「あ、アレは」
千冬姉と別れた後、寮に向かって歩いていたら寮の入り口に双刃さんが制服のままが電話をしていた。
「ん?ああ、後で掛け直す。分かったら教えてくれ。ああ」
双刃さんは、俺に気付くと電話の相手に断りをいれて電話を切ってこっちに歩いて来た。
「どうした一夏。何か考え事か?」
「あ、いえさっき千冬姉とボーデヴィッヒの事を聞いていたので‥‥‥」
「そうか」
入り口で話していても邪魔になるだけなので、自室に向かいながら話しをする事になった。
「俺正直言ってどうやったら良いのか分からなくて」
「そうか。お前はバカか?其れに一夏お前は一つ勘違いしてるぜ」
「え?」
俺の呟いた声に双刃さんは、頷くといきなりバカかと言って来た。
唐突にそう呟かれた俺は素っ頓狂な声が不意に出てしまう。
「お前が今悩んでるのは、自分の存在が織斑先生にどんな影響を与えているのかとか、織斑先生に迷惑を掛けないためには、どうすれば良いのかだろ?」
「え、あ、あのそうですけど、其れが如何してバカに繋がるんですか?」
双刃さんが言ったことは本当に今悩んでいる事で、けど何で其れが双刃さんのさっきの言葉に繋がるのか余り分からなかった。
「一つ目は、俺からはどうしようもないが。二つ目に関しては言っておくぜ。家族ってのは、迷惑を掛けたり掛けられたりするものだ。其れで、邪険に扱うんだったら其れは上っ面な家族だ」
疑問に思っていた俺に気にせず双刃さんは言葉を続ける。
「お前は一度でも織斑先生に邪険された事はあったか?」
「‥‥いえ、無かったはずです」
俺が間違いをしたりした時は叱ったりしたが、雑に扱われたり疎遠になった事は一度もなかった。
「其れにあの人は強い人だ。単純な力もそうだが心が強い」
「心が‥‥」
自分の胸を叩く双刃さんに合わせて、自分の胸に手をかざす。確かに千冬姉は、何時も俺の前では弱い所を見せなかった。多分、上手くいかなかった事はあった筈なのに、家に帰って来た時の千冬姉は何時も通りの顔のままだった。
そんな千冬姉が一度だけ俺の前で泣いた事があったな。
「俺強くなってるんですかね」
「其れを決めるのは俺じゃない。自分で実感しないと分からないだろ?」
「そうですね」
「一夏。お前は何を持って戦っているんだ?」
「え?」
まだイマイチ分かっていない俺に双刃さんは、分からない事を聞いてくる。
「質問が悪かったな。お前は俺らと戦う時、お前はどんな信念を持って戦っているんだ?大切な人を護るなんて他人のための想いじゃなくて、自分に対しての想いなんか無いのか?」
「自分に対して、ですか?」
そう言えば俺はISで戦ってる時、皆んなを守ろうとする事以外何を考えているのだろうか。
「俺は己の実力を示す為だ。こんな世の中だからな。あんな風に強くなくちゃ意味ないからな」
「俺は‥‥‥」
「ピンと来ないんならじっくり考えれば良いさ。今決めても決めなくてもこのまま順調にいけば三年間は、此処にいる訳だしな」
「それも‥‥そうですね」
双刃さんと話して何か少しだけ分かった気がした。
その後は、俺の部屋の方が近いので双刃さんはとは別れて部屋の中に入る。
「え、いち、か?」
「え?シャ、ルル?」
シャルルと同じ部屋だという事は聞かされていた。
だが、此れは聞いていない。
「きゃ」
「ま、待てシャルル!」
「きゃあああぁぁぁ!!!!!」
シャルルが“女子”だなんて聞いていない!