこんな話はしたくないのだろう、シャルルの顔は暗かった。けど、其れを俺は黙って聞いている。
「父にあったのは片手で数えられるぐらい。会話は数回ぐらいかな。普段は別邸で暮らしているんだけど、一度だけ本低に呼ばれてね。あのときはひどかったなあ。本妻の人に殴られたよ、『この泥棒猫の娘が!』ってね。参っちゃうよね、本当」
あはは、力なく笑うシャルル。そんなシャルルの姿はとても痛々しかった。
その後はシャルルがデュノア社の経営状況を説明してくれた。
それから少し経って、デュノア社は経営難に陥ったらしい。量産機では世界第三位でも、第三世代型のISの開発が遅れていたため、欧州連合からの総合防衛計画『イグニッション・プラン』から外され、その結果政府からの援助が大幅にカット――そして今に至る。
「それで、僕は世間から注目を浴びるための広告塔としてここに入学して、あわよくば特異ケースである二名の男性IS操縦者及びその専用機のデータの採取を命じられたんだ。と、まあこんなところかな。一夏にはバレちゃったし、僕はきっと本国に呼び戻されるだろうね。任務には失敗したわけだし」
「‥‥‥」
先ほどの力無い痛々しい笑顔を見せるシャルルに俺は、我慢の限界だった。
「シャルルはどうなるんだよ」
「どうって……本国に戻ったら、フランス政府も黙ってはいないだろうし、僕は代表候補生から降ろされて、良くて牢屋行きかな?」
「其れは世の中が決めた事だろ。お前は如何したいんだよ!如何なりたいんだよ!」
「ぼ、ぼくは‥‥‥」
前までの俺だったら、こんな時は多分自分勝手に物事を進めたんだろうけど、今の俺は双刃さんやセシリア達と会って色々な人を見て来た。
だからこそ、こんな聞き方をしたのだろう。
「ぼくは、此処にいたい!もっと、一夏や皆んなと過ごしたい!」
「なら、そうすれば良いさ。俺も協力する」
泣き噦るシャルルを慰めつつ俺は話しをする。
「そう言えば、シャルルの本当の名前ってどんなんだ?潜入するにしても本名のまんまじゃないだろ?」
「シャルロット‥‥‥シャルロット・デュノアだよ」
「そうか。じゃあ、シャルだな」
シャルロットじゃあ長いし、シャルなら別に問題ない。
「ねぇ、一夏。我が儘言ったけど如何するの?」
「ああ、IS学園特記事項第二十一を知ってるか?特記事項第二十一項ってのは、本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意が無い場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとするっていう奴だ」
つまる所、学園に居る三年間はシャルは大丈夫だって事だ。
如何やるかはゆっくり考えれば良い。時間はある。
「けど、二人だけじゃ大変だよ?如何するの?」
「双刃さんとか千冬姉に頼んでみるよ。あと、鈴も。三人なら信用できるし、多分気付いてるかも」
千冬姉は兎も角、双刃さんとか鈴は何気に勘が鋭い。
「でも、今日は寝よう。詳しい事は明日にでも考えようぜ」
「‥‥‥うん。そうする」
その後、眠る準備をして二人とも寝床へと入った。
「おやすみ」
「うん。おやすみ」
そう呟き眼を閉じ眠けに身を委ねる。普通なら朦朧とする意識の中、はっきりとは分からない筈だが‥‥‥
「ありがと、一夏」
小さく呟かれたシャルのそんな一言はしっかりと聞こえた。