恋愛に関しては、気付きにくいだけで鈍感ではございません。
episode. 1
クラス対抗戦があの乱入者の所為で中止になり、特にイベントが起こるわけでもなくそのまま週末となった。
休日は、何処かで身体を休めた方が身の為って双刃さんから言われたので、箒達との練習を取りやめて休日を満喫している。
「所で一夏。どうなんだ?」
「いや、何がだよ弾」
自分の家に帰っても良かったんだが、久しぶりに親友との時間も悪くないと思い、中学の時に鈴と一緒につるんで遊んでいた
「IS学園の事だよ。お前のメール見てわかるぐらいの楽園じゃねぇか」
「其れは、実際に体験していないからだろ?実際に体験したら色々とくるもんがあるぜ。主に精神に」
「マジか」
そんな話しをしながら、俺が今使っているゲームキャラの技を使って、弾にトドメを刺す。
「ぐわっ!負けたー!」
「危なかったー」
取り敢えず、一戦終えて一息ついて他愛ない話しを続ける。
そうしていたら、ドタドタと階段を駆け上がってくる音が聞こえた。
「お兄! さっきからお昼出来たって言ってんじゃん!」
扉を蹴破って入って来たのは、弾とおんなじ赤い髪にバンダナを巻いた弾の妹の五反田蘭だった。
「さっさと食べに来なさ――」
「あ、蘭。久しぶり。邪魔してる」
取り敢えず声を掛けておく。
「え、い、一夏……さんっ!?」
なんか、スゲェ驚いてるな。そんなに俺が居るのが、珍しいか?
「あの、一夏さん、いや、その……来てたんですか……? 全寮制の学校に通っているって聞きましたけど……」
「ああ、まあな。でも今日は休日だしちょっと外出と思ってな」
「そ、そうなんですか」
俺の言葉に何処か戸惑って居る様な雰囲気の蘭。何かあったのかな?
「……お兄。ちょっとこっち来て」
するとだんを呼びつけて、奥の方で何か会話をして居る。
気になるが、何か嫌な予感がするから辞めとこう。
「あ、あの、よかったら一夏さんもお昼どうぞ。まだ、ですよね?」
「ああ、其れに元から此処で取ろうと思ってたから」
「い、いえ‥‥そ、それじゃ!」
バタンッとまた勢い良く出て行った蘭を見て少し考える。
「なぁ、弾」
「ん?どうしたんだよ」
「蘭ちゃんって、何か俺に思うことでもあるのか?」
「はぁ?はあぁぁ!!!!???」
「な、何だよ。そんなに驚いて」
失敬な奴だ。何で、こんな事だけで驚くんだよ。
「い、いや。おま、お前。ほ、ホントに一夏か?」
「何言ってんだよ。俺は一夏だぜ」
「そ、そうだよな。あははは」
驚愕の様な雰囲気の弾は、乾いた声で笑う。不思議に思っていたが、取り敢えず厳さんが待ってるだろうから、さっさとお店の方へと降りる。
「おう、久しぶりだな一夏」
「此方こそお久しぶりです。厳さん。相変わらず元気そうですね」
「はっはっは!当たり前だ!って、どうしたんだ弾。惚けた顔しやがって」
「い、いや何でもないよ。いや、あるか。後で話すよ」
「お、おう」
お店の方に降りる。因みに、このお店の名前は『五反田食堂』と言い、この辺りに居る人の中ではかなり名の知れた食堂だ。
経営して居るのは、勿論弾の家族なんだが、弾と蘭の祖父の五反田厳さんは、八十は超えている筈なのだが筋骨隆々とした腕を使って、豪快に中華鍋を振るって居る。
俺と弾と、服装を変えた蘭で一つのテーブルを囲んで座って、定食の余りを食べていた。
「そういや、一夏の他にも男の人が居たよな」
「ああ、双刃さんの事か」
「そうそう、その人。どんな人なんだ?」
昼食を食べ終わった後、弾が双刃さんの事を聞いて来た。
「簡単に言うと、多分天才の部類に入る一つだと思う」
「そんな凄い人なんですか?」
「そういや、その人高校卒業後に見つかったんだっけ」
「ああ、頭良いし。優しいし。運動も出来る。ISでの模擬戦とか何回かやった事あるけど、全敗中だぜ」
俺に勝つのは分かる。俺と同じ素人の筈なんだが、代表候補生にセシリアや鈴にも勝ち越しているのだから、驚きだよ。
「ああ、後鈴が来てたぞ。代表候補生で」
「マジかよ。彼奴、何時のまにエリートになりやがったんだ?」
「俺らを見返す為だったりしてな」
「あいつならあり得るなぁー」
その後もそんな話しをしながら、お昼時を終えた俺は弾と一緒にベランダで風にあたりながら、黄昏て居た。
「そういや。何で、あん時に蘭の反応に気になったんだ?」
「?ああ、その事か」
そんな時に弾にそう聞かれて、双刃さんのあの言葉を思い出す。
「双刃さんがさ、こう言ったんだよ。「様々な事に疑問を持て」ってさ。今までは、気にして居なかった事に疑問を持ったら、色々と気付く物があったんだよ」
「マジかよ。その人に会って見たいわ」
「じゃあ、夏休み辺りに誘ってみるぜ」
「おう。それと一夏頑張れな。一親友として応援してるぜ」
「?お、おう」
何か含みのある言葉だったが、どうせこいつの事だ。誤魔化して言わないに決まってる。
さてと、来週からまた頑張りますか。